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剣と魔法の世界で俺だけロボット  作者: 神無月 紅
ガリンダミア帝国との決着

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402/421

0402話

 ゼオンと翼持つ蛇の戦いは、時間が経つに連れて激しくなっていく。

 アランにとって何よりも厄介だったのは、翼持つ蛇の身体がその名の通り蛇身であるということだろう。

 翼持つ蛇はその蛇身を上手く使い、ゼオンの攻撃をことごとく避ける。

 ビームライフルは当然のこと、腹部拡散ビーム砲によって広範囲に一斉に攻撃しても回避するのだから、アランにとっては厄介この上ない。

 また、回避力以外にも厄介なのは、その防御力だ。

 ビームライフルのビームは、命中しなくても近くを通るだけで相手に重度の火傷……場合によってはそれどころではない被害を与える。

 しかし、空飛ぶ蛇は非常に高い防御力をしているためか、ビームライフルを回避してもダメージは全くない。

 ……それどころか、一度などは間近から頭部バルカンを命中させたというのに、その鱗によって無傷だったのだ。

 もちろん、鱗で攻撃を防いだからとはいえ、翼持つ蛇にとってダメージが全くない訳ではないだろう。

 強固な鎧を着ていても、外からそれを思い切り殴られるような真似をすれば、その衝撃は内部にも通るのだから。

 そういう意味では、頭部バルカンもそれなりにダメージはあったのかもしれないが……

 しかし、ゼオンにのって外見から見ている限りでは、翼持つ蛇に何等火のダメージがあるようには思えない。

 これで空を飛ぶ動きが多少なりとも鈍ったりすれば、ダメージがあると認識も出来たのだろうが。


「うおおっ!」


 そして翼持つ蛇の攻撃で厄介なのは、その口から放たれる水のブレスだった。

 圧縮され、魔力が混ぜ込まれた水のブレスは、圧倒的な威力を誇る。

 それこそ今まで殆どダメージを受けたことがないゼオンの装甲を斬り裂く……とまではいかないが、浅くない傷をつけるだけの威力を持つのは事実。

 それだけにアランは翼持つ蛇に集中する必要があるのだが、そうなると当然のように他の空を飛ぶモンスターの相手は出来ない。

 地上にいるレジスタンス連合も、空中にいるモンスターに攻撃をしたり、ロッコーモが変身したオーガの投げる石によって、もしくはトレントに変身したケラーノによって硬い木の実を投擲したりといったような真似をしているが、焼け石に水に近い。

 地上にレジスタンス連合がいなければ、ケラーノは木の実ではなく毒性の強い花粉を散布するといったような真似も出来るのだが、今の状況でそのような真似をすれば味方の被害の方が多くなってしまう。

 そんな風に、全力を発揮出来ないような、そんな戦場になっていた。


「取りあえず、お前は……落ちろ! フェルス!」


 翼持つ蛇に対し、ビームライフルのトリガーを引きながら間合いを詰めつつ左手でビームサーベルを引き抜きつつ、フェルスを突っ込ませる。

 翼持つ蛇は、その翼で空中を自由に飛び回っている。

 実際には巨大なその身体を飛ばせるほどの飛行能力を持つことは出来ないだろう翼ではあるのだが、その辺はここがファンタジー世界である以上、気にするような必要はなかった。


「シャアアアアアアア!」


 空を飛ぶ蛇は、フェルスの危険性を十分に理解しているのだろう。

 先端にビームソードを展開させながら突っ込んでくるフェルスを見た瞬間、迎撃をするのではなく、素早くその場から退避することを選択する。

 しかし、当然ながら一度フェルスの攻撃を回避したからといって、それでアランの攻撃が終わる訳ではない。

 回避した翼持つ蛇を、フェルスは追う。

 フェルスはアランの意思によって動いている以上、一度回避したからといって、それだけでどうにか出来る単純な攻撃ではない。

 逃がしてたまるか。

 そんなアランの意思に従うように、フェルスは翼持つ蛇を追う。

 さすがにそれは鬱陶しいと思えたのだろう。

 翼持つ蛇は、自分を追ってくるフェルスに向かい、水のブレスを放つ。

 しかし、水のブレスを放つには、当然ながら翼持つ蛇は口を大きく開ける必要がある。

 そして水のブレスを放つ方向は、当然ながら顔の向いている方だ。

 それを理解していれば、アランにとっても水のブレスを回避するのは決して難しい話ではない。

 フェルスは水のブレスを回避しながら、翼持つ蛇に迫り……回避したフェルスよりも先に、別のフェルスがビームソードで翼持つ蛇の蛇身を貫く。

 当然の話だが、翼持つ蛇が放つ水のブレスは一方向だ。

 水のブレスを放ったまま顔を動かせば、それによって相応の広さに対して攻撃するような真似も出来るだろうが、それも限界がある。

 特に翼持つ蛇の背後から攻撃をしてくるフェルスに対しては、当然ながら水のブレスを命中させることは出来ない。

 それはつまり、ある意味で水のブレスを回避したフェルスが囮の役割をも果たしたのと同じような意味であり……


「シャアアアアアアア!」


 背中を突き刺さったビームソードの痛みに、翼持つ蛇の口から悲鳴が上がる。

 ようやく、本当にようやくといった様子で、アランは笑みを浮かべた。

 してやったりといった、そんな笑み。

 当然ながら、翼持つ蛇の背後から迫っていたフェルスの数は一基だけではない。

 そのまま続けて、いくつものフェルスがビームソードでその蛇身を貫く。

 中には蛇身から伸びている翼にダメージを与えたフェルスもあった。

 翼持つ蛇の鱗は非常に頑丈だ。

 それこそビームライフルが至近距離を通っても、翼持つ蛇にはダメージを与えられないほどに。

 しかし……それはあくまでも至近距離を通ったビームのダメージを防ぐのであって、直接ビームソードで突き刺されてもどうにか出来るという訳ではない。

 やった、と。

 ようやく翼持つ蛇を倒すことが出来たと思ったアランだったが、翼持つ蛇は空中で大きく身体をくねらせると、やがて身体中に突き刺さっていたフェルスを吹き飛ばす。

 ビームソードによって鱗を貫き、その下にある肉に突き刺さっていたフェルスだ。

 当然ながら吹き飛ばそうとしてもそう簡単に出来る訳ではないのだが……一体どうやってそのような真似が出来たのか、アランには分からない。

 分からないが、それでも翼持つ蛇が身体中に突き刺さっていたフェルスを吹き飛ばしたのは事実。

 しかし、それだけならまたアランにも手の出しようがあった。

 フェルスはアランの思い通りに動かせるのだ。

 そうである以上、再びフェルスを動かし、翼持つ蛇の身体を貫けばいいだけなのだから。

 難易度ということであれば、吹き飛ばされたとはいえ、フェルスはまだ翼持つ蛇の近くに存在している。

 先程のようにまず近づけるといったようなことをしなくてもいい以上、ある意味では楽であるはずだった。だが……


「な……再生、だと!?」


 唖然とした様子でアランが呟いたように、その視線の先では翼持つ蛇が受けたダメージを再生していた。

 貫かれた肉や剥げた鱗、斬り裂かれた翼……それらが小さな泡に包まれ、その泡が消えると攻撃を受ける前の状況に戻っていたのだ。


「何てチート!」


 翼持つ蛇を見て半ば反射的に叫ぶアランだったが、ゼオンに今まで倒されてきた者達にしてみれば、それこそアランが召喚するゼオンに対しても、似たように思うだろう。

 客観的に見れば、剣と魔法の世界に人型機動兵器を持ち込んだアランの存在こそが、これ以上ないほどのチートなのだから。

 冷静に考えれば、アランもそのことについては思い当たったかもしれない。

 しかし、今の状況においてそんなことを考えていられるような暇はない。

 現在の敵の中でもっとも厄介な翼持つ蛇が、単体であっても非常に高い能力を持っている上に、高い再生能力まで持っているのだ。

 そのような敵を相手にして、アランが出来るのは……とにかく、目の前の存在を抑えておくことだけだった

 もしこの翼持つ蛇がレジスタンス連合に攻撃をすれば、どうなるか。

 それは、今までゼオンという理不尽の権化を使って散々敵を倒してきたアランが一番知っていた。

 それこそレジスタンス連合は圧倒的な被害を受けるだろう。

 いや、ガリンダミア帝国軍の場合は曲がりなりにも兵士としての訓練を受けている正規兵だ。

 しかしレジスタンス連合はその名の通りレジスタンス……中には元兵士といった者もいるだろうが、そうでない者の方が多い。

 士気こそガリンダミア帝国軍を上回っているが、それは逆に言えば上回っているのは士気だけということで、それ以外では負けているということになる。

 そのような状況を思えば、この翼持つ蛇を自由にさせるといった真似は危険すぎた。


「その上で、出来れば他の空を飛んでいる心核使いたちも倒す必要があるって? どんなクソゲーだよ!」


 苛立ちを共にゼオンを操縦し、翼持つ蛇との空中戦を繰り広げる。

 翼持つ蛇は、再生能力があるというのを隠しておくつもりはなくしたのか、ゼオンに向かって真っ直ぐに突っ込んでくる。

 それこそ、間近で水のブレスを放つか、もしくは鋭い牙でゼオンの装甲を噛み千切ろうとしているのか。

 その辺りはアランにも分からなかったが、回避でなく攻撃に専念した翼持つ蛇の存在は厄介であると同時に好機でもある。

 回避に専念しないということは、ゼオンの攻撃も先程までよりは命中しやすくなるということを意味しているのだから。

 そうなると、結果として翼持つ蛇に対し……それ以外にも、空を飛んでいる他のモンスターに対しても、ゼオンで攻撃をしやすくなるのは間違いなかった。

 翼持つ蛇の攻撃を回避し、腹部拡散ビーム砲を放つ。

 その何条かのビームは翼持つ蛇の身体を貫いて被害を与えるものの、泡によって覆われて回復する。

 ただ……そのようなことが出来るのは、あくまでも翼持つ蛇だけだ。

 そして腹部拡散ビーム砲は一方向に集中して放つ攻撃ではなく、攻撃範囲が非常に広い。

 結果として、翼持つ蛇に命中しなかったビームはそれ以外の空を飛ぶモンスターを消滅させていく。


「シャアアアア!」


 今の一撃だけで、アランの思惑に気が付いたのだろう。

 翼持つ蛇は、威嚇の声を上げながら今までよりも一層激しくゼオンに向かって攻撃を行う。

 その中には当然のように水のブレスもあったが……アランは地上に被害が出ないよう、翼持つ蛇よりも上空を飛んでいたおかげで、レジスタンス連合に被害がなかったのは幸いだったのだろう。

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