108・裏切り犬
「スゴーイ!ジーク大きさもコントロール出来るんだね!さすが!!」
「………」
パチパチと手を叩く私とは対照的に公爵様が小さく口を開いたままポカンとジークを見つめた。エルナたんとテオは瞬きを忘れたようにジークに見入っている。
目の前には馬より少し大きい漆黒の竜が鎮座しているのだから見慣れていない人間にはさぞかし驚愕だろう。
まぁ私は散々見ているので新鮮味は皆無だけど。
「えっと…ジーク君です!」
『ふふん!我、カッコイイ!』
てへ!と誤魔化すようににこりと作り笑いを浮かべた私を見て、公爵様が両手で顔を覆いその場にしゃがみこんでしまった。
「………ラピス、もしかして王都の上空を古竜に乗って旋回したのは君なのかい…?」
「えぇと…えへへ~…だってエルナたんと通う学校見てみたくて…」
だって折角遠い場所まで来たんだし、ちょっと覗くくらい大丈夫だよね。てか見たいし。
「嬉しい!ラピスが楽しみにしてくれてるなんて…私も今から学園に通うのが楽しみだわ」
エルナたんがぎゅっと手を握ってキラキラのおめめで私に笑いかける。んぉぉ…きゃわいい…!!
「いや、そう言う事じゃ…」
公爵様がぽそりと何か呟いた気がしたけれどきゃっきゃしてる私達の耳には届かなかった。
『ラピス、ラピス』
ジークの呼ぶ声に振り返る。今のジークの声はラインを繋いだ私以外にも聞こえるので自然と全員の視線がジークへ向く。
『その少女がエルナたん、なのだろう?だったら今ラインを繋いでおけば良いのでは?』
あ、そっか。ラインを繋げば犬のジークともおしゃべり出来るもんね!いちいち翻訳するのも面倒だし、エルナたんとジークの間にラインを結んでおいてもらおうかな。
「ラピス。ライン…てなに?」
「えっとね、ジークが犬に変化しててもなんかよく解んないけどお喋りできる様にエルナたんとジークの間に紐を渡す…って感じかな?」
概ねあってる…はず。だよね!とジークに視線を送ると頷いてくれた。
「じゃぁラピスはジークが犬の時ずっとお喋りしてたの?」
「そうだよ」
そう…と呟いたエルナたんからひんやりしたものが風に乗って届く。
「…コホン。─まぁそれはいいわ。確かにお話出来る方が便利よね」
「うん!だよね!」
「それならお父様とテオもライン?を繋いでもらえばどうかしら?ラピスとだけお喋りだなんて…赦しがたい暴挙だわ」
「はえ??う? うん…?」
なんか後半に物騒な単語が聞こえた気がしたけど、気のせいかな?高い所に居たから鼓膜の調子がまだ調わないのかもしれないなぁ。
そんなこんなで、エルナたん、公爵様、テオの3人とジークはお友達になった。
で、ポメに戻ったジークは再びプリンに顔を埋めてガツガツと貪っている。その姿を見て公爵様が悟りの境地みたいな顔で紅茶を口に近付けたまま止まっていた。
プリンを食べ終わったジークの顔はプリンまみれだったけど、器用にぺろーーんと舌を一周回して嘗め取る。え、どうやんのソレ。
「えぇと…それでジーク様…」
「きゃん!(敬称はいらんぞ!我等は対等だ。ラピスと同じ様に接すると良い)」
公爵様の言葉に顔を上げたジークは短い尻尾をフリフリしながら答えた。困惑した表情の公爵様なんてなかなか見れるものじゃないので変な感じがする。
対してエルナたんとテオは順応性が高いのか気にした様子はなかった。
「くぅん…(それに、お前が一番話が解りそうだからな…)」
何処か遠い場所を見るように私に視線を送ってくるジーク。失敬な。
「私だってちゃんとお話しできるもん」
「きゃん!…わふ!(聞いてくれアーチェス!こやつ出会い頭に我の尻尾を切り落とそうとしたんだぞ!?)」
私が公爵様に弱いのを見定めたのか、ジークのやつ公爵様に懐き出した。この裏切り犬めが!!
「伝説の古竜の尻尾を…」
ジークの短い尻尾を見ている公爵様の笑顔は目だけ全然笑ってない。ジークが余計なこと言うから!後で覚えてろよ!
「ラピスとは少しお話ししないといけないみたいだね」
「あわわわ……!」
公爵様にだっこされたジークが水を得た魚のようにフン!と小さく鼻息を漏らし得意気に私を見ている。おのれ…本当に食ってやろうか…!
「ちっ違うの!エルナたんに剣を作ってあげたくて!そしたらジルが古竜の骨があれば出来るって言うから、だから…!」
あわあわと一生懸命エルナたんに説明している間、エルナたんはずっとニコニコと笑みを浮かべたまま私の話すことに相槌を打ってくれる。
「それで、マルチスからひとりで北の霊峰まで行って帰ってきたんだね?」
「ぁ、あうぅ…」
エルナたんとは対照的に公爵様の笑みは全然目が笑ってない。怖い。助けを求めるようにさ迷わせた視線に映ったテオは相変わらず胡散臭い笑顔でただこっちを傍観している。役に立たない。こうなったらエルナたんに、と視線を合わせると突然きゅっ!と両手を握り締められた。
「お父様!ラピスはまだ小さいのにひとりで北の霊峰まで私のために冒険をしてきたのですよ?!凄いわラピス!ね、お父様もそう思うでしょう?」
「え、ぁ…エルディアナ…?」
「けどラピスは女の子なんだから、いくらラピスが強いと言ってもひとりで旅をするのは危険だわ。これからはひとりで冒険の旅なんて行っては駄目よ?どうしてもという時は絶対に私に相談してちょうだい。いい?」
花が咲き乱れるよな可憐な笑顔でエルナたんは私を称賛し、そしてちょっぴり悲しそうな顔で心配を口にして「めっ!」と叱られた。そんなエルナたんの反応に公爵様は諦念にも取れる苦笑を溢す。
「うん!わかったよ、エルナたん」
「そう、ラピスは良い子ね」
優しく頭を撫でられてえへえへ頬をゆるませていると、ジークと公爵様の温度のない視線を感じた。案外あのふたり(ひとりと一匹)は気が合うのかもしれない。
その後も公爵様と結託したジークがちょっと調子に乗ってきたので「口からお尻まで棒を突き刺して火炙りにするのと油で丸揚げとどっちが良い?」って聞いたらブルブル震えながらテオの腕の中に避難していた。
それから一時間ほどエルナたんとお話しした私は「泊まっていかない?」と言うエルナたんの魅惑のお誘いを泣く泣くお断りして帰路につくことにした。お泊まり…エルナたんと同衾…くぅ!
公爵様のお屋敷からジークに乗って飛び立つのは目立つので、人気のない山まで移動。そこからジークに竜の姿に戻ってもらい、公爵様に言われた通り地上から竜の姿がほぼ見えなくなるくらい上昇して帰ることにした。
『これくらいでどうだ?』
「うん。このくらいならジークの姿も鳥程度に見えるから大丈夫じゃないかな」
『よし、では行くか』
「おー!おうちに帰るぞー!」
意気揚々と手をあげる。
エルナたんが帰り際、私とジークに沢山のお土産を用意してくれたので今私の空間収納の中はおやつでいっぱいだ。それを知っているジークも心なしかウキウキソワソワしている。
目的の素材も手に入れたし、エルナたんにも遇えたし、まぁ予定外だったけどエルナたんのママにも会えたし、ジークとエリザベスいう新しい友達も出来たし、中々充実した旅だったと思う。
楽しかったなぁ、と頬を緩ませながら私達は西に飛び立ったのだった。
長らくお休みしてすみませんでした(´TωT`)
こんな趣味丸出しのお話を読んで下さってありがとうございます!!
完全に小説の季節とリアルの季節が被ってしまいましたね…(´゜ω゜`)
追い越されないようにがんばりますー!
誤字、脱字がありましたらお知らせください!助かります(〃´ω`〃)
ブクマ&評価ありがとうございます♡




