103・寄り道
※102ページ『おうちへ帰ろう』の4、5行目を少し直しました(*´ω`*)話の内容は変わってません。
※登場人物表を更新しました!古竜兄妹をプラス☆
『よし!では行くぞ!』
「おー!」
竜の姿に戻ったジークフリートの背中に乗った私が拳をあげる。それを見てジークフリートもフン!と気合いの入った鼻息を噴いた。
落っこちたら大変なのでジークフリートの首に手綱代わりのロープを渡し、ついでにもう一本くくりつけて私のお腹辺りで結ぶ。命綱である。
所でどうやって外に出るの?と声をかけようとしたら急にジークフリートが翼を広げてバサッとはためかせた。そしてフワリと浮き上がった巨体が天井の水晶目掛けて突っ込んで行く。
ぶつかる!と身構えると不思議なことにすぽんと私達は水晶に吸い込まれたのだった。
そして上を目指すようにジークフリートは飛ぶ。水晶の中は淡いピンク色で時々薄い水色や黄色も見えるとても不思議な光景だった。ぐんぐん上昇して行くと進む先が濃い水色に見えてきた。
『ラピス、息を止めろ』
「息?解った。 はーー……プッ!」
息を吸い込んで止めると私達は濃い水色の中に突っ込んだ。けれど濃かった水色は一瞬で薄くなり次いで眩しいくらいの光が射し込んできて目をぎゅっと閉じる。
ザッパーン!と水を叩くような音が聞こえた瞬間、頬を風が撫でた気がして瞼を開くとそこは既に地上ではなかった。
目に映ったのは青い空と白い雲。私達は空に浮いていたのだ。
「わ…うわぁぁぁーーー!!すごーーい!!高ぁーーい!!」
『こ、こら、暴れるな!落ちるぞ!』
下を見下ろすと真っ青なカルデラ湖があり、私達が通り抜けたのがそこだと気付く。ジークフリート達の洞窟はこのカルデラ湖の真下にあったんだ。
「すごいねぇ!空飛んでる!」
『そこまで喜ばれるとなんだか面映ゆいな…』
キャっキャ!と3歳児みたいにはしゃぐ私とは違ってジークフリートは飛び慣れてるのか落ち着いた様子だ。
『ラピス。ちょっと耳を塞いでくれ』
「いいよ。はい!」
人差し指を耳に入れたのを見たジークフリートが息を目一杯吸い込む。どした?緊張してるのか?と思ったらどうやら違うみたいだ。
目一杯吸い込んだ空気を全部吐き出すみたいにしてジークフリートが咆哮する。身体ががビリビリと震える程の咆哮は見えるはずのない空気をまるで波のように震わせ轟いた。
『……もうよいぞ』
「今のなに?ご挨拶?」
『違う。同胞達に我が暫くこの地を離れる事と、妹の事と、後、ラピスは我のと、ととと友だと…!…ごほん。で、仲良くするように…と…』
「そっか!」
吃っちゃって…このツンデレめが。もうバレてるんだから素直になっちゃえばいいのに。
「……ん?あれ?」
『どうかしたのか?』
ふと下を見て違和感を感じた。なんか変だ。
「ちょっと待ってね」
ゴソゴソと胸元を漁って地図を出す。伯爵様の所でチマチマ描き移したやつだ。その地図と地表を見比べてみる。
「ん~…やっぱり違う…」
『………』
何度見比べても地図と実際の空から見た地表の形が違うのだ。
北の山脈を越えた先の国、クレイハイトだっけ?確か地続きだったはずなのに一本の線を引いたみたいに綺麗に離れている。ここからでも確認できるくらい大きな河だ。
「あんな大きな河地図にはなかったと思うんだけど…私が描き写し間違えたのかな…?」
『………』
伯爵様のお屋敷の地図結構古かったし、もしかして地震とかで地殻変動とかあったのかも。
「………ま、いっか。ジークフリート…名前長いからジークでも良い?」
繋がってようが繋がってなかろうが私にとって特に問題ないしね。
ついでにちょっとジークフリートって呼ぶの名前長くて面倒だから略させて貰いたい。
『ふむ。愛称と言うやつだな。良いぞ』
「じゃ帰ろっかー」
『うむ!』
バサァ!とジークフリート改めジークの翼がはためくと風が渦巻きジークの巨体が更に上へと昇って行く。
「きゃー!高ぁーい!はやーい!!あはははは!!」
『……まさかあの一撃が地図を描き変えたとは…』
「なんか言ったぁー?!」
『なんでもない』
風の通り過ぎる音と、私がキャーキャーはしゃぐせいでジークが何か呟いた気がしたけど聞こえなかった。
そして地平線が綺麗に見える位置で止まる。
『西に向かえばいいのか?』
「そうだよ!あ、でもちょっと見てみたい所があるから寄り道してもらってもいい?」
『かまわん。何処へ行く』
実はジークが送ってくれると言ったときから寄り道しようと思っていた場所があったんだよね。
むふふふ…。
ジークが首を曲げて振り返ったので私は地図と方位磁石を確認して行く先を指差す。
「─あっち!」
『了解した!』
◆◆◆◆
「──緊急事態です!!」
平時の時ならば決して主の許可なく扉を開くような男ではない。それほどに急を要するのだと、その男の主は眉間に力が入った。
「何事だ」
心なしか言葉に剣が籠る。
それも仕方のない話だった。何しろ三日前に世界を揺るがしかねない案件が飛び込んできたせいでもある。あれ以上の緊急事態など考えたくもなかった。
「─陛下、先ずは話を聞きませんと」
「……」
傍らに立つ男が陛下と呼ばれた人物へ柔和な笑みを浮かべる。幼い頃からの友人─親友とも呼べる男、アーチェス・ルビニカだ。
「会議中に申し訳ありません。しかし…!」
会議の最中飛び込んできたこの男は近衛騎士団の団長を任せられるほどの人物だ。冷静沈着な彼がこれ程までに焦燥に駆られるなど初めて見る。
「申せ」
「はっ。─北の守護竜が、此方へ─王都へ向かっているとの知らせが─!」
「なっ…!」
その場の全員が戦き言葉を失う。それは王である男も同じだった。
「何故…守護竜が…!─やはりあの一撃も守護竜が放ったものなのか…?」
─三日前、膨大な魔力であろう光が北の霊峰から放たれた。
と同時に大陸が割れたのだ。文字通り、北の王国クレイハイトが大陸から切り離された。
今まで散々ちょっかいを掛けてきていた目の上のたんこぶ的存在のクレイハイトが何らかの形で切り離されたのは喜ばしい。国交もほぼ無い国なので外交にも何ら問題もない。しかし問題はそこではなかった。
…一体誰が、何故?そもそも人の仕業なのか?大陸を切り離すような力など果たして人が持てるものなのか?もしそれを行使できる者が居るなら…それは人ではない。
そもそも事象を目撃した者は居ても関わったものの姿を見たものは居ないのだ。ならば考え付く先には古竜そのものしか居ないではないか。
そして皆が思った。
何かが守護竜の逆鱗に触れたのでは─と。
怒りの矛先がクレイハイトだけで済めば良し。この3日間、古竜の動きは全くなかった。ならばこの件は終いに出来ると全員が考えていたのだ。
漸く落ち着きを取り戻しつつあった情勢は守護竜の襲来と言う知らせに混沌を極めた。
「陛下!早く!!布令を国民に!!」
「待て!城を固めるのが先だ!!」
「阿呆か貴様!相手は大陸を割るほどの力がある守護竜なのだぞ!?人間ごときが敵うわけあるまい!」
「撃って出るべきです!陛下!!」
「陛下!!」
口々に騒ぎ立てる家臣達が椅子を倒す勢いで立ち上がり詰め寄る。
撃って出るなど出来る筈もない。
下手をすれば国が滅ぶ。
─どうすればいい─!?
「伝令ー!伝令ー!古竜です!!古竜が─守護竜がッ、王都の上空を旋回しています!!!」
「「「「………!!!!」」」」
伝令使の叫ぶような声にその場の全ての者が冷水を浴びたように震え上がった。
恐る恐るその場の全員がバルコニーへと出て行き旋回する守護竜を見た。
いつ攻撃されるのか解らない相手に腰を抜かす家臣も居たが、しかしいつまで経っても何も起こらなかった。ただ守護竜はゆっくりと王都を旋回している、ただそれだけだったのだ。
そしてそれを見ていた一人の家臣が呟く。
「守護竜の背中に…誰か乗っていませんか…?」
「は?何をバカな」
皆が目を眇め竜の背を見ようとするが何分距離が遠くて見えない。
「いえいえ!確かに誰か乗っていますって!私、視力には自信があるのです!!ほら!乗ってますって!」
有り得ない、とその場の誰もが思った。古竜でなくとも竜という生き物はプライドが高く、人間に従うことも懐くこともないからだ。その竜の頂点である古竜が人間を背に乗せるなど有り得ない。
しかし、一人の家臣の言葉通り、遠目で姿は確認できないが人間の姿らしきものが見てとれる。それは信じられない光景で、その場の人間の目に焼き付いた。
呆気に取られたように見上げていた竜はいつの間にか方向を変え、王都を背に去って行く。まるで誰かに従っているかのように。
「竜を…古竜を従えている…のか…?」
「そんな…まさか…」
「有り得ない…それではまるで竜の─竜の王ではありませんか…!」
「た、確かに…!プライドの高い、それも古竜が人に背を許すなど…かの守護竜が認めた者…【王】以外おりますまい…」
その言葉に彼らの足元からゾワリと何かが駆け上がった気がした。それは恐怖ではなく、身体中の皮膚がピリピリと震えるほどの歓喜─。
先程までの恐怖など忘れたかのようにその顔には至福が宿っていた。
「素晴らしい…!!」
「竜の、王…【竜王】だ…!」
「あぁ!神よ!!我等は何と言う素晴らしい奇跡の場に居合わせたのでしょう!!感謝いたします!!」
「守護竜は新たな王のお披露目にいらしたのだ!!」
「神よ!」
「女神よ!」
王とアーチェス以外がバルコニーで平伏す。その姿を視界から外し、二人は古竜が去る姿を見送った。
ある意味歴史的なこの日が後に【竜王聖誕祭】なるものとして祝われる事になるのだが、古竜も古竜に跨がるラピスもそれを知るのはまだ先の話なのだった。
───。
王都が遠ざかって行く。
ジークが飛ぶスピードはとても早いのであっという間に見えなくなった。
『─所で、もうよいのか?』
「うん!もういいよ。見たいところも見れたし」
『そうか』
もうすぐエルナたんと通う魔法学園も見れたし!
それなりに大きくて綺麗なお城みたいなところだった。
うへへ…あそこでエルナたんとキャンパスライフが…むふふふ…。
『しかし人間の国と言うのはやはり騒がしいな』
「そかな?お祭りでもしてたんじゃない?」
確かに何かざわざわしてた気がするけど、王都だし、人も多いし元々賑かな所なんだと思う。
それはさておき。
予定よりも結構早く帰れそうなので私の悪事も露見はしない…はず。うん、大丈夫大丈夫!
明けましておめでとうございます!Σd(°∀°d)
今年もよろしくお願いいたします♥️
年内にエルナたんとイチャイチャが実現出来なかったので無念…!やはり私の亀速度が…泣
次は念願のイチャイチャ回なので!間違いなく!(*゜∀゜)=3
誤字、脱字がありましたらお知らせください!助かります!(*^¬^*)
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