122・バ…バ……………馬肉!
「じゃあみんな、あのおっきいトカゲみたいなのを外道まで運んでもらってもいい?」
「わん!」
「あぉーん!」
任せて!とでも言うかのようにわんちゃんズは胸を張った。
「ちょ!ちょっと待って待ってー!」
そこにエデルさんが滑り込むように割って入った。
それを横目で見ながら私はボンレスハム化しているワイバーンに絡みつく木の根っこに魔法でハンドルを作っていく。わんちゃんズが咥えて引っ張れるように良い感じの木の棒の太さで。
犬って良い感じの木の棒好きだからね。あ、狼だっけ…。まぁ同じイヌ科だし同じようなものだよね!
「待ってってば〜!!」
エデルさんが眼前に迫ってくるのと同時にまたまた伯爵様に持ち上げられ避難させてくれた。さんきう。
「あれ、魔法で作った狼って言ってたよね?!なのに何で自我がある上に受肉してるの?!」
「じゅにく??」
「そう!受!肉!!!」
受肉とはなんぞや?前世で見たあれか?動画配信おぢさんが美少女になってる…的な?あれ何て言ったっけか…?バ…バ…バぁ〜…………………馬肉!!……………なんか違うな。ま、いいか。
「わんちゃんズは前からこんなだよ?前は全身が炎だったけど、私が歌うと合いの手入れてくれたりするし」
「え、前と形状が違うって事?」
「そ。けど前と同じ子達だし、ちょっと色が変わってオケケが生えただけだよ」
「…何で同じって解るの?」
「ん〜…なんとなく?」
ね〜?てわんちゃんズを見るとうんうんと頷いている。ほら、やっぱり同じなんだよ。
エデルさんに絡まれるのに構ってたらお昼のご飯に間に合わなくなっちゃうじゃん。
なんか面倒臭くなった私はわんちゃんズにお願いしてボンレスハムを外道まで引っ張って行くようにお願いした。
「あ〜!まだ聞きたいことあるのに〜!」
「後で聞けばいいでしょうが!」
尚も迫るエデルさんを背後で羽交い締めにする伯爵様。
あの人教え子じゃなかったっけ?立場がなんかおかしいんだけど。
興奮冷めやらぬエデルさんを放置して私とその他の兵士さんがわんちゃんズの後を追いかけると、わんちゃんズはお行儀よく外道の端に整列していた。
どこぞの駄犬とは大きな違いである。
「みんないい子だね〜!」
一番近くにいた子の頭を撫でると炎を纏った尻尾が風を巻き起こす勢いで高速で動く。
そう言えば青い炎って確か一番温度が高いんだっけ?けどメラメラ燃えてる耳の間のおでこを撫でているのにちっとも熱くないや。なんでだ?まぁオレンジ色のときも全然痛くなかったんだけど。
でも魔物が襲って来た時は凄い火力で燃やしてたっけ。攻撃する時だけ熱くなるって事かな?
「伯爵様〜!ここからどうするの〜?」
振り返るとなんだか疲れた様子の伯爵様がのそのそ歩いてきた。エデルさんは何とか言いくるめてお屋敷に帰ってもらったそうだ。
「わんちゃんズに運んでもらう?」
そう言うとわんちゃんズは「自分!まだ余裕あります!」と言わんばかりにムン!と胸を張っている。
「そうだな…。多少騒ぎになるかもしれんが頼んでもいいか?人力じゃ無理そうだしな」
「いいよ!」
わんちゃんズの皆さん!お願いします!と視線を送るとわんちゃんズは一斉にお屋敷の方向へ向き直る。
そこで伯爵様から待ったがかかった。
「屋敷じゃなくて街に向かってくれ。その方が色々と効率がいいからな」
「まち?」
「ん?お前は行った事がなかったのか?うちから南に山をふたつ跨いだ場所に俺の治める街、二ルティアがある。お前の商業組合のカードもそこで作ったんだぞ?」
あぁ、あのカード。
すっかり存在を忘れていたんだぜ。
「なんだその表情は…お前、忘れてたな?」
「オボエテルヨォ」
「………」
若干棒読みになったくらいでそんな胡乱な目で見なくても…。
「まぁいい…。そこでワイバーンを解体してもらう。ここまで大量だと家じゃ捌ききれないからな。商業組合の真裏が傭兵団詰め所になってるから、タイミングが良ければあっちの解体人にも手伝ってもらうおうと思う。費用なんかは諸々の処理が終わった後纏めてもらうとして、お前はどうする?ついてくるか?」
「行く!」
なんだか面白そうだし、わんちゃんズも私が居た方がいい気がする。
「よし。なら行くか」
「おー!」
元気よく拳を上げるとわんちゃんズも嬉しそうに「あぉーーん!」と遠吠えした。
そして安全を考え、一匹のワイバーンをふたりで挟んで馬で並走することになり、街へと向かうことになった。
私は伯爵様と愛馬シルバーに跨り先頭を進むことになり、その後ろをわんちゃんズが軽快な足取りで着いてくる。
意識のあるワイバーンがぎゃーすか言ってるけど、ぐるぐるボンレスハム状態なので兵士の皆さんに襲いかかる事も出来ず藻掻いていた。
山をふたつも越えるから時間がかかるかな?と思ったけれど、なんと山をぶち抜いたトンネルがあり、そんなに時間も掛からず街に着けるそうだ。
入口となる鉄の門は魔物の侵入を防ぐ為の魔法が掛けられていて、魔の森が近い近隣の人達の避難場所としても使うことがあるようで、トンネルの中には備蓄用の倉庫や簡易的な休憩所みたいなのもあるんだとか。
魔の森が近く、滅多にない事とは言えウン十年に一度は魔物大群が起こるらしく、かなり大昔の辺境伯領主様が私財の殆どを注ぎ込んでそのトンネルを作ったらしい。
お陰で領民は魔物大群の被害が最小限で、荒らされた田畑も派遣された兵士の皆さんがお手伝いしてくれるのでそこまで大事になったことは過去に二度ほどなのだとか。
………辺境伯って大変なんだね。
伯爵様がストレスで禿げないようにお祈りしとこう。ナムナム。
トンネルの入口に着いた。入口には小さな小屋があり、門番さんらしき人が2人居て私達…と言うかワイバーンを見て真っ青になって叫びながら小屋に駆け込んでいった。
常駐が他に2人いたのか慌てて出てきたけどどう見ても寝てたっぽい。しかもガクガク震えながら武器を持ってる。視線もワイバーンに向かっているようでどうやら伯爵様に気がついてないっぽい。
「おい、お前達。怯えなくてもこいつ等は拘束済みだ」
呆れた様子で伯爵様が声を掛けるとそこで初めて気が付いたかのようにワイバーンと交互に視線を走らせ「は?」とか「え?」とか間の抜けた声をもらした。
普通はワイバーンなんて滅多に見ることもないし、見たら見たで命が危ういからか恐慌状態になるのも仕方がない、と伯爵様は教えてくれた。
そういうモンなのか。丸々してて美味しそうだと思うんだけどなぁ。
そしてワイバーンを見て震える門番さんに扉を開いてもらい、私たちはトンネルに入った。
「ほほぉ〜スゴイね!こっちは何があるの?あっちは?!」
「こら、暴れるな。落ちるぞ」
教えてもらった通り中には倉庫や休憩所スペースが所々にあり、所々に光る石みたいなのがあってトンネル内なのに全然暗くなかった。道の脇には側溝があり水が流れているのに中は殆ど湿気がなくて換気ができている。どういう作りなんだろう?
身を乗り出してあれこれ質問すると伯爵様に動けないように背後からがっしりホールドされてしまった。
洞窟とか洞穴とかワクワクしないの?私はするのになぁ。
そんなこんなで不思議に思っていると案外早くトンネルを抜けた。
「わ〜!アレがニョルニョル?おっきい街だね!」
「違う!二ルティアだ。どういう覚え方してるんだ全く…」
ほんのちょっと高台になっている出口から見えるおっきな街に興奮していると後続のわんちゃんズもトンネルから出てきてた。それを見たこちら側の門番さんも入口の門番さん達と同じ反応してて、伯爵様が溜息ついていた。
「さぁ!ニョルニョルにしゅっぱーつ!」
「わぉーーーーん!」
気合を入れてわんちゃんズを鼓舞すると遠吠えで答えてくれたけれど、それを魔物の襲撃だと勘違いした街の人達が大騒ぎして、街の入口に傭兵団が集結していたのを知るのはもう少し後である。
ラピスは興味のないことはあんまり覚えられないのでぇ…(酷)
わんちゃんズの正体はワイバーンがお料理されてからになります!馬肉じゃないですwww
誤字、脱字がありましたらお知らせください!助かります(〃´ω`〃)
ブクマ&評価ありがとうございます♡




