120・おっきいトカゲ
「お前たち!大丈夫か!?」
「はえ?」
和気あいあいでボロアードの血抜きや何にして食べる?とか談笑しながら作業していた所へこの緊迫感満載の伯爵様の登場に全員がポカーンとした。
「えっと…?」
ショーンさんが困惑気味に首を傾げると今度は伯爵様が首を傾げる。
「え?」
「え?」
「?」
「?」
お互いが首を傾げ合う変な状況が出来上がってしまった。
「何かあったの?」
「いやいやいや、それはこっちの台詞なんだが?!」
伯爵様の突っ込みに私も首を傾げた。
きょとんとした私に今度は伯爵様の頭に『?』マークが飛び交っている。
「一時間程前にワイバーンの群れが現れ森に降りたと緊急の連絡が入った。森にはお前達が狩りに出ているからある程度は時間稼ぎが出来るはずだとは考えていたんだが…」
「わいばぁーん、て何?」
「何と言われても…灰色で翼の生えた蜥蜴みたいな…いや、蜥蜴とは違うか…?まぁそんな感じの魔物だ」
既視感。何か見たことあるぞ。
「ワイバーンは二足翼竜とも呼ばれる下位ではあるが竜の一種だ。一匹で村ひとつ消すことも出来る狂暴性と破壊力を持ち合わせている。人間を殺さず弄ぶ事でも知られているんだが……おい?聞いてるか?」
「……」
二足、翼!竜!?竜って事は食べられるって事だよね?念願の竜肉!ジークは食べられないからちょっと諦めてた竜!肉!
「…じゅる」
おっとと…ヨダレが。
それより、もしかしてさっき打ち落としたのがワイバーンだったのかな?一応伯爵様の話とは合致するけど。違ったとしてもそれはまぁいいか。
「えっと、多分だけどあっちの森に落ちてると思う。わいばーんぽいの全部」
「は?」
「なんか私の事美味しそうに見てきたから撃ち落とした」
「はぁぁぁ!?」
伯爵様が変な顔で叫ぶと背後でボロアードの解体をしていた皆がなんだなんだ?とざわつき出した。
「隊長~どうかしたんスか?」
声をかけてきたのは最近メイド長に片思い以下略のご機嫌クルト君。
「この辺にわいばーん、出たんだって~」
「え」
クルト君が笑顔で固まる。クルト君の背後の皆もピシッと固まった。あ、そっか、恐い魔物だっけ。
「で、みんながボロアードと戦闘中にやっつけておいたんだよ。今日はボロアードとわいばーんの焼き肉パーティーだね!」
ぐっ!と親指を立てると何か急に皆が虚無顔になってブツブツ言いながらボロアードの解体の続きを始めた。
あれ?わいばーんのお肉美味しくないのかな。皆そんなに喜んでないような…?
伯爵様もなんか微妙な顔してる。
ま、いいや。伯爵様と若干青い顔した何人かの兵士さん達がわいばーんを確認に行くって言うので、私もわいばーんの落ちた場所まで一緒に行く事にした。
「ほらな、俺の予言が当たっちゃったよ…」
「だな」
「俺もいつかそんな日が遠からずやってくる気がしてたさ」
「まさかこんな早く…」
「「「「竜を落とすなんてな~…」」」」
皆が背後で虚無顔でそんな会話をしてるとは知らず、竜肉を楽しみに伯爵様の後を追いかけた。
ほんの数分歩いた森の中の鬱蒼とした場所にわいばーんがあちこちに落ちていた。
一足先に向かって状況を確認していた人が伯爵様の元へ近付き、困惑しながらも報告し出す。
「間違いなく…その、ワイバーン、です…」
なんだか凄い苦い物を食べたみたいな顔でそう口にした。そして私を見て引き攣ったように愛想笑いする。
「これ、わいばーん?」
指さしてもう一度確認してみると、伯爵様は「ぉ、おう、そ、だな…」と光のない目で遠くを見ながら答えた。
「どうやったらこんなスタンピード寸前のワイバーンの群れを狩れるんだよ…俺の胃を殺す気か…?そうなのか…?」
更に何かブツブツ言っている。
まぁ伯爵様の反応はさておき。
「これ、食べられるの?」
わくわくしながら伯爵様の服を引っぱる。
食べられるの?!食べられないの?!どっち?!
「く、食え…る」
なんだその歯切れの悪い答えは。
「お前…本当にブレないな…。…ワイバーンは食肉として最高級ランクだ。故に討伐後は王家に献上するのが暗黙の了解となって、いる…」
まさに苦虫を噛む、て表情の伯爵様。
そして。
最!高!級!お肉!
…いやそこじゃなくて。─なんやて?
王家に献上?は?なんで?
「ヤダ」
そこは一刀両断でお断りする。だって討ち取ったのは私だし。なんでなんにもしてない人にあげなきゃいけないワケ?そんなん知らん!
「暗黙の了解、て事はみんなが黙ってれば良いってことだよね!だからヤダ!ヤだったらヤダ!あげない!」
伯爵様がグッと息を詰まらせた様な変な顔してる。
「だがこれだけの数だぞ?解体にも時間はかかるし、何よりワイバーンの素材は武具に優れている。血だって薬に使えるし何一つ無駄に出来ない貴重なものだ。それにお前、ひとりじゃ解体なんて出来ないだろ?」
そんなの知らん!
…と言いたい所だけど。
母みたいに解体は自分じゃ出来ないしなぁ。むむ。
「じゃあ…解体は伯爵様の伝手でお願いする…。私はお肉回収できたら良いから残りは伯爵様にあげるよ」
「アホか。そんなの買い取りに決まってるだろ」
呆れたように言われた。まぁお金貰えるなら貰ったほうがいいのかな。うん、貰っておこう。相場は知らないけど。
「それより、どう移動させるかが問題ですよ。ここには道らしき物もありませんし、台車を運ぶにしても…」
と、さっき伯爵様にワイバーンの確認を伝えた人が頭を抱えている。
「空間収納すればいいんじゃない?」
「それが出来るのはお前だけだ」
こっそり小声で伝えると伯爵様は口角を引き攣らせて小声で返してきた。
そう言えば私の空間収納の容量は他の人には秘密だっけ。
「じゃぁエデルさんに手伝ってもらったら?あの人ならそう言う便利な魔法使えそうだし!」
名案ではなかろうか。うむ、私天才では?
「ぇ…あの人…使うのか?いや…しかし…」
「面倒な事は面倒臭そうな人に頼むべきだと思う」
超他力本願─またの名を丸投げとも言うけど。
何と無くだけどあの人ならどうにかしてくれる気がするし。
「それ、さらなる面倒を引き寄せるだけじゃねーか」
「大丈夫だよー。面倒事も面倒な人に巡り巡って回っていくよ!」
「お前の『大丈夫』くらい不安なものはないんだが」
「失敬な」
結局悩んだ末、エデルさんにお願いする事に伯爵様は決めた。私が全部空間収納するのを見られる危険性とエデルさんの面倒臭さを天秤に掛けた結果である。
お屋敷に居るエデルさんは呼びに来た兵士のお兄さんと一緒にあっという間に戻ってきた。笑顔で。転移で。
転移魔法の無駄使いだ!私には教えてくれないのに自分の欲求には無駄打ちするのなんかムカつく。
「ワイバーン狩ったって本当?」
わくわくしてるのを隠そうともせずキラキラ瞳を輝かせるエデルさん。この人が問題のある人じゃなきゃ多分女の子はイチコロではなかろうかと思うほど綺麗な顔なのに…。変態っぽさが滲み出ていて全てを台無しにしている。
「先生なら何とか運搬出来る魔法を知っているのではないかと思いまして…」
「ん〜…そうだねぇ。空間収納に3匹は入るけど後は人力になるかなぁ」
「ですよね…。う〜ん…どうするかな…」
わぁ。エデルさんでも空間収納魔法に3匹なのか…。多分私全部入るぞ。伯爵様が言うようにやっぱ黙ってて正解って事かな。
けどエデルさんでも最適解は出てこないなら仕方ないかぁ。ここは人力─パゥワァァァ!(力)で解決するしかないね。
暴力は全てを解決するって言うし!…あれ?なんか違ったっけ?ま、いいや。
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ブクマ&評価ありがとうございます♡
お久しぶりです!(´;ω;`)
やっと…!やっと機種変しました!!スマホ入力だったので化石スマホとはおさらばしてきました(っ˘̩╭╮˘̩)っ
ぬるぬる!すらすら動くぜフリック入力!www




