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45・付与魔法

 


 夕食時、一緒に出された唐揚げに場は騒然となった。

 アー君は無言で一心不乱に食べ、伯爵様は「もうないのか!?」とマリスさんに詰め寄り、無いのがわかると公爵様のお皿に隙を狙って手を伸ばしたところをブスリとフォークで串刺しにされていた。しかも笑顔で。公爵様が怖い。


「ラピスは天才ね!初めて食べる味だけれど、こんなに美味しい食べ物は初めてだわ」

「ホント?エルナたんが喜んでくれたなら私もうれしいよー」


 マリスさんが私が作ったことを伝えると皆驚いていたけれど、エルナたんは誰より早く私を誉めてくれた。

 にこにこと上品に切り分けて唐揚げを口に運ぶエルナたんは本当に嬉しそうで。思い付きとはいえ唐揚げ作ってよかった!と私は嬉しさを噛み締める。


「エルナたん、レモンを上から搾っても美味しいよ」


 唐揚げと言えばレモンだよね~。マリスさんに目配せすると用意してあったレモンをすかさず出してくれた。


「あら、レモンを搾るとまた味に変化があるのね!」


 エルナたんとシャーロット様はレモンを絞った方もお好みらしい。男性陣はノーマルがお好みのようだ。

 マリスさんが公爵様が持ち込んだ調味料で私が味付けをしたことを伝えると、持ち込んだ側の公爵様が驚いていた。え?もしかして公爵様使い方知らないで持ってきてたの?


「いやぁ~ほら、円滑に事を進ませるために各々の特産物を買ったりしてたんだけどね、正直使い方も解らなくて困ってたんだけど、マリス君が勉強熱心だって話をジョシュアから聞いてたから、これはいけるかな~って思って」


 笑顔で言ってるけどそれって『よく解んないものだから引き取って!てへ!』って言ってるようなものじゃないだろうか…。


「けれど本当にこのカラアゲと言うのは美味しいね。何処の国の調味料なんだい?」

「東の島国、ハルヒノ国の物です」

「あぁ!あの一番謎だった調味料!」


 答えたマリスさんに公爵様が驚いてカラアゲを繁々と見詰める。へ~…アレがねぇ…と公爵様は感心している様子だ。


「お前の持ち込む謎の調味料がこんなに化けるとは…」


 伯爵様は自身の皿には無い公爵様の唐揚げを羨ましそうに眺めながら独り言のように溢す。

 待てを指示された犬のように見えて思わず笑いそうになったけどお腹に力をいれて堪えた。怒られるのヤだもん。

 すると唐揚げを食べ終えたアー君が眼をキラキラ輝かせながら私に向き直った。


「ラピス、ラピス。このカラアゲは今度いつ作ってくれるんだ?」

「マリスさんにレシピは教えたから、また作ってもらえば良いよ」

「そ、そうか…僕はラピスに作って──」

「あ!そだ!エルナたんにもレシピ渡すね!これでお屋敷でも食べられるよ!」

「嬉しいわ、ラピス。ありがとう!」

「えへへ~」


 折角唐揚げを気に入ってくれたんだから、エルナたんにもレシピを教えておかなきゃね。きっと公爵家の料理人さんも美味しい唐揚げを作ってくれるはず!


 私がエルナたんにナデナデされていると、口が半開きのまま固まっていたアー君が目の端に映った。どした?


「………アラン…不憫な子…」


 と、シャーロット様が台詞とは反対に、今にも吹き出しそうに口許をニヨニヨさせていた。なんだ?
















 夕食の後暫くして大人は晩酌、私達子供チームは各々お風呂へ。アー君がなんだか夕食の後からしょんもりしてるので「一緒にお風呂入ろー」って誘ったら物凄い勢いで怒られて逃げられてしまった。なして?


「ラピス…女の子が殿方とお風呂に入ってはダメよ」

「そうなの?」


 首をかしげた私にエルナたんは逡巡して言いにくそうに口を開く。


「えっと…異性に裸を見せて良い…のは…その、夫婦だけ、なの…」


 ほんのり頬を染めて視線を逸らしたままのエルナたんは言いにくそうに言葉をつまらせながら教えてくれた。貴族の決まりみたいなものの様だけど、平民はそう言うのは気にしない方だから普通に家族と入ってた。あ、テオとも入ったっけ。


「そっか。じゃエルナたんとは良いの?」

「! 勿論よっ」


 ぱっと笑顔で顔をあげたエルナたんの頬はやっぱりほんのり赤くて可愛くて鼻血が出そうになる。あぶね。そんな訳で今日はエルナたんとお風呂に入ることになったのだった。

 いやちょっと待て。

 私の鼻は大丈夫だろうか…。噴いたりしないかな…血を…。

 イヤイヤ、私はエルナたんが好きなのであって女の子が恋愛対象とかじゃないからね!エルナたんは私のアイドルなんだよ!つまり崇拝してるのであって決して邪な気持ちはない、断じて無い!


 その後一緒のお風呂で裸で向き合った私が跪いて天に祈ったのは言うまでもない。鼻血はかろうじて出なかった。




「ラピス、後でお父様のところへ行きましょうか」

「う?いいよぉ~」


 頭を優しく拭いて貰いながら頷く。因みに私の頭を拭いてくれているのはニィナさんだ。


 水気をすいとり終わったタオルを退けると、私の頭は鳥の巣になっていた。それを丁寧に櫛で梳かしてくれる。


「ラピスの髪はとても細いから絡みやすいのね。お手入れは大変じゃない?」

「ううん。お兄ちゃんが毎日整えてくれるから大変じゃないよ」

「お義兄様が?」


 まぁ朝から居ない日もあるんだけど、今のところ概ねスタイリングは兄の仕事だ。


「お兄ちゃんも忙しいからあんまり迷惑かけたくなくてそろそろ切ろうかな~って思ってるんだけど、その度に止められて「もっと伸ばせば良いのに」って逆の事言って来るんだよね…」


 今は肩のちょっと下くらいだけど、簡単に二つ分けで結うためにはそろそろ切るタイミングだと思う。

 毛先を指先で遊んでいるとエルナたんがニィナさんに代わって髪を梳かしてくれる。


「折角綺麗な髪なのに…勿体無いわ。いっそのこと伸ばしてみたら?」

「ん~…どうしよっかな~…」


 エルナたんのお願いなら何でも聞いてあげたいんだけど、髪が長くなればお手入れもしなきゃだし乾かすのも時間がかかる。せめてドライヤーがあればいいんだけど…。そしたらエルナたんの綺麗な髪もすぐに乾かしてあげられるのになぁ。


 前世で言うところの電化製品はこの世界じゃ【魔道具】と呼ばれてて、割りとお値段お高めだ。

 今のところドライヤーに酷似する魔道具は見たこと無いけど、一から作るとなればそれなりに資金もいる。

 それに魔道具を動かすためには魔法を【付与】しなくてはいけない。これも誰でも出来るって訳じゃなくて空間収納魔法のように適性がなくては使えない類いの術なのだ。因みに私はまだ付与魔法まで勉強が進んでいないので出来ない。


「誰か魔道具を作るのが上手な人が居れば良いのに…」

「あら、居るわよ?」

「…え?」


 ポロリしてしまった心の声にエルナたんは即答した。


「うちの領地の中に小さいけれど職人が多く集まる村があるの。そこには魔道具を専門とする職人が沢山居るわ。マルチスからもそんなに離れている訳じゃないから、帰りに寄ってもらえるようにお父様にお願いしてみましょうか?」

「え!?良いの!?」

「ええ、勿論」


 まだ解らないけど、公爵様がOK出してくれたらいいな。


「職人さんの村かぁ…どんなだろう」

「私は行ったことはないのだけど、魔道具だけじゃなくて細工師や鍛冶師とか腕の良い職人が居るらしいわ」

「ほえー、楽しみ~!」


 私の望む職人さんに出会えるといいな、とエルナたんに髪を優しく梳かれながら職人村へ思いを馳せた。




誤字脱字がありましたらお知らせください(*^^*)

ブクマ&評価ありがとうございます(///ω///)♪


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