42・兎祭り3
なんかスンゴイ勢いで囮役の皆様が帰ってきた。
結界を潜り抜け、兎だけを結界内に残して次々にゴールを決める皆さん。
お疲れ様~、と思って眺めていると何人かじゃれ合いをしている。何か「お前だけ同盟を抜けることは許さねぇ!」とか「俺達友達だろ?抜け駆けは良くないよな?」とか「俺にも紹介しろ!」とか「裏切りは許さん!」とかよく解らないことを言いながらプロレス技みたいなのをかけられている人が何人か居た。
かなり走り回ったのに、男の人って体力あるんだねー。
「全員帰ってきたかな?」
指で指しながら人数を数えると全員帰ってきているようだった。
振り返って兎も数える。
「…全部で27匹かぁ。これならいっぱい食べられるかなぁ~」
思ったよりも多くの兎が結界内に閉じ込められていた。
ん~でもお留守番してくれている皆にも食べてもらえるほど多くはないかなぁ。
後でこの前見付けた猪みたいな豚みたいな四足歩行の魔物を仕留めよう。こいつもマーキングしてあるので何処にいるかはすぐ解る。前に差し入れしたとき串焼きのお裾分けを貰ったんだけど、豚肉と牛肉の中間ぽくてジューシーで美味しかった。きっと喜んでくれるはずだ。
「よっし!それじゃ行ってくるね、エルナたん!」
「いってらっしゃい。無理しないでね」
笑顔でオテテを振ってくれるエルナたんにヤル気を再充電してもらい目隠し用の結界を出る。
捕獲用の結界の中では血塗れ兎が暴れに暴れまくっていた。閉じ込められた事にかなり怒っているようで何度も結界に飛び蹴りやらパンチなんかをしてる。
そして私の姿を目視した途端全部の兎の動きが止まった。
そしてザッと結界の隅っこに固まる。
あれ?何か怯えられてる?人を化け物みたいな目で見ないで欲しいなぁ。
「う~ん、兎に合わせてキックボクシング戦法でいこう!」
元々この兎キックボクサーみたいな戦い方するんだよね。剣も魔法もそこそこ使えるようになったし、たまには身体ひとつで戦わないと鈍っちゃうし。やってみよー。
閉じ込め用の結界に入ってなんとなぁ~く覚えてるボクサーっぽいポーズをとる。
頭の中でカーン!とゴングが響いた気がした。
「よし、しゅ~りょ~!」
所詮ペラペラ知識ですとも、ハイ。
覚悟を決めた兎達が飛び掛かってきて最初はカッコ良くボクサーっぽい感じでやってたんだけど、途中で飽きた。
やっぱダメだね~。TVで見てただけじゃ構えも何か様になんない。
なのでもういいや!ってなっていつもの感じでボコボコにして終わった。
「みんな~!終わったよぉ~!持って帰るの手伝ってね~!」
結界の外でこっちを呆然と眺めていた兵士の皆さんに声をかける。あんなにじゃれ合ってたのにいつの間にか静かになってた。気が付かなかったよ。
呆然としたままのそのそとやって来た兵士の皆さんは手慣れた感じでその場に穴を掘り兎の血抜きを始めた。穴に血を流したら埋めておかないと血の臭いに釣られて他の魔物が寄って来るので危ないのだ。
「…?」
黙々と作業を続ける兵士の皆さんは何か全員が悟りを開いたような穏やかな…と言うか完全に無になってるような…。どうしたんだろ?疲れちゃったのかな?
「俺…色々ナメてたよ…」
「だな…」
「俺達なんてノミみたいなもんなんだよ…」
「ノミが彼女とか…生意気言ってすみません…」
「誰か…俺も穴に埋めてくれ…」
何かブツブツ言いながら作業してるからちょっと怖いけど、淀みなく作業は進んでるし気にしないでおこう。
「エルナたん!いっぱい捕れたよ~!」
手を振りながらエルナたんの所へ走った。笑顔で手を振り返してくれるエルナたんとは打って変わって、テオもギヴソンさんも苦笑いしている。
「お疲れ様、ラピス」
「えへへ~頑張ったよ!これでお肉も食べられるし、毛皮も捕れるね!冬はぬくぬくだよー」
ふふふ。これでエルナたんを冬場ヌクヌクにしてあげられるぜ。
この世界の冬場はすんごく寒いから防寒は大事なのだよ。毛皮、大事。ここが日本なら確実に某団体に名指しでフルボッコにされそうだけども…。
魔物は放っておくとどんどん数が増えるからこの世界じゃどれだけ狩っても誰にも何にも言われないし、前世のように諭吉がブッ飛ぶ値段でもないので庶民にも手が出しやすいため売りに出すと感謝されたりもするのだ。前回の兎の毛皮の件は知らなくてマリスさんに勝手に売られちゃったけど。
今回狩りに参加してくれた人は肉が目当てなので、私は肉と毛皮、兵士の皆さんは肉、と決めてある。後々喧嘩にならないように皆でちゃんと分けるように最初に話し合ったからね。
毛皮の加工は伯爵様が職人さんを手配してくれるって言ってたし、後はお任せしようと思う。さすがに私みたいな幼女が職人さんにお願いしますとは言えない。確実に変な目で見られそうだもん。
ともあれ作業は順調に進み兎を皆で持って帰ってきた。
伯爵様が若干白目だったけど、美味しいお肉を食べられるからきっとトリップしちゃったんだね。わかるよ~。
お肉の解体や仕込みは一旦軍の皆に任せて、私はもう一度ひとりで森に入った。足らない分のお肉の補充に猪みたいな豚みたいな魔物を狩るためだ。
大きさは前世の牛の五倍…弱くらいの大きさだから皆の口にも行き渡るだろう。
そして二頭仕留めたところで思い出す。
「…運搬のこと忘れてた」
私の空間収納魔法がいくらでも入るとはいえ、それは私と伯爵様ふたりの秘密だ。なのでこの魔物を収納しても皆の前では出せない。
「困った…」
仕方無い…引き摺って帰るか…と二頭の足を掴んだ瞬間、同種の猪みたいな豚が現れてピコン!と閃いた。マーキングしてない個体だったので驚いたけど、なんと言う僥倖。
「ふへへへ…」
ニヤニヤと頬を緩ませる私とは逆に向こうは地面を掻き今にもかかってきそうな勢いだ。
そしてジリ…と私が土を踏み締めたのを口火に凄い勢いで突進してくる。
さぁ、かかってくるがいい!お肉ちゃん!
◆◆◆◆◆
自分を過大評価してた訳じゃない。
けどまぁソコソコ戦えるんじゃないかなぁ~?と言うくらいには日々の訓練で鍛えられているのでほんの少しは自信があった。
だが今目の前で行われている戦闘を目にしたら過去の自分を殴って「調子に乗るんじゃねぇ!!」と怒鳴り散らしたくなった。過去の俺、めっちゃ恥ずかしい奴だよ!!
「せいやぁ!!」
「てい!」
「とりゃ!!」
「必殺!ヤ○ザキック!!…あれ?これって必殺だっけ?ま、いいや!そぉい!!」
血塗れ兎を引き連れ見事にゴールを果たした俺達の前では今まさに、兎隊長ことネームレスによるバトルが繰り広げられていた。いや、もう一方的に兎がサンドバッグだ。
素手で見たことの無い構えをした兎隊長は次々に血塗れ兎を仕留めて行く。…しかもワンパンで。
血塗れ兎とほぼ同じくらいの身長なのであれを魔物だと知らない者から見れば、幼い幼女が兎と戯れている微笑ましい風景に見えたかもしれない。
俺は悟った。
自分、ノミ並だな。と。
これからはもっと身を入れて訓練に励もう。と。
その後、演習場に兎を運び込み手分けして作業に当たっていると、森の中でズコン!だとかバキャッ!だとか何かが破壊される凄い音と共に地響きと魔物の叫び声が響いた。
魔物の襲来か!?と俄に辺りの空気が張り詰める。
しかし演習場の入り口でその轟音がピタリと止む。
そして入り口からピョコっと兎隊長が顔を覗かせ、俺と目が合うと手を振って可愛らしく「ショーンさん手伝って~!」と手招き。
扉の向こうに何があるか等全く知らずに、気構えもせずに俺は向かった。
そして積まれた大型の魔物ボロアード3体を見て改めて俺は心に誓った。
─この子を敵に回すのはよそう。…と。
この寒波様がいらしてる時に自宅のブレーカーがぶっ壊れて初めて電気を使わない一日を過ごしました…電気って偉大!泣
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