111・肉の恨み
ちょっとびっくりした。
「お母さんは貴族だったの?」
「ん~…まぁそうね…。と言っても小さな田舎のせまーい領地の子爵令嬢…と言うかもはや平民と変わらない暮らしだったんだけどね」
親の前でそれを言うか…母よ。
「けど、お母さんこれでも魔法学園卒業してるのよ?」
ムフー!と自慢気に胸を張る母を見てふと思った。
あれ?じゃあもしかして母、エルナたんのパパと伯爵様と会ったことあるんじゃ?と。
けど初めてうちに公爵様が来たあの時はそんな感じはしなかった。母も何も言わなかったし。
魔法学園自体広いし、生徒も多いし、学年も違ったら案外認知されないのかな?いやいや。母は私から見てもかなり美人…どっちかと言うと可愛い系だ。学生時代ならそれなりに目立つ容姿だと思うんだけどなぁ。
「お母さん、もしかして伯爵様と公爵様と会ったことあるの?」
「う~ん、お母さんの方が学年は上だったから親しくはなかったけどお互いに存在は知ってはいたわね」
まぁ前世だと1学年違うと意外と知らない人多かったっけ。そんな感じかな?
「じゃぁ公爵様が初めてうちに来たときお母さんの事気が付いたの?」
「あ、まぁ…そうね…」
母の視線がスッと逸らされて乾いた笑みを浮かべる。
なんだろ、この母の表情は。
「…ローリアったら、ラピスちゃんには何も話してないのね」
じ~っと母を見上げていると祖母が苦笑し祖父は何だか不機嫌に鼻を鳴らした。
「まぁその話はラピスがもう少し大きくなったらするわ。学園に入学する前には話そうと思ってるの。幸い彼奴等の子供達はラピスと学年が違うし関わることも早々無いと思うから。ね」
母は疲れたような視線で背後から私のほっぺをモチモチする。
何か大事な話なんかな?学園入学前に教えてくれるならそっちがいい。今教えられてもピンと来ないだろうし、多分忘れちゃうだろうから。
「まぁ、その話は置いときましょ。それよりラピスのお説教よ!」
ほぎゃ!まだ終わってなかったの!?
モチモチされていたほっぺをむにっと摘ままれる。
「ごえんなひゃい」
「反省してないわ、この子」
さすが母。取り敢えず謝っとこうと口にした心のこもってない言葉をすぐ見破った。
「ん~!たひゅけて!おじーちゃ!!」
父と兄は役立たずなのでこうなったら祖父母に助けを求めようと手を伸ばせば直ぐ様救出された。場所が変わって今度は祖父の膝だっこにチェンジしたのだった。
その姿に母は甘やかさないで!とぷりぷりしてるけど気にしないもんね!
使えるものは親でも使えって誰かが言ってた気がするし。
その後はまだグチグチと文句を言う母に、漸く腰をあげた父が宥めにかかりお説教は終了したのだった。
その間、ジークは部屋の隅っこで船を漕いでた。後でおしおきである。
お説教タイムが終わった後、祖父母も含めて皆で晩ごはんを食べた。
祖父母は数日我が家にお泊まりするらしく、今夜は一緒に寝ましょう、と祖母に誘われたんだけど…部屋を訪れた私が見たのは仲良く同じベッドで寛ぐ祖父母の姿だった。
え、私ふたりの間で寝るの?色々キツイんですけど…わぁ…お布団ポンポンして呼ばれてる!
「おじゃま…しますぅ…」
そこはかとなく居たたまれない気持ちでのそのそふたりの間に潜り込んだ。うん、居たたまれない。
まぁ秒で寝たけど。だって疲れてたし。
ちなみにジークは足元で丸くなって鼻ちょうちんピスピスしながら寝てた。
その日は夢も見ないほどぐっすり眠れた。また明日から伯爵様の所に通わなくちゃ。
──…。
「ラピスちゃ~ん。朝よ、起きて」
「…んぁ…?」
優しく揺すられ意識が浮上する。
まぶたの向こうが朝日に照らされて白くて眩しい。こしこしと目を擦りながら体を起こすと祖母が「あらあら…うふふ」と柔らかく笑っていた。
「すごい寝癖ねぇ。まるで羊ちゃんだわ」
「ラピスの髪は細くて癖が付きやすいからね」
まだ瞼を閉じたままの私の背後から兄の声が聞こえる。どうやら私の髪を結わえてくれるみたいだ。
「その上寝相も悪いから後頭部は毎朝こんな感じだよ」
兄が笑いながら髪の毛に櫛を入れる。毛先からゆっくり解かしてくれるので痛くない。さすが兄だ。
髪が整えられる頃には意識はすっかり覚醒していてついでにお腹がグゥ~と鳴き始める。その音にふたりは顔を見合わせ噴き出した。ふたりに笑われながらベッドから降りて部屋に着替えをしに戻った。
「まだ暑いし、これでいいかな~」
8月の半ばとは言えまだまだ暑さは続いてるので風通しがいいキャミソールに近い形の服を頭から被る。下はいつも通り少し裾の広がったキュロットみたいなパンツだ。
着替えを終えて部屋を出るときふと思い出した。
あれ?そう言えばジークが居ない。夜は私の足元でグースカ寝てたのに。
「……ま、いいか」
リビングでご飯をねだってる可能性が高そうなので考えるのはやめることにする。絶対朝ごはん見てヨダレ垂らしてるはずだ。
リビングの扉を開くとちょっとびっくりするような光景が広がってた。なんと母がジークを抱っこし目茶苦茶嬉しそうに「ジークちゃんは偉いわね~!」と頭を撫で回してる。ナニゴト?
「あっ、ラピスおはよう。朝食できてるわよ」
「あ、うん…どうしたの?」
「ん~?それがねぇ、ジークちゃんがね~!」
母がウキウキしながら裏口のドアを「じゃーん!」と開いて見せた先には丸々太った小学生男児くらいの大きさの美味しそうなピンク色のウサギが転がっていた。このピンクのウサギどっかで見たことあるぞ。いや確実にある。
「このウサギ、ジークちゃんが捕ってきたのよ!」
「は?」
なんですと?
「え?本当に?ジーク、ホント?」
『きゃん!(これから世話になるからな!)』
ちっちゃい尻尾をぶんぶん振りながらジークは母の腕の中から顔を覗かせた。
「びっくりしたわ~。だって朝ごはんの用意をしようと思って裏口から外に出たらジークちゃんがウサギの前で座ってこっちを見てるんですもの!でね、このウサギはジークちゃんが捕ってきたの?て聞いたらね!お返事したの~!」
母が凄いわー!ときゃっきゃと浮かれていると祖父母がやって来た。ふたりとも転がってるウサギを見て顔を引き攣らせている。
「おい、…ソレ、【皆殺しウサギ】じゃないのか…?」
「あらぁ…ピンクちゃんなんて見たの何年振りかしらねぇ」
「そうなの!レア肉よ!ジークちゃんがプレゼントしてくれたの!」
ピンクのウサギに盛り上がってる所悪いけど、一言ジークに言いたい。
それ!!そのピンクウサギ!私が育ててたヤツぅ!!!!
おのれジーク!ソイツは充分肥えさせてから食べる予定だったウサギなのに!!ジークぅぅぅ!!!
心の中で怨み辛みを叫びながらジークを睨み付ける。
あとで覚えてろよ!!!
育ててた=飼育じゃなくて肉焼いてたくらいの感覚です(ラピス的にw)
お久しぶりです~(゜д゜;)
今年こそは…!更新がんばります!(お尻叩いてください!(。>﹏<。)
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ブクマ&評価ありがとうございます!お休みしてた間にもジワジワ増えてうれしいです♡




