48・酒は飲んでも飲まれるな2
「ぅ…う゛お゛お゛ぉ゛…!!」
なんだこれ!頭痛で目が覚めたんだけど!!
窓の外では小鳥のさえずりが聴こえて爽やかな朝の筈なのに、私の頭の中はまるでお寺の鐘を耳元で鳴らされるようなズワンズワンした激痛が…!
なんでこんなに頭が痛いんだろう?それに心なしか胃がムカムカする。そんな馬鹿な!朝ごはんが私を待ってるのに!
しかし過去これに似た現象を味わったことがある…。そう、確か二日酔い!!
いや待て、私お酒なんて飲んだっけ?…飲んだ記憶がないんだが。
昨夜は確かエルナたんと一緒に公爵様の所へ行って、そのあと確か桃のジュースを飲んだ…ような…。…………あれ?
頭痛に唸りながら昨夜の事を思い出そうとしたけれどジュースを飲んだ辺りから記憶がぷっつりと途切れている。
しかも頭痛に苛まれて思い出そうとしても思考が乱れてしまう。
これはあれだ、あれだよ。伯爵様が私に一服盛ったに違いない!あの野郎!
「うぅ…」
眉間に皺が依る。絶対今の私某30みたいな険しい顔してるよ…。
へるっ、へるぷみー…。
鼓動に合わせてくる頭痛にグッと瞼を閉じてたら、朝日の眩しさが和らぐ。誰かが日の光を遮ったのだと解ってうっすらと瞼を開くとエルナたんが心配そうに私を見下ろしていた。
「大丈夫?ラピス」
「えりゅなたーん…」
ぐぅ…逆光でマジで女神に見える…!このまま天に召されても悔いは…いやあるだろ!しっかりするんだ私!
エルナたんはネグリジェのままで同じベッドの上に居る…て事は!私は折角の同衾イベントを自らふいにしたって事なのか!?
「ふぇ…」
なんてことだ。何が起こったせいで折角の同衾イベントが駄目になったのかは解らないけど、確実に言えることは私のアホ!!しかない。
悔しくて涙が滲むぜ…うぅ…。
「どうしよう…そんなに辛いの?今すぐ薬湯を作って貰うから待ってて!」
扉の前で誰かと話した後すぐに戻ってきたエルナたんが私の額を優しくさする。気のせいか痛みが和らぐ。
ほんの数分でトレイにポットとカップを乗せたニィナさんが慌てた様子でやって来た。普段ほわんほわんしてるのでそんなに慌ててるのを見ると転びそうでヒヤヒヤするんだけど…大丈夫かな。
「ラピスちゃん、大丈夫?昨夜は大変だったみたいだけど…」
カップに注がれた薬湯が湯気を上げている。色がヤバイ…あれ絶対苦いやつだ。青い汁の色してる!
それを見た私がすんごく嫌そうな顔をしたのを見てニィナさんは苦笑を漏らした。
「大丈夫、これが一番効くのよ?すぐに良くなるから、我慢してね」
熱々の薬湯が入ったカップをもうひとつ持ってきたカップに移しかえながらニィナさんが教えてくれる。何度かそれを繰り返し薬湯の温度を下げたニィナさんは一度カップを置いてベッドに横たわる私の上体を起こしてくれて、そしてカップを渡された。
「はい、どうぞ。ゆっくりと飲んでね」
「ぅ…あい…」
うえ…アカン色や!これアカン色やー!
両手に持たされたカップの中を凝視したまま固まる。ゆっくりと言わずイッキ飲みしたら駄目なのかな。
そんなことを考えながらも強烈な頭痛には背に腹は代えられず薬湯を口に運んだ。そしてスンと匂いが鼻腔を通り抜けたとき妙な懐かしさを感じる。─あれ?これ抹茶じゃね?と。
間違いない。これ、抹茶の香りだ。
いや騙されるな。匂いだけかもしれない。味はザリガニの水槽を連想させる物かもしれないし…。
「ラピス、良い子だから飲みましょうね?」
カップを持ったまま固まる私は、どうもエルナたんには薬湯を飲むのが嫌な子に映っているようだ。
これ以上エルナたんに心配をかけるのは駄目だ。女は度胸じゃい!と思いきって薬湯ひと口飲み込んだ。
息止めて飲んだけど、鼻で息して大丈夫かな?水槽来ない?ザリガニやめてー!と思いながら鼻から空気を取り込む。
「…─ぁ、やっぱ抹茶だ…」
鼻から抜けた香りは前世で馴染みのある抹茶そのものだった。正確には抹茶よりも苦かったけど、抹茶を飲み慣れてる日本人なら許容範囲の物だと思う。
ひと口目を難なくクリアした後は懐かしの味にクピクピと薬湯を口に運んだ。んまんま。
「………ラピスちゃん?苦くないの?」
「苦いけど、そんなに苦くないよ?」
「そう、なの…?」
二杯目をおかわりした私にエルナたんもニィナさんも何だか怪訝な顔をしている。
「これ、大人でも苦くて苦手な人も居るのよ?ラピスは平気なの?」
「うん。平気だよ!何なら毎日飲みたいくらい」
「えぇー…」
エルナたんが薬湯を見詰めて苦そうな顔をする。飲んだことがあるのかな?
「これは東の島国からの輸入品なの。この薬湯は『神樹茶』と言って身体の不調を取り除いてくれるものなのよ?」
「そうなんだ?エルナたん物知りだね!」
そう言えばひと口飲んだ後から頭痛がしなくなってるし、ムカムカもどっかに行ってしまった。すごいぜ神樹茶!もうこれ回復薬てやつじゃないの?あ、でも不調が治るだけだから違うか。
「でもどうして頭が痛かったのかなぁ?う~ん…」
首をかしげて記憶を辿るけれどやっぱり途中からプツリと切れている。
「覚えてないの?」
目をぱちくりと瞬かせたエルナたんが驚いたように小首を傾げた。なので素直に桃のジュースを飲んでから記憶がないと言うと、エルナたんは瞠目して突然口元に手を当てて楽しそうに笑いだした。
「……ふふっ。ごめんなさい、なんでもないの。─そう、覚えてないのね。 あのね、昨日ラピスは間違えてお酒を飲んでしまったのよ。まぁこれは水と間違えてお酒のグラスをラピスに渡したおじさまが悪いんだけど」
「え!?お酒!?」
「そうよ。ラピスが飲んだのはちょっと度数の高いお酒だったから一気に酔いが回ったみたいで…ラピスはすぐに眠ってしまったの」
「そ、そうなんだ…」
…そうなんだ…じゃなくて!お酒!それってつまり飲酒!
エルナたんは優しいから多分これ私が酔っぱらって何かしたのを言わないでいてくれてるんだ。私絶対に何かやってる!
経験上、記憶が途中から無くなってる時は絶対に!確実に!人様に迷惑をかけてる。もう断言してもいい。私絶対になんかやらかしてる!
もしかしてエルナたんにリバースしたのか!?いや待て、まさか理性がブッ飛んでサワサワしたり…とか…あばばばばばば!!死ね!私!
「エ、エルナたん…私変なことしなかった…?」
怖いけど聞いておかなきゃ…罪の意識に耐えられない!
「何もなかったわよ?そうねぇ…私の膝に抱きついてスヤスヤ寝てたくらいかしら」
ポンポンとエルナたんが自身の太股を笑顔で叩く。
なん…だと…!?
今なんて言ったのエルナたん。
ひ ざ ま く ら!!!
ぐぁっ!!同衾イベントに続き折角の膝枕ボーナスまでも私はふいにしたと言うのか!
「ぶぇ…!え゛る゛な゛た゛ぁ~ん…!!」
「ど、どうしたの!?また頭痛いの?」
頭がイタいのは前世からDEATH!
ショックのあまり涕泣する私にエルナたんが驚く。
「あぁ!泣かないでラピス」
「ぶえぇぇ!」
せめて…せめてエルナたんの膝枕の柔らかさだけでも覚えていたかった…!
私はこの日、この朝、誓った。
二度とお酒は飲まない、と。
膝…まくらぁ……ぐす…。
お酒を飲んで記憶がない時は…な件は友人の話です笑
私はお酒全く飲めないので(´・ω・`)
誤字脱字がありましたらお知らせください(*^^*)
ブクマ&評価ありがとうございます(*´ω`*)




