112・ワタシヤレバデキルコ!
ジークに横取りされたウサギに思いを馳せながら朝食を食べていると裏庭からは母のきゃっきゃと騒ぐ声が聞こえた。
多分意気揚々とピンクのウサギを捌いてるんだろうな。
「ラピスー?このピンクの毛皮いる?」
「いる!エルナたんにあげるから!」
戸口から頬に返り血のついたホラーな母が顔を覗かせて皮をちらつかせる。
ウサギの毛皮はぬくぬくなので取っとかなきゃ。加工の方法は知らないからあとでジルに相談してみよう。
ピンクの毛皮ならエルナたんに似合うと思うんだよね~むふふ。
「今夜のご飯はレア肉よぉ~」
見た目を裏切る猟奇的な母のナイフ捌きに祖父母もどこか遠い目をしている。
ふと祖母と目が合った。にっこりと微笑みながら向かいに腰かけて私を微笑ましそうに見詰めながら口を開く。
「ところでラピスちゃんはこれから何をするのかしら?」
「えとね、ご飯食べたら伯爵様の所に行くよ」
正直に答えたのに祖母はピシリと音がしそうなほど固まった。笑顔のままで。
「えぇと…ラピスちゃんはハーマン伯爵のお屋敷で何をしているのか、聞いてもいいかしら…?」
「えーとね、朝の襲撃で兵士さん達と運動して、それから書庫で魔法の本を読んでお勉強して、お昼ごはん食べてからアー君と遊んだり一緒にお勉強したり、たまに森で魔物と戦ったり、あ!あとね、ウサギいっぱい捕獲したり─」
「ちょっ、ちょっと待ってっ?え?襲撃?え?え?魔物と戦…?ウサギって魔の森の?」
「うん!」
ウサギ美味しいよね!思い出すと笑顔になっちゃう。あ、でもたまにはボロアードも食べたい。牛と豚の中間みたいな感じで焼き肉にすると美味しいんだよね~。伯爵様のおうちにはお味噌もあるから味噌漬けにしてから焼くのも美味しいかもしれない。
「お母さん、ラピスに常識を見ちゃダメよー」
裏庭から鼻唄混じりに母の声がして祖母は「貴女が言うの…?」と呆れ混じりに溜め息をついた。
母のナイフ捌きを見ていた祖父も前に座ると私を見て「本当に冗談じゃなかったのか…」と遠い目で私を見ている。
「ごちそうさまでした!」
朝食を食べ終わると母が解体されたウサギを手に帰ってきた。渡されたピンクの毛皮を空間収納に突っ込んでいると祖父母が椅子を倒す勢いで立ち上がる。
「空間収納魔法まで使えるのか!?聞いてないぞ!」
「え?あ、言ってなかったっけ?この子、殆どの魔法が使えるみたいよ。最近は転移魔法まで自作しようとしてるみたいね」
なんで知ってんの母よ。
胡乱な目で見上げていると母に軽くおでこを弾かれた。
「あなた、ハーマン様には何でも言うのにうちじゃ言わないでしょ。一応お手紙のやり取りであなたの事を知らせてもらってるのよ。親なんだから当たり前でしょう」
なぬ。て事は私のやらかしたアレやソレやコレコレは全て筒抜けってこと…?あばばばば…!
「ふふふ。当然色々知ってるわよ~?勿論今回の事もハーマン様に知らせるから覚悟するのね」
あばあばしてると母が黒い笑顔で告げてきた。酷い。
伯爵様にチクられたら確実に怒られる!いや待て、賄賂!賄賂を渡せばお説教回避の道もあるのでは…!?よし、賄賂を渡そう!
今いいものいっぱい持ってるし、懐柔できるはずだ。大丈夫、ワタシヤレバデキルコ!ふへへ。
俯いて笑う私の姿に母は「反省してるみたいね」と勘違いしてるのでそのまま勘違いしていてもらおう。
「わう…(悪い顔しとるな…)」
足元にやって来たジークがぽそっとなにか呟いた気がした。
「じゃ、行ってきまーす!」
部屋で装備を整え玄関を出るとジークがトコトコと近付いてくる。もしかして一緒に行くつもりなのかな。
家の中では祖父母が「ひとりで行かせて大丈夫なのか?」とオロオロとしている。兄は既にお小遣い稼ぎに出掛けていて居なかったけど、両親はいつもの事なので普通に笑顔で「いってらっしゃい」と手を振って見送ってくれた。
「ジーク、私走るけど大丈夫?」
「きゃん!(心配するな!まかせておけ!)」
いやいや、何をまかせるのさ…てかその短い足で本当に大丈夫なの?転ばない?
「まぁ…ジークがそう言うなら…」
ジークの短い足を見ながら渋々頷く私とは対照的に、ジークは鼻をピスピス鳴らしながら鼻唄気分みたいだ。本当に大丈夫なのかな、このポメ…。
「よし、じゃあ行くよ!」
「きゃん!(おー!)」
街の門を出たところでよーいどん!で駆け出した私。ちゃんと着いてきてる?て心配になって左斜め下を見るとなんとジークはちゃんと着いてきていた。しかも意外と余裕な感じだ。
姿はポメだけど中身はちゃんと古竜なんだね。
この分なら全速力で走っても大丈夫かな、とスピードを上げてもジークはやっぱり余裕で着いてきた。むむ…なんか悔しい。
そうこうしてる内にいつもの修行場所の山を越えてジル達の暮らす村も見えてきた。今日はジル達に先に会って行こう。渡すものやお願いもあるしね。
「あぁ~!ラピスちゃんだー!お兄ちゃん!ラピスちゃん来たよー!」
村の入り口でニアが出迎えてくれた。ニアの声でヤトーが現れる。
「ラピス!久し振りだな」
「そっかな?一週間ぶりくらい?」
「だな」
ヤトーはニカッと歯を見せて笑った。そして私の足元のジークを見て不思議そうに「なんだそれ?」と指差す。
「新しくお友達になったジークフリートだよ。ジークって呼んでね」
「わふ!(我は心が広いからな!ゆるす!)」
「わぁ~フワフワだねー!かわいい~!」
ニアがジークの毛をナデナデして顔を埋めてきゃっきゃとはしゃぐ。ジークも目を閉じてそれを受け入れていた。それとも子供好きなのかな。私がナデナデしても怒らないし。
それはさておき。
「ジル作業小屋にいる?」
「あぁ。さっきまで俺もジルと作業小屋にいたからな。まだいるんじゃないか?」
「そっか。お願いしたいことあるから良かったー」
ふへ。例の物は手に入れたし、これでエルナたんの剣が出来る…!ぐへへ…。
「ラピスちゃん、ヨダレでてるよ?お腹すいたの?」
ジュル!危ない危ない…トリップしてた。
ニアに指摘されて慌てて拭う。
「きゃうん…(物凄く邪悪な顔しとるぞ…)」
ジークが胡乱な目付きで見上げてきた。失敬な。
それよりもジルにまたまたプレゼンだ!前回は原料問題で却下されたけど、今回は下準備はバッチリだもんね!
スキップしたい気持ちを抑えながらヤトー達と作業小屋へと向かうのだった。
エルナたんの剣、どんなデザインにしよーかな~。
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