117・聖星石
また怒られた。
ちょっと魔石に魔力を充電…じゃなくて充魔力してみただけなのに。
「きゅーん…(ま、魔石を作ってしまった…)」
ジークは虚ろな目で同じことをぶつぶつ呟いている。
「作ったんじゃないもん。魔力を空の魔石に込めただけだもん」
「いやそれが問題なんだけどね…」
シーナちゃんも困ったように笑っている。何がそんなに問題なのか全然解らない。
「う~ん…。魔石って言うのはね、人間以外の生き物にしか作れないんだよ。勿論、魔力が空になった魔石が復活することなんてない」
「そうなの?」
「そう。魔石はその生き物の中心…人間で言うと心臓にあたるものなんだ。小さい心臓を長い年月をかけて体の中で育てて行く─僕達人間はそれが自然に出来る、と言うか成長して行くもので、ある程度すれば成長も止まる。けれど魔石を体内に宿すものたちは自身の魔力を練り込んで死ぬまで永遠に成長させて行くんだ」
「へ~」
だから先代古竜の魔石はこんなに大きいんだ。最初から大きい訳じゃなかったんだな。
「じゃぁ人間が魔物みたいに心臓に魔力を流して魔石にしようと思ったらおっきくなりすぎて破裂して死んじゃうって事?」
「う~ん、どうだろうね。試した人も居たかもしれないけど、命をかける行為だし…」
「誰にも確認されてないってことかぁ」
だから興味本位で試しちゃ駄目だよ、と釘を刺された。さすがに自分の命を懸けたギャンブルなんて危なくてやらないよ。
「そんなことより、問題はラピスが魔石を復活させちゃったって事だよ!」
「きゃん!(そうだ!有り得ないことを仕出かしたんだぞ!?)」
シーナちゃんとジークが食い気味に言ってくる。え、そんなに駄目なことなの?
「わう?!(一体どうやったらそんなことになるんだ?!我にもムリだぞ!)」
「え~?どうやったらって…」
ちょ、ジーク顔近い。歯茎むき出しで顔近づけないでよぉ。
仕方無いので余ってる空の魔石を手にとってやって見せることにした。
「こう…真ん中に旋風みたいに魔力を集めて…石の容量ギリギリで魔力を─止める!ハイ出来たー!」
うん。一回成功したからコツは掴めたかな。余裕余裕!
手の中にはさっきと同じ青い魔石が出来上がった。
「─て!何簡単にまたとんでもないもの作ってるんだ!?」
わ、伯爵様顔が近い。目が若干血走ってる。近い近い近い。
「そんなに難しくないよ?」
「そういう問題じゃない!!」
伯爵様が私の充魔石で復活した魔石ふたつを眺めて面白い顔してる。あと何か頭抱えてる。なぜ。
─パァァン!
そんな伯爵様の面白い顔を見ていたら背後で何かが弾けた音がした。
「きゃわーーん!!(目が!目がぁぁーー!!)」
振り返ると黒い毛玉が風の谷の某大佐みたいな台詞を叫びながら転げ回っていた。なんの遊び?なんちゃって王族ごっこかな?
聞くと私が言ったように空の魔石に魔力を流したら破裂したらしい。犬の体なので両手に挟んでたら小さな砂粒みたいに破裂したそれが目を直撃したようだ。仕方無いなぁ。治癒魔法をかけてあげよう、ホレ。
「わうぅ…(死ぬかと思った…)」
淡い治癒魔法の光に包まれながらジークが目をシパシパさせる。本当にジークって古竜なのか段々怪しくなってきたな。
「わ!?」
今度はジルが試したのか、握ったてのひらから破裂音が聞こえ、開くとさらさらと砂のようなものが落ちていった。
魔力を使いきった魔石は沢山あるからシーナちゃんやヤトーも何度か試したけれど誰も成功しない。皆が言うには魔力を流した途端に魔石が割れ、魔力の注入を止めようとした瞬間にはパンと弾けて砂になってしまうようだ。なんでだ?
「う~ん…ラピスが言う通りイメージしても全然出来ないや…」
シーナちゃんが小首を傾げててのひらの砂を見つめている。
なんでみんな出来ないんだろう?と考えて気が付いた。この世界には電池と呼ばれる物が存在しないからだ。私は前世の記憶があるから電池と言えば充電!と言うイメージがあるけれど、この世界の人には充電と伝えてもピンとこないもんね…。
電気の力を小さな物に詰め込む─そのイメージが出来ない。魔力は最初から魔石に入っているもの─これが普通なんだ。だから魔力をそのままの魔力で流し込むから石が耐えられない。
「なるほど…」
要するに電池を知らない私以外には無理ってことだね。
説明しても良いけど、これが役に立つかって言われると微妙だし、おまけに魔石を復活させるのはあんま良いことじゃないみたいだし、封印封い…ん…??いや待てよ?
「あ!お前また!」
箱の中から大きめの空魔石を取り出した私に伯爵様が焦った様に走り寄る。
「えと…私の魔力に魔法を加えて…む?こうかな?んん?─よし」
目を閉じて集中。充魔力に注ぐ魔力にある魔法を編み込んで──。
手の中の石が段々温かくなって、閉じた瞼の向こうから明るい光が一瞬だけ見えた。
「──出来た!」
ばばーーん!手の中の魔石は見事に復活を遂げていた。今度は青くなくてダイヤモンドみたいにピカピカしている中に金色の星がちらほら瞬いているように見えた。
「ぇ、ちょ、ラピス…?」
ジルが血の気の引いた顔で呼ぶ。シーナちゃんとヤトーは「あわわわ…!」と狼狽え、伯爵様とジークは真っ白になっている。
「えへへ~。これね、魔力と魔法を一緒に魔石に入れたんだ~!これを中心に半径500メートル位に結界が張れるよ。前に公爵様に塵にしちゃダメって言われたから半殺しくらいの電流が流れる様に作ってみたんだぁ~」
どうだ!すごいだろう!これで防犯対策もバッチリだぜ!
中々に良いものを作ったのでは?とみんなに差し出すと何故かみんな顔色が悪い。なんかいけないものでも作ったのかな?こんなにお役立ちアイテムなのに。
「は、伯爵様…俺の見違いじゃなきゃアレって聖星石じゃ…?」
「いやいやいや…ないだろ、うん、ない、ナイナイナイ…」
「ちょ、現実逃避しないでくださいよ…!」
ジルに訪ねられた伯爵様が光のない目で答える。え、そんなにヤバイものなの?これって。
で、聖星石ってなんだ?
「ジーク、聖星石ってなに?」
「わふ…わふ…(せ、聖星石とは…創生の女神フェイタルの力が宿った星の石と言われる…魔石とは異なる宝石だ…あばばばばば…)」
星の石?てことは隕石ってコトかな?と言うかジークが残像が見えるくらい震えて使い物にならない。
「シーナちゃんはこの石の事知ってるの?」
「え、ぁ、うん。昔話で聞いたことあるよ」
「昔話?」
「僕だけじゃなくて、皆も知ってるよ。伯爵様も知ってるみたいだし、一般的な昔話だと思う。『星の輝きを宿す聖なる石は魔を退け、聖女の力を以て人々を安寧の地へと導く』って」
聖女?なんでまた聖女なんだろう?あんなクソビッチヒロインには渡さないぞ。
「けど何でこれが聖星石って事になるの?元は魔石だよ?」
「え?何でって…ラピスには解らないの…?」
シーナちゃんどころか皆が怪訝な表情で私を見る。んん?
「聖星石は見ればそれだけでソレが聖星石って解るんだけど…」
どういう事だろ。私にはただの綺麗な宝石にしか見えないんだけど。え、異世界設定か?
「えぇと…どう伝えたらいいんだろう…。石に拝みたくなるって言うか…神様ってこんな感じなのかな~…って思っちゃう感じと言うか…」
うん!解った!要するに異世界設定だな!私にはちょっと解らないけどそういう事にしとこう!決して思考放棄じゃないもんね!
その後、伯爵様に胃の辺りを撫でながら悲痛な顔でお説教されたのでその聖星石もどきはジル達が暮らす村の中心に10mくらいの穴を掘って埋めたのだった。
エルナたんにあげようと思ったのになぁ…。残念。
ラピスはドリルのように穴を掘って埋めました。多分楽しんでたと思いますwww
誤字、脱字がありましたらお知らせください!助かります(〃´ω`〃)
ブクマ&評価ありがとうございます♡




