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39・失敗は成功のもと…になればいいな

 


「エルナたん、これ、お兄ちゃんから」

「まぁぁ!」


 エルナたんはパァァ!と笑顔を輝かせ受け取った大きな封筒を胸にぎゅっと抱き締めた。

 私自ら私の観察日記を渡さなくてはならないとは…。本当は破り捨てたいところだけど、エルナたんが喜んでいるので複雑ではあるけれどまぁいいか…。

 件の兄は今日は朝からお手伝いで家には居ない。なので私が頼まれた、と言うわけだった。

 どうか兄が変なことを書いていませんように、と祈るしかない。


「今日もこのあと伯爵様のおうちに行くの?」

「ええそうよ。ラピスも一緒に行きましょう?」

「いいの?」

「勿論よ」


 噴水の縁に並んで腰掛け、私は近況を掻い摘んで話した。兎の事や空間収納魔法の事など、この二ヶ月で覚えた魔法や伯爵様に怒られた事なんかを面白おかしくエルナたんに話す。エルナたんは終始笑顔で驚いたり頷いたりと神対応で接してくれた。天使かよ…!


「空間収納魔法まで覚えたのね。凄いわ!」

「えへへ~。兎がね美味しかったの。エルナたんに食べて欲しくて、保存できるように覚えたの!」

「ありがとう、ラピス」


 背後で「え、そんな理由で覚えたの…?」とテオが溢す。聞こえてんぞ。


「…?あれ?エルナたんのオテテ、豆ができてる…。痛くない?」


 ふと、ちらりと見えたエルナたんの天使のオテテに見慣れないものが出来ていた。

 いつも綺麗にお手入れされているのに、掌にいくつか豆が出来ている。赤くなってて痛そうに見えた。


「ぁ…!えっと…これはいいの、これは」


 今すぐにでも治してあげたかったけれど、エルナたんはサッと掌を隠し、ぎこちなく笑って誤魔化そうとしている。

 その表情が何だか照れ臭そうな感じだったので、きっと悪いことじゃないと判断して追求は止めることにした。あまりしつこいと嫌われちゃうもんね…。


「? そう?痛かったら言ってね」

「ええ、ありがとう」


 私のオテテはいっつもエルナたんの為に空けてあるからね。治癒魔法はおまかせなのだよ。



 暫くすると執事のロートベルさんが出発のお知らせに来た。エルナたんと公爵様は馬車に乗り込み先に街を出る。私は普段着だったので一度家に帰り準備を整えてから後から追いかけることになった。


 空間収納魔法を覚えてからはリュックは背負わなくなったので背中には別のものを背負っている。


「ふへへ」


 背中の物を見てニヤッと頬が緩む。

 実は先日、伯爵様のところで暴れていた時ついに私の愛剣がポッキリと折れてしまったのだ。まぁ正しくは父の物だけど。

 長い間苦楽を共にした短剣君が天に召された瞬間、不覚にも泣いてしまった。兵士の皆は驚きオロオロし、おかしな踊りで泣き止ませようとしていた時に伯爵様登場。号泣しながら剣が折れた事を伝えると何と伯爵様が新しい剣をくれることになった。それがこの新しい剣だ。


 以前の物より剣身が少しだけ長くて、短剣は短剣なんだろうけど私が腰に差すにはちょっと邪魔だったので背中に背負うことになった。帯剣用のベルトも伯爵様が私用に特別に誂えてくれた物で、ベルトじゃなくてジャケットタイプ。なので防具の役目も果たしてくれる優れものだ。伯爵様太っ腹!


「お父さん、お母さん、いってきまーす!」

「気を付けてね~お土産待ってるわよ~」


 母は以前私が持ち帰った兎肉が大変お気に召したようで、たまに何気なく催促してくるようになった。まぁ美味しかったもんね。久しぶりに帰りに一匹仕留めて帰ろう。


「ラピス!変態には容赦するんじゃないぞ!」


 ん?父の事かな?


「はいはい、パパの事は良いから気を付けていってらっしゃい」

「はーい!」


 暑苦しそうに抱き締めようとする父を避けていると、母が背後からトレイで父の脳天をしばいて黙らせた。母つおい。



 家を出てそこそこブッ飛ばして走るとあっという間に公爵様の馬車に追い付いた。


 馬車の前後左右は馬に乗った護衛の人が囲んでいる状態だ。後ろから見て馬車の左にテオの後ろ姿が見える。

 勢いを付けたまま高くジャンプして馬に跨がるテオの前にシュポンと収まった。一瞬驚いた顔をしたテオが「早かったね」と座りやすいように座布団的な何かを敷いてくれる。遠慮せずにその上に、と言うかテオの足の間に座った。


「落ちないようにね」

「大丈夫!その時はテオも道連れだから!」

「えぇ…やめてよー」


 テオが苦笑を溢すと馬車の小窓が開いてエルナたんが顔を覗かせる。


「さすがラピス。早かったのね」


 にこりと微笑んで馬車の中にいらっしゃいとお誘いを受けたけど、ここは護衛として泣く泣くお断りさせていただいた。

 だって後々はそう言う立ち位置になるわけだし、あまりべったりと甘えるのもいけないと思ったからだ。

 エルナたんはとても寂しそうな顔をしたけれど、理由を話さなくても察してくれたのか、じゃぁこのままお話ししながら行きましょう、と小窓を開けたまま伯爵様の領地に向かうことになった。


 途中、馬車を停めて昼食を取り和やかに伯爵様の領地へと向かう。今度はギヴソンさんの前に乗せてもらった。気になっていたレニのその後や、公爵領での美味しい食べ物やお店を聞いたりして進む。時間にして三時間以上は進んだ頃、やっと伯爵様の領地に入った。


 なだらかな丘陵地を越えた先に伯爵様のお屋敷と、併設された軍の寮と演習場等が見えて来た。お屋敷を中心に広がる森は魔物ではない普通の動物も暮らしている。けれど魔の森が近いせいで魔物もたまにウロウロしていたりするのでそれを片付けるのも軍のお仕事らしい。

 そんな普通の森にぽっかりと不自然な山禿げ地帯が…。


「……」


 遠くから見ると改めてアホな事をしてしまったなと猛省でございます。ホントにごめんなさい伯爵様…。


「あれはなにかしら?」

「地滑り的な何か…では…。いやしかし平地ですね…」


 声をかけられたギヴソンさんが首をかしげて山禿げを見ていた。テオが何か言いたげな顔をして私を見て来る。


「………アレ」

「ち、違わい!!私じゃないもん!」


 スッと指差して何か口にしそうになったテオに思わず咄嗟に言い返してしまった。


「まだ何も言ってないんだけど」

「はうぅ!」


 墓穴を掘ったことに気が付いて顔を顰める。そんな私を見てエルナたんは驚いた顔で山禿げを指差した。


「…アレはラピスが作ったの?」

「……ごめんなしゃ…魔法しっぱいしちゃっ─」

「凄いわねラピス!綺麗にまっ平らじゃないの!この地は森が多いから開墾するのもとても大変だと聞いているわ。あれなら直ぐにでも新しい演習場が作れるんじゃないかしら?この間おじさまが『演習場が手狭になってきた』って言っていたもの!」


 エルナたんは私の言葉を最後まで聞くことなく「凄い!」「偉い!」と何度も誉めてくれた。

 アホな私はその言葉にどんどんお鼻が天を向いて伸びていき、仕舞いには「えへ…えへへへ~」と満更でもない気持ち悪い照れ笑いをしてテオにチョップされたのだった。

 失敗は成功のもとって言うじゃんか!


 私誉められると伸びる子なのに。テオ許すまじ。



誤字脱字がありましたらお知らせください(*^^*)

ブクマ&評価ありがとうございます(///ω///)♪



今年の更新は今日で最後です。

まだこのお話を書き始めて2ヶ月経ってませんが、沢山の方が読んでくださって書くのがとても楽しかったです(*´ω`*)

来年も更新頑張りますのでよろしくお願いいたします(*゜∀゜)=3

来年こそはラブを…!笑

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