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剣と魔法の世界で俺だけロボット  作者: 神無月 紅
辺境にて

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0076話

 ゼオンは、現在上空から地上に降りていた。

 上空にいたままでも、復活しようとする土のゴーレムの破片に対処することは出来たのだが、地上に降りれば土ゴーレムだけではなく、ラリアント軍に向けても攻撃をすることが可能だったからだ。

 いや、正確には上空にいるままであっても、地上にいるラリアント軍を攻撃することは可能だろう。

 実際に土のゴーレムを攻撃したとき、ラリアント軍の兵士を巻き込んで相応の被害を与えていたのだから。

 だが、ラリアント軍の奥の手と思われる土のゴーレムを倒したゼオンが、上空ではなく地上に……騎士や兵士たちのすぐ側に立っているのを見せつけられれば、それは大きな脅威と映る。

 そんな者がすぐ近くにいる状況で、存分に力を発揮出来るだろうか。

 答えは、当然のように否。

 ゼオンのような凶悪な存在が間近にいることで、それこそいつ攻撃されてもおかしくはなく、実際にゼオンが土の塊を攻撃する際についでのように放たれる頭部バルカンの一撃により、ラリアント軍には大きな被害を出していた。

 それでも狙っているほとんどがラリアント軍の中でも盗賊だったり、ガリンダミア帝国の兵士と思われる者たちだったりするのは、アランにも甘いと思われる情があるからだろう。

 騎士はともかく、兵士の中にはアランと共に訓練した者たちが混ざっている可能性がある。

 友人と呼んでも間違いない存在に対して、アランとしては可能な限り攻撃をしたくはなかった。

 たとえ、それが優しいのではなく甘いと言わると分かっていても。

 それでもこうして攻撃している以上、絶対に死なないということはない。

 運が悪ければ、バルカンの弾丸に命中して死んでしまうだろう。

 ロボット同士の戦い……それこそ、アランが日本にいたときにやっていたゲームであれば、バルカンというのは牽制やミサイルの迎撃といったことに使われることが多い武器だった。

 だが、生身の人間相手であれば、それこそバルカンの弾丸は致命的だ。

 戦車や戦闘機の類でさえ撃破出来るだけの威力があるのだから。


(それでも……死ぬなよ)


 かなり自分勝手な意見だと知ってはいるが、アランは土のゴーレムの破片を攻撃しながら、そんな風に考え……


『アラン、そっちはどんな感じ? こっちはかなり有利になってきてるけど』


 レオノーラから、テレパシーでそう尋ねられる。

 その言葉にレオノーラや黄金の薔薇が戦っている方を映像モニタに表示すると、そこではレオノーラの言葉通りの光景が広がっていた。

 そもそも、巨大な黄金のドラゴンがいる時点で、ラリアント軍にとっては非常に不利だ。……いや、そんな言葉では言い表せず、それこそ絶望的な光景だと言ってもいい。

 むしろ、そのような状況でよく今まで対抗出来ていたと、褒められてもおかしくはないだろう。

 それでも、戦場というのは結果が全てだ。

 奮戦したところで、負けてしまっては意味がない。

 黄金の薔薇と戦っていた者たちも、このままでは勝ち目がないと判断して、一人が逃げ、二人が逃げ……といったように次第に逃げ出す者が増えている。

 もしくは、黄金の薔薇に降伏する者もだ。

 特に兵士や騎士に降伏している者は多い。

 ザラクニアが裏切ったという事情を知らない兵士や騎士にしてみれば、ラリアントを封鎖していた盗賊たちと轡を並べて戦うという行為で、士気が上がるはずもない。

 その上、自分たちが戦っている反乱軍を率いているモリクは、兵士や騎士の間でも非常に好かれている人物だ。

 そんなモリクが自分の欲望だけでこのような真似をするとは思えず、ましてや自分たちが戦っているのは探索者のクランの中でも名前の知られた黄金の薔薇。

 何より、巨大な黄金のドラゴンが、兵士たちの士気を根こそぎ吹き飛ばす。


「こっちも圧倒的に有利だな。ただ、土のゴーレムの一部を延々と破壊してるだけだから、単調な感じだ。だからといって、この土のゴーレムのような相手と好んで戦いたいとは思わないけどな。……ああ、そうそう。泥のブレスの正体だけど、何となく分かった」

『ああ、あの。……どういう攻撃なの?』


 こうして話している間にも、アランとレオノーラは敵に対する攻撃を続けてはいる。

 それでも、強力な敵だった土のゴーレムや大蛇のモンスターを倒したということもあり、今はもうそこまで緊迫した状況ではない。

 レオノーラも、何人かの心核使いを倒しているということもあって既にラリアント軍に心核使いは全て倒したと考えてもよさそうだった。

 アランとレオノーラ以外の心核使いも、相応に敵の心核使いを倒しているのだから、なおさらに。


「多分だけど、ブレスの中に含まれている泥……正確には細かい砂が泥のブレスで飲み込んだ相手を削り殺してるんだろうな。泥のブレスが命中してないのにダメージを受けるのも、その辺が理由だと思う」


 ゼオンの装甲が受けたダメージを分析した結果の判断だったが、アランにも納得出来るものがある。

 日本にいるときにTVか何かで見たウォーターカッターの中に研磨剤を入れて使うことにより、鉄どころかダイヤモンドですら切断することが出来るというのを見たことがあったためだ。


『厄介ね』


 アランの記憶を追体験したことのあるレオノーラだからか、アランの言いたいことが分かったのだろう。

 つまり、あの泥のブレスをまともに食らった場合、身体を削り殺されるということを意味している。

 そして先程泥のブレスに飲み込まれた者たちは、敵味方問わず泥のブレスによって削り殺されてしまったのだ。

 その上で泥のブレスに直接触れてなくてもゼオンの装甲にダメージを与えるだけの威力を持っているのだから、それこレオノーラが口にするように厄介という言葉以上に厄介な相手なのは間違いない。


「だろうな。だからこそ、こうやって俺が延々と土のゴーレムになろうとしている破片を攻撃してるんだし」


 泥のブレスが、具体的にどれくらいの威力があるのかは分からない。

 それでもゼオンの装甲にダメージを与えるだけの威力がある以上、正面から食らいたいとは思わないし、レオノーラの変身した黄金のドラゴンであっても、大きなダメージを受ける可能性はあった。


『そうね。それじゃあ、そっちはお願い。こっちの方が片付いたら、黄金の薔薇も中央に合流するわ。……雲海の方も、こうして見る限りだとそろそろ勝負がつきそうね。ほぼ勝負はついたといったところかしら。……よほどの奥の手でもない限りは』

「奥の手、か。……中央の兵士たちの中にも逃げ出している奴が出ているみたいだし、こんな状況をどうにかするだけの奥の手があるのなら、もっと早く使ってると思うんだけどな」


 それは強がりでも何でもなく、正直にアランが思ったことだった。

 もし何らかの手段でこの状況をひっくり返せるような奥の手がまだ残っているのなら、それこそこの状況になるよりも前に使っているのではないか、と。

 むしろ、アランが倒した土のゴーレムこそがその手段であってもおかしくはない。


『だと、いいんだけどね。けど、相手はザラクニア。長年この地をガリンダミア帝国から守ってきた相手よ。油断は出来ないわ』


 少しだけ心配をしている様子のレオノーラの言葉に、アランは頷きを帰す。

 実際にまだ何か奥の手があるのなら、厄介なことになりかねないからだ。

 現状ではすでに圧倒的にモリクの反乱軍が有利な状況になっているのだが、ここから何らかの手段を使って引っ繰り返すような真似をされるのは、アランとしてもごめんだった。


「分かってる。とにかく、このまま順調にいけば、そんなに時間がかからずにこっちの勝利となるはずだ。そうなったとき……ザラクニアがラリアントに逃げ込んだりしないように、心核使いを何人か敵の後ろに回した方がいいかもしれないな」


 延々と、延々と、それこそいくら攻撃しても全く集結するのを止めない土のゴーレムの破片とも呼ぶべき存在を面倒に思いながらも、アランはレオノーラと言葉を交わす。


(こうして実弾で破壊するから倒すことは出来ないけど、ビームで消滅させれば……もしかして、何とかならないか?)


 実弾の攻撃では、どうしても命中した場所に対するダメージはあっても、それは物理的なダメージ……極端に言えば、石を投げて命中したのと同じような――威力は段違いだが――性質のダメージだ。

 それに比べると、光学兵器のビームなら集まろうとしている土を消滅させることが出来るのではないか。

 そんな風に思い、アランはバルカンを発射しながらビームライフルの銃口を少し大きめの土の塊に向ける。

 自分がビームライフルで狙われているとは全く思っておらえず、他の土の塊と融合しようとしているその姿は一生懸命にも思えた。

 とはいえ、今の状況でアランがそれを見逃すはずもない。

 土のゴーレムが放った泥のブレスは、それこそゼオンであってもまともに命中すれば大きな被害を……場合によっては撃墜されていたかもしれないだけの威力があったのだから。


『じゃあ、お願いね』


 それを最後に、レオノーラの声は頭の中に届かなくなる。

 土のゴーレムが集まらないように注意しながら映像モニタに視線を向けると、そこでは黄金のドラゴンがラリアント軍を相手に蹂躙と呼ぶべき行動を行っていた。

 レーザーブレスが放たれれば、地面は斬り裂かれ、その射線上にいる者は消滅する。

 幸運に恵まれた者は、レーザーブレスの範囲内に入ったのが片足や片腕だけだったこともあってか、手足の一本は消滅したものの、死んではいない。

 ……もっとも、本当に運がよければレーザーブレスを放つ黄金のドラゴンの前に立ったりはしないだろうが。

 放たれる攻撃は、レーザーブレスだけではない。

 軽く一回転するような動きをして、尻尾による薙ぎ払いをしかけもしている。

 そんな黄金のドラゴンの様子を見て、アランは話はもう終わってレオノーラは敵の攻撃に集中し始めたのだと理解する。


「こっちは楽と言えば、楽なんだけどな」


 すでに土のゴーレムの周囲にはラリアント軍の兵士の姿はどこにもない。

 ゼオンの攻撃に巻き込まれるのはごめんだと、生き残っていた者たちはすでに逃げ出したか、もしくは攻撃に巻き込まれて死んだか。

 そうして……やがて右翼も左翼も反乱軍が勝利し、戦いは終盤に移るのだった。

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