123・わんちゃんに跨って
お久しぶりです〜!
「本当にすまなかった!」
「い、いえ!こちらが大騒ぎしてしまってこんな大事になって…こちらこそ申し訳ありませんでした!」
「いや、こちらの不手際だ。先触れを出していれば…」
「いやいや!御領主様そんな…!お顔をお上げください!」
目の前では街の責任者と名乗る人と伯爵様が頭を下げ合っている。どうぞどうぞ状態である。
あのトンネルを出たあと、街に向かった私達一行を待ち構えていたのは完全武装の傭兵団や各々に武器を構えた住民達だった。
それというのも完全に拘束していたもののワイバーンは意識が戻った個体からギャーギャーずっと吠えまくりで、トンネルの奥からその叫び声は轟くように街へと流れ、住民たちは襲撃か?!と戦々恐々としたそうな。
で、急遽傭兵団に連絡し、それを耳にしていた住民達も一致団結だぜ!とばかりに街の入口に集合した…と言う訳らしい。
住民…好戦的すぎでは…?何のためのトンネルだよ。とちょっと思ってしまった。
その後誤解は解かれて傭兵団の詰め所の真裏にある解体所にやってきて冒頭に戻る。
「うおー!スゲェーー!生きたワイバーンをこんな目の前で見れるなんて!」
「結構硬いんだな〜」
街の住民さんは魔物なんて見慣れてるのかビシバシとワイバーンのお尻を叩いてみたり子供達はよじ登ってみたりして興奮していた。その間もワイバーンはギャーギャー吠えて威嚇している。噛みつかれたら大変だから前世で見た犬用のマズルを木で作ってかっぽり嵌めてあるので安全だし、なんかマヌケに見えてちょっと気の毒な気もしてる。
そうだ、ジークにも付けてあげよう。前世で見た気がするアヒルのマズル。
解体所に入ると総勢20人のムキムキマッチョの男の人達が素早く動いてあっという間に解体台の上に活きの良いワイバーンが乗せられた。
その後スゴイ太い針のついた掃除機みたいな道具をブスッと首に刺すとものの数分で血抜き完了。奥にあるタンクに血が溜まる仕組みの魔道具にスゲェ!と感心した。コレの小型をジルに作ってもらおう。血抜きって結構面倒なんだもん。
血抜きされたワイバーンは眠るように天に召され、そこでようやく拘束していた木を回収した。ゴミが増えたな…て思っていたら薪にするからってそれも引き取ってもらえた。
「どうする?お前が仕留めたんだ。肉も素材も全部お前に権利があるが…」
大人たちの会話をぼんやり聞いてると伯爵様がコソッと耳打つ。
「んとね〜…素材はいらないや。お肉だけ貰えたら後は伯爵様におまかせするよ」
「………そうか」
どこかホッとしたような顔をして解体人に二言三言伝えると伯爵様は再び戻ってきた。
「全部解体し終わるまではどんなに急いでも明日の昼くらいになるそうだ。どうする?このまま屋敷に一度戻るか?」
「そうだね。待ってても仕方ないし、お屋敷に戻って焼き肉パーティーしよっかな」
きっと今頃森に置いてきたボロアード討伐部隊がお屋敷に戻って焼き肉パーティーの準備をしてくれているだろうし、お昼ご飯の為に戻るのが良さそうだ。
「せっかく来た初めての街だけどまた明日散策出来るし」
「だな」
私一人で来てもいいけど伯爵様か他の大人でもいいけど一緒の方が話もまとまりやすいだろうし、明日も誰か一緒に来てもらえば大丈夫だよね。
「じゃ、帰るか」
そんなこんなで午前中に街を出ることになった。
帰りはワイバーンという大荷物がないので身軽である。
街の門を出ると門前にはすっかり忘れていたわんちゃんズが門前に整列して伏せをして待っていた。そのうちの1頭が私の前に歩み寄り背中を落とすとクイッと顔を背に向けてまた私を見る。
「乗っていいの?」
「わふっ」
何となく「乗って」と言われているのは解るんだけど、手綱も鞍もないので振り落とされそうな気がするんだけど。
「さすがにそのまま乗るのは危なくないか?」
と伯爵爵様がどこからか長い皮のベルトを取り出した。どうやら馬に荷物を固定するときに使うものらしい。それをわんちゃんの前足をクロスする形で結んで背中の上にちっちゃい私サイズの手綱を作ってくれた。
「わーい!伯爵様ありがとー!」
早速跨ると良い感じだった。手綱が両手で掴むシーソーの取っ手みたいに短いので体幹もブレない。
「わん!」
わんちゃんは伯爵様にお礼を言うように一度吠えると群に戻って皆でお鼻を突き合わせてふんふんと小さく頷き合った。
なるほど、このまま皆で帰ろう、と言う事らしい。
「伯爵様〜!わんちゃんズが先に帰るって!」
「は?いや、ひとりで帰れるか?」
「心配ないって言ってるよ。なんか走りたいんだって」
「え?」
わんちゃんズはまだかまだかと走る気満々である。
「じゃ、お屋敷まで競争だーー!」
「「「「わおぉぉぉーーーん!!!!」」」」
「ちょっと待────!!!!!」
伯爵様の止める声を振り切るようにわんちゃんズが一斉に走り出した。
「うおぉぉぉーーー!!!早ぁぁーーい!!」
わんちゃんズの走る速度は私が全力疾走した時と同じくらい早くて景色がびゅんびゅん通り過ぎてゆく。
早いし、何よりアトラクション系の乗り物を思い出す程よい揺れ。ナニコレ楽のすぃ〜!!
あっという間に、本当にあっという間に通ってきたトンネルが眼前に迫ったと思うと、わんちゃんズはトンネルを避けて山へと駆け上がった。
木々の間を波々に縫ってすごいスピードで山頂まで登りつめる。山頂のおっきな岩に皆が到着すると今駆け上がってきた下界がよく見下ろせた。
ふっ…人がアリのようだ…なんつって。
「あおぉぉーーーん!!」
私が跨るわんちゃんが遠吠えすると他のわんちゃんがそれに続くように次々に遠吠えしだす。最後のわんちゃんの遠吠えが終わると今度は山を下り始めた。
爆速波々降下ジェットコースターだ。
「きゃーーー!!」
余りの楽しさにきゃっきゃしてると目の前にでっかい熊が現れたんだけど、わんちゃんが「ガッ!」と丸い炎を口から撃ち出し命中すると通り過ぎる頃には炭になってた。
何だそれカッコイイな!
「スゴイね?!いまの何!!」
褒めるとわんちゃんはまんざらでもないように走りながら器用に尻尾を振った。
山から降りるとボロアード狩りをした森を突っ切り、ジルたちの村を通り越して伯爵様のお屋敷を目指す。
「?」
なんかお屋敷から警鐘が聞こえる。と思った瞬間にはわんちゃんズは物凄い脚力で跳び上がりひょい、と軽く外壁を飛び越えた。
そのままズザァ!と土を捲き上げながらスライディング着地。みんな10点満点てある。
「たっだいまぁ〜!」
元気に挨拶すると周囲は水を打ったような静けさの中に変な表情で数十人の兵士の皆さんが武器を持ったまま固まっていた。
「?どしたの? あ!ショーンさん!お肉用意できてる〜?」
奥にショーンさん達が見えたのでわんちゃんから降りて解体し終わったお肉の山に近付くと、ショーンさん達はお肉を捌くおっきな包丁を構えたまま梅干し食べてみたいな表情で項垂れたのだった。
「隊長…パネェ」
クルトくんの呟きが聞こえたような気がした。
画して焼き肉パーティーの準備は急ピッチで行われ、伯爵様達が帰ってくる頃には程よく焼けた食べごろのお肉が待ち構えていたのだけど、なんだか伯爵様の目からハイライトが消えてて「自由な奴が一番怖ぇわ…」とか何とかブツブツ言ってた。
後に西の辺境伯領に幼女が獣に跨り、獣達を率いて山を爆走しているとか言う変な噂が出回って伯爵様に怒られた。解せぬ。
ラピスがもの◯け姫になった回でした!www
次回はわんちゃんズの正体に迫ります!(☉。☉)
誤字、脱字がありましたらお知らせください!助かります(〃´ω`〃)
ブクマ&評価ありがとうございます♡
実はわたくし、ぬいちゃんが大好きでして。
そうです!巷で流行りの推しぬいでございます!(圧)
ぬいちゃんかわいいですよね〜!
ラピスのぬいもを作りたいです(願望)
東京都内で開催されているぬいFesにもいつかは行ってみたい…(ド田舎ド辺鄙村なのて遠い)




