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剣と魔法の世界で俺だけロボット  作者: 神無月 紅
辺境にて

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0068話

 モリクとの合流は、思ったよりもあっさりと出来た。

 元々、イルゼンがモリクとどこで合流するのかというのを決めていたというのもあるし、ラリアントを見張っていた者の中には、モリクの部下の姿もあったためだろう。

 そう聞かされたアランは、しみじみと早まった行動をしなくてよかったと安堵する。

 ラリアントから出たゼオンが周囲を警戒していたとき、何人かがラリアントを見張っているのには気が付いていた。

 ゼオンはそれを盗賊かガリンダミア帝国の手の者だろうと判断し、攻撃しようかどうか迷ったのだ。

 だが、結局は攻撃せず……そのおかげで、モリクの部下を殺すようなことはなかった。

 そんなモリクの部下に案内されたのは、ラリアントから馬車で数時間ほど離れた場所にある森の中。

 ……馬車に乗り切れなかった探索者たちは、その数時間を走り続けであったのだが、森に到着しても全く疲れた様子を見せていない。

 この辺り、探索者としての……それもその辺にいるような自称探索者や、探索者になったばかりの者ではなく、本当に実力のある探索者であるがゆえだろう。


「イルゼン殿、よく無事で!」


 そしてモリクたちの拠点となっている場所に到着すると、そこでイルゼンたちを出迎えたのはモリクだった。

 捉えられていたイルゼンたちを救助したあと、モリクは一足先にラリアントを脱出して、この森に戻っていた。

 どのようにして、見つからずにラリアントを脱出したのかはアランにも分からなかったが、ザラクニアの騎士という立場を考えれば、恐らく秘密の抜け道のようなものがあるのだろうというくらいは予想出来る。


「約束通り、ザラクニアの手の者の目を引き付けるという役目は果たしました。それで、そちらはどうなっています? 予定通りの人数は揃いましたか?」

「寧ろ、予定以上ですな。……正直、私の声にこれだけの者が従ってくれるとは思いませんでした。……とはいえ、それでいいことばかりでもありませんが」


 嬉しそうな様子から一変し、残念そうな表情を浮かべるモリク。

 それを離れた場所から見ていたアランは、何故予定よりも多くの人数……戦力が集まったのに残念そうな表情をしてるのか分からなかったが、アランの近くにいた雲海の補給を担当している女が口を開く。


「いい、アラン。人数が多くなったということは、戦力が増えたということでもあるけど、同時に食料とかもより多く消費することになるの。具体的にどのくらい増えたのかは分からないけど、あの様子を見ると結構増えたんでしょうね」

「つまり?」

「集まった人数に対して補給物資が足りないから、短期決戦になるということでしょうね」

「短期決戦ですか。それは、俺達にとってはそれなりに有利ですよね?」

「そうなるでしょうね。アランとレオノーラさんがいる以上、心核使いとしてはかなりの戦力を期待出来るでしょうし。……とはいえ、ザラクニアの下にも心核使いはいるでしょうし、ガリンダミア帝国からやって来てる中にも心核使いはいるはずよ」


 そんな仲間の言葉に、アランは当然といった風に頷く。

 この世界において、心核使いは極めて強大な戦力、奥の手として扱われている。

 転生前の世界の核兵器……というのは言いすぎか。

 ともあれ、そこまでの戦力である以上、敵の心核使いを撃破すれば大きな意味を持つ。

 そういう意味では、やはりアランのゼオンやレオノーラの黄金のドラゴンは非常に大きな意味を持っているのだ。

 アランたちがそんな風に話している間に、大体の話が纏まったのだろう。

 モリクとイルゼンが握手を交わす光景がアランの目に入る。


「さぁ、こちらだ。集まってくれた者たちの中でも、主要な者たちが集まってくれている。雲海と黄金の薔薇からも出席をして欲しい。これから、どうザラクニア様……いや、ザラクニアを討伐するのかの話を詰める必要があるからな」


 モリクは自分の仕えていた人物の名前を、無理矢理呼び捨てにする。

 高い忠誠心を持つモリクにしてみれば、ザラクニアに刃を向けることは決して本意ではないのだろう。

 だが、忠誠心同様に強い愛国心を持っているモリクとしては、自分の故郷をガリンダミア帝国に侵略させるといった真似をするザラクニアの行動は決して許容出来なかった。

 ……この辺りが、騎士団の団長という訳でもなく、小隊長という身分でありながらも、多くの者に慕われている理由なのだろう。


「分かりました。では、レオノーラさんと……それと、アラン君も来て下さい」

「え!? お、俺もですか?」


 この状況で自分が呼ばれるとは思っていなかったアランは、若干間の抜けた声を発する。

 雲海の幹部とも言える自分の両親やそれ以外の面々ではなく、何故自分が……と。

 それ以外にも、堅苦しい会議に卒したくないという思いがあったのも、間違いなかったが。

 しかし、イルゼンはそんなアランの様子に当然といった様子で頷く。


「今回の作戦では、レオノーラさんとアラン君の心核が大きな鍵となるんだ。……何しろ、戦力として見れば私たちは明らかに劣っている。もちろん、戦えば質の差で勝つことが出来ないとは言わないけど、そうなるとお互いに被害が大きくなる」


 ザラクニアに勝ちました。

 しかし、侵略してきたガリンダミア帝国の軍隊に対抗出来る戦力が残っていませんというのでは、困るのだ。

 だからこそ、出来るだけ戦力を温存して戦う必要がある。

 もっとも、ラリアントとガリンダミア帝国……正確にはドットリオン王国とガリンダミア帝国の戦争にまでかかわるつもりは、イルゼンやレオノーラにはなかったのだが。


「そんな訳で、短期決戦を行うにはアラン君やレオノーラさんの心核が必要となる。その辺りの事情をしっかりと理解して貰いたいから、会議に一緒に出て貰いたいんだ」

「えっと……分かりました」


 取りあえず自分が会議に参加する理由は理解したので、アランはそう返す。

 別に自分が会議の采配をしたりとか、そういうことではなく、自分のやるべきことを理解させるための会議の参加だと言われ、アランは少しだけ安堵した。

 もっとも、だからといって完全に緊張が解けたのかと言われると、話はまた別だったが。


「分かって貰えたようで何よりだよ。……さて、なら会議を始めようか。他の人たちは、少しでも身体を休めておいてくれるかな。この先、何があるのか分からないから」


 イルゼンのその言葉に、雲海と黄金の薔薇の探索者たちは手を上げたり、軽く返事をしたりといった具合に了解の意を示すのだった。






「さて、早速だけど会議を始めようか。正直なところ、いつ追っ手がきてもおかしくはない。その前に、決められることは決めておく必要があるしね」


 イルゼンのその言葉に、会議に参加している面々はそれぞれが頷く。

 この会議に参加している人数はそう多くない。

 基本的には、ある程度の部下を率いる者たちだけの集まりとなる。

 そんな中で、唯一違うのは心核使いとして奥の手となるゼオンを操るアランのみだ。


「うむ。なるべく早く行動を起こしたい。ここで時間を使えば、ガリンダミア帝国が本格的にこちらに侵攻して来ないとも限らんからな」


 モリクが呟き、モリクに従ってこの反乱軍に協力している者たちが頷く。

 イルゼンたちにしてみれば、自分たちはそちらにはあまりかかわるつもりはなかったが、今回は雲海や黄金の薔薇が思い切り巻き込まれている以上、大人しくやられたままということになれば、他の者に侮られる可能性も高く、今回の件を出来るだけ早く自分たちの勝利で終わらせるということは賛成だった。


「そうなると、出来れば今からすぐ……という風にしたいところですが、こちらも脱出してきたばかりで疲れていますし、今からというのは無理ですね」


 イルゼンの言葉に、モリクたちも頷く。

 そもそも、今は夜だ。

 その上、アランたちはつい先程ここに到着したばかりだというのを考えると、今からすぐに出発というのは有り得ない選択肢だった。


「はっはっは。こちらもまだ準備が整ってませんので、それは無理ですな。どんなに頑張っても、二日はかかるかと」


 それを聞いたアランは、遅いという思いを抱いたが、それはクランとしての活動で慣れているからだ。

 仮にも一つの軍勢が行動を起こすのに二日で準備を整えるというのは、普通なら考えられない早さなのだから。

 とはいえ、それはここに集まっている者たちの数がそこまで多くないから、というのもあるのだろうが。

 軍勢として行動する者の数が多くなれば、当然それだけ準備に時間がかかるのだから。


「そうですか。ただ、私たちに合流出来なかった者たちが、現在ラリアントに潜んでいます。それを考えると、出来るだけ早く準備をして貰うと助かりますね。ここで下手に時間をかけると、ラリアントに潜伏している仲間たちが捕らえられる可能性が出て来ますし」

「分かった。出来るだけ急がせよう」


 小隊長という地位だったからこそ、部下や仲間の大切さは身に染みているのだろう。

 モリクはイルゼンの言葉に頷くと、話を続ける。


「ザラクニアは、アランを……正確にはアランの心核を欲している。それに加えて、今回の一件を知っている俺たちがこうして纏まっているとなると、出来るだけ早く何とかしたいと思っているはずだ。……ここで無駄に時間をかけて、アランに逃げられるといったことになったりもしたくないだろうしな」

「そうですね。また人数が少ないということで、こちらを過小評価……というのは、少し難しいでしょうか?」


 アランを一瞬見たイルゼンの言葉に、ゼオンを知っている者たちは同意するように頷く。

 ゼオンの力を考えれば、その力を過小評価するという可能性はない。

 それこそ、可能な限りの戦力を集めて襲ってきてもおかしくはなかった。

 であれば、とイルゼンはレオノーラに視線を向ける。


「向こうがゼオンだけに興味を惹かれているというのを考えると、この場合の奥の手は……」

「私、という訳ね」


 レオノーラは、イルゼンの言葉に分かってるわといったように頷くのだった。

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