3.『ただ、そこにある日々』
四月二十五日、晴天。
昼の日差しを受け、宝石のように輝く小川の川べりに座り込む。水中には魚の影が微かに見え隠れする。宝石というなら、水や光を弾く魚の鱗の方が相応しいだろう。決して、よだれは垂れていない。
「アイリス、訓練はどうした」
「飽きた」
「……そうか」
隣ではジンが椅子の代わりに石の上に腰かけている。退屈そうに釣竿を眺めているのは、釣りより手っ取り早い方法を実行しないからだ。
「ジン、素潜り」
「やだよ。冷たいし、水は嫌いだ」
とジンは返してきた。私も嫌いである。
「釣れない?」
「……まだ三匹。いや、もう三匹というべきか」
「大きい?」
「アイリス。魚ってどうやって大きくなるか、知ってるか?」
「よく食べる、よく寝る、よく運動する」
「人か」
間違ってないはずだと、私は渋い顔で首を傾げてみせる。
突っ込みもつかぬ間に、ジンはまた鬱屈そうな表情に戻る。
「ま、半分あってる。残り半分はな、臆病なことだ」
「そうなのか」
「そうなんだ」
たわいのない会話をしていると、小刻みに釣竿がしなる。吊り上げられた魚は餌にかかるまでに時間がかかったのに本日一番小さい。
「これで四匹か、……これ以上は無理だろうな」
「あそこ、大きいのが隠れてる」
私が指さした先ではなく、ジンは私を不思議そうに眺める。
「お前、見えてるのか?」と確認してくる。
「カン。感覚」
川の流れのせいで肉眼では捉えられないが、なんと例えるべきか。そう、目の奥に焼き付く光の量で、そこにいるというのが分かるのだ。かつて道であった山道を魔術兵器で整備させられている時に楽をしようとすると、自然に生き物が発する生気が見えるようになったのだ。あんな作業でそんな技能をちゃんと習得させる気があったのかは疑問に残るけれども。
「……そっか」とジンは腰かけなおすと、また釣り糸を垂らす。
「アイリス。お前はここ、妖精の傘が好きか?」
私は首を傾げて答えとした。
「率直にいうと、お前を戦場に出さないといけないかもしれない」
と、煮え切らない話を振ってくる。
「なるほど、私は軍人にならないといけないかもしれないのか」
それもそうだ。借り物と言えば押し売りだが、この身体は私になる前から軍属になる運命が決まっていたのだ。
「それは何をすればいいの?」
「戦って帰ってくる。痛いだろうし、苦しいことだ」
と私の問いにジンはしんみりと語る。帰ってくることまでやるべきことなのが彼らしい。
「それでも一つだけいいところがある。ここを、ここの奴らを守れることだな」
とジンは小さく笑ってみせた。とても小さな報酬だ。確かに妖精の傘が、そこにいる人たちが好きでなければやっていられないだろう。
「なら、戦ってもいい」
「即決か?」
「ジンは私が傍にいないと泣いてしまう」
「いや、泣かないからな」
案外、仕事と割り切ってないと奥手なのは知っている。本人は否定するだろう。こうやってサボっているフリをして、黙って私の為に魚を取りに来ていることも知っているのだ。勿論、本人は認めないだろう。
「なんか、ろくでもない解釈してないか?」
顔に出てしまっていたのか、ジンが指摘してくる。
「あっ」と私は思い出す。
「一昨日、イヴに何かやった?」
唐突だなとも、何もなかったとも語らずにジンは沈黙を守る。
「ジン?」
「ない、何もない。別に何も俺はしてないからな」
「治療は?」
「いや、治療はした」
ジンはまた、眉に皺を寄せ、詰まらなさそうに釣竿を眺めだす。
いや、詰まらないのではなく、あの顔は不貞腐れていたのだ。
「私、お姉さん。話を聞く」
と私は立ち上がって胸を張ってみせる。
「いや、俺より年下だろ、普通に」
「大丈夫、イヴも私はお姉ちゃんだからしっかりしなさいと言ってた」
「その身体で、か? 説得力ないぞ」とジンは鼻で笑う。
「大丈夫。子供が出来れば、すぐ大きくなる」
「誰だ。そんなこと教えた奴」
私は口にはしたが、誰だったか、思い出せない。
「ローレン?」
と続けた。濡れ衣である。ジンも首を傾げたが、それとなく納得は出来たらしい。
「で、ジン。お姉さんに話してくれていい」
と私はない胸を張ってみせた。
「分かった。イヴとは話をつけとく」
ジンは溜息交じり応える。人の頭を撫でるには少しごつごつし過ぎた手で、私の頭を撫でてくる。
そこに、
「ああ、ダメダメ、ドントタッチロリータ」
と、大声を上げながら空からローレンが落ちてくる。今日は髪が動きやすく、垂れないように後ろにまとめられている。着地と同時に私を抱き寄せ、ジンから引き離す。
「ノー、セクハラ。この子はうちの子です」
「暑苦しい、放せ」
私はじたばたしてローレンの腕から抜ける。
一発と言わず、二発ぐらい肘鉄でもかましておくべきだった。
「もうアイリス、恥ずかしがって。一緒に同衾した仲じゃないっすか」
「うるせえ、魚が隠れただろ」
と、ジンが妄想に塗れたローレンの頭に、げんこつを落とした。
「おさかな……」
思わず、私の口から中身が抜けそうになる。
「ジンが川に入って取れば解決っすよ」
「やるなら、お前がやれ」
と、ジンは竿を片付け始めてしまう。
「おさかな……」
「まま、アイリス。ミョルニルで電撃流せば大漁ですから」
「あほか! 生態系壊すつもりか」と再び、ジンはげんこつを落とす。
「パワハラ反対」
ローレンはウソ泣きで私に抱き着こうとしてくる。その顎の辺りを私は押し返した。
「最低限は釣れたから、お前ら戻るぞ」
と荷物をまとめ終わったジンはいった。
「え、そこを、っすか?」
ローレンが指さした先は急斜面とまではいかないが、決して人が歩く道ではなく、獣道も見えたものではない。下るだけなら先ほどやったのだが。
「ほら、先にイヴに伝えといてくれ。どうせ俺は飛べんのだからな」
「なら、アイリス……」
「問題ない。私も登る」
といった私をみて、
「アイリス。そういや、お前は飛んだことあるのか?」とジンは確認してくる。
「飛んだことはない」
まず羽を出そうとしたことがない。だから私に羽があるのかさえわからない。跳ぶなら、魔力を使えば、この身体なら身長より高く跳べそうではあるが、未だに翼が有って空を飛べるというのが実感が湧かないのだ。
「そうか、じゃあ後でその練習もしておくか」
そう言って、斜面を登り始めたジンの背を追う。
気を抜けば、落ち葉が足を乗せてズルズルと滑ってしまう。そんな坂道を、まるで自分が通る道が王道だ、とでも言わんばかりの足取りでジンは登っていく。重い荷物を抱えたまま、速い足取りで直進して踏破していくのだ。
時折、彼は私の方を見る。けれど距離が開かなければ、速度は変える気はないらしい。
木の根や、地面から露出した岩を足場にしてジグザグについていく。半時ほど掛けて、登り切った時には靴が土で汚れていた。
「……もう。やっと来た」
熊手で刈草を集めていたイヴが私たちの顔をみて愚痴をこぼす。刈草の山を三つも四つも作れば愚痴の一つも出るだろう。
「ま、休憩にはちょうどいい時間だろ」
と、いったジンは広大な敷地の手入れが半分ほど済んでいるのを確認する。朝のうちに完成させていたレンガ造りの焼却炉に火を入れ始める。昨日から用意していたとはいえ、ろくに整備もされてない山道を十数キロの装備で上がってきたのだから頭が下がる。
「で、この刈草の山はどうするんすか?」
「焼く」
それは見たら分かるだろう。
「いや、わざわざ焼く必要ないっすよ。そこら辺の山中にポイッとすればいいんじゃないんすか? 広いんですし」
「まあ、うちの管轄区だし、それもありかも知れないが。まあ移動させるのも、虫が湧くと面倒だからな。ミョルニルで掘って灰を埋める。焼いてるうちにコンパクトになるから、そこまで深く掘らなくていいしな」
ジンはローレンに場所の支持を出す。次に私の刀を勝手に抜くと、刈草の山を中心に一つの円を描き始める。
「今度は何を始めるの?」
「経っても一日、二日で水分なんて抜けないからな。先に魔術道具で乾燥させる」
「魔術道具って?」
イヴの質問に、
「魔術師の日用品ってところかな。要は面倒ごとを短縮するための魔術の行使に使うための道具だ。これのいいところは効力は薄いが応用が利くってことだな」
とジンは答える。土をなぞって描いた円に沿って土が削れることで出来た溝に粉末を振りかけていく。それが終わると今度は円の中に絵の描かれた紙を投げ込む。
紙に書かれた文字が薄ら青く光を放つが、特に変化があるようには見えない。
「入るなよ、怪我するぞ」
ジンは顔を近づけようとする私の襟首を掴んで引き戻す。
「ちょっと、こっちこっち」
と、ローレンがジンを呼ぶ。どうやら上手く掘れないらしい。扇状に浅く土が抉れている。
ジンは勝手に私の鞘に刀を戻し、ローレンの元まで歩いていく。
「ちょっと貸してみろ」
「いやっすよ。手汗が付く」
「最近、整備してるのは俺だからな。既に手遅れだ」
「ばっちい」
ジンは軽く投げつけられた鎚を掴むと扇の頂点に立つ。
「こういうのはイメージがものを言うんだ」
土を軽く二回ほど鎚で小突く。そして鍬のように振り上げ、地面に叩きつける。
……爆発、いや、聞きなれない鈍い爆発音と共に、粉砕された土が地面から離れ、周りに勢いよく広がる。
少し距離を取った位置にいたローレンでさえ頭から土を被ったのだ。小さなクレーターと呼ぶべき穴の中心点近くにいたジンは濡れた犬のように全身を震わせて土を払う。
「もう、ジン。誰が服洗うと思っているの!」とイヴが口を尖らせる。
「いや、先に俺の心配してくれてもいいんだぞ」
普通なら無傷なのは奇跡だろうが、ジンなら無傷なのが当たり前の気がしないでもない。
「イヴ、魚の調理してくれ。流石に手を洗うだけで水使い切っちまいそうだ」
「もう、仕方ないわね。ローレンも早く、その砂埃落としなさい」
ジンに頼まれ、口ぶりの割には嬉しそうにイヴは答えた。
「この後、可愛い女の子に抱き着くことなく、一人風呂送りになることが分かる世の中、世知辛いっすね」
「安心しろ、二人だ。寂しくないぞ」
「むしろ安心出来ないんですが、それは……」
ローレンは嫌悪感丸出しの引きつった顔をジンにみせた。
「あと、ミョルニルは返しておくからな」
ジンに言われてすぐに、ローレンは向けられた鎚の持ち手をすぐさま奪い取り、執拗に袖で持ち手を擦る。
「お前…、そんな嫌か?」
「嫌っすね。私は亜人似の伊達男が特に大嫌いですね」
なんとも嫌味たらしい口調でローレンはジンを睨みつける。
「ローレン…」と私はゆらりと近づき、「女々しい」と彼女の脛を蹴り飛ばす。
「暴力はダメだぞ」
痛みに必死に耐えているローレンを横目にジンは私を諭す。
「教育的指導?」
「教育的指導は反省を促すものであって、思想を押し付けるものであってはならないんだ」
「なるほど」
よく理解した。
「ごめんなさい、ローレン」と私は謝罪から入り、
「私は、ジンを嫌いなあなたのことは嫌いだからと、足が出てしまったことは謝るけど、前に残しておいたお菓子を勝手に食べた事を許す気はないし、朝はやたら騒がしくて目が覚めるし、いつも抱き着いてくるのは鬱陶しいし……」と首を捻り、ジンの顔をみる。
「……やっぱり蹴って正解だと思う」と私は一人納得した。
「コミュ力をどこに置き忘れたんだ、お前は……」
あきれた顔というより困り顔を、ジンは肩をすくめて私に向ける。ローレンは色が抜けて白くなっていた。
「客観的視点?」
「それは主観的悪態だからな」
「難しい」
と私はジンに返した。お姉ちゃんとしての指導を頑張ろうと考えていたが、どうやら上手くいかなかったようだ。
「叩いたら直る?」
「昔の家電じゃあるまいし治らん。余計萎れるだろうな」
とジンは溜め息交じりにいった。
ローレンはふらふらと歩きだし、小言でぶつぶつ言いながら、おぼつかない足取りでイヴに近寄る。けれど「邪魔。料理中よ」と一蹴されて、そのまま刈草の山の中へ……。
「あばばば、あづぅ!」
刈草の山に手を突っ込んだローレンは電撃が流れた後に熱した鉄にでも触れたかのような腹の底から驚きに満ちた奇声で飛び上がる。
「な、危ないだろ」とジンは私に紹介する。
なるほど。刈草から薄水色の魔力が微かに立ち昇り、水蒸気に変わっていく……、いや、刈草から水蒸気を生み出しているのが今ならよくみえる。刈草に魔力を使わせて熱を発生させているのだ。そんな条件下のところに大量に魔力のある手を突っ込めば低温火傷の一つぐらいするだろう。
「おい、怪我はないか?」
「めちゃ痛いとか聞いてないんですけど!」
とローレンは髪まで逆立てて怒っている。いや逆立っているのは魔術の影響だ。
「いや、魔術行使してるんだから近づかないのは常識だろ。魔術兵器の使い方を考えたら分かるだろ」
ジンは当たり前の事だと言わんばかりの口調だが心配はしているらしく、
「ほら、手、見せて見ろ」と手を差し伸べる。
「こんなの、冷やしとけば治ります」
しかし、ばーかばーか、とローレンは捨て台詞残して川の方に飛んで行ってしまう。
「教育って難しい」「だな」と私二人は得心した。
「ちょっとジン、火はどうなってるの?」
魚の調理が終わったらしく、イヴが声をかけてくる。
「すまん、ローレンが遊んでたからな。今やる」
火バサミで焼却炉に乾いた刈草を入れていく。
「ちょっと、それで焼かせるつもり?」
「駄目か?」
「ずぼらなのも、ここまで来ると狙ってやってるでしょ」、イヴは溜め息を吐き、
「火加減できないから火だけ頂戴」と隣に焼却炉に使われずに余ったレンガで簡素なかまどを作って焚き火を始める。
やることもないのでイヴの隣で魚が焼けるのを眺める。焼き始めの皮の匂いで涎が溢れそうになるところで、音を立てて飲み込んだ。
「もう。涎垂れてるから、口元拭くから動かないで」
イヴは私の口元を拭うと、焼け具合を見ながらジンに火の調整をさせる。
魚の水分が抜けて、徐々に背の焼目が濃くなっていく。
「まだ?」
「もう、ちょっと」
火を弱めて腹を焼いていく。まぶした塩が火に炙られ、パチパチと飛ぶ。内臓を抜いた切り口から油交じりの水分がジュッと音共に蒸発すると、
「こんなものかな」とイヴが一つを掴んで味見する。
パリッと皮が割れるとイヴは頷き、私に一匹差し出してくる。
すぐさま、かぶりつこうとした私の頭を押さえ、魚を取り上げると、
「いただきますはした?」と訊ねてくる。
「いただきまず」
涎で発音も覚束なかったが、イヴはちゃんと魚を返してくれた。
熱々の身に唾液が飛ばないように、息を吹きかけてから、背から豪快にかぶりつく。パリパリと噛み応えのある塩がよくまぶされたヒレが、ほくほくとした身の甘みを引き立てて、より一層深い味わい変える。骨も柔らかく、噛めば噛む程味が口の中に広がり、柔らかな腹の肉と、いつまでも口の中で踊っているようだ。
「グッド」
「そうか、せっかく捕って来たんだ。そりゃ良かったよ」
一仕事終えて隣に座ったジンに親指を立てて感謝を送る。
「意外と調理上手いんだな」
「意外って何よ。これぐらいなら出来ますよー、だ」
どうして、この二人は含みのある言い方で会話しているのだろうか。味がなくなるまで咀嚼するついでに二人の顔を見比べておく。ジンの言葉はあまり褒めたような言い方ではなかった気がするが、イヴは妙に上機嫌だ。いつも溜め息を吐く割にちゃんと仕事はするし、マゾっ気でもあるのだろうか。
「ところでイヴ、一昨日の話なんだが……」
バツ悪そうにジンが口を開くと、イヴはまた溜息を吐く。
「私には分からないわ。けど…」、ジンの目を見つめ、「けど、大切な事なんでしょう?」、と返答を待つことなく、「大丈夫。理解できる日が来るまで私は頑張るつもりだから」と答えた。
返事をあたふたと考えているジンに、
「だから、ちゃんとご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします」とイヴは微笑みかけた。
「お、おう」
これで解決できたとは思えないほどペースをつかみ損ねたなんとも頼りない返答だ。
そんなことよりも、だ。
よく燻されて、水分が抜け切った魚の香りが鼻をくすぐって、また涎が出てきた。
「まったくローレンはどこに行ったのやら。あんまり放って置いても硬くなっちゃうから食べてもいいわよ?」
とイヴが私に勧めてくる。据え膳食わぬはなんとやら、ありがたく頂くことにする。
「あ、帰って来た」
とジンが呟く。ローレンが着地する前に取りやすい身は口の中に放り込んでしまう。
「お、いい匂いがしますね、あたしの分は?」
「ないわ」「ないな」
二人に合わせて頭を縦に振る。
「いや、四匹いたんじゃなかったっすか?」
「そりゃ……」
と、言葉に詰まるジンにつられて、皆がハムスターの如き頬をした私の顔をみる。
「まさか食べたんですか! 苦節十五年と少し、あたしがどれほど、イヴの手料理を食べられたと思ってるんですか! 普段から厨房に立つ姿を見ることも叶わず、お風呂にする? ご飯にする? それとも、わ・た・し、……なんて事言われたこともないぐらいイヴの手料理は貴重なんですから分かります? 口移しでいいんで、むしろカムで! その口の中身を……。ちょっと待って! 人の話を聞けぇ!」
「背骨でも食べてろ」
私は口の中のものを飲み込み、口うるさく興奮するローレンの口の中に残った背骨を押し込んでつっかえ棒の代わりにしてやる。
「芋いるか? 実はさっき焼いてたんだ」
とジンは焼却炉から包みを引っ張り出した。口の中の背骨と格闘しているローレンを横目に、そんな気の抜けた声に私は目を細めた。こんなにも暖かな昼下がりが続けばいいのにと、もうぼやけて思い出せもしない在りし日の光景と重ねてしまう。
だからこそ、今度こそ守らねばならないのだ、と無意識に小さく拳を握りしめていた。