11・模擬戦2
「こんな子供取り囲んじまえば楽勝だろ!!」
「もらったぁ!!」
「おいおい!こんな小さいお嬢ちゃんに本気になるなよ~大人気ないぜ。ちっと驚かせるだけで充分だろ」
おぉ!皆私を嘗めてくれてる!
さっき準備運動したので足元は軽い。皆中心点である私に突っ込んできた。
「お~い!お前等!嘗めてかかると痛い目に遭うぞー!」
伯爵様の声援?が聞こえても私への態度は変わることはない。
確かメッコメコにやって良いって言ってたよね?どの程度がメッコメコなのか解らないけど、取り敢えず一撃づつ入れていこう。ちょっと力を入れても元々鍛えてる軍人さんなので多分問題ないよね。
飛びかかってきた数人を避けるように低い重心で滑り抜ける。あっと言う間に私は中心から外へ出た。勿論滑り抜けるとき数人に一撃づつ入れて、どれくらい力を入れれば良いのか確認する。
一番最初に攻撃してきた人は膝を着いているものの倒れなかった。後の数人は撃沈。最後尾の人は泡吹いてた。
「な、なんだ!?」
「なんつー速さだ!おい!陣形を組め!」
バタバタと倒れた人達にやっと私が只の子供ではないと認めたようだ。
「ふむ…なるほど」
私は力の具合を確認してにぎにぎと掌を開閉する。
人間相手の戦闘は今日が初めてだけど、コツは掴んだかな?
「よーし!いくよー!」
足に力を乗せ飛び出す。
速度をあげて人の間を縫うように全身を使って縦横無尽に跳び跳ね、片っ端から一撃を急所に入れて行く。たまに受け止められて弾き返す人も居たけど、体勢を崩さず間を与えずに攻撃を返せば最長二撃目には地面と仲良しになった。
「くそっ!何だこのガキ!」
「私のお菓子のために!散れぇぇい!!」
「残り30秒!!」
伯爵様が懐中時計を見ながら叫ぶ。
攻撃の手を弛めず辺りを見渡せば残りは三人だった。目の前の一人を倒し、残り二人の内の一人に木剣を振り下ろす。
ガァン!!とおよそ木剣から響いたとは思えない音を轟かせながら相手の人は吹っ飛んだ。
「残りひとり!」
私のお菓子の糧となるが良い!
欲望に駆られて木剣を振り下ろした瞬間、力加減を間違えたことに気が付いた。
あ!ヤバイ!ミンチにしちゃうっ!!
車は急に止まれない!そんな言葉が思い浮かんで慌てて木剣の軌道をそらす。けど間に合わず相手は私の攻撃を受け止めた。木剣同士がぶつかり合い、大きな音が響く。そして─。
─メキッ
軋む音が木剣から聞こえ次いで爆散した。
「!」
追撃が来る前に相手から距離を取り、倒れた兵士の持つ木剣を拾い再び挑む。体勢を整える間は与えない!
ガンッ!
死角から振り上げた攻撃を相手は身を捻って受け流す。これで二度目の攻防だ。けど次で落とす!
フルスピードで相手の背後を取った。そのまま木剣を横に薙ぎ払う。
「!」
しかし相手はほんの少しの動作でそれを避け、振り向き様に木剣を振り上げた。それを往なし相手の足元へ着地すると両足に力を込めて再び飛び上がる。近すぎる距離では剣は振るえない。なので─。
「にゃぁぁぁぁ!!」
「!?」
相手の人が驚きに大きく目を開くのが見える。
ゴス!っと重い音がして私と相手の額がぶつかった。そう。頭突きである。
別に木剣だけで戦えって言われてないし。頭突きするなって言われてないもんね。
ふら…っと相手の身体が後ろへ傾いた。そのまま倒れるかと思われたがなんと、堪えた。むむっ、しぶとい!
これで終わりだ!と構えた瞬間、「終了!!」と伯爵様が叫んだ。
その声で踏み出そうとした足をピタリと止め、私はエルナたんの方へ振り向いた。
「エルナたーん!見ててくれた!?頑張ったよー!」
両手をブンブン振ると控えめに笑顔で手を振り返してくれた。それを見て私は彼女の方へ駆け出そうとした。のだが。
「んにゃ!?」
背後から脇に両手が差し込まれ、ふわりと持ち上げられた。
にゃにすんだ!と首だけ振り返る。そこにはさっきまで私と戦っていた人が額から血を流しながらどこか嬉しそうにしていたのだった。……どM?
改めて相手を見るとまだ青年と呼ぶにはまだ幼い。14~16歳くらいだろうか。灰色の髪に紫水晶の瞳の柔和な笑顔の男の子だった。残念ながら血をダラダラ流しながら微笑んでいるので折角の綺麗な顔が私にはどMの変態さんに見える。
「君、凄いね」
ぶらーんと持ち上げられたまま彼は伯爵様の方へと進んで行く。
「俺も一応は戦闘には自信がある方なんだけど、まさか頭突きされるなんて思ってなかった」
にこにこと私を持ち上げたまま笑う。ヤバイ。やっぱどMだ、この人!
「へ…」
「へ?」
「変態だーー!!」
「えぇ!?」
力一杯叫ぶと驚いた彼があたふたと私を伯爵様に差し出した。
差し出された伯爵様もそのまま私を受け取る。そして地面に下ろされた。私は慌ててエルナたんの手を握って公爵様の影に隠れる。伯爵様が声を大にして爆笑しそれに対してどMさんは困った顔していた。
「ぶわっはっはっはっ!!変態って!!」
「えぇー…俺正常なんだけど…」
公爵様の影でガルガルしてると漸く笑いが収まったのか伯爵様が涙が浮かべたまま手招きする。胡乱な目で眺めて居ると公爵様が「大丈夫だよ」と頭を撫でてくれた。なのでエルナたんを残し自分だけ前へ出る。
「あ~可笑し。お嬢ちゃんもそんなに警戒するなって」
「伯爵様。笑いすぎです」
「そりゃ笑いたくもなるだろ。その面で変態呼ばわりされてたら」
流れる血を拭った彼は呆れたような顔で伯爵様を一瞥した。
「コイツはテオドール。剣の扱いはまだまだだが、戦闘センスはうちの中じゃトップクラスだ」
「へぇ…君がテオドールか。ジョシュアから話は聞いてたよ」
「恐縮です」
公爵様が笑顔を浮かべると変態さん─改めテオドールさんも笑顔で答える。
「まぁ話は部屋に戻ってからするか。─よし!お前等!ボーナスチャンスは終了だ!引き続き鍛練に励め!!」
伯爵様が大きな声で命令すると、気絶した人は模擬戦に参加しなかった人に引き摺られて演習場の隅に並べられていった。
ボーナスゲットしたのはテオドールさんと後もうひとりはギヴソンさんだった。気が付かなかったよ…。吹っ飛ばしてごめんね、師匠。
テオドールさんが加わり、私達は元居た部屋へと戻った。いつの間にかお茶とお菓子がセッティングし直されていて驚く。メイドさんすごい。
どっかりと腰を下ろした伯爵様の背後にギヴソンさんとテオドールさんが控える。
「約束だからな。ボーナスはちゃんと出すぞ」
ちらりと振り向き告げると二人の口角が上がった。臨時収入って嬉しいよね。
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