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2・騎士になりたい!

本日2話目~(〃ω〃)

 

「お父さん、お母さん。わたし、騎士になる!」


 静まり返る我が家のリビング。

 あ、そうそう。前世の記憶を思い出したら今まで拙かった口調がちょっと大人っぽくなった…ような気がする。


「「「はぁぁ!?」」」


 一拍の間を置いて、家族の声が家中に響いた。


「ちょ、え?な、何で!?将来はパパとママと一緒に宿屋で働くって言ってなかった!?」

「そうよラピス!急にどうしちゃったのぉ?」

「『おっきくなったらにぃにのお嫁さんになる!』って言ってくれたじゃないか!どうしたんだラピス!」


 父と母の言葉はともかく、兄の言葉はわたし言った記憶がないんだけど。捏造?妄想なの?我が兄ながら愛が重い。


 私の家族は父・ログナ、母・ローリア、五つ年上の兄・ロイ、私・ラピスの4人家族。家族皆で『白猫』という宿屋をやっている。と言っても私はまだ幼いのでお手伝いは出来る範囲だけなのだけど。

 両親も兄も「子供のうちは沢山遊んでおきなさい」というタイプの人たちなので、幼馴染のロベルトを拐か…誘って毎日冒険したり、たまにロベルトのお手伝いをしたりしている。


 まぁそれはさて置き。


 時を遡ること数時間前─。

 私は運命の出会いを果たしたわけだ。

 そう、エルディアナお嬢様に!ふんす!








「すきです!!おともだちになってください!!」


 そう言って差し出した一輪の真っ赤な薔薇を、エルナたんは大きく目を見開き薔薇と私を交互に確認するように見た。


 そして一瞬だけ悲しそうに目を伏せて…


「駄目よ…私はきっと貴女を傷付けてしまうもの…」


 と、囁くように言葉を溢した。


 それがすべてを物語っているように見えて、私はぐっと言葉に詰まった。

 悲しんでいる。苦しんでいる。諦めているんだ、エルナたんは…。


 そう思ったら身体の中から何かが溢れ出しそうになって、私は立ち上がってエルナたんに有無を言わさず薔薇を握らせた。刺はない品種だから大丈夫だよ!


「だいじょうぶ!わたしつよいから!」


 これからもっと努力してエルナたんを守れるくらい強くならなきゃ、と決意も込めて薔薇を握らせたエルナたんの小さなおててをその上からぎゅっと包んだ。


「─…っ」


 一瞬だけエルナたんのかわいいオメメに薄い水の膜が見えたような気がした。


 公爵様は私達の遣り取りを微笑んで黙って見ていたけれど、すっと傍らに膝をついてエルナたんの頭を優しく撫でた。


「エルディアナ、お父さんは少しだけお話をしてくるからこの子…っと、君の名前は何て言うのかな?」

「ラピスです!」

「そう。じゃぁラピス、私の可愛いエルディアナと一緒に居てもらってもいいかい?」


 公爵様は微笑みながら私の頭も撫でてくれた。

 公爵様のお許しが出たし、まだエルナたんとお話出来る!と有頂天になった私は勢い余って「あい!」と噛んでしまうのだった…。


 それから私たちは公爵様の目に留まる噴水の縁に腰かけてお話をした。と言っても喋っているのは私ばかりで、エルナたんは頷いたり首をかしげたり少し驚いたりと、喋っても一言だけだった。けどいいんだぁ、エルナたんが少しでも表情が変わってくれるなら私はとっても嬉しい!


「エルナたんはなにがすき?わたしはおとなりのアンナさんのアップルパイがすき!」

「エ、エルナ、たん…?」


 おっと。つい癖でエルナたんと呼んでしまった。心のサンクチュアリから溢れてしまったようだ。色々。


「えへへ~エルナたん!」


 こうなったら幼女パワーや!「エルナ()()()」と発音したくても出来ない体を装うんだぜ!


「…さっきも言ったけど、貴女とはお友達にはなれないわ」

「なんで?」

「だって…私は公爵令嬢だから…その…命の危険を伴う事だってあるから、きっと貴女を傷付けてしまうわ」


 なにぃ!?何処のどいつだ!私のエルナたんに危害を加えようだなんてクソは!


「だから…ね?」


 エルナたんは私の手を取り優しく祈るように呟いた。「これ以上、大切な人を苦しめたくない」と。


「ん~…ラピスむずかしいことわかんない。でもでも!ラピスがスッゴクつよくなればだいじょうぶだよね!そしたらエルナたんも、エルナたんのだいじなひとも、ぜーーーんぶわたしがまもるよ!!」


 空気が読めない振りをして、私はにこりと笑って見せる。

 エルナたんはオメメが溢れそうな程驚き言葉をなくしてじっと私を見ていた。


 そこへ公爵様の声がかかる。


「エルディアナ。そろそろ行こうか。ラピスもありがとう。また来るよ。そのときはまたエルディアナとお話してくれるかい?」

「あい!よろこんで!」


 あ、ヤベ。また噛んだ。


 公爵様は二ヶ月に一度視察に来ると教えてくれた。なので二ヶ月後にまたエルナたんに会える!


 公爵様とエルナたんを乗せた馬車を見送りながら私は大きく手を振った。








「で、どうして騎士になりたいんだ?ラピスは女の子じゃないか」


 父はアワアワと焦った様子で母と兄に「何とか言って!」と視線を寄越している。


「んとね~、好きな人が出来たから!」

「「「!!!!」」」


 父と兄はがくりと膝と両手を床に着き、母は両手を合わせて満面の笑顔。温度差が凄い。


「す、すすす好きな人って、どどど何処の馬の骨が…!」

「落ち着けロイ!大丈夫だ、父さんも一緒に殺る!」

「父さん…!!」


 ガシッ!と手を握り合う旦那様と息子を横目に、母は目をキラキラさせて私の手を取り「詳しくお話ししてちょうだい!」とまるで恋バナを楽しむ少女のようだ。


「で!?相手は誰なんだ?ロベルトか!?それとも本屋のハンスか!?お兄ちゃん許さない!」


 兄の眼は本気だった。愛がマジ重い。なんでそんな食い気味なの。


「違うよ。私ね、エルナ─エルディアナ様の騎士になりたいの」

「エル…ディアナ様?エルディアナ様って公爵様の御息女の?」

「そう!」

「そ、そうかぁ~…お兄ちゃんてっきり…。いや、よかった…」


 ほ…と息を吐いた兄の後ろからポカンとした父とがっかりと肩を落とした母が見えた。


「いやいや!良くないよね!?ちょ、ロイ!安心するんじゃない!騎士だなんて、ラピスが怪我でもしたらどうするんだ!常に最悪を想像しろってパパいつも言ってるよね!?」


 父の手振りが激しくて冷静さを取り戻した兄はやや引いている。


「けどラピスは運動神経良いし、まぁそれに今はこう言ってても将来は分からないじゃないか。下手にダメ出ししてラピスのやる気を削ぐのも可哀想だしさ。だったら好きにさせてあげるのも愛なんじゃない?」


 父はちらりと私に視線を寄越し、困ったように後頭部をガシガシと掻く。


「う~ん…ロイの言うことも一理あるか…。三日前にはパン屋になるって言ってたしな」


 こんにゃろ。子供の言うことだと思って真に受けてないな。




誤字脱字がありましたらお知らせください(*´ω`*)

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