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14・昔話と未来のお話

 


 その日の夜、大きなお風呂に入り豪華な夕食を食べて幸せ一杯の私のお部屋には何とエルナたんが居た。同衾!ふは!


 けれどまだまだ眠る時間ではないので、日中切り上げたお話の続きをするため公爵様とエルナたん三人でお茶をすることになった。


「さて、何から話そうかな」


 エルナたんはお姫様が着るようなフリフリの可愛いネグリジェにピンクのカーディガン、公爵様も明らかに上等な生地で出来たパジャマに、これまた上等な生地のガウンを着てゆったりと足を組んでいる。因みに私はアラン様のお下がりのパジャマを着ている。つるつるですべすべの生地でいかにもお高そうなパジャマだ。


「取り敢えずエルディアナの専属護衛になるお話からしようか。条件があるって言った事は覚えてるかな?」

「はい」


 公爵様の出した条件は以下のものだった。


 専属護衛として雇うのは2年後の8才から。

 穴を開けてしまった伯爵家の軍隊の強化を手伝うこと。

 そしてエルナたんの護衛として、貴族の勉強をする事。

 最後に【隠蔽】の魔法を覚える事。


「二年の間にできるかい?」

「やります!出来ます!」


 鼻息荒く答えると公爵様は笑いながら「よかったね」とエルナたんの頭を撫でた。エルナたんは所々納得していない事があるのかちょっぴり難しい顔をしている。


「でも【隠蔽】の魔法って…どうしてですか?」


 隠蔽ってことは何かを隠すってことだよね?何を隠さなきゃきけないんだろう。


「そうだね…その前に昔話を聞いて欲しい」


 公爵様は紅茶を一口飲むとエルナたんと私ふたりに聞かせるように分かりやすくお話ししてくれた。


 私に向き直った公爵様はいつもの柔らかい笑顔ではなく、少し困惑しているようにも見える。



 それは凡そ300年程前にひとりの男の子が5歳の祝福の儀を受けた事から始まった。

 水晶玉が男の子の溢れる魔力に耐えきれず割れてしまったのだ。


 膨大な魔力を秘めたその子供は当時「神子だ!」と祭り上げられた。それほどまでの魔力の持ち主だった。


 それに目をつけたのが当時の聖星教大司教。


 この世界の宗教はひとつで、聖星教とは創生の女神フェイタルが産み出したとされる夜空で一番輝く星ディアを祀る宗教だ。


 その聖星教が彼を無理矢理親から引き離し、半ば誘拐の形で教会に引き込んだ。

 教会側はそれを否定しているが、その場ですべてを見ていたのは両親以外にも居た。それらの人間全ての目や口を封じるのは不可能で、結果街の人間すべてにその所業が知れ渡ることとなる。

 その行いのせいで聖星教の信用は地に落ち、今その街の出身者は無神論者しか居ないそうだ。勿論、聖星教はその地に住む人々からは忌み嫌われている。


 そして件の男の子だが、魔法への造詣も深く次々に新しい魔術を発明し、人々に感謝され敬われ、いつしか大賢者と呼ばれるようになった。


 それが彼にとって幸せなのか、誰にもわからない。

 愛を知らなければ憎しみを理解できないのと同じで、5歳で親元から無理矢理離された男の子には感情の起伏が殆どないのだと言う。


 彼は聖星教の隠された賢者の塔で今もひとり生きているのだと言われているが、真実を知るのは聖星教でも僅かだそうだ。

 


 ─えーと、私の他にもやっちゃった人が居たんだね。って、大賢者様?そんな人小説に出てきてたっけ…?いやいやそれよりも、私はその大賢者様並みの魔力があるってこと?そりゃ豆粒から頑張ったけどさ。と言うかその人何歳なの?


「そこでさっきの話の続きだ。幸いなことにラピスの最初の祝福の儀は終わっている。だからと言って安心は出来ない」

「それはつまり、何かの拍子に私の事が聖星教に伝われば大賢者のように拐われる…て事ですか?」

「そう言う事だ。そして二年後、君はもう一度聖星教の人間の前で宝玉に触れなくてはならなくなる」


 二年後?二年後に私はエルナたんの専属護衛になれるんだよね?んん?


「お父様、つまりラピスは私と共に…」


 はっ、と何かに気付いたエルナたんが身を乗り出した。


「そ。ラピスにはエルディアナと共に王立魔法学園へ入学してもらうって事だよ」

「お父様…!」


 ぱちん、と公爵様が片目を閉じた。エルナたんのお顔にパァァとお花が咲いたみたいに輝く。


「ラピスは市井の子供では考えられないほど賢い子だ。さっき手紙を書くラピスにアラン君も驚いていたしね。後は貴族の礼儀作法を勉強してもらってエルディアナの護衛兼友人として一緒に入学だ。勿論ラピスの後見人は私だよ」


 な!なんと!エルナたんと一緒に入学!うれしい!めっちゃうれしいぃ!…いや待てよ?王立魔法学園て事は学費がお高いのでは……!?はわわわ!そんなお金うちには無い……!


「まぁ、そんな訳だから入学時に魔力の測定は必須条件なんだ。だから【隠蔽】の魔法を絶対に覚えてもらいたい。自己の魔力は勿論、属性まで隠せるなら、これから先絶対にラピスの役に立つ」


 何より聖星教の目を眩ませるために絶対に覚えた方が身のためだと公爵様は言った。

 そうだよね。…もし私が大賢者並みの魔力を持っているかもしれない、何て疑いを持たれたら最悪もう二度と家族には会えなくなるだろうし、下手をすれば今の大賢者の様にずっと幽閉みたいな扱いをされるかもしれない…。

 家族に会えなくなるなんて嫌だし、もしそうなったら家族どころかエルナたんにも二度と会えなくなる。そんなのは嫌だ。


「解りました!絶対に隠蔽の魔法を覚えます!」

「うん、いい返事だね」


 にこりと微笑んだ公爵様の横でエルナたんもまた同じ様に微笑んだ。


 2年後はエルナたんとキャンパスライフ!

 小説の舞台でもある王立魔法学園。あの場所はエルナたんにとって魔界のような所だ。

 絶対に私が守らなければ。

 あのド腐れクソビッチに毒されるような頭お花畑のアホ子息共め…私のエルナたんには指一本触れさせん!切り落としちゃる!


 脳内で闘志を燃やす私をエルナたん父娘が微笑ましく見ているのを私は気が付いていなかった。


 公爵様は明日伯爵領を出て、マルチスに立ち寄り私の両親にお話をしてくれると説明してくれたので、本日は就寝する事になった。






「………」


 私の横には天使が眠っている。エルナたんである。

 寝顔も天使とか…!


「エルナたぁーん…」


 小さく呼び掛けてみたがスヤスヤと寝息だけが帰ってきた。マジ天使。


「さてと…」


 完全に眠っているエルナたんを確認し、私はこっそりベッドから降りた。


 細心の注意を払いながら着替えを済ませる。すっと腰に短剣を差して、もう一度エルナたんを振り返った。


「ちょっとお出掛けしてくるね」


 物音を立てないよう注意しバルコニーへ出る。

 そして探知魔法である人物を探した。昼間ちゃんとマーキングしてあるからすぐに見つかった。思わずニヤリと口許が歪む。


 伯爵様のお屋敷なので夜間でも警備している人がちらほら見える。私は見付からないように気配を消し、とある場所へと駆け出したのだった。





誤字脱字がありましたらお知らせください(*^^*)


まだまだ先ですが色々なキャラが出てくるのですが…名前…!名前考えるの苦手…!(´д`|||)



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