30・ラピス式魔力増量法
男達は頭を悩ませていた。
何故ならば彼女のコードネームが相応しくない…いや、それ相応ではないと思い知ったからだ。
見謝っていたのだ、彼女の本質を。
「よって、諸君達には新たなネームを考案してもらいたい」
「フッ…奴は我々の遥か上を文字通り走っているからな…【天駆ける─】」
「却下だ」
「………では【破滅の─】」
「却下」
「はい!【幼女─】」
「アカーーーン!!」
「………そ、そもそも我らが名前を付けるのもアレじゃないっスか…?」
「アレとはなんだ?」
「いやだって我々が束になっても敵わないっスよ?そのうち「てへ☆ドラゴン狩っちゃった♪」とか言い出すのも最早時間の問題だと思うっス!」
「……………」
静まり返る室内。
ゴクリと息を飲む音だけが小さく聞こえた。
「であれば、これからはなんと呼ぶ…?」
「ヘタに名前なんて付けると斜め上の事やってくれるからな…」
「もう名前を付けちゃ駄目な子っスね…」
「──【名を付けてはならぬ者】と言うのはどうだろうか?」
「おぉ!何かカッケー!!」
「良いな!まさにその通り相応しい名だ!」
「よし!!これからは【うさぎ】改め【ネームレス】と改名する!!」
うおおおぉー!!
全会一致した部屋で拍手と雄叫びが上がった。
通りかかった部屋の中でそんな話がされているなど露知らず。
「なんだあれ」
謎の団結力にドン引きしながらその部屋の前を通りすぎた。
いやそんなことよりもお昼ご飯が楽しみである!お肉!
持ち込んだ兎があの【血塗れ兎】だとは知らなかったけど、美味しいお肉の前にはそんなことは些末な事だ。
あの【血塗れ兎】だけど、よく肥えていて上等なお肉だとマリスさんが言ってた。…まぁドン引きされてたけどそんな小さな事は気にしないのだよ!
この世界の魔物はよくあるファンタジー小説のように人間を食べない。襲う事はあっても食べないのだ。どうやら人間は雑多で魔物にとっては不味いらしい。
じゃぁ何を食べるかと言うと、所謂【共喰い】だ。魔物は魔物が主食で、後は野生の動物と同じで木ノ実や草木を食べるのだとか。なので正直美味しい、とマリスさんは教えてくれた。
人間を食べる魔物は流石に食べたくない。間接的に人間を食ってることになるからね…おえ。
野生の猪や兎なんかは普通に食べてるけど、魔物を食べるのはこれが初めてなので凄く楽しみにしている。
「お肉にくにく!にくにくお肉ぅー!」
スキップしながら伯爵様の執務室に向かった。
その途中、アー君が私を見つけて駆けてくる。
「ラピス、おはよう。今日はいつもより早くないか?」
「おはよ、アー君。今日はね~お土産あったから早く来たんだぁ」
「お土産?」
「そう」
アー君と話ながら執務室の扉をノックする。すると内側から伯爵様の執事であるお爺さんが顔を覗かせた。私とアー君を見た途端柔らかな笑みを浮かべる。
「おや、ラピスさん。今日はお早いですね」
「おはようございます」
「蔵書室の鍵ですねよね。 本日は私がお預かりしております」
屈んで「どうぞ」と私の手のひらにそっと鍵を乗せてくれた。
伯爵様は今日は忙しいのかな?聞きたいこともあったけど、忙しいなら仕方無いか。
「鍵ありがとうございます。あ、後伯爵様にお昼ご飯楽しみにしててって伝えてください」
「はい、かしこまりました」
鍵をゲットした私は図書室へと向かった。
後ろをぽてぽてとアー君が着いてきてるけど、今日は家庭教師の人は来ないのだろうか?
「アー君、今日はお勉強しないの?」
「今日は休みなんだ」
「そっか。 で、何で着いてきてるの?」
「一緒に遊─勉強しようと思って!」
今遊ぶって言いかけたよね?慌てて言い直してもぽろりしちゃってるよ。
「アー君はもう魔法は習ってるの?」
「うん。けどまだ魔力量が少なくてすぐに疲れちゃうんだ」
「ふ~ん」
貴族の子供は六歳になると魔法を学びだす。魔法以外でも家庭教師を雇って五歳、又は六歳から勉強を始める。アー君は五歳から魔法以外の勉強を始めてたけど、魔法は今年に入ってから習いだしたらしい。
「私も魔力少なかったから最初はすぐにヘロヘロになってたよ」
「でも今のラピスの魔力量は凄いじゃないか。どうしたらそんなに魔力量が増えるんだ?」
「教会に【魔導入門】て本があって、そこに書いてあったことをずっと続けてきただけだよ?」
「あぁ、あの『魔力を身体中に巡らせるイメージで…』ってやつか」
「そうそう」
「僕も教えられた通りに毎日やってるけど、全然魔力が増えないんだ…」
歩きながらアー君がしょんもりと肩を落とす。
まだまだ成長期なんだし、そこまで落ち込まなくても言いと思うんだけどなぁ。
図書室へと着き、扉を開ける。アー君も私の後ろについて入ってきた。
「じゃぁさ、アー君の魔力量を増やすやり方見せてもらっても良い?」
「…別に良いけど…なんでだ?」
「まぁまぁいいから」
入ってすぐにあるソファーに向かい合って座り、アー君が瞼を閉じる。
心を落ち着けて深く深呼吸するとアー君の身体の中に微量の魔力がもぞもぞと動いているのがわかった。全身に巡らせると言うより、お腹の中で行き先を考えてモヤモヤしている感じだ。
「─…はぁ…」
一分程でアー君は息を吐き瞼を開いた。
短っ!てか短いよ!思わず二回言っちゃったじゃん!
「…アー君、いつもこのくらいの時間で止めてるの?」
「うん」
そっかぁ~そりゃ魔力量増えんわ。
時間が短い上に魔力が全然身体中に巡ってない。今ある魔力をお腹の中でお箸でゆっくり混ぜてる程度の動きしか感じなかった。
「アー君、座禅て知ってる?」
「ザゼン、てなんだ?」
「う~ん…やっぱ知らないか…」
と言うかこの世界には座禅て物は存在しないのかな?それともアー君がまだ幼いから知らないだけ、とか?
「アー君のやり方じゃ多分魔力を増やせないよ。そもそも魔力が身体中を巡ってないしね」
「そう…なのか?」
「取り敢えず私がちょこっとだけ見せるから、アー君も真似すると良いよ」
ソファーから降りて直接床に座った私にアー君が驚いた。その声を無視して胡座を組む。
私の座禅は直接誰かに教えを乞うたものじゃなく、所謂なんちゃって座禅だ。座禅をするのに大切な姿勢やらは知っているけどその他諸々は全く知らない。簡単に言えば『座禅をする意味』を聞かれても「そんなの知らんがな」って感じなのだ。
いつもは一時間近くする座禅を五分くらいで終わらせてゆっくりと瞼を開くと、アー君は口を半開きにしたままぼんやりと私を見ていた。
「どったの?アー君」
「…え?あっ、…何かすごいな。ラピスが目を閉じたらお腹の下辺りからぼんやり淡い光が溢れ始めて、それがゆっくり全身に広がって何か渦を巻きだしたみたいになって…」
…ん?え?なに?なんじゃそりゃ。
「アー君、私座禅を組んでるとき光ってるの?」
「うん!キラキラしてる!」
な、ナンダッテーー!?
瞼を閉じてるから自分自身じゃ気が付かなかったけどどうやら私、座禅中に発光していたようだ。
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