3・やっぱやめる
「ラピスはエルディアナ様を守りたくて騎士になりたいんだろう?だったら騎士になったら一緒にいられないんじゃないか?」
「!!」
家族揃っての10時のティータイム。
父の言葉に私はあんぐりと口を開いたままショックに固まった。
「─な、なんで!?」
「いやだって…騎士になるってことは国に仕えることになるだろう。国のために働くって事だから、簡単に言えば王様を守るお仕事だ」
「そうねぇ。それだとラピスはお城にお勤めするわけだから、エルディアナ様とは一緒に居られないわねぇ」
そ、そんにゃ…!!!?
頭の中で出来上がっていた未来予想図。『格好良く騎士になってカッコイイ軍服(妄想)を纏い、美しく成長したエルナたんの少し後ろでキリッと佇む自分』の妄想スチルがガラガラと音を立てて崩れて行く。
いや待てよ?
「やっぱやめる!ラピス騎士にはならない!」
考えてみれば別に騎士でなくてもエルナたんを守れるじゃないか。騎士に拘りすぎてたわ。
「─ほら見なよ、子供なんて一日で夢が変わるもんなんだから」
「ロイの言う通りだな…」
父と兄が小声で何やら言ってるけど、聞こえてるかんな。
「ならラピスは大きくなったら何になりたいのかしら?」
「う~ん、まだわかんないや」
「そう」
そう言って母は私の頭を優しく撫でた。
いつも午後は外で遊び回るんだけど、今日は部屋のベッドの上でごろ寝である。
だって考えなきゃいけないことが沢山あるんだもん。
─しかし、騎士が駄目ならどうしよう?
強くなるなら騎士を目指すのが手っ取り早いかと思ってたんだけどなぁ。
あ!そうだ。魔法使い!この世界には魔法が存在するはず。魔法使いを目指すのも良いかもしれない。
「いや、ちょっと待てよ…?」
この世界では毎年お誕生日を祝うのは貴族だけで、平民は5の倍数の年齢になった時だけお祝いする。その時に教会で女神様からの祝福をいただく。5歳の初めての祝福の儀で魔力の有無を確認するのだけど、私にとっては二ヶ月前の出来事だ。
あれ…?あの時確か私の魔力って…。
『あ~…魔力、ありますね。……豆粒くらい』
「MA・MEッ!!」
人の良さそうな神父様が生暖かい眼差しで見てきたことを思い出した。誰が豆じゃい。
「あ!そうだ!」
私は小説の中で出てきたとある事を思い出して半身を起こす。
確か教会には庶民が自由に閲覧できる図書室があるはず。其処には魔法に関する本も有るって書いてあった。
何故そんな事が小説に書かれていたのかと言うと、近い将来現れるであろうクソ女マリエルが庶民出だからだ。あのクソ女、こともあろうに私の愛しのエルナたんを何度も何度もバッドエンディングへ導くアバズレクソビッチ尻軽泥棒猫なのだ!
おっと…マリエルの事を思い出して血圧が上がっちゃったぜ。ヒッヒッフー。ヒッヒッフー。
まあゴミの事はともかく、そんな理由から庶民の暮らしもそれとなく小説の中に書かれていたのだ。あの女も教会の魔導書を読んで勉強して魔力を上げたって書いてあったもんね!
「今は豆粒でもこれからいっぱい努力すればきっと魔力だって増えるはず!」
そうと決めたからにはすぐに教会に突撃だー!
「おぉ~広ぉ~い…」
協会の中の図書室は前世の学校の教室位の広さで吹き抜けで二階があった。
私のほかに人は居ないみたいで貸切状態だ。
目的の魔導書が並ぶ棚の前に踏み台を置き、上から順番に手に取り読んで行く。小さい頃から兄に文字は教えてもらっていたので、難しい言い回し以外の単語は難なく読めた。
「【魔導入門】…なんと言うベタな…」
私はまだ魔法が使えないので入門書からと考えたのだけど、わたしが知りたいのは魔力の向上。今は豆粒でもせめてリンゴくらいには大きくしたい。
「えっと…『魔力を身体中に巡らせるイメージで…身体の中心に留まらせて行き…流れ出ないように塞き止める。繰り返すことで少しずつ魔力量は増えてゆく。尚…個人差有り…』か」
身体の中心て心臓の事かな?身体の中を巡らせるってことは血管とか想像してやれば良いってこと?
取り敢えずそのイメージでやってみよう。
私は踏み台から降りて誰も居ない静かな図書室で座禅を組んだ。
「ふぅ~…」
一度深呼吸をして身体から余計な力を抜く。そして雑念を払い余計なことは考えずにさっきの考えをイメージして魔力を巡らせてゆく。
実は前世で何に影響されたのか座禅にハマっていた。多分胸の奥の不治の病が「いつか何かに目覚めるかもしれない!」とか思っていたんだろうな…。イテテテ。
「……ん?何か全身がポカポカする?あれ?もしかして成功?」
ほんの数分座禅を組んだだけなのに、まるで有酸素運動をしたように身体がポカポカしていた。残念ながら魔力は目に見えないので確認のしようがないけど。
よし、取り敢えず何かひとつ簡単に目に見える魔法を覚えて毎日計測していこう。
私は魔導入門に書かれていたのだ初級の火魔法を覚えることにした。
「うわぁ…」
今の「うわぁ…」は引いてるときのやつだ。感動してるときのじゃない。
だって!この世界の魔法って言葉に魔力をのせて発動させるやつなんだもの!イヤぁ!中二病も顔面から火が出るよコレ!
しかも人によってオリジナルの言葉を使うのが強さの証なんですってよ…お嬢さん。マジか。
いくらなんでも恥ずかしいんですけど!眠ってる中二病だって赤面ものだよ!
「ひぇぇ…と、取り敢えず原理だけ覚えて呪文は恥ずかしくないのを作ろう…」
もうさ、『火よ』くらいでいいんじゃないのコレ?
そんなことを考えながら本を読み耽っていると、いつの間にか窓から射し込む光がオレンジ色になっていることに気が付いたので家に帰ることにした。本は持ち出し禁止なので今度は何か書き写すものを持ってこよっと。
「──とは言え、身体作りは必要だよね!」
今日から身体も鍛えることにしよう。
家に帰った私は自分の部屋で腕立て伏せ、腹筋、背筋、スクワット等々思い付く限りの運動を始めた。
「全部100回づつとランニング10㎞を毎日休まず一年間続ければヒーローになれるって何かで見た気がするし、がんばるぞー!オー!」
私は汗だくになりながら運動した。結果うるさいと家族に叱られた。解せぬ。
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