34・空間収納魔法2
なぜに肉なんだ…と頭痛が痛いみたいな笑える感じで伯爵様の眉間に皺が寄る。嘘ですごめんなさい、ちゃんと反省してます。
早速渡された魔導書を開こうとしてニィナさんと伯爵様の執事さんが昼食の用意が出来たことを知らせに来てくれた。
伯爵様はまだ何か言い足りなさそうな顔をしていたけど、シャーロット様が宥めるとご機嫌も直ってしまった。なんと言う単じゅ…いや、愛の力だね!ぷふ。
「ふおぉぉ…!!」
ほわん…と香草の言い香りが目の前から立ち上る。
めちゃくちゃ言い香りがするよっ。過去現在と食べたどの肉料理よりいい香りがする!
さすがマリスさん!良い仕事してるな~。
肉を前に期待で一杯になって居ると伯爵様が笑顔をひくつかせながら肉を指差した。
「おい、まさかこれ…」
「?」
アー君は頭にハテナを浮かべながらもお肉が気になるのかチラチラと視線を寄越している。
「えーと、確か【血塗れ兎】…だっけ?今朝仕留めたのをお土産に持ってきました!」
ふふん!どや!美味しいお肉のお土産だぞ!と胸を張る。
丸々してたからなぁ。油もほどよく乗ってるし、とっても美味しそうだ。
伯爵様は組んだ手の上に額を乗せて深ぁく溜め息を吐いた。こんなに美味しそうなお肉の前で溜め息だなんて…兎に謝れ。
「まぁまぁ、難しいお話は後にしませんか?折角ラピスちゃんがお土産に獲ってきてくれたんだもの。冷めない内にいただきましょう」
複雑な表情をしている伯爵様はほっといて、シャーロット様とアー君はナイフをお肉に滑らせた。とたんに広がる香りにシャーロット様もアー君も口角が上がっている。
私も子供用のナイフとフォークでお肉に手をつけた。
一口大に切ったお肉を口に入れる。臭みのない油に柔らかいお肉。淡白だけど香草が兎のお肉を引き立てていた。正直ベラボーにウマイ!
「おいひぃ~!」
「本当に…すごく美味しいわ」
「…!」
アー君に至ってはもはや言葉も出ないのか無言でお肉を頬張っている。フッ…たんとお食べよ。
「あの兎こんなに美味しいのかぁ…兎狩りでもしようかなぁ」
余りの美味しさにぽろりと溢した言葉にガバッと顔を上げた伯爵様は必死に口パクで「ヤ・メ・ロ!」と言ってきた。
なんでだよぉ。別に良いじゃん。兎ってネズミ並みの繁殖力じゃなかったっけ?ダメなの?
後で知ったけど、ネズミ系や兎系の魔物は産まれたときから生存競争にさらされるから、一回の出産で生き残る確率は20匹中1匹居るか居ないかくらいの確率らしい。
つまり産まれ出たその瞬間に回りの兄弟は食い物…って事か。怖いよー。
確かそんな感じで赤ちゃんの時兄弟を喰いまくる虫とか居たような気がするけど怖いから考えないようにしよう…。
とまぁ、そんなこんなで美味しい兎肉は私の腹に納まった。
また食べたい。と言うかエルナたんにも食べさせてあげたい。これは次の逢瀬に合わせて兎を狩るしかあるまいよ…。
兎達よ待っているが良い…ふへへへ。
「おい、何を物騒な顔をしてるんだ」
「あうち!」
伯爵様にスコンと頭を軽くチョップされた。痛くないけど取り敢えず叫んでしまうのが日本人だよね。
昼食の後、私は伯爵様と一緒に図書室に戻ってきていた。
「なんだ、「あうち!」って…まぁそれよりも。 午後は少し時間が取れたから、俺が直々に空間収納魔法を教えてやろう」
「えー…別にひとりで良いのに…」
ブー垂れると伯爵様の蟀谷がピクリと引き攣った。
そして再び笑顔でほっぺをムチムチノビノビの刑。
「お前は目を離すと何を仕出かすか解らん、と言う事が判明したからな。これからは監視を置くことにしようと思う異論は認めない」
「あぅ…あい」
ずばっと言い切られてしまっては私も返す言葉がない。まぁそもそも他所のお宅だもんね。勝手した私が悪いんだけどさ。
けど、私のほっぺが伸びたら責任とってもらうからな。
「ところで伯爵様は空間収納魔法に何入れてるんですか?」
「……さて、始めるか。先ずは…」
「イヤらしい物が入ってても男の人なら仕方無いってシャーロット様が言ってました!」
「ちっがう!!てかシャーロット!何教えてるんだ…!」
伯爵様は両手で顔を覆ってしゃがみこんでしまった。ナルホロ…やっぱりイヤらしい物か!
と思ったら何と伯爵様の空間収納魔法の中には、学生時代にシャーロット様と交わしたお手紙が入っているらしい。顔を真っ赤にしながら「誰にも…マーガレットにも言うんじゃないぞ!」と念を圧されてしまった。
なんだ…イヤらしい物じゃないのか。つまらん。
「ごほん…では講義を始めるぞー」
「はーい!」
気を取り直してわざとらしい咳払いの後伯爵様は言葉通りちゃんと私に空間収納魔法の原理を教えてくれた。
脳筋だと今までバカにしててごめんなさい。大変分かりやすかったです。
「ちなみに空間収納魔法の体積だが、当然他人には解らない。魔法を行使する当人だけがその大きさを知ることが出来る。俺は隠すほどの物でもないから家族の他にも知っている者は多いぞ。只これは自己申告だからな。大を小だと偽る者も居ればその逆もまた然り、だ」
伯爵様の話だと知る限りでは精々リンゴ箱ふたつ分が最大のようだ。リンゴ箱ふたつ分もあれば兎が5匹は入るじゃんか。羨ましい。せめてリンゴ箱ひとつ分は欲しい…!
「先ずはこの魔方陣を暗記しろ」
伯爵様は開いたままの魔導書を私に向かって差し出した。
複雑な文字が魔方陣の回りをぐるっと囲っていて、更に魔方陣の中には3つの違う形の魔方陣が描かれている。それぞれの魔方陣の役割が違っているが、中に描かれている物の文字は私達が普段使う文字と同じだ。けれど一番外側の魔方陣の文字は見たことがない物だった。
「…見たことない無い文字だから時間がかかりそう…」
ゲンナリとした様子で呟けば伯爵様が種類の違う本を一冊差し出してきた。開くと中はその見たことの無い複雑な文字の解読書のようなもので、読み仮名まで振ってくれていて読みやすい。
「これは神代…つまり神の時代に使われていた文字らしい。つっても誰もそんな大昔に生きてた人間なんて今は存在しない。後生の人間が作った物だとも言われてるな」
「ほへ~…」
「この魔方陣は異界に箱を置く許可を貰うための物だ。間違えずに丸暗記しろよ」
「はーい!」
さすがに一日では丸暗記出来なさそうなので、伯爵様にお願いして魔導書を借りることになった。
私はその魔導書をリュックに詰めて帰り支度を整える。
そこへマリスさんがやって来てあの兎のお肉を渡してくれた。お昼に食べた香草焼きの分と生のままの分だ。香草焼きの方は火を通すだけで良いらしい。あのお昼に食べたお肉の味に思わず涎が出そうになる。
魔法で作った氷の器に入れてくれているので道中傷むことはなさそうで至れり尽くせりで安心だ。
ありがとうマリスさん!早くお嫁さん見つかると良いね!
持ってきたお土産を更にお土産として持って帰ることになったけど、まぁいいか。
美味しいお肉を家族で食べられるのは嬉しい。皆喜んでくれるはずだ。
鼻唄混じりで私は帰路に着く。
途中またしてもラッキーなことに件の兎を発見したのでしっかりマーキングしておいた。
「クックックッ…次はお前の番だぜ」
ニヤリと笑うと血塗れ兎は顔色を変えてまさに脱兎のごとく逃げ出した。失敬な兎だ。
妻ラブラブな伯爵様でした…笑
ちなみにシャーロットはその事に気が付いてます(ФωФ)
誤字脱字がありましたらお知らせください(*^^*)
ブクマ&評価ありがとうございます!(*´ω`*)




