99・ニンゲンコワイ
「でね!エルナたんがねー!」
『…………』
気が付けば熱を込めすぎて夜半になり、その日は古竜の寝床でキャンプすることになった。寝泊まりすることに関して古竜は何も言わなかったので遠慮なく火を焚きご飯を食べて満腹になって寝たのだった。
そして次の日も朝から古竜にたっぷりとエルナたんの可愛さや神々しさ、女神のような美しさを手振り素振りで喋りまくる。
最初は古竜もうんうんと頷いて聞いてくれていたのに今朝はあまり反応がない。
「………聞いてる?」
『あ、はい、聞いてます』
死んだ魚のような目で壊れた玩具のように覇気の無い声が返ってくる。どした?
「……ま、いっか。てな訳でエルナたんに軽くて丈夫な剣を作りたいんだぁ。尻尾ちょうだい?」
『あ、はぃ…じゃなかった!駄目に決まっとるだろ!』
チッ、正気に戻ったか。どさくさに紛れて頷かせたかったのに。
『と言うか一体いつまでこの話は続くのだ!?』
「たった一日じゃん。まだまだだよ! まだまだエルナたんの素晴らしさは伝えきれてない!」
『アホか!何がたった一日だ!!お主の頭の中はどうなっておる!?もう3日目ではないか!!』
「またまた~」
3日目?そんなはずはない。だって一回しか寝てないもん。
古竜の言葉に呆れた顔で手を扇げば、古竜の頬がピクピクと痙攣する。
『…お主、まさか記憶を改竄しておるのか?自己暗示なのか?怖っ!』
終いには私を見て震え出した。失礼な。
そんなことよりもまだエルナたんの事を伝えきれていないのだからしっかり耳かっぽじって聞いて欲しい。
「もう、何言ってんの?─じゃぁ次はエルナたんの─」
『ちょ!まて!もうよい!解った!解ったから!』
「え?」
せっかく興が乗ってきたのに急にストップをかけられた。
ブスッと頬を膨らませると古竜はビクッと巨体を強張らせる。心配しなくても急に尻尾切り落としたりしないのに。一応ちゃんと一言言うのになぁ。
「解ったってことは尻尾くれるの?」
『そ、それは無理だが…』
「じゃあ切り落とすしかないね」
『いやいやいや!そう言う事じゃなくて!』
「じゃなくて?」
『いや~…その…せ、先代の古竜の骨では駄目、なのか…?』
それとも肉が目当てなのか?と小さい声で怯えたように呟く。昨日空間収納に入れてた猪豚を丸焼きにしてた時、何気に「竜のお肉って美味しいのかな?」って言ったのを気にしている様子だったからかな?まぁ確かにお肉の味は気になるけど。
「先代の?」
『そ、そうだ。先代の古竜の骸がある。骨も綺麗に残っておる。そ、それでは駄目なのか?』
先代の古竜の骨かぁ~。まぁ古竜に違いないし、それでも良いかも。少し悩んだけど私はうんと頷いた。それを見て古竜が明らかにホッとした顔をした。
薄々感じては居るんだけど、もしかしてこの古竜、弱っちいんじゃないの?もしかすると私じゃなくてもワンパンでやられるんじゃないの?
そんな事を思いながら天井の水晶の中へ戻って行く古竜の背中を眺める。暫くすると水晶の中から大きな黒い物が落ちてきた。全長2メートル位の大きな骨だ。まるで真っ黒で硝子みたいに艶々した骨だ。その骨に続いて大小様々な大きさの骨がポロポロと水晶から降ってきた。最後に巨大な頭蓋骨がニュッと飛び出して来て、それらの骨の上に落ちた。凄く大きいのにその骨達はまるで紙でも落とすようにふわりと重なっている。
最後の頭蓋骨が出てくると古竜が顔を出した。
『えーと…これだけあれば足りますかね…?』
「何故に敬語」
思わず素で返してしまった。突然どした?
古竜も水晶から出てくると乱雑に積み上がった骨をささっとかき集めてズイッと私の前に差し出した。
「こんなに要らないんだけど」
『ま、まぁそう言わず納めてください』
「…てか何で敬語なの?」
さっきまで我!とか、なのだ!とかちょっと偉そうだったのに。
『だって…』
だって?何か口調まで変わってるけどマジでどした?
『だってお主怖いんだもん!!人間てこっっわッ!!怖いっ!!チビりそうッ!!』
突然古竜がビヤッ!!と泣き出した。さめざめと泣き出されてしまっては何だか物凄く悪いことをしてる気になるんだけど…私なにかしたっけ?
「な、何で泣くの?」
『数百年振りに会った人間に「尻尾ちょうだい?」とか「切り落とす」とか言われて驚かん方がおかしいし!あまつさえ赤子と変わらぬ幼女に命の危険を感じるような攻撃されたり一晩中否数日間まさに呪詛のごとき惚気を聞かされたり……!!人間コワイ~!!』
「え、あ、何かごめん…?」
びえぇぇ~!と頭を抱えて真ん丸になってしまった。
なんだろう、改めて自分のやったことを聞かされるとちょっとだけ古竜がかわいそうな気がしてきた。
いやけどエルナたんのお話は聞いてて楽しいと思うよ?私なら嬉しい。何が不満だったんだろう?
「ほら泣かないでー。美味しいモノあげるから」
あまりにもグスグス泣くものだから私は仕方無く秘蔵のプリンを差し出した。最後の一個だったけど仕方無い。
『………すん、…すんすん…いい匂いがする…』
地面にお皿に乗ったプリンを置くと真ん丸になった古竜が首を伸ばして匂いを嗅ぐ。古竜から見ると米粒程の大きさだけど、古竜はプリンをあらゆる角度から眺めてプリンの匂いを堪能している。なんだろう…既視感が…。あ、近所の犬に似てるんだ。
「食べていいよ」
『………』
チロリと私を見た古竜がそろりと大きな下の先でプリンをつつく。その瞬間、ぽわわ~と古竜の回りに花が咲いた。比喩じゃなくて本当に。ポポポポンと咲いた花が地面に落ちて行く。何この竜。少女漫画か!
『………!~~!!』
何が楽しいのか、古竜はプリンに舌を当てては花を咲かせること数回。いい加減食べろよ、と思ったところで古竜はペロリとプリンを口に入れた。
『~~~~!!!!』
あんなに小さいのに味なんて解るのかな?と思ったけど古竜はプリンの余韻にうっとりとしているようだった。
「落ち着いた?」
古竜はこくこくと頷いてペロリと舌舐りした。そしてもう何も乗っていない皿の上を切なそうに見ている。犬のようだ。
「骨沢山貰ったし、もう尻尾切り落とすなんて言わないよ。てな訳でもう帰るね!」
『え!?』
何をそんなに驚いてるんだろうか。目当ての物も手に入れたし、もうここに用はない。後は帰るだけだ。
驚く古竜を尻目に私は貰った骨を空間収納にどんどん入れて行く。正直こんなに貰っても使い道がないんだけど、くれるって言うし。タダだし。
『え、あ、ちょ、ま!』
「じゃあね!」
背を向けて走り出そうとしたら背中を大きな手の爪先で摘ままれた。プラーンと足が地面から浮く。
「なにすんの」
足をプラプラさせたまま抗議すれば古竜はもごもごと何か言いたそうな目で私を見つめてきた。
『その…我も…』
「??」
なんじゃい。ハッキリと言わないと私は解んないぞ。
『えと………─そ、そう!そうだ!送って行く!』
「や、そーゆーのいいんで」
別に送ってもらうほどの危険な道程じゃないし。
折角の申し出だけど特にメリットを感じない。なのでお断りしたら古竜はガーンと効果音でも付きそうな表情で悲しそうに肩を落とした。
エルナたんの愛ゆえに自分の記憶まで改竄し始めるラピスでしたwwオタクには良くあることですよね!ww爆
誤字、脱字がありましたらお知らせください!助かります!(*^¬^*)
ブクマ&評価ありがとうございます(///ω///)♪




