102・おうちへ帰ろう
私達お友達ねー!ってなった後、エリザベスが『ではお話を戻しますわね!』と笑顔を浮かべた。
なんの話だっけ?
『コホン。…ラピスちゃんにしか出来ないお願いですの。お兄様に外の世界を見せてあげてくださいまし。お兄様もそれを望んでおいでのようですし』
なにその囚われの令嬢見たいな設定。
ちらりとジークフリートに視線だけ寄越すと驚愕に口を開いたままエリザベスの後ろで固まっていた。
ジークフリートが私に着いてくることは別に構わないけど。着いてくるならジークフリート用の寝床とか用意しなきゃいけないのかな?悪いけど私の部屋には入れないデカさだし。
『見ての通り、お義兄様ってば箱入り?あ、洞窟入りでしたわね。─まぁそれはさておき、長年のヒキニートに拍車が掛かって色々と拗らせてしまっている始末。お義兄様やお義姉様達にお友達の自慢をされる度に『我は友達なんぞいらん!』とかなんとか不貞腐れてますのよ。本当はお友達が欲しいくせに。格好つけてるのバレバレですのに。おまけにこぉーんな山奥に引き込もって『我は古竜なのだ!えっへん!』とかふんぞり返ってますけど、実質外に出るのが怖いだけのビビリなのですわ。見かねて何度も街に行こうと誘っても『くだらぬ』とか突っぱねて、けど足元がソワソワしてたのわたくし見逃しておりませんわ』
あの、そろそろやめてあげて欲しい。ジークフリートが涙目でプルプルしている。
それはそうと気になる事が。
エリザベスが「街に行こうと」って言ってたけど、どうやって?人間の暮らす街なんかに古竜が襲来したら大変な騒ぎになると思うんだけど。そんな話を聞いたこともないし。
「エリザベス。どうやって街に行ってるの?古竜が山から降りてきたって聞いたことないんだけど」
『え?あぁ、わたくし達は【擬態】できるんですの。人間の姿を模して人間の中に紛れ込むのですわ。もちろん、獣や鳥なんかにもなれますの』
「ええ!?すごい!!」
よく竜が人間になったりするファンタジー小説は見たけど、ここでもそうだったとは。
『人間に擬態すると力も相当抑えられますし、危うく肉塊に…なんて事もありませんしね!』
「わー!エリザベスの人間バージョン見てみたい!」
ワクワクと期待の眼差しを向けるとエリザベスはかまいませんわよ、と目を閉じた。すると淡い光が竜の身体を包んで徐々にその形を変えて小さくなっていく。最後に光の粒子が弾けるとそこには黒髪ロングのちょっとタレ目な15.6歳の美少女が立っていた。
纏っているドレスも黒で、所々に赤いリボンが着いている。
少しタレ目で左目の横に涙黒子があるのがまたエロい!おっぱいも大きいし、真っ黒な髪も濡れたような艶が妖艶だ。エリザベスの目もよく見ると濃い金色で、まるで夜空に浮かんだ月を思わせた。
「ふおわぁぁ!!ゴスロリだぁ!!」
「ご、ごすろり…?」
エルナたんには負けるけど、エリザベスも相当の美少女だった。エリザベスの回りをくるくる回って観察する。その様子をエリザベスは笑って見ていた。
「すごいねぇ!どうやって擬態してるの?モデルとかいるの?」
「モデルはおりませんわ。ただ身体を縮めて人間になろうとすると自然にこの姿になってしまうんですの」
「なるほど!遺伝子が美少女なんだね!」
「いで…?」
竜の姿の時のお腹の底まで響いていた声、というよりは音に近い声も今は人間と同じ様に聞こえる。声まで美少女…!エルナたんには負けるけど。
「ならジークフリートも人間に擬態できるんだよね?」
『ぐっ…』
エリザベスが出来るならジークフリートもできるはずだ。けれど水を向けられたジークフリートは息を詰まらせて視線をすーっと逸らした。
「…? ね、ジークフリートもなれるんだよね?」
『………』
「もちろん、お兄様も人間に擬態できますわよ。ただ何故かお兄様は人間に擬態するのがお嫌みたいで…」
「ふーん。なんで?」
「さぁ…?」
エリザベスも理由は知らないみたいで肩を小さく竦めた。
人間の姿がものすごい不細工とかそう言う理由なのかな。
「ジークフリートの人間の姿も見たい!」
『こっ、断る』
「なんで?」
『………昔、街に降りた事が一度だけあって…そこで幼子が我の顔を恐ろしいと泣いたことがあるのだ。だから…』
「あら、そんな理由がありましたの?」
どうやらコンプレックスのようだ。だったら無理に強要しようとは思わない。悪い事言っちゃったかな。
でもエリザベスが誘うとソワソワしてたなら外出自体は嫌じゃないって事だよね。
「でもジークフリートが何かに擬態しないと私とは一緒に行けないよ?」
『そ、それなら我に考えがある!』
「考え?」
うんうんとジークフリートは大きな頭を縦に振った。
『ラピスの知る、人と共に暮らす動物に擬態すれば良いのだ!』
「亀とか、カエルとか?」
『………それは人と共に生活しておる生き物なのか…?』
「瓶に詰めたり水槽に入れて眺めたりしてるよ」
『せ、せめてもっとこう…鳥、とか…』
亀、かわいいのに。カエルもかわいいよねぇ?蛇は気持ち悪いから嫌いだけど。
「じゃあ犬とか?」
うさぎも考えたけどどうしても食べ物に見えてしまうので言うのはやめた。
『うむ!犬ならなれると思うぞ。犬には擬態したことがないから、ラピスの記憶を頼りに擬態しようと思う。良いか?』
「いいよ」
『よし、では…』
目を閉じて犬を思い浮かべよ。とジークフリートが言うので頭の中で犬の姿を思い描く。
犬と言えば柴犬だよね!あ、でも犬じゃないけどライオンも好きなんだよな~。モコモコのたてがみ…おっきな鼻とおっきなクリームパンみたいな手足が可愛い。狸もすきなんだよー。えぞたぬきってなんであんなにモフみがスゴいんだろう?
『─ぉ、おい!イメージが定まらんのだか!?』
「え?あ、ごめん。犬だっけ?犬…犬…」
『ちょ!もう遅いんだか!?』
「え?」
慌てたようにジークフリートが声をあげたので瞼を開くと光に包まれた身体が小さく縮み始めた。
そして極限まで小さく縮んだ光の塊から光の粒子が弾けると、その中から犬が現れる。
「……………」
「……………」
「これ、犬ですの?」
私達の前には小さくて真っ黒なポメラニアンがいた。
なんか色々合体してくっつけたらポメになってしまったようだ。
エリザベスの台詞に犬になったジークフリートがてしてしと歩み寄り、前足でぺしんとエリザベスの足を打つ。
「なになさるの、お兄様」
「きゃん!きゅぅ~ん!」
「まぁ。わたくし本当の事を言っただけですのに」
「きゃん!きゃん!」
エリザベスが犬と会話をしている。エリザベスには犬になったジークフリートの言葉が理解できるみたいだ。私には全然わからないけど。
「ラピスちゃん。お兄様がラインをラピスちゃんに繋ぐから手を出して欲しいと仰ってますわ」
「よしきた!お手!」
「きゃん!」
私が手のひらを差し出すとポメは迷わず手をのせた。肉球ぬっくぬくなんだけど。モミモミしたいんだけど。
「きゃん!(うむ!ラピス、聞こえるか?)」
「うわ…」
目の前では可愛いポメが居るのに頭のなかに響くのジークフリートの低い声だった。なんか違和感がすごくて頬がひきつる。
「きゃうん!きゃわわん!!(お主がしっかり犬のイメージを固めんから見たことのない動物になってしまったではないか!)」
犬の姿がジークフリートの中で固定してしまって、これからは犬と言えばこの姿にしかなれなくなってしまった!とキャンキャンと文句を言われしまった。
「えー、可愛いじゃん。ポメ」
「きゃう?(は?ポメ?ポメとはなんだ?)」
「ポメラニアンの略称だよ」
「聞いたことのない名前ですわね」
エリザベスもジークフリートも首を傾げている。
そう言えばこの世界じゃ前世みたいに犬同士を掛け合わせて新しい犬種を作るって言うのは聞いたことも見たこともないかも。近所の犬もなんか雑種っぽかったし。そもそも動物をペットとして愛でると言う行為自体あまり聞いたことがない。飼ってるのはよく見るけど、愛でると言うより狩や家畜の見張りなんかくらいだ。もしかしてお金持ちの人しかペットを愛でるって言う習慣がないとかなのかな?
「ま、細かいことはいいじゃん!取り敢えずここまで小さくなってくれたら私のおうちにも入れるよ」
「きゃう!(そうか!姿形はいかんともしがたいが…まぁ良かった!)」
ポメの尻尾がはち切れんばかりに揺れている。
犬の尻尾は感情を隠せないと聞いた事があるけど、こんなにブンブン振ってるってことはエリザベスが言った通りなんだろうな。
「ではラピスちゃん、お兄様をお願いしますわね」
「エリザベスはどうするの?」
「あら、わたくしの心配までしてくれるんですの?けれど大丈夫ですわ!わたくし、お兄様と違って臨機応変型ですもの! それにわたくしはまだ完全な古竜とは言い難いですし、予行練習だと思ってお兄様に代わって竜達を統率いたしますわ!」
お任せになって!とエリザベスは胸を張った。
なんて頼もしい妹なの。お兄ちゃんなんだから見習いなよ、とジークフリートに目を向けると、期待してるのかはたまた違うことで胸を踊らせているのか、つぶらな瞳をキラキラさせて尻尾がフル回転していた。
「よし!そんじゃおうちに帰るぞー!」
「きゃわーん!(おー!)」
私の声に合わせてジークフリートが吠える。
しかし、この二重に聞こえる犬の声とジークフリートの声、落差がありすぎて慣れないんだけど、…どうにかせねば。
キリの良い所まで…と思ってたら今回はちょっと長くなりました。それもこれもエリザベスがよく喋るからで…(遠目)
ともかく、やっと帰宅です!
年内にイチャイチャ…ぐっ…_:(´ཀ`」 ∠):_
あと1日…がんばります!
誤字脱字がありましたらお知らせください!助かります!(*´ω`*)
ブクマ&評価ありがとうございます!励みになります(*^¬^*)




