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剣と魔法の世界で俺だけロボット  作者: 神無月 紅
ガリンダミア帝国との決着

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364/421

0364話

 ガリンダミア帝国の内部で起きたレジスタンスの総決起。

 同時に、ガリンダミア帝国と現在戦っている国はもちろん、まだ戦闘状態にいたっていない周辺諸国の連合軍によるガリンダミア帝国への反撃や侵攻。

 それらはイルゼンの計画通りではあったが……ただ、一つ。計算違いが存在した。


「馬鹿な、何故こんな場所に心核使いがいる! くそっ、攻撃を集中させろ! 敵は炎を纏った狼だ! 水系、氷系の魔法を使え!」

「無理ですよ! 敵は心核使いですよ!? こちらの人数は三十人程度です! それで心核使いを……うわあああああっ!」


 言葉の途中で、炎を纏った狼はその口から炎弾を放ち、それが喋っていた男のすぐ近くに着弾して、巨大な爆発を生む。

 その爆発に吹き飛ばされつつも、レジスタンスは叫ぶ。


「ほら、無理ですって! 撤退しましょう!」


 本来なら、心核使いというのは一人で戦局を逆転させるだけの力を持つ。

 もちろん、心核使いといえども、その能力は個々で違う。

 心核使いの中には、ゴブリンのような外れのモンスターに変身する者もいる。

 そのような相手であれば、この人数であっても何とか出来るかもしれない。

 しかし……現在レジスタンスたちを襲っているのは、炎を纏った狼だ。

 それも全高二メートルはありそうな、圧倒的な巨体。

 それこそ、一人で戦局を逆転させる能力を持つ心核使いの典型と言ってもいい。

 そんな心核使いを相手に、三十人程度でどう対処するというのか。

 ましてや、その三十人というのは非戦闘員を含めての話だ。

 純粋に戦闘能力を持つ者となると、それこそ二十人程度しか存在しない。

 その戦闘員たちも、ガリンダミア帝国軍の兵士と比べれば練度は決して高くない。


「ガリンダミア帝国の心核使いを、俺たちだけで倒せってのかよ!?」


 爆風を浴びながらも、何とか吹き飛ばされなかった心核使いの一人が苛立たしげに叫ぶ。

 ガリンダミア帝国の心核使いといえば、それこそ精鋭揃いで有名だ。

 この場にいるのは炎を纏った狼だけだが、ここにいるレジスタンスでどうにか出来る相手ではない。

 本来なら軍隊で戦うような、もしくは同様の心核使いで戦うような相手だ。

 とてもではないが、ここにいるレジスタンスだけで戦える相手ではない。


「耐えろ! 今はまず耐えるんだ! そうすれば、そのうち他のレジスタンスが来る筈だ!」


 レジスタンスを率いる男が、そう叫ぶ。

 叫びながらも、男自身本当に味方がやって来るとは考えていなかった。

 今の状況を考えると、他のレジスタンスも襲撃されてもおかしくはないのだから。

 そうでもなければ、自分たちだけにわざわざこのような心核使いを送ってきた意味がない。

 ガリンダミア帝国の領土内に存在するレジスタンスは、かなりの数になる。

 炎を纏った狼の襲撃を受けているレジスタンスの規模は、小規模なレジスタンスなのは間違いない。

 そんなレジスタンスにまで、こうして心核使いを送ってきている以上、他のレジスタンスも同様に襲われていると考えるべきだった。

 それでもここで助けが来ると叫んで士気を維持しなければ、それこそもう戦えなくなる。

 どうしても戦闘力で正規軍に劣るレジスタンスだが、それでもガリンダミア帝国軍と戦えている大きな理由の一つが、自分の国を取り戻そうとする愛国心による士気の高さによるものだ。

 その士気が、心核使いを前にしてどうしようもなくれば、それこそレジスタンスは崩壊して、この戦場でも個々に逃げるしかなくなってしまう。

 小規模とはいえ、レジスタンスを引っ張ってきた者として絶対それは許容出来ることではなかった。


(けど、どうする? この状況で俺にどうにか出来るのか?)


 必死になって打開策を探すが、それこそ心核使いを相手にしてどうにか出来る手段は思いつかない。

 これがせめて、敵が心核使いではなく普通の兵士や騎士といった者たちであれば、レジスタンスにも対処出来たのだが。

 そんなレジスタンスたちの様子を見ていた炎を纏った狼は、面倒臭そうに口を開く。


「何も出来ないのなら、そろそろ殺すがいいか?」


 興奮も喜びも緊張も憎しみも悲しみも……何も感じさせない口調で、そう告げる。

 それこそ人を殺すことを作業としか思えなくなった者の声。

 ふざけるなっ! と、レジスタンスを率いる男はそう叫びたいが、今の状況では自分が何を言っても負け犬の遠吠えでしかない。

 ぎりり、と奥歯を噛みしめながらも、決して弱気なところは見せないと相手を睨み付け……

 だが、睨まれている炎を纏った狼は、そんな視線は慣れていると言わんばかりに無視し、先程よりも強力な炎弾を放とうとし……

 ジュン!

 そんな音と共に、巨大な爆発が巻き起こる。

 一瞬、炎を纏った狼の攻撃によるものかと思ったが、その爆発は先程の爆発よりも圧倒的に強く、それ以上にレジスタンスたちに被害はほとんどない。

 そして、爆発が収まって土埃が消え、周囲の様子を確認出来るようになると、そこには炎を纏った狼の姿は存在せず、レジスタンスたちにも一切の被害がない。


「一体、何が……?」


 今、ここで何が起きたのか全く理解出来ないといった様子でレジスタンスの率いる男が呟く。 


「ちょっ、あれ!」


 そんな中、不意にレジスタンスの一人が空を指さしながら叫ぶ。

 皆がその声に導かれるように空を見上げると、そこには巨大なゴーレムとしか思えない存在が浮かんでいた。

 いや、あれをゴーレムというのは、何か違和感がある。

 だがそれでも、レジスタンスたちにとって空を飛んでいる存在を示す言葉は、ゴーレムというものしかなかった。

 ただ、ひたすらに……皆が何も言わず、そのゴーレム……ゼオンを見上げるのだった。






「ふぅ、取りあえず何とかなったか」


 ゼオンのコックピットで、アランが呟く。

 ゼオンの持つビームライフルという武器は、相手が心核使いだろうが何だろうが大きなダメージを与える事が可能だ。

 炎を纏った狼もかなり巨大で強力なモンスターではあったが、ビームの一撃には耐えることが出来なかったのだろう。

 アランはゼオンを操縦して地上に向かって降下していく。

 そうして地面に着地すると、コックピットから降りる。

 ゴーレムを外から動かしているのではなく、ゴーレムの中に入るというのはレジスタンスたちにとって予想外だったのだろう。

 そんなアランの姿を見て、声も出ないほどに驚いた様子を見せる。

 とはいえ、アランも向こうが我に返るまで待っているような余裕はない。

 ここでの戦いが終われば、またすぐに別の場所に向かう必要があるのだから。


「すいません、ちょっといいですか?」

「……はっ! あ、ああ。それはもちろん構わないよ。君が、あの心核使いを倒してくれたということでいいんだよな?」

「はい。それで、俺はこれから他の場所に向かいますけど、貴方たちはどうしますか? このまま少数で移動していれば、また心核使いに狙われたときに対処するのが難しくなると思うんですけど」

「ぐぬぅ……」


 アランの言葉に、レジスタンスのリーダーが呻く。

 心核使いに襲われる前であれば、自分たちで何とか出来ると言うことも出来ただろう。

 だが、今の自分たちの状況を思えば、とてもではないがそのようなことは言えない。

 もしアランが助けに来てくれなければ、男が率いるレジスタンスは間違いなく全滅していたのだから。


(俺たちではどうしようもない心核使いを、こうもあっさりと倒すとは……この男、一体何者だ?)


 雲海や黄金の薔薇についての詳しい事情については、レジスタンス側も知られてはいない。

 それだけではなく、雲海に所属する心核使いのアランを狙ってガリンダミア帝国が大規模な行動を起こしているということも、多くの者は知らなかった。

 レジスタンスにしてみれば、自分たちの国を取り戻す為にはここで動くしかないと、そう理解しての行動だった。

 ガリンダミア帝国が何を狙っているのかということよりもガリンダミア帝国の領土に存在する多くのレジスタンスが一斉に立ち上がるという、その情報こそが大事だった。

 全てのレジスタンスがそうな訳ではなく、中には何故そのようなことになったのかといったように情報を求めて行動する者もいたが。


「それで、どうします? 合流するのなら、近くにいる他のレジスタンスと合流出来るように話をつけますけど」

「……頼む」


 自分たちの力だけでどうにか出来ると思っていたものの、心核使いという凶悪な戦力を相手にした場合、自分たちだけではどうしようもないというのは、先程の戦いでこれ以上ないほどにはっきりとしてしまった。

 そうである以上、レジスタンスを率いる身として仲間を守る必要があった。

 だからこそ、今の状況で強がるといったような真似は到底出来ない。

 そんな男の様子に、アランは表情に出さないようにしながらも安堵する。

 もしここでどうしても自分たちだけでやると言われれば、最悪次は見殺しにするしかなかったのかもしれなかったのだから、当然だろう。


「では……向こう、東の方に進んで下さい。今から向こうにいるレジスタンスと話をつけてきます。向こうのレジスタンスはかなりの大人数ですので、戦力的には今よりも充実しますよ」

「分かった。そうしてくれ」


 リーダーにしてみれば、出来れば自分たちは自分たちでガリンダミア帝国軍に対処したかった。

 しかし、今の状況を思えばとてもではないがそのような真似は出来ない。

 であれば、色々と不満はあるものの、今はアランの指示に従って行動するのが最優先だった。

 自分の意地と祖国の独立。

 どちらが重要なのかは、考えるまでもなく明らかなのだから。


「じゃあ、そういうことで」


 これからどう動くのかというのが決まると、アランはすぐにゼオンに乗り込み、空を飛んで移動していった。


「まるで、嵐のような出来事でしたね」


 レジスタンスの一人が、そんなゼオンを見て思わずといった様子で呟く。

 それを聞きながら、リーダーもまた我に返り、指示を出す。


「東に向かうぞ。向こうでは一体何があるのか分からないが、まずは現在俺たちが出来ることをやるまでだ」


 リーダーの指示に、他のレジスタンスたちが頷くのだった。

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