55・脱、迷子
どうも!妄想から帰ってきました!
コホン…危ない危ない…エルナたんの余りのカッコ可愛さに自我が崩壊するところだったぜ。
現実に戻ってきた私をシラっとした眼でテオが見ている。なんだよう。
「ロングソードかぁ…」
確かに敵から距離をとれるロングソードの方が良いけど…。
私はちゃんと真面目にエルナたんの相談に乗ることにした。だって本当はもっと上手くなるまでは私に秘密にしておきたかったようだし…。その意思を曲げて私に相談してくれたってことは信頼されてるってことだよね!むふ。
「エルナたんは、お稽古事で何が一番得意なの?」
私は元々体を動かすのが好きだからいつの間にかこんな感じの戦闘スタイルになってたけど、人によっては得意なスタイルが違うからなぁ。
これは持論だけど、性格や得意なことをちょびっとだけ噛ませると意外にしっくりくるスタイルが見付かったりするんだよね。
現に伯爵様の所の兵士さん達は私のこのアドバイスがあってからかここ最近で自分の戦闘スタイルを見直す人が多く、強くなったような気がする人が出てきだした。気がするだけかもしれないけど。
「そうね…ダンス…かしら…?」
やだ!花のように舞うエルナたん可愛すぎかよ…!
…っと危ない危ない…。
「エルナたん姿勢が良いもんね!背筋がピッとしてて身体の中心がいつも定まってる感じだし。ダンスかぁ…」
なるほど…ステップ踏んでも重心がブレないなら…。
「それならダンスの足運びを応用するのはどうかな?」
「ダンス、の…?」
「そう。だってエルナたんは女の子だから鍔迫り合いに持ち込まれた時点で敗北確定だからね。だったら一撃必殺のスタイルが合ってると思うんだぁ」
一応私だって女の子ですからねー、男の人が相手だと鍔迫り合いで負け……いや、負けんな。エルナたんは多分力負けしちゃうだろうから、それなら私みたいにスピード特化型が合うはず。
ダンスって結構気配察知とか、周りの流れを読んだりとか意外と頭使うんだよね。アー君のダンスの練習に付き合わされてるから解るんだけど、あれを楽しむために練習するって凄く大変だと思うんだよ。…ごめんね、アー君。足踏みまくって。
「蝶のように舞い、蜂のように刺す!…みたいな?あ、でもこれだとレイピア系の武器になっちゃうか…。刺すのは接近しちゃって危ないから重さを極限まで下げて切れ味を剃刀みたいにスパッといく奴じゃなきゃなぁ…う~ん、ロングソードに魔法を付与して軽くした上で超微振動付きとか…それなら切り裂くときに腕力もそんなに必要ないし…てか超微振動って付与できるのかな…?いっそのこと魔法で物体を一から構築して空気抵抗も受けない剣を作るのはどうだろう…?そうなると魔力を使うからエルナたんに負担がかかるしなぁ…むむむ…」
頭のなかでエルナたん専用武器を構築していく。考えを口にしているとは知らず、ブツブツと呟く私はさぞや気持ちの悪い幼女に見えていただろう。
「え、え、ラピス?」
「あー…これはひとりの世界に入ってますね。少し待ちましょう、お嬢様」
「テオドール、私ラピスが言ってること半分は解らないわ…」
「大丈夫です。俺も解りませんから!」
「何自信満々に開き直ってるの、もう…」
「あはは」
暫くしてテオにほっぺを伸ばされて現実に帰ってきた。レディーのほっぺを伸ばすんじゃない!
「…軽量型の剣、ね…。お父様にも相談してみようかしら」
「うん。もしかしたら優秀な付与師さんを知ってるかもだし!」
そうじゃなくても軽い剣があるかもしれないしね。効果に関しては付与でカバー出来るから問題なし、としておく。
じゃぁ早速公爵様に聞こう!と私達は歩きだした。歩きがてら、エルナたんがさっき私の言ったダンスの足運びの事を口にする。
「ラピスが言ってたダンスのステップ…何となくだけどできそうな気がするわ」
「そっか、よかったぁ!素早く動けたらそれだけ勝率が上がるから。後はエルナたん専用の剣だね!」
まるでワルツを楽しむように舞うエルナたん…しゅてき…はふぅ。
例え舞っているのが血飛沫でもまぁそれはそれだよね!
妄想ネタが尽きない私の横でエルナたんが「がんばるわね」と拳をぎゅっと握り締めた。
頑張って、エルナたん!めっちゃ応援してる!
剣術指南のテオも歩きながらだけど、エルナたんと今後の練習メニューについて確認したり考案したりしている。
テオは戦闘センスが抜群だって伯爵様のお墨付きだから、任せて間違いはないと信じてるよ。
今までの人生の中でエルナたんは自ら武器を手に取ることが無かったから、剣を習っているって聞いたときはちょっと驚いたけど、どういう心境の変化でもエルナたんが自分で一歩を踏み出した証なんだ。だから私は応援するよ。だって私はエルナたんの一番の信仰者だもんね!
「エルナたん、いつか一緒に狩りに行こうね!」
「ええ。沢山鍛練してラピスと一緒に狩りがしたいわ」
うふふ、と笑い合う私達の後ろで、女の子同士の会話に聞こえないんだけど、とテオが呟いていた。失敬な。
「武器に関してはお父様に相談するとして、ラピスは何か用があったんじゃないの?」
ふと思い出したようにエルナたんが水を向けてきた。
「うん、そうなんだけど…」
「……まぁ、さっきの大人達を見てしまったら気が進まないわよね」
「う…」
そうなんだよなぁ~。
そりゃ私も中身が大人だから解らなくもないよ?皆自分ファーストだってのは何処の国も人も変わらないわけで…。
だからと言って村八分みたいな扱いを子供にするなんて大人としての矜持が許さない。
ここに暮らしている人達が全員あんな人達ばかりだとは限らないけど、それでも嫌な気分を一度でも感じてしまえば不信感が拭えない。
「ラピスは魔導具師を探しているのだったわね。…そう言えばさっきの子…ドルティア族の子はどうかしら?確か彼等は生まれながら魔法付与の適性を持っているはずだわ」
「そうなんだ!へぇ~。エルナたんは物知りだね!凄い!」
「ふふ…そんなこと無いわよ。全部本で読んだだけの知識だもの」
「それだけじゃないよ。凄く沢山お勉強したって証拠なんだから!それに、私さっきのブローチも返さなきゃだからまたあの子に会いたいし、探しに来てみるね」
山数個分の距離なんてあっ言う間だからね。いつでも来れるよ。
ドルティア族の事もそうだけど、エルナたんは博識だ。私も見習わなくては。
それにあの子はどう?と薦めてくれた事も、彼等への偏見が一切含まれていないのが声色で解る。エルナたんはそう言う子なのだ。見た目や地位で人を判断しない。やっぱ聖女なんじゃないの?
ポテポテと歩くこと数分、ようやく馬車が見えてきた。
外では公爵様が執事さんと何やら話している。
私達の姿が見えると公爵様は慌てて駆け寄った。
「お父様!」
「エルディアナ!ラピス!良かった…見付かって」
公爵様は私がはぐれてしまった事を凄く謝ってくれた。悪いのはおのぼりさんよろしくキョロキョロして迷子になった私なのに。
なので自分が悪いと頭を下げた。けど逆に叱られてしまった。君は子供なんだから、ちゃんと見てなかった大人の私が悪い、と。
「それにしても、入れ違いにならなくて良かったよ」
どうやら執事さんに探しに行くことを伝えているところへ私達が帰ってきたのだそうだ。
「エルディアナも、よくラピスを見つけられたね。さすがだ」
にこりと微笑んだ公爵様はあっという間にエルナたんを抱き上げくるりと回った。驚いて声も出ないエルナたんは恥ずかしそうに頬を赤く染めて成すがままになっている。
貴重なエルナたんの照れたお顔、ゴチです、公爵様。
かふぅぅぅん!!カユカユ…涙
登場人物が増えると名前を考えなくてはいけないわけで…苦手(´-ω-`)
誤字、脱出がありましたらお知らせください(*^^*)
ブクマ&評価ありがとうございます(*´ω`*)




