101・新しいお友達2
「ところでふたりには名前ってないの?」
素朴な疑問である。だって二匹とも古竜だし。「古竜くん」とか「古竜ちゃん」とか呼べばいいのか?
私の問に二匹はキョトンと顔を見合わせた。
『…そう言えば、お義兄様もお義姉様もお友達に名前をつけていただいたと仰ってましたわ』
「て事はふたりには名前がないの?」
『そう言う事になりますわね。これと言った不便もありませんし、気にしたことがなかったのだけれど…そうですわね。名前がないと言うのは呼ぶ側からは不便なものですわよね』
二匹の間だと聞いている限り「妹」と「お兄様」で大丈夫なんだろうけど、異世界の竜を呼ぶとき古竜なら「お主」とか「貴様」とか偉そうに言ってそう。私の事もずっと「お主」って言ってるし。
『わ!我良い案があるぞ!!』
妹の登場で空気だった古竜が嬉しそうにシュバッと手をあげた。
心なしか鼻息も荒い。興奮してどうした。
『お主が名をつければ良いのだ!!』
「え、ヤダよ面倒くさい」
間髪入れずに答えたら古竜が目に見えて涙目でしょんもりと肩を落とした。古竜の威厳は何処へ。
「まぁ…そこまで言うなら良いけど…」
『まことか!?』
『まぁ!本当ですの!?ではでは!わたくしもお願いしたいですわ!』
かわいそうになってポロリと溢した言葉に兄妹で食いついて来た。まぁ名前くらい減るものじゃないし、いっか。
「名前…名前…う~ん…」
2号さんは多分女の子だから女の子らしい名前が良いよね。お嬢様口調だし、イメージ的に優雅で華やかさのある名前がいいかなぁ。マリー…とか?マリーアントワネット…あ、ダメだこれ。死刑になる人じゃん。うーん、結構難しいぞ。
死刑にならなくてそれなりに威厳のある名前………。
「あ!そだ!エリザベスはどうかな?」
うんうん。良いんじゃないの?前世じゃ女王様の名前だし!
『エリザベス!!それが我の名前か!!!』
「ちっげーーよ!!なんでそうなる!女性の名前じゃんか!」
古竜が鼻の穴広げて吠えたので思わず素で突っ込んでしまった。
『む、そうなのか?』
『と、言うことはわたくしの名前ですのね!』
「そーだよ。どう?気に入らないならもっかい考えるよ?」
『いいえ!いいえ!エリザベス…なんて高貴な響きなのかしら…!わたくし気に入りましてよ!』
2号さん改め、エリザベスが両手を合わせてうっとりと悦に入っている。
良かった。気に入ってくれたみたいだ。
よし、次はこっちの脳みそ梅干し古竜の名前だな。
エリザベスの方を羨ましそうに眺めてはチラッチラと私の方に視線を寄越してるのでちょっとウザイ。
「う~ん…威厳がある名前かぁ…」
威厳のある名前ってなんぞや?取り敢えず竜の頂点のだからそれなりにカッコイイのが良いなぁ~。
竜…竜…黒いしバハ○ートとか?……………なんか違うな。
う~ん。
「─ジークフリート…」
あ、アカン。これ竜を退治する人の名前だ。
『─ジークフリート!!!!良い!良いぞ!!何か解らぬがカッコイイ!!』
ほあ!?
何気にぽろっと溢れた名前を古竜はすかさず拾い何やら興奮してバサバサしている。
「え、ちょ、待って、その名前は…」
『む?何か問題があるのか?良き名ではないか!むふ!!我は気に入ったぞ!』
フムーー!!と鼻息を吹き出しご満悦な様子に戸惑う。
だって、それ竜殺しの英雄の名前だよ?そこまでならまだ格好いいけど、たった一枚の葉っぱの範囲が弱点で死んじゃうアンラッキー野郎なんだけど…。
『ジークフリート!我の名はジークフリートだぞ!妹よ!』
『もう!お兄様ったら!わたくしはエリザベスという華麗にして優美な名がありますのよ!エリザベスと呼んでくださいませ!』
『ふむ!そうであったな!いも…いや、エリザベスよ!』
兄妹仲睦まじく付けられた名前を連呼している。
二匹とも名前が気に入ったなら由来とか気にしなくてもいいかな。縁起悪い名前だけど。
「ま、いっか」
うん。そう言うことにしておこう。
二匹を眺めながらうんうん頷いているとエリザベスが突然悲鳴をあげた。
『大変ですわ!お兄様!!』
『どうした!?エリザベスよ!』
『わたくしたち、お客様が珍しくて嬉しくて…その上素敵な名前まで頂いておきながらッ!!なんて事ですの!わたくしたちお客様の名前をまだ聞いておりませんわ!!』
『なん…だと…!?』
二匹の竜が雷が落ちたみたいなひと昔前の漫画みたいな顔で固まりヨロヨロとふらつく。
え、いまさらそこ気になる?
「私の名前はラピスだよ。言うの忘れてた」
思えば私の口から出ていた人の名前はほぼエルナたんだけだった気がする。名乗り忘れとは、こりゃまた失礼しました。
『ラピスちゃんとおっしゃるのね。素敵なお名前ですわ!』
「え、そうかな」
名前は家族が付けてくれた大切な物だし、私も気に入っているので誉めてもらえるとそこはかとなく照れくさいけど嬉しい。
『改めてお礼を申し上げますわ。素敵な名前を頂いて本当に感謝しておりますわ。ほら!お兄様もお礼をおっしゃって!』
『へぶっ!!』
エリザベスに後頭部を鷲掴みにされジークフリートの顔が地面にめり込む。お兄ちゃんの威厳とは…。
『あ、そう言えばお兄様のお心を代弁するのを忘れておりましたわ!見ての通りお兄様ってコミュ障な上に色々と拗らせておりますのよ!ラピスちゃんもそう思いませんこと?』
未だ地面と顔を仲良くしているジークフリートが『こ、拗らせてなどおらぬ!』と小声で抗議している。いい加減手を退けてあげてエリザベス…。
『わたくし達は見ての通り竜ですわ。おまけに古竜であれば世界でも三本の指に入るほどの力の持ち主な訳ですの。それ故に力の制御をしなくては同じ種族でさえも簡単に傷付けてしまう』
なるほど。ギザギザハートなのか。触れる奴はみんな傷付けてやんぜ!みたいな?
『なので同等、もしくはそれ以上の力の持ち主しか共には居られないんですの。同胞を傷付けたくはありませんもの』
そりゃそうなるよね。
私はふんふんと頷きながらエリザベスの話を黙って聞いた。
『可愛いと思いお近付きになったうさぎさん…。あまりの可愛らしさにひと撫でした瞬間…肉塊になってしまったあの悲しみは忘れませんわ。ごちそうさま』
喰ったのかよ!
途中までしんみりして同情してた私の心を返してほしい。
『で─そ!こ!に!現れたのがラピスちゃんですわ!!』
「私?」
突然指差された。エリザベスもジークフリートもウンウンと頷いている。
『わたくしラピスちゃんとお兄様のやり取りをこっそり覗いておりましたのよ?それでわたくし確信しましたわ!ラピスちゃんならわたくし達とお友達になってくれるのでは、と』
「え、私達もうお友達じゃなかったの?」
もう既にお友達だと思ってたのに。まだお友達じゃなかったのか…。自分だけ早とちりとか恥ずかしい。
『あぁ!そんなお顔しないで!そうですわよね!わたくし達もうお友達ですわよね!ね!お兄様!』
『う、うむ!そうだ!我らはと、とととととととととももともともも…!!』
『ちょっとお兄様!なに肝心なところで恥ずかしがって吃ってますの!?』
『し、仕方がないだろう!我生まれてこの方と、とも…ち、とか出来たことないのだぞ!』
『そんな事はわたくしも同じですわ!』
なんか急に兄妹喧嘩が始まってしまった。
ふたりの言い合いを聞いてる限りじゃ、もしかして私とお友達になりたいんだろうか?まぁお友達が増えるのは良いことだし、それにふたりはこの世界じゃトップクラスの強さな訳だし、もし私に何かあってエルナたんを守れないときにはふたりに頼るのもアリだ。
「じゃあ今日から私達お友達ってことでいい?」
『『!!!』』
ふたりの間で声を掛けると、振り向いた大きな竜は目をキラキラさせて鼻息荒く何度も首を縦に振ったのだった。
ラピスに新しいカモ…げふん、お友達が出来ました!(ФωФ)
年内にラピスはいちゃいちゃできるのか!?ひぃぃぃ((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル
がんばるぅぅ!!
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