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24・出来るメイドさん

 


 テッテレ~!

 ラピスはレベルが上がった!


 …なんつって。


 しかしさすがは伯爵家の蔵書室。今まで知らなかった魔法の魔導書も沢山あって楽しい。

 ふわふわとカウチや本、机が宙に浮かんでいる。

 そう、私は今日【重力】の魔法を会得したのである。無重力最高!たんのすぃぃ!

 フヨフヨ浮きながらクロールしていると、そこへお茶とお菓子を運んできてくれたメイドさんとバッチリ目が合ってしまった。


「う、ういううい浮いて…!?」


 人間が浮くという現象は魔法でしか有り得ないけど、そんなものは滅多に御目にかかれるものではないので、ある種の都市伝説のようなものらしく、メイドさんは驚愕した様子で思わずトレイから手を離してしまった。

 手から離れてしまったトレイが床に落下する衝撃に思わず瞼をきつく閉じたメイドさん。


「…?」


 けれど来るべき衝撃音がいつまでも耳に届かないので恐る恐るゆっくりと瞼を開いた。


「え…?えぇー!?」


 そこには私が魔法で浮かせたトレイの中身が、宙を漂い元の状態に収まりながらメイドさんの手元へと移動していく途中だった。

 狼狽しながらもメイドさんはトレイを手にする。


「驚かせてごめんなさい」


 宙に浮くのをやめて駆け寄り頭を下げる。

 お高そうなティーセットが壊れてしまったらきっと叱られるのはメイドさんだもんね。驚かせてしまった私が悪い。


「いえ、そんな…っ」


 ふるふると頭を振るメイドさんは蔵書室の方にではなく、図書室の方にあるテーブルとソファーにお茶とお菓子を用意してくれた。

 あれ?よく見るとこのメイドさん、この前伯爵家にお泊まりした時にエルナたんから借りたスカートをお直ししてくれた内の一人だ。


「あ、あの時のお姉さん!」

「え?」


 大きな茶色の瞳がぱちくりと瞬く。


「スカートをお直ししてくれたお姉さんだよね?あの時はありがとうございました」


 ペコリと頭を下げるとお姉さんはにこりと笑って「こちらこそ、先程はありがとうございました」と笑った。

 茶色の髪と茶色の瞳。少したれ目でほわん、とした雰囲気がとても可愛いお姉さんはニィナさんという名前だと教えてくれた。うん、似合ってる!


「ラピス様は─」

「わわっ!ストップ!」

「はい?」


 こてん、と首をかしげたニィナさんは小動物の様な可愛らしさだ。いや、そうじゃなくて。


「あの、私、平民なので『様』とか付けて貰えるほどの者じゃなくて…」


 そう、飽く迄も私は平民なのだ。この前は綺麗なお洋服を着せて貰ったけれど所詮は皮一枚。中身はゴリゴリな平民だ。なので『様』付けは何だかむず痒い。


「しかしラピス様は旦那様のお客様ですから…」


 ぐぅ…ッ、頑なに意思を変えない方向なのか。ならば…!!


「イヤぁ!ヤだぁぁ!お姉ちゃんの事『ニィナお姉ちゃん』て呼びたいのぉ!私の事も『ラピス』って呼んで!!」


 ─秘技!幼女地団駄!!


 イタイ!イタイよー!メンタルが会心の一撃を喰らった様なイタさだけど、この技は幼児である今しか使えない必殺技なので使える時には羞恥心を捨てるようにしている。

 更にほっぺを膨らませると効果倍増だ。


「で、では…」


 ニィナさんは図書室の扉を振り返り、きょろきょろとした後コホンと喉を調える素振りをした。


「ラ、ラピス、ちゃん…?」

「─!きゃー!」


 おっし!落としてやったぜ!

 心の中でガッツポーズする。


「えへへ~…ニィナお姉ちゃん!」


 実際の精神年齢は多分ずっと私の方が上なのだろうけど、見た目は幼女なんで許してくれ…ニィナさん。


 二人で照れ臭そうに笑い合っていた時だった。

 バン!と図書室の扉が勢いよく開きショタッ子のアラン様改めアー君が本を片手に駆け込んできた。


「ラピス!」


 アー君は私を見付けると嬉しそうに駆け寄ってきた。豆柴みたいだ。


「どしたの?アー君」


 いつもは私が図書室にこもってる間は勉強の邪魔だからとアー君は入ってこない。なのでちょっとびっくりしてしまった。


「ちょっと見てほしいものがあって…」


 そこまで言うとアー君はニィナさんに視線を移し口を噤む。それを直ぐに理解したニィナさんは立ち上がると一礼して図書室を出ていった。出来るメイドさんだ、スゴい!


「それで、見せたいものって?」

「あ、あぁ。…これなんだ」


 アー君は持っていた本を私の方へ差し出す。

 なんの変哲もない歴史書のようだ。ペラペラとページをめくるとこの国の歴史が神話の時代から綴られている。この辺は教会でも教えてもらうので私でも知っている事が殆どだ。


「…?ただの歴史書、だよね?」

「まぁ、そうなんだけど…ちょっと貸して」


 アー君は私の隣に座り直すと本をペラペラと捲りだす。

 何ページか飛ばしながら開かれたページを私の前に差し出し、アー君はある一文をなぞるように指を滑らせた。


「ここ!ここ読んで」

「え~と…なになに…?」


 それはこの国の歴史の一文だった。

 今から1200年ほど前、この世界に現れた『聖女』に関するもので、彼女を褒め称える…要は賛辞が書かれたものだった。

 彼女は平民の出自で幼い頃から数多の魔法を使い、癒し、助け、清らかな心で全ての人々を慈しんだ。いつしかその噂は国中、世界中に広がり、平民でありながら彼女を王族へ迎え入れたいと切望する者達がこぞって彼女に愛を捧げたのだとか。

 しかし彼女は誰の手も取らず、大いなる悪に立ち向かい世界に愛と希望を振り撒き、その身を神へ捧げ生涯教会で過ごしたそうだ。


 ナンダソレ。

 途中までは良かったけど最後の方はまるで何処かの魔法少女みたいな流れジャマイカ。なんだ愛と希望って。語尾にカッコ笑が付きそうなんだけど。しかも大いなる悪って!ブハッ。

 そもそも何処の逆ハーゲームだよ。王族が平民を娶りたいとか、完全な人気取りじゃねーか。王族なんてみんな禿げろ!

 しかも最後にゃ『私清らかなの、キラッ!』アピで教会に引っ込むとか、完全に自分に酔ってる二流乙女ゲーの脳みそお花畑主人公じゃん。

 どうせなら昨今の乙女ゲー小説みたいにザマァされて落ちぶれコースの方が話としては面白いと思うんだけど。


 っと…あまりのクソ話に思考が飛んでしまったわ。主に自分の世界に。


「んで、これがなに?」


 本から視線を外し隣のアー君を見ると、彼はキラキラした瞳で私を見て言った。


「これって、ラピスのことじゃないのか!?」



 ……………はぁ?









メンテの事知らなかった…!爆


いつも読んでくださってありがとうございます(*´ω`*)


誤字脱字がありましたらお知らせください(*^^*)

ブクマ&評価とっても嬉しいです!ありがとうございます~(о´∀`о)

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