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18・小さな光

 


 朝食後、お部屋でエルナたんとお喋りして待っているとメイドさんが迎えに来た。お茶の準備が整ったらしい。


 案内された所は広いお庭の一郭で日当たりの良いガゼボだった。

 辺りには手入れされた花壇や植木が季節の花を咲かせていて、風に運ばれてほんのりと良い香りが漂っている。


 到着した頃には既にシャーロット様とアラン様は腰掛けて親子で楽しそうにお喋りしていた。


 シャーロット様は私達の到着に気が付くと嬉しそうに微笑む。

 またしても子供用の椅子に座らせてもらう。お手伝いしてくれたメイドさんに「ありがとうございます」とお礼を言うと、キョトンとした後笑顔で「いえ」と答えてくれた。


「さぁ、では小さなお茶会を始めましょうか!」


 可愛らしくポンと手を叩いたシャーロット様の合図に給仕さんが温かいお茶を用意してくれる。お花の香りがするお茶だった。


 アラン様はお母さんとのお茶が楽しいのか、家庭教師に誉められたことや、身長が伸びた事などを報告する。それをシャーロット様は笑顔で聞き、息子の成長を喜び本当に嬉しそうにアラン様を誉めていた。

 私も沢山質問された。毎日何をして居るのか、とか、兄弟は居るのか、とか、好きな食べ物は何か、とか。

 取り敢えず素直に日課と父と兄の愛が重いことは面白おかしく話しておいた。


 一時間ほど経った頃、私はシャーロット様にお庭を見たいとお願いして席を立った。エルナたんも席を立とうとしたので慌てて止める。ごめんねエルナたん…アラン様とちょっとだけ待っててね…。


「えっとね、シャーロット様に案内してほしくて…」


 チラチラと視線を送れば、何かを察してくれてのかシャーロット様はすっと立ち上がってガゼボから出た。メイドさんがすかさず日傘を差し出す。

 ポンと日傘を開いたシャーロット様は私と手を繋いで歩き出した。


 少しだけ歩くと噴水が見えてくる。その噴水を花壇が丸く囲んでいて、花壇の縁にはベンチがあった。

 そこに腰を下ろしたシャーロット様が隣に私を座らせるために手を差し出してくれる。


「それで、ラピスちゃんは私に何か内緒のお話があるのかしら?」


 いたずらな表情で笑うシャーロット様が身を屈めて問う。


「えっと…もしかしたら隠してる事だったら皆の前で言うのはいけないことかなぁ…って。それで…」

「隠していること…?…そうねぇ。何かあったかしら…?」


 シャーロット様は頬に手を添えて首を傾げる。もしかして本当に気が付いていない…とか?


「あの、じゃあ率直に言いますね」

「?ええ。何でも言ってちょうだい」

「シャーロット様のお腹に赤ちゃんがいます!」

「そう赤ちゃんが─…………え?」


 シャーロット様が笑顔で固まってしまった。


「ええぇ!?」


 次は少し大きな声で声を上げたかと思えばペタペタとお腹を触り出した。大丈夫、まだぺったんこのナイスバディですよ。

 その様子を見るにきっと気が付いていなかったのだろう。


「本当!?本当なのラピスちゃん!?」


 ウレシそうに頬を染めて私の両手を握りしめてくる。


「あ、あの!でもその…すごく弱ってるんです!このままだと赤ちゃんが…」

「──…そう、なの……」


 一気に上がったテンションはシュンと下がってしまったのか、シャーロット様は肩を落とし寂しそうに溜め息を溢した。


「折角…私の所に来てくれたのに…。…先月から少し体調を崩す事が何度かあったし、きっと駄目なのね…。ごめんね…」


 そう言ってシャーロット様はまだぺたんこのお腹を愛しそうに撫でる。その顔はお母さんの顔だった。


「─…ラピスちゃんには気を使わせてしまったわね」

「え、あ、いや、そうじゃなくて!」


 うっすらと涙の膜が浮かぶ瞳が私を映しているのを見て慌てて両手を顔の前で振った。だって私が言いたいのはそう言うことじゃないから。


「赤ちゃんとお母さんは繋がってるから、お母さんが沢山の栄養を取れないと赤ちゃんまで届かないんです。いやその前にシャーロット様は余り食欲がないみたいだったので…。それでちょっと勝手に検査してみたら赤ちゃんの光が見えて…」


 勝手に魔法で見ちゃったこととか怒られるかもしれない、と下を向いてモゴモゴと言葉を紡ぐ。


「なので、治癒魔法で治した方が良いと思うので…」

「治癒魔法…それだと王都まで行かなくてはならないわね…」


 困ったわ…とシャーロット様は頬に手を当て肩を落とした。


「あ、あの!私治癒魔法使えるので、私じゃ駄目ですか?」

「え?」


 ぱちくりと瞬いた瞳は本当に驚いた様子で、本当に?と二度も聞き返された。やっぱり治癒魔法の使い手は少ないんだなぁ。


「旦那様から聞いてはいたけれど、まさか治癒魔法まで使えるなんて…ラピスちゃんは本当にすごいのね」


 嘆息を溢したシャーロット様は「うん、そうね…」と何かひとりで納得した後、私の両手を取ってにこりと微笑む。


「ラピスちゃんにお願いするわ」

「─はい!」


 私も笑顔で頷き握られたままの両手に力を込める。


「『癒しの光よ』」


 握りしめたシャーロット様の手から光は全身に広がり、身体全体を包むこんだ瞬間それは光の粒になって霧散した。


「あら……あらあら!何だか身体がすっきりと軽くなったわ!」

「まだ終わりじゃありません。シャーロット様、少しだけごめんなさい」

「!」


 私は驚くシャーロット様の腰回りにしがみつく。手からではなくて近くからの方がやりやすいから。


「私の元気をあげるね。だから頑張って…」


 検査魔法で見つけた小さな光。今の治癒魔法で少しは元気になったけれど、その光はものすごく弱っていてきっと後数週間も持たない。

 母体が回復しても栄養を直ぐに届かせるには時間もかかるし、赤ちゃんだってそんなに沢山の栄養を一気に吸収できる訳じゃない。なら私の元気をあげれば良いのだ。

 これは魔法じゃなくて私の元気を赤ちゃんへ送ってるだけ。


 ─『ありがとう、おねえちゃん』


 小さな、小さな声が聞こえた気がした。

 私は嬉しくなって「どういたしまして」とシャーロット様に抱きついたまま小さく返した。




「──『検査(スキャン)』」


 シャーロット様から離れ魔法で全身を検査してみた。治癒魔法のお陰なのか、シャーロット様は完全に回復していて、赤ちゃんの光りもキラキラと元気に輝いている。


「完全回復です。赤ちゃんも心配ありません!」

「ラピスちゃん!」


 顔を上げた瞬間私はシャーロット様に抱き締められていた。


「ありがとう、本当にありがとう!ラピスちゃんは私の大恩人だわ!」

「!」


 ぎゅっと抱き締められていた身体を離されチュッと頬に口付けを落とされて瞠目する。美人のちゅーはほっぺでも威力が半端ない。同じ女でも胸がドキドキと高鳴った。


「あ、でも栄養のあるものを食べて、適度に運動して、身体を冷やしすぎないようにしてくださいね。後、お酒も紅茶も駄目です!ハーブティーか花茶にしてくださいね」

「わかったわ!」


 花が咲くようににっこりと微笑んだシャーロット様の笑顔は、私が彼女と知り合って初めて見た心の底からの笑顔だった。





誤字脱字がありましたらお知らせください(*^^*)


ブクマ&評価ありがとうございます(*´ω`*)


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