12・魔力と成長
「いやぁ…それにしてもラピスは強いね。盗賊に襲われたときは結界に遮られていて見えなかったけど、こうして目の当たりにすると感服するよ」
「本当に…ラピスは強いのね」
エルナたんに渡されたマドレーヌを頬張っていると左右から頭を撫でられる。なんだろう、今日はずっと頭を撫でられている気がする。エルナたんのおててで撫でられるのは嬉しいので良いけど。
「…うん。決めた」
私を撫でながら公爵様がひとり納得したように頷く。
「ラピス。君をエルディアナの専属の護衛として雇いたい」
「──!!ホントですか!?」
驚いてマドレーヌを詰まらせるところだった。いや、それよりも!
さっきエルナたん自身に危ないから駄目と強ぉーくお断りされたのに、まさかの公爵様からのお許し!!ヤバイ!嬉しい!漏らしそう!
「と、言ってもラピスはまだ6歳だ。採用には条件があるからね?」
条件!何でも言っても!頑張って合格するもんね!
嬉しさにキラキラと公爵様を見上げていると。
「は!?6歳って僕と同じ歳じゃないか!僕はてっきり4歳くらいかと…」
私の年齢を聞いてアラン様が立ち上がる。テオドールさんとギヴソンさんも呆気に取られたように私を見詰めてきた。
「え、6歳にしては小さすぎませんか?」
テオドールさんはそう言うけど、私としては普通だと思っている。比べる友達もロベルトくらいだし、母親もそこまで背が高い方じゃないのでじわじわ伸びるタイプだと割りきっていた。
けれど思い返してみればエルナたんと出会った頃に比べると彼女は私の身長より拳ひとつ分は高い。自分も伸びていると仮定するとエルナたんの成長の早さはちょっとおかしい。て事は…。
「ラピス、もしかして成長が止まってる…?…やだ、かわいい」
ん?エルナたん最後なんて言ったの?聞き取れなかったよ。
「もしかして…」
はたと顔を上げた公爵様が伯爵様に目を向ける。伯爵様はギヴソンさんを指先でちょいちょいと呼び、二言程何かを伝えるとギヴソンさんは頭を下げて退室した。
戻ってきたギヴソンさんは30センチ四方の箱を手にしていた。それを私の前に置きぱかっと蓋を開くと、中には真ん丸の水晶玉が入っていた。ボーリングの玉くらいデカイ。ボーリングするの?
ん?でもどこかで見た気がするような?
「これは伯爵家で借りている鑑定用の宝玉だ。お嬢ちゃんも教会で祝福の儀を受けたときに見たことあるはずだぞ?」
「あ!あの時の!けど神父様の頭がピカピカでね、テカテカの頭ばっかり見てたから忘れてた…」
ブフォ!と数人が噴き出した。
いやいや、子供ってそんなものだよ?現に神父様の頭は覚えてるけど、水晶玉の事はうっすらとしか記憶に残ってないもの。
あの時はお父さんとお母さんに「ジロジロ見るんじゃありません」って怒られたなぁ。
「…っ、神父の頭の件は置いといてだな、これは潜在魔力量を調べるためのものだ」
若干肩を震わせながら伯爵様が説明してくれる。
伯爵様が言うにはこの水晶玉に触れると魔力量によって輝きに違いがあるのだとか。5歳の祝福の儀の時の事は全然覚えてないのでどんな感じに光るのかは解らないけど、豆粒程度の光は誰しもが持っている魔力の量らしい。魔力量が多ければ水晶の中で輝く光が大きく写るようだ。
あれから結構頑張ったから魔力量は増えたけど、バランスボールくらいに増えたと思っているのは私だけで、実際に測定したことはないので解らない。改めて自分の魔力量を知ることができるのは嬉しい。
「5歳の時の祝福の儀で「豆粒」って言われた…」
「いやいや、あんな大掛かりな結界張れるのに豆粒はないよ」
公爵様が苦笑して試しに水晶玉に触れてくれた。
ポォ…っと水晶玉の中心が光る。公爵様の握り拳くらいの真ん丸な水色の光が水晶玉の中に写し出された。
「お。学生時代に見たのが最後だったが、少し魔力が増えたんじゃないのか?」
「みたいだね」
水晶玉を覗きながら伯爵様がニッと笑う。二人の話す内容から、どうやら学校かどこかで同級生だったように聞こえる。だから伯爵と公爵と言う貴族階級の違う二人が仲良しなのかな?
「見てごらん、ラピス。魔力と魂のバランスが取れている場合光はこうして綺麗な球体になるんだ。バランスが取れていない場合は光は球体を保てずに水面のように揺らめくんだよ」
「お嬢ちゃんはまだ6歳だ。つまり身体の成長を多すぎる魔力が阻害しているかもしれない」
水晶玉から手を離した公爵様が触れてごらんと水晶の入った箱を差し出す。
なぜかアラン様がそわそわと私を見ている。自分もやりたいようだ。
「…」
「大丈夫よ、ラピス。噛みついたりしないわ」
エルナたんに促されて手を伸ばす。触れた水晶玉はひんやりしていた。
中心に小さな光が灯り、ゆっくりと大きくなってゆく。一回り大きくなる度に光の中にいろんな色が混じり出す。光は真ん丸じゃなくてゆらゆらと纏まらない。まるで無重力の中にある水のようだ。それがどんどん、どんどん大きくなっていって…。
「おい、ちょ、ちょっと魔力が多すぎないか!?」
水晶玉の中に光が収まらなくなってくると伯爵様が慌て出した。手を離した方がいいのかな?と思った瞬間─。
ピシッ
何かがひび割れるような音がして、水晶玉がパッカリと真っ二つに割れてしまった。
「割れちゃった!ど、どうしよう!?」
お高そうな水晶玉が割れてしまって瞬時に頭の中で「弁償」の一文字が浮かんだ。
ヤバイ。うちにはそんな大金はないんだけど!?とアワアワ回りを見渡すと、変に回りが静かなことに気が付く。
部屋に居た人が全員口が半開きで瞠目していた。
こ、これは怒られる感じじゃないだろうか!?だ、誰か!私と目を合わせてー!
キョロキョロと見回しても、誰しも割れてしまった水晶玉を凝視している。左手を握ってくれていたエルナたんがきゅっと力を込めた。振り返ると私を見詰めたまま小さく口を開く。
「─す」
「凄い!!父上!みましたか!?」
「…ぇ、あ、あぁ…」
エルナたんの言葉に被せるように興奮した声を発したのはアラン様だった。同意を求められた伯爵様がぎこちなく頷く。
隣からひゅうと冷気を感じて振り返るとエルナたんがひんやりとした目でアラン様を笑顔で見ていた。あ、あれ?ツンドラ…?
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