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35・やっぱり、うさぎ美味し!

 


 夕暮れに街が染まる頃、私は家に着いた。

 頭の中は兎肉の事で一杯だったので、裏口から入ると母に直ぐに肉を渡した。母はものすごく喜んでいた。今夜のご飯は大変素晴らしいものになるだろう、とワクワクとニヤニヤで私の顔面がおかしい事になっている。


「ふへへ~」


 談話室に繋がる扉を開くと燃え尽きた屍が一体椅子に座ったまま天を仰いでいた。今にも砂塵になりそうな感じだ。

 その斜め向かいにゲンナリした様子のテオが腰掛けている。

 お気の毒に…。お買い物で酷使されたようだね。


「おかえり…ラピスは元気そうだね…」


 今にも魂が抜けていきそうな感じでテオは机に突っ伏す。


「うん、元気だよ~。今日は美味しい兎食べたからね!」

「兎…?」

「そ、伯爵様のお屋敷に行く途中で襲ってきたから。血塗れ兎って皆言ってたけど、名前はともかくすごい美味しかったよ~!」

「「え!?血塗れ兎!?」」


 二人が息を吹き返したように同時に立ち上がる。

 そして二人は心底羨ましそうに「いいなぁ~」と何度も唸った。

 どうやらあの兎、大変珍味で滅多に食べられない高級兎らしい。そんなに珍味ならマーキングしといて正解だったなぁ。奴の肉はいつでも食べられる。


「そんなに食べたいなら討伐で入手すればいいのに」

「残念だけど、あの兎は最低でも10人で囲んで逃げ場をなくしてから討伐するんだ。だから仕留められても入手できる肉の量はわずか…なんだよ」

「て、ラピスもしかしてひとりで仕留めたの?」

「うん。伯爵様のところでお料理してもらって皆で食べたよ」

「そう…なんだ…」


 ショッピングでお疲れのギヴソンさんは更に気落ちしたようすでがっくりと肩を落とした。

 そんなに落ち込まれるとなんだか可哀想に思えてきたじゃないか。

 だが今夜の肉はやらぬ。あれは家族に食べさせるお土産だからね。ケチで結構!


「それなら次に公爵様とエルナたんが視察に来るとき護衛でふたりくっついて来なよ! エルナたんに食べさせてあげたいから血塗れ兎を一匹マーキングしてあるんだぁ~。後2、3匹見付けてマーキングしておくから、帰るときに半殺しにして持って帰れば良いよ!」

「笑顔で半殺しって…相変わらずエグいね、ラピスは…」

「悪意が無い所がまた怖いな…」


 なんだよぅ。こっちは親切心で提案してるのに酷くない?


「そんなこと言うなら兎あげないからね…」


 思わずジト目で睨む。

 別に良いんだよ?全部エルナたんにあげても。


「いやーさすがはラピスだね!ひとりで血塗れ兎を仕留めるなんて!俺にはまだ無理かな~やっぱりラピスは凄いな~」

「私なんかひとりで討伐なんて夢のまた夢だよ!きっとサンドバッグにされてしまうね!ハハハ!」

「………わざとらしいよ、ふたりとも」


 途端に私を誉めちぎり出したので益々ジト目になる。

 まぁそこまでしてでも食べたいって気持ちはわかるけども。


「あ、そだ。テオとギヴソンさんは空間収納魔法は使えないの?半殺しだと荷物になるでしょ?味も落ちるだろうし…」


 見た目ただのはデカイ兎だけど一応は魔物の部類だからもしかすると居住区には持ち込めない可能性もある。それならいっそ肉塊にして空間収納魔法で運んだ方が良いと思うんだけどなぁ。


「う~ん、私は魔力自体がほぼ無いからね…」

「俺も、魔力はまぁ…あるんだけど、空間収納魔法の使い方は知らないんだよ」

「そうなんだ」


 空間収納魔法は王立魔法学園の最終学年に習うって言ってたしなぁ。私は特例でエルナたんに付いて学園に通うけど、普通の平民なら教会で習う一定の学習能力を身に付けられれば及第点なんだよね。平民にとって文字の読み書きと簡単な計算が出来れば生きていくに困ることがないから。

 教会で教えてもらう魔法も日常生活で使う明かりを灯す魔法や小さな火種を起こす魔法くらいだから、学園で習う魔法とレベルが違うんだろうな。

 自分にとって都合の良い魔法は覚えてるけど、「これはイラネ」と思った魔法はスルーしてるからなぁ…学園の勉強についていけるか今から既に不安だ…。


「…そう言えば公爵様の所の執事さん…確かロートベルさん…だっけ?この間の視察の時空間収納魔法使ってたよ」


 ふと思い出したようにテオが口にした。

 私は見てないけどテオは使っているところを見たようだ。


「おぉ!じゃお願いしてお肉入れてもらえば良いんじゃない?良かったね、テオ、ギヴソンさん!光が見えたよ!」

「そうだな!ロートベル殿の空間収納魔法に空きがあることを祈ろう」


 ギヴソンさんの顔がワクワクしてる。精悍だと思っていたギヴソンさんだけど案外少年ぽく笑うんだなぁ。まぁ男はいつまでたっても少年って言ってた人もいるし、そんなものなのかも。


 ふたりともワクワクしてさっきまでの生きた屍状態から脱したようだ。


「うわぁ~今から楽しみだよ。あ、そうだ。良かったら討伐に俺も連れていってよ。ラピスの雄姿見たいから」

「良いよ!けど、テオも手伝ってよね」

「了解」


 そんな訳でテオと約束した。

 まぁ私の兎狩りなんてサッとしてギュッとしてポキッだから見応えはないかもだけど。





 その日の夕御飯はお昼に食べた兎の香草焼きと私の大好きな兎肉入りクリームシチューだった。

 両親も兄も大変喜んでいた。そりゃそうだろう、上物だぜ…?ふへへ。

 取り敢えず死ぬほど美味しかったと記録しておこう。


 因みにうちの宿屋、食事は付いてない。その代わりに左隣で食堂を経営している若夫婦がうちと相互協力してくれているのでご飯がお安く食べられる。逆に食堂で食事して宿を紹介してくれるならうちの宿泊費も安くなる、と言う感じだ。


 お腹をぽっこりさせながら部屋へ戻る。ウエストがはち切れそうだぜ…。


「さてと、長靴の仕上げしなきゃ」


 私はエルナたん用の長靴のために買っておいたベリーピンクのリボンを蝶々結びにして縁に飾り付けた。

 余談だがスライム粘土はほんのちょっとだけ水を混ぜるとボンド代わりにもなる。便利なやつだよ…スライム。

 粘土よりも乾くのが早いから明日には乾くはずだ。


「エルナたん、喜んでくれるかなぁ~」


 薄いピンクの長靴を眺めながら頬杖を着いてグフグフ笑う。

 まだまだエルナたんに会えるのは先なのでちょっと寂しいけど我慢我慢。

 会えない日々が愛を育てるんだぜ!オタクってそんなものだからね!





誤字報告ありがとうございます!(*´ω`*)

何か聞いた話ですが誤字報告するとキレる人もいるみたいですが、私はドンと来い!なので遠慮しないでバシバシご報告下さい( • ̀ω•́ )✧


誤字脱字がありましたらお知らせください(*^^*)

ブクマ&評価ありがとうございます!(*´ω`*)


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