121・わんちゃんズ
ポイポイポイ、とエデルさんは3匹のワイバーンを空間収納魔法に入れてしまった。その際、エデルさんがなんか首を傾げてた。残りは10匹。
皆がどうしようか?と頭を悩ませている。
「はい!いい考えがあるよ!」
元気よく手を挙げると伯爵様は怪訝な顔で、エデルさんはキラキラ笑顔で振り向いた。
「重力魔法で軽くしたわいばーんを浮かべて私が外道まで投げる!」
ふふん!どうよ?外道まで出ればそこから荷車で運べるし、いい考えじゃなかろうか。パワーで全てを丸っと解決だっ!
「……」
胸を張ってドヤ顔決めたら伯爵様がドン引きした顔で私を見下ろしていた。
「え、ナニソレ。こわ。怖すぎるわ。空からどんどんワイバーンが降ってきたらさすがの俺でも怖いわ。却下」
「ぶぅ〜」
即却下されてしまった。いい考えだと思ったのに。
仕方ない、ちょっと待つしかないかぁ…。
「…それにしても、こんなに状態の良いワイバーンは久しぶりに見たよ。流血もないし、一体どうやって仕留めたんだい?」
「確かに…どうやったんだ?」
エデルさんがワクワク顔でしゃがみ込んで私を覗き込む。近い近い。
伯爵様も上から顎を撫でながら首を傾げる。
「えとね、これくらいの石をこう…ふん!て頭を狙って落としたんだよ」
「石……」
エデルさんが笑顔のまま呟いて固まった。
そ、石だよ。石。だからそろそろ…。
「──う、うわぁぁぁぁ!!!!」
「な、なんだ?!わぁぁッ!!」
ワイバーンの巨体の向こう側から悲鳴と叫び声があがった。
伯爵様とエデルさんが弾かれたように振り返る。
「あ、目を覚ましたみたいだね」
「は?!え、おまっ、アレ生きてるのか!?」
「生きてるよ〜。だってぶつけたのはただの石だし。倒れてたのはこめかみ狙ってぶつけたから強めの脳震盪だよ」
私が説明してる間にエデルさんは暴れ出したワイバーンの方へ向かって行った。
「おまえ倒した!て言ってたじゃねぇか!」
「殺したとは言ってないよ?だってお肉は鮮度が命!だからね」
「ホンッットにブレねぇな!」
そう叫ぶと伯爵様も剣を抜いてワイバーンに向かって行ってしまう。
取り敢えず翼があるから逃げられ無いようにしないとだ。う〜ん、どうしようか。
あ、そうだ。
「『沢山の木の根っ子さーん!ワイバーンを簀巻きにしちゃってー!』」
魔法詠唱をなんか格好良く言いたいけどね〜。ちょっと面倒くさいのと私の深淵の厨二ちゃんが『呼んだ?』てひょっこり顔を出してムズムズするから、どうせどう唱えても魔法は発動するのでゆる〜い感じで。
幸いここには木しかないので広範囲に魔力を流して一気に木を動かす。
ちょっと離れた場所で魔法を放とうとしていたエデルさんと剣を構えていた伯爵様が呆気に取られたように私を振り返った。
魔力が流れた木から順に根っ子がまるで鞭みたいにシュルシュルとワイバーンの巨体を絡め取ってゆく。目が覚めていたワイバーンが引き千切ろうとギャーギャー雄叫びを上げているけど、ただの木の根っこならともかく、私が魔力を流して強化してるから簡単には千切れない。
面白いくらい簡単に捕縛されてゆくワイバーンを眺めながら「これは簀巻きというよりボンレスハムなのでは?」とか考えていた。
ややあって活きの良いワイバーンのボンレスハムがコロコロと転がる光景が完成。中には気絶したままボンレスハムになっている個体もチラホラ居る。
ワイバーンが下敷きにしていた木が全てボンレスハムを作っているため、森の中にちょっぴり更地のような場所が出来てしまった。
「─ぇ。ぇ。えぇぇーーー?!なにそれ!?」
伯爵様や兵士のお兄さんが呆然とするなか一番最初に我に返ったぽいエデルさんが私に突進してきた。
近い。相変わらず距離が近い!
グイグイと顔を押し返して変顔になってるのもお構い無しで近付いてくる。
「えーん、伯爵様ー!変態がー!」
「! な、なにやってるんですかアンタ!」
若干棒嘘泣きで伯爵様を呼ぶと慌ててかけ寄って私の胴体を掴み抱え上げエデルさんから引き離してくれた。助かった…。
「あ〜…もっと話が聞きたいのにぃ」
「自重!もっと自重してください!傍目には幼女にハァハァしてる変態にしか見えないんですよアンタ!」
「え〜!」
伯爵様に叱られてエデルさんは唇を尖らせてぶーぶー言っていた。子供か。
ついでとばかりにエデルさんに生きたままのワイバーンを空間収納させた事を怒られた。先に言えって。なんか生きたまま空間収納すると魔力を持つ生き物だとこっちの魔力を余分に吸われちゃうらしい。知らんかった。気をつけよ。だからエデルさん首を傾げてたのか。
「それはそうと、ここからどうするか…だな」
ボンレスハムを横目で見ながら伯爵様が首を撫でている。前世でイケメンがよくやっていた肩コリポーズだ。肩こってるの?
「さっきの魔法で外道までの道作ろうか?それなら荷車も来れるよね」
「は?」
「もしくは外道までの木を退けて『炎の狼』が引っ張って行く手もあるよ」
「………なんだ、その『炎の狼』って」
「はえ?」
怪訝な顔して私の顔を見る伯爵様の表情が「聞いてないんだが?」て物語っている。
あれ?伯爵様にわんちゃんズ見せたことなかったっけ?………ないな。
不審な顔してる伯爵様とは対照的にエデルさんは「ナニソレ?!」とワクワク顔を近付いてくる。
「魔法の狼だよ。前に『魔法の紐』作ってた時に出来た副産物…的な?」
「そんな魔法は聞いてないんだが?」
「あっれぇぇ??」
伯爵様ってば私の事大好きだし、何なら私より私の事知ってるからわんちゃんズの事も知ってると思い込んでいたのに、どうやら知らなかったみたいだ。
「まぁ、そんなことはちっちゃな事だよー」
「お前の言うちっちゃな事は信用ならん」
「失敬な」
こんな信用マックスな幼女なかなか居ないのになんて言い草。…自分で言うのもなんだけど。
「そもそも犬にあの巨体が運べるのか?」
「ムッ!うちのわんちゃんズは有能で力持ちだもん!アレくらいお昼ご飯前だもんね!」
「朝飯じゃないのかよ」
「朝ご飯はもう食べたので。それにもうすぐお昼ご飯なので」
キリッとキメ顔で言うと伯爵様が「何言ってるんだコイツ」みたいな目で見てきた。ごはんは大事なんだぞ。
「取り敢えず見れば解るよ!てなワケで『炎の狼』!おいでませ、わんちゃんズ!」
空中にボボボボっと青い丸い炎が10個現れ、ぴょこん、と耳が生えたかと思うとそれがくるんと回りシタッ!と着地した。
「あぉーーん!」
「わふわふ」
「わぅ?」
それぞれが私の前に並んで何か言いたげにワフワフお返事する。
「ん?あれ?なんかみんな変わってない?」
ンヶ月前、ジークの尻尾を狙って冒険した時のわんちゃんズは黄色っぽいオレンジ色で身体全体が炎で出来ていたのに、今のわんちゃんズは青い炎で耳の先っちょと尻尾と手と足は炎を纏っているけど顔や身体は銀色の艶々なオケケの立派なわんちゃ…いや、狼になっている。なんで?この数ヶ月で成長したとか?そんなバカな。
「ちょ、え、ウソ、まさか、そんな」
背後からエデルさんの震えるような声が聞こえて振り返ると恋する乙女みたいに胸の前で両手をグーにしてオメメキラキラで震えてた。イケメンが台無しである。
その隣で伯爵様はドン引きしたようにエデルからちょっと距離を開けていた。その気持は解る。ほんとイケメンが台無しだわ。
みんな大好き変態エデルさんだよぉぉ、な回でした!
誤字、脱字がありましたらお知らせください!助かります(〃´ω`〃)
ブクマ&評価ありがとうございます♡




