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53・エルナたんカッコイイ!

 

 …気分が悪い。

 品物を踏み潰したおっさんも、それを見て見ぬ振りしてたのに今度はおっさんを笑う側に回った傍観者も。


 ドルティア族だか何だか知らないけれど、まだ年端もいかない少年に誰ひとり味方になる大人が居ない。坊主憎けりゃ…ってやつなのかよ。職人の村だからって此処まで足を運んだけど、こんな奴等が作ったものなんて欲しくない。願い下げだ。


 同じ職人なら自分が作ったものを踏みつけられたらどんな気持ちになるか解るはずなのに。

 それなのに遠巻きに眺めるだけで誰も助けない。擁護の言葉なんて一言も聞こえない。


 別に善人を気取る訳じゃないけど、大人なら子供を守るのが当然でしょ。それなのにこの村の大人と来たら…。


「クズばっか─」

「ラピス!!」


 クズばっかりかよ、と悪態をついた私の呟きに重なるようにして名前を叫ばれて振り返る。

 視線の先には息を切らせたエルナたんが今にも泣きそうな悲しい顔で立っていた。

 そして駆け寄るとぎゅっと手を包み込むように握られた。そう言えば私は迷子だったのだ。エルナたんのこの反応はきっと私を心配してたんだろう。


「あぁ、良かった…中々見付からないからとても心配したのよ?もう迷子にならないように手を繋いでいましょうね」


 ね?と何とエルナたんは指同士を交差させる所謂恋人繋ぎで私の手を握った。

 ただ手を繋ぐだけでも嬉しいと言うのに、この繋ぎかた!ふはっ!…っと落ち着くのだ、私!シャウト禁止!


「ごめんなさい…珍しくてキョロキョロしてたらはぐれちゃった…」


 エルナたんの顔を見ればとても心配してくれてたのが解るので素直に謝る。悪いことしたのは私だからね…。迷子とか子供かよ…あ、今は幼女だっけ。


「ところでラピス。こちらの方はお知り合い?」


 視線だけでさっきから発狂してるおっさんを指したエルナたんが小首をかしげる。あ、ダメだよエルナたん。そんな汚物を視界に入れちゃ!


「知らなーい」

「そう。ならお父様の所へ戻りましょうか」


 にこりと微笑みかけられて頷きそうになったけど、慌てて首を振る。だってアクセサリを売ってたお兄さんを放置したくない。


「待って、待ってエルナたん。あのね…」

「このクソガキャァ!!俺を無視してんじゃねぇよ!」


 エルナたんに説明しようと口を開いたとたん、完全に無視してたおっさんが唾を飛ばす勢いで怒鳴り出す。その声に目の前のエルナたんの瞳がスッと細く、冷たいものへと変わった。


「─あなた、こんなに近くに居るのにそんな大きな声を上げなくても聞こえているわ。それに…今、ラピスが、私に、何か伝えようとしたのに、何を邪魔してくれているの?」


 明らかに私達よりも五倍以上は生きていそうなおっさんへエルナたんの冷えた視線と言葉が投げ付けられる。

 あえ?エルナたんてこんなにひんやりしてたっけ…?


「エ、エルナたん…?」

「なぁに?ラピス」


 私へ向き直ったエルナたんが満面の笑顔で答える。あ、やっぱり気のせいか。エルナたんは春みたいにポカポカだもんねぇ。…うん、絶対零度は気のせいだ、気のせい。


「それで、お話は何かしら?」

「ぁ、えっとねぇ…」


 斯々然々…。

 思いっきり端折って話すとエルナたんはウンウンと頷いて「そう」と小さく相槌を打った。私の適当な説明でも瞬時に理解してしまうエルナたんマジ天才!


「─つまり、この方は彼がドルティア族だと言う事を免罪符にこんな子供に難癖をつけ、あまつさえ彼の売る品物を破壊した…と」

「はっ!ドルティア族の作ったものを壊して何が悪いってんだ!」


 淡々と口にしたエルナたんに開き直るおっさん。そんなおっさんにエルナたんは呆れたように小さくため息を溢した。


「はぁ…本当にこの国の人間は噂なんて不確かなものを鵜呑みにする愚か者ばかりね…」


 ボソッと囁くような呟きが私の耳に届く。余りに小さな呟きなのでおっさんや見物人の耳には届かなかったようだ。


「良くお聴きなさい。ドルティア族が魔剣を作ったのはたしかよ。けれどそれは国に忠義を尽くすため。国を想っての事。彼等の魔剣が有ったからこそこの国は守られた。にも拘らず国の功労者に貴殿方は何をしているの?恩知らずにも程があるわ!同国民として恥ずかしい行いはおやめなさい!!」


 ズバッと言い切ったエルナたんにおっさんも見物人もたじろぐ。

 そう、そうなの!私の言いたかったことエルナたんが全部言ってくれた!てかエルナたんカッコイイ~!!

 ぽんわ~とエルナたんの勇姿に見惚れるていると、エルナたんは更に言葉を続けた。


「そもそも、彼等の作った魔剣は素晴らしいものよ。大戦が終わった今も刃こぼれひとつなく、切れ味は当時のまま。そんな剣を現代で一体誰が打てると言うの?」


 エルナたんに言い負かされたおっさんはそれでも自分の言い分は間違っていないと思っているのか顔を怒りに染めている。


「だがそいつ等が作った剣は呪われてるじゃねぇか!」


 がなる様に吠えたおっさんの言葉にもエルナたんは眉ひとつ動かさず、さも嘆かわしいと言わんばかりのため息を吐く。


「呪われている?それは一体誰の、どこ情報なの?確かに彼等の作った魔剣は沢山の命を奪った。けれど視点を変えれば彼等の魔剣はそれ以上の国民の命を救ったのよ。そして魔剣を手に戦った者は誰ひとり戦死してはいない。彼等の作った魔剣が呪われているのなら、何故誰も死んでいないの?おかしいじゃない。誰も死ななかったのならそれは褒め称えるべき事だわ」

「ぐっ…!」


 いいぞ!もっとやれエルナたん!

 けれど呪われてるなんてただの噂でしかないのに、こんな風にドルティア族を嫌悪して蔑ろに扱ってるなんて。いつの時代も風評ってのは怖いものだなぁ。

 しかし魔剣ってどんなだろう?見てみたいなぁ~。切れ味抜群なら一本くらい欲しいかも。


「エルナたん、エルナたん。魔剣ってどんななの?」

「そうね…色んな種類があるけれど、魔力を流すと付与された属性の魔法を剣に纏わせて戦うことができるの。斬られた相手にその属性のダメージを負わせる事が出来る物よ」

「ほぇ~…」


 属性ダメージねぇ…なるほど。

 …ん?けどそれって魔剣って言うには些か…。


「……で、それだけ?」

「え? えぇ、そうだけど…」

「本当にそれだけ?」

「そう、ね…」


 そうかそうか。

 なるほどなるほど。


「─って、それってただの魔法剣じゃないの?」

「ぇ…」


 ポカンと私を見ているエルナたんが困惑したように瞬きをする。睫毛なっが。─じゃなくて。


「だって呪いの魔剣って言うからもっとえげつないヤツかと思っちゃった。別に持ち主の生命力吸いとったり、血を求めて誰彼構わず殺したり、持った途端死体になったり、一族郎党が謎の死を遂げるとか、意識を乗っ取られるとか、夜な夜な無意識に辻斬りしたりとか、死ぬまで彷徨い続けるとかじゃないんでしょ?」


 私の中の呪いの魔剣ってそんなイメージなんだけど。ほら、某ゲームみたいに鎧を装備したら彷徨いまくるとかさぁ。


「なぁーんだ。ただの魔法剣かぁ。つまんない。噂が誇張されてるだけかぁ…切れ味が変わらないなら私も欲しいし…あ!包丁とか良くないかな?研ぎ要らずでずっと切れ味が変わらないなんて主婦の味方だよね!」


 思い付きを喋り終えると周囲が異様に静かなことに気がついた。見渡すとさっきまで血管ブチ切れそうだったおっさんも、見物人も全員の顔色が悪い。


「どしたの?エルナたん」

「ぃ、いえ、…なんでもないわ」

「そう?」


 気が付けばその場の全員がクールダウンしていて顔色が悪いまま去っていった。おっさんも一言「怒鳴って悪かったな」と頬を引き攣らせながら力なく呟いて背を向ける。いや、少年に謝れよ!と思ったけれどあっという間に人混みに消えてしまう。

 少年の姿もいつの間にか見えなくなっていた。面倒事に巻き込まれたくなくて隠れてしまったようだ。


 そこへ爆笑しながらテオが現れた。

 どうやらエルナたんのすぐ側に居たらしい。ごめん、全然気がつかなかったや。




いつの間にかこのお話を更新し始めて3ヶ月経ってました!(⊙⊙")

読んでくださる皆様、感想をくださる皆様のお陰で書くのが楽しいです!

いつもありがとうございます(*´ω`*)


誤字脱字がありましたらお知らせください(*^^*)

ブクマ&評価ありがとうございます(人゜∀゜*)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 多分、この世界の人たちは、ラピス想像の呪いの魔剣設定にドン引きしたのでしょうね(^◇^;)
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