21・お兄ちゃんとエルナたん
「お~…すごい量のお菓子だな…」
箱の中を覗き込んだ兄は嘆息を漏らす。
私より五つ年上の11歳だけどまだまだ子供。兄は蜂蜜大好きだ。
「えっとねぇ…あ、これこれ。蜂蜜のパウンドケーキだって言ってたよ」
クールに装ってるけど私は誤魔化されない。オメメがキラキラしてますぜ、兄上。
「まぁまぁ!本当に沢山ね。お夕飯の後で皆で頂きましょうか!」
母の提案に兄も私も瞳を輝かせてうんうんと勢いよく頷いたのだった。
数時間前。
私が帰宅して父と兄にウザイ抱擁を受けた後の事。
例の件は公爵様からお話ししてくれると言うことで、両親と公爵様は客間へと向かった。是非とも公爵様に両親を説き伏せてほしい。
取り残された私はエルナたんを自分の部屋にご招待する事にした。
ご招待と言うほどのお部屋ではないけど、毎日せかせかと兄にお掃除されているので決して汚部屋等ではないはず。
「いらっしゃいませぇ~!」
扉を開いてエルナたんを迎え入れたお部屋は普段と何ら変わりのないいつもの私の部屋。だけどエルナたんが私の部屋に!と思うと途端に別の空間に思えてくる。
「お邪魔します」
エルナたんは平民の個人部屋が珍しいのかゆっくりと私の部屋を見渡した。
可愛いかどうかは別として、父と兄がどこで見つけたのかぬいぐるみを沢山買ってくるので、私の部屋にはぬいぐるみが沢山ある。ベッドには大小20体以上がズラリと並んでいるので、何かの儀式のようだ。
「ラピスはぬいぐるみが好きなの?」
「お父さんとお兄ちゃんが沢山買ってきちゃうんだぁ。確かに可愛いし好きだけど、このままじゃ私の部屋はそのうちぬいぐるみに占拠されそうな気がするよ…」
へへ…と苦笑すると、そこへ兄がお茶を持って現れた。
家族の前以外では「クールでカッコイイ!」とか女の子に人気の兄だけど、実質只のシスコンである。しかも重い。
「エルナたん、お兄ちゃんのロイだよ」
「先程は挨拶もままならず失礼致しました。エルディアナ・ルビニカと申します」
「ロイです。ラピスの兄です」
ん?何か兄の部分に力入ってない?
兄は外面モードだ。エルナたんも令嬢モードで対応している。
「よろしくお願いいたします、お義兄様」
「貴女に義兄と呼ばれる意味が解らないのですが」
なんだろう、二人とも笑顔なのに見えない何かがバチバチしてるような…。あ、静電気かな?
「お兄ちゃん、エルナたん可愛いでしょ?」
「何を言う。世界で一番可愛いのはラピスだ」
「違うよ!エルナたんだよ!」
真顔でなに言ってんのアンタ。やめてよねーエルナたんの前で兄バカ爆発させるの!恥ずかしいじゃん!
「何を言ってるの。ラピスが世界一じゃないなら誰が世界一だと言うの?」
「ふぁ!?」
なにエルナたんまで真顔で言い返してるの!?─は!兄にノッてあげてるんだね!エルナたんやさすぃ!
「ふっ…どうやら僕達意見が合うようですね」
「そのようですね」
兄とエルナたんは不敵に笑い合いガッ!と握手を交わした。
二人の間に見えない何かが芽生えたようだけど…まぁ仲が良くなるなら良いかな…?………いいのか?
「と、取り敢えず、お兄ちゃん良かったねぇ。妹がふたり出来たみたいだね!」
とにかく話を逸らそう。これ以上の兄バカは私のメンタルに来る。
「妹が…ふたり…」
ふむ、と顎に指を添え瞼を閉じた数秒後、兄の眼がカッと開き11歳にあるまじき事を呟いた。「良い……!」と。ドン引きである。
「お義兄様、是非とも日常のラピスの様子を聞かせてくださいませ!」
「では、ラピスが神の祝福のもとこの世に誕生したその日からお聞かせしよう」
何か兄が変な宗教でも始めるかのようにエルナたんに熱く語り出してしまった。エルナたんも優しいものだからそんな兄の相手をにこやかに受け入れ相槌を打っている。
「もう!お兄ちゃんばっかりエルナたんとお話ししてズルい!」
兄の服を引っ張って地団駄を踏む。ぶーと頬を膨らませて抗議すると兄は両手で顔を覆い天井を仰ぎ、エルナたんは両手で顔を覆い下を向いていた。なんで?
「尊い…!」
「尊いわ…!」
しかもシンクロしたみたいに同じ言葉を呟いている。もしかしてふたり共とても気が合う感じなのだろうか?だったら兄も仲間に入れてお話した方がエルナたんが喜ぶのかな?…なんか嫌だけど。
兄にヤキモチを妬く日が来るなんて思いもしなかった。
「ふふ…ごめんなさいね。ラピスのご家族に対面出来る日が来るなんて夢のようで…はしゃいでしまったの」
「…エルナたんがお兄ちゃんとお話ししたいなら、寂しいけど我慢する…」
不貞腐れた様に答えた私を兄とエルナたんが両方から頭を撫でる。
「折角こうしてラピスのお義兄様に会えたんですもの。少しだけお義兄様とお話ししちゃダメかしら?私ひとりっ子だからお義兄様って憧れなの」
そうだった。エルナたんは今はひとりっ子なのだ。だったら兄に憧れを抱くのも仕方ないかな。よし、ここは私が大人になろう!
「わかった。じゃあラピスお兄ちゃんとエルナたんにお菓子持ってくるね!」
ふふん。気が利く私って良い女だよね!
少しだけお兄ちゃんにエルナたんとお話しできる時間をあげようじゃないか。
そう言い残して私は伯爵様から貰ったお菓子箱を覗きに部屋を出た。10分位経ったら新しいお茶とお菓子を持って部屋に戻ろう。
その頃ラピスの部屋では─。
「お義兄様。私と会っている間のラピスの様子を全てお話しします。なので見返りとして自宅で過ごすラピスのお話をお聞かせくださいませ」
「ふっ…自宅で過ごすラピスは可愛い…気をしっかり持ってください」
「いやですわ、お義兄様。私達は血は繋がらずとも同じ想いを有する兄妹ではありませんか。私は確かに貴族ですが、畏まらず、本当の妹のように接してください」
「…なるほど、ラピスが君に懐くのがわかるよ。わかった、この場ではいつものように喋らせてもらう事にしよう」
「はい、お義兄様」
「では、改めて─ようこそ、【ラピス至上協会】へ」
「うふふ…」
「ふふふ…」
10数分後。
「お話楽しかったぁ?」
ひょっこりドアから顔を覗かせると、兄とエルナたんは笑顔でお話をしていた。
「あら、ラピス。新しいお茶を持ってきてくれたのね。ありがとう」
「僕がやるから、貸してごらん」
スッと兄にトレイを奪われたので、私はエルナたんの隣の席に腰かけた。
「エルナたん、お兄ちゃんに変なこと言われなかった?」
「全然。素敵なお義兄様ね」
にっこりと笑うエルナたんにホッとする。兄が変なことを言い出したのではないかとちょっと疑っていたのだ。
「そうだぞ、ラピス。妹には優しく!が僕のモットーだ」
「素敵!お義兄様!」
パチパチと拍手しているエルナたんに兄は鼻高々だ。
私の居ない間にどんな話をしていたんだろうか。
「ここに居る間はエルナちゃんも僕の妹だ」
「嬉しいです、お義兄様」
なんと兄がエルナたんの頭をナデナデしている!私もしたことないのにぃ!!
しかもいつの間にかエルナちゃん呼び。一体何を話していたんだろう…気になる。
【ラピス至上協会】の会員は兄とエルナたんの二人です笑
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