114・詐欺だ!
「───てなるかッ!!」
「あぅ!」
ずべし!と伯爵様にチョップされた。
酷い!伯爵様を懐柔出来たら楽勝だと思った私の心を裏切られた瞬間だった。チッ!
「確かに国に所蔵武器の報告義務はある。まぁ大抵の奴は当たり障りのない事しか報告しないが、特定される可能性は低いとはいえ古竜の骨とか流石にヤバイわ!」
「え~。伯爵様は辺境伯だし魔の森に近いし国境も近いし危険がいっぱいだから国王様にちょっと賄賂渡せば大丈夫なんじゃない?お菓子の箱の下にお金を入れてプレゼントすればきっと大丈夫だよ!」
それにそんなに律儀に所蔵武器の報告なんてしなくても良いと思うんだけどな。別に反旗を翻そうとか考えてないんだし。あ、でもエルナたんに何かしたらこの国から王都はなくなるだろうけど。物理的に。
「お前は一体何処でそんなことを覚えてくるんだ……」
頭痛を堪えるような仕草で伯爵様は眉間に皺を寄せる。
そんなこと?前世テレビで悪代官がよくやってたし、この世界でもやってる人はいると思うんだけどなぁ。
「ダメ?」
「ダ!メ!で!す!」
「あぅ!」
ピシッ!とデコピンされてしまった。痛くはないけどなんか声出ちゃうんだよね。
「う~…。じゃぁエルナたんに剣が作れないじゃん…」
どうしよう…。
…………………………ハッ!そうだ!たまたま素材を組み合わせて偶然出来た新素材て事にすれば良いのでは!?
ほら、何て言ったっけ…えぇと…。
「─錬金術だ!!」
「は?」
伯爵様とジル達がぽかんと口を開いたまま固まる。なんだその顔。私変なこと言ってないよ。
「錬金術でたまたま出来た新素材て事にすれば大丈夫なんじゃない?」
へっへっへっ!これ以上の素晴らしい案は無いだろうそうだろう!
「……あり得ん話じゃないが無理がないか?彼奴等が錬成するものは薬が殆どだからな…」
伯爵様が顎を擦りながら何か考えるようにまぶたを閉じる。
「お薬……。壺に材料入れてグルグル混ぜたら色々出来るんじゃないの?宝石とか…」
「なんだその錬金術師は…」
呆れた顔されちゃった。えぇ~…某ゲームみたいに壺に材料入れたら何でも作れるんじゃないの…?お薬ってそんなの薬剤師じゃん!錬金術師じゃないじゃん!詐欺だ!
「ぶぅ~…」
「……う~ん、ラピスが言いたいのって合金みたいなもんか?だったら可能じゃないか?炉で適当に溶かして混ぜたって事にすれば大丈夫だと思うけどな。で、たまたま出来た…って」
頬を膨らませているとヤトーが頭をポンポン撫でながらそう言う。そうだ、ヤトーは鍛冶師でもあるんだっけ。ヤトーがそう言うなら大丈夫なはず。
期待を込めて伯爵様を見上げると、少し考えて渋々だけど頷いてくれた。
やったー!お許しがでたー!
「ジルぅ~コレ、作って?」
可愛く子首をかしげておねだりしてみる。
鉄は熱いうちに打てって言うし、これはガンガンやってもらいたい!
私が描いた設計図を見てジルの口がピクピクしている。
「ジルが言ったんだよ。古竜の骨があったら出来るって」
「いや、あれは…言葉のあやで…」
「ヤトーと一緒なら出来るよね?ね?」
「近い!顔近いから!」
机によじ登ってズイズイと近付いて圧をかける。伯爵様から許可が出たんだから何としてもジルから言質を取らねば!
「~~~!解った!解ったから!」
「やったー!ジルだいすきー!」
両手を上げて喜んでいるとジルが身を竦ませ二の腕を撫でていた。こんなに暑いのに寒いのかな。夏風邪?
「どうした?」
「いえ…何か一瞬寒気が……?」
その様子に伯爵様がジルに声を掛けていたけど、新しくちゃんとした設計図を描くのが忙しいので会話の内容は聞こえなかった。
「あ!そうだ!伯爵様!」
「なんだ?」
うんしょ!とジークを抱えあげる。モコモコの黒い毛玉と私を見て伯爵様は不思議そうに首を捻った。
まだちゃんとジークの事を紹介してなかったんだよね。公爵様とエルナたんにもちゃんとご紹介したことだし、伯爵様にもジークの事を紹介したい。
「さっきも紹介したと思うけど、このこ、ジークフリートて名前で私の新しいお友達なの」
「あぁ。アーチェスが言ってた犬だよな?」
「で、ジークは今は犬なんだけど実は古竜なの」
「なるほど…………………………………は?」
あ、伯爵様もジル達も固まっちゃった。
「今は犬に変身してるだけなんだよ。ね、ジーク」
「きゃうん…(犬…コレは本当に犬の姿なのか…?)」
どこか遠い目でジークが呟く。失敬な。ちゃんと犬だよ。お高いんだよ?ポメラニアン。
「………毛玉にしか見えないんだが…?」
困惑したように伯爵様がジークを見る。だから今は犬って言ってるのに。
「やっぱり犬のままじゃダメなんだよ。伯爵様も皆も信じてないっぽい。ジーク、公爵様の所でやったみたいに馬くらいの大きさで元に戻ってみてよ」
「きゃわん!(いいぞ!馬くらいで良いのか?昨日コツを掴んだからもう少し小型にもなれそうだぞ)」
「おぉ!スゴいね!さすがジーク!」
「わっふん!(えっへん!我、やればデキる竜だからな!)」
抱っこされたままジークが胸を張る。初見では立派な竜で威厳があったのに、何かジークが最近アホの子に見えてきた。
「きゃん!(まぁ見ていろ!)」
腕の中から抜け出したジークはトコトコと何もない場所まで歩くとお座りをして目を閉じる。その様子を伯爵様達は黙って見ているけど、あれは多分私の頭がおかしくなったって思ってる顔だ。失敬な。
胡乱な視線を私に寄越していた伯爵様とジル達を無視してジークを見ると昨日のようにジークの体が光を発し始めて、眩しさに皆も目を眇め、光を掌でさえぎろうとする。光の中でムクムクとジークの体が形を変えて行き光が徐々に薄れて行くと、そこには大型犬サイズの真っ黒の竜が居た。
「わー!スゴい!ジーク昨日より更にちっちゃいね!」
『フフンッ!我はやればデキる竜なのだ!…て!こら!跨がるんじゃない!』
大型犬サイズとはいえ私よりはでっかいので何だか乗れそうな気がしてつい背中に跨がる。なんだろう。なんかジャストサイズなんだけど。
「伯爵様見てー!」
嬉しくて伯爵様に呼び掛ける。
けれど反応がないので振り替えると、伯爵様もジル達もパッカリ口を開いたまま固まっていた。
*****
一方その頃の公爵邸─。
「─お嬢様?どーしたんです?またそんな冷気放って」
「別に?」
にっこり微笑むエルディアナの足元がピキピキと凍っているのを見たテオは「あぁ、またラピスがなんかしたのかな?」とのほほんと考えていたのだった。
ちょっと更新早いですよ!(いつもと比べると!www)
最後のはジルの寒気の正体でした♡
誤字、脱字がありましたらお知らせください!助かります(〃´ω`〃)
ブクマ&評価ありがとうございますー!⸜(*ˊᗜˋ*)⸝
もうひとつ!
短編書きました!ノンストレスで読めるものを…と書いてみましたのでお暇潰しにどうぞ~♡
【悪役令嬢の娘は世界を救わない】
https://ncode.syosetu.com/n0553ii/




