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剣と魔法の世界で俺だけロボット  作者: 神無月 紅
心核の入手

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32/421

0032話

 当然の話だが、グラルスト遺跡の側にアランとレオノーラが着地した場合、それを狙って周囲に散らばっていたモンスターが殺到してくる。

 普段であれば遺跡の外にモンスターが出るということは滅多にないのだが、今はスタンピードが起きている最中であり、アランやレオノーラが持つ常識は通用しない。

 だからこそ、二人をここまで運んできてくれた鳥のモンスターに変身した心核使いも、二人を地上に降ろしたらすぐにその場を飛び立ったのだろう。

 もっとも、鳥のモンスターはあくまでも空を飛びながら戦うのが前提であって、地上に降りて戦うといたことは基本的にしない。

 また、ハーピーを撃退したときの戦いでも相応に消耗していたし、何より自分の仲間たちがいるドーレストが心配だった……ということもあるのだろう。

 元々その辺は前もって言われていたので、アランとレオノーラは特に不満を抱かず、心核を発動する。

 アランは次の瞬間にはゼオンのコックピットに乗り込んでおり、レオノーラはアランが何度か見たことのある眩い光を放ちながら、巨大な黄金のドラゴンに変身する。

 普通であれば、そのような……それこそ自分たちでは到底勝てないだろう巨大な存在を相手にした場合、モンスターは逃げ出してもおかしくはない。

 だが、グラルスト遺跡に存在するモンスターはスタンピードを起こしており、完全に暴走状態と呼ぶべき状態にあるものが多かった。

 結果として、突然姿を見せたゼオンと黄金のドラゴンにも、全く怯むようなことがないままに襲いかかっていく。


「あ、オーク!」


 頭部バルカンで肉片と化したオークを見て、アランの口から残念そうな声が上がる。

 オークは人間の女を好んで連れ去り、それによって繁殖するモンスターで、当然のように人間、獣人、エルフ、ドワーフ……それ以外にも様々な種族の女から忌み嫌われている存在だった。

 だが、同時にオークの肉はかなり美味い肉として知られてもおり、そういう意味では好まれているモンスターだと言ってもいい。

 当然のようにアランもオークの肉は好物の一つで、そんなオークを肉片にしてしまったことを残念に思う。

 とはいえ、スタンピードを起こしているモンスターは他にも大量にいるのだから、オークの肉が惜しかったからといって、ここで足を止める訳にはいかない。


「レオノーラ、取りあえずここにいるモンスターはどうする? 本来なら全滅させてから遺跡の奥に向かいたいところだけど……全滅させるまでに、どれくらいかかるか分からないぞ」

『そう、ね。……このままだと、延々とここで戦わないといけないでしょうし、そうなればスタンピードを止めるのは難しくなりそうね。先に進みましょう』


 頭の中に響く、この状態ではアランだけが聞けるレオノーラの声に頷き、ゼオンを動かす。

 その際に、ゴブリンのような小さなモンスターがゼオンによって踏み潰されていたが、アラン本人はそれを全く気にすることなく遺跡に向かって歩みを進める。

 むしろ、この状況ではアランではなく黄金のドラゴンに変身したレオノーラの方が、自分の足で直接ゴブリンのようなモンスターを踏み潰す感触を味わってしまうだけに、嫌そうな表情を浮かべていた。

 ……もっとも、アランには黄金のドラゴンが嫌そうな表情を浮かべているというのが、全く分からなかったが。

 ともあれ、二人はモンスターを踏み潰しながら遺跡に入っていく。

 遺跡の外に大きなモンスターがいなかったのは、二人にとって時間の節約という意味で運が良かったのだろう。

 ゼオンと黄金のドラゴンであっても、問題なく動き回れるだけの広さの通路を持つ遺跡ということは聞いていたが、それでも実際に遺跡に入ってみるとそれを実感する。


(一体、何がどうなってこういう遺跡を作ったんだろうな)


 遺跡を進みながら、ふとアランはそんなことを思う。

 今まで雲海が潜ってきた遺跡は、その多くが普通の人間サイズ……たまに大きなものがあっても、それはあくまでもロッコーモが心核で変身したオーガであっても問題ないくらいの遺跡だった。

 それを考えれば、このグラルスト遺跡というのは明らかに異常としか言えなかった。


(もしかして、古代魔法文明時代にもロボットがあった……とかじゃないよな? 普通に考えれば、ゴーレムとか、テイムした巨大なモンスターとか、そういうのか)


 そんな風に考えながらも、ゼオンは周囲の様子を警戒したままだ。

 何があってもすぐに反応出来るようにしながら移動し……やがて遺跡がT字路になっている場所に辿り着く。


「どっちに行く?」

『左ね』


 外部スピーカーを使って、アランはそうレオノーラに尋ねると、すぐにレオノーラの言葉が頭の中に響く。

 一応この遺跡についての情報は、聞いてきている。

 これだけの広さを持つ遺跡だけに、まだ完全に攻略はされていないらしいが、それでもドーレストというこの辺りでも中心となる都市の探索者たちが来ている遺跡だけに、すでにかなり攻略されており、地上の一階部分の地図は前もって渡されていた。

 その地図を見る限りでは、地下への階段はT字路を右に行った方にあるらしい。

 だが、今回アランたちがこのグラルスト遺跡にやって来たのは、あくまでもスタンピードをどうにかするためだ。

 そして、スタンピードの原因が、地下にある……とは限らない。

 それこそ、もしかしたら一階の行き止まりの部分にスタンピードの原因がないとも限らなかった。

 アランとしては、日本にいたときのゲームや漫画、小説といったものの知識から、こういう場合は地下にその原因があるのではないかと、そう思っていたのだが。

 だが、黄金の薔薇を率いているレオノーラがそう言うのであれば、多少慎重そうには思えるがそうした方がいいのかもしれないと判断し、ゼオンを左の通路に進める。

 途中でもまだ遺跡に残っていた何匹かのモンスターに遭遇するが、黄金のドラゴンの前足による一撃や、ゼオンの頭部バルカンによる一撃であっさりと殺され、肉片と化す。

 出来れば素材とかを集めたいと思わないでもないアランだったが、今は少しでも早くこのスタンピードを解決する必要がある。

 そんな訳で、惜しみながらも素材や魔石、討伐証明部位といった物は諦めて遺跡の中を進む。

 ……もっとも、ドーレストの周辺で倒した大量のモンスターの素材とかは、一応アランやレオノーラが所有権を得ているのだが。

 だが、最大の問題は、モンスターの多くが肉片となっており、素材やら何やらを剥ぎ取ることが出来なくなっているということであったり、倒した数が数なので、剥ぎ取るようなことは難しいのだろうが。

 いや、それ以前にアランたちが倒したモンスターは、あくまでも先遣隊でしかなかったことを考えると、倒された肉片は後続のモンスターの腹の中に入ってしまい、素材の剥ぎ取りどころの話ではないだろうが。


『アラン、見て』


 素材のことを考えながら進んでいたアランは、不意に頭の中に響くレオノーラの声に、ゼオンの映像モニタを見る。

 映像モニタに表示されたのは、モンスターの死体の山、山、山。

 ゴブリンがいればオークもいるし、羊のように見えるモンスターや、オーガといったモンスターもいる。

 一体どれくらいの数のモンスターの死体があるのかは分からないが、それでも間違いなく百は超えているだろう。

 いや、ある程度の大きさのモンスターを入れての百匹となると、ゴブリンのような小さなモンスターを入れればその数はより多くなるだろう。

 にもかかわらず、このようなモンスターの死骸が山となっており……そして何より、床にはモンスターの血が流れ込んで作られた魔法陣のようなものが描かれている。

 その上、血が流れ込んで生み出された魔法陣が赤く光ったり消えたりと、脈動するように点滅しているとなると、それが明らかに何らかの意図をもって行われたことであるのは間違いないと思えた。

 そして、現在スタンピードが起きているグラルスト遺跡でそのようなことがあるとなると、それは明らかに今回の一件にかかわっているものであるのは確実だった。


『気をつけろ、これは……』

「え?」


 ふと、頭の中に聞こえた声にアランは反射的に周囲を見回す。

 だが、その声の主と思われる者はどこにもいない。

 頭の中に直接声を響かせるというのは、黄金のドラゴンとなったレオノーラとの間では普通に行われていることだったが、先程頭の中に響いたのは、明らかにレオノーラの声ではなく、もっと大人の男の声だった。


「レオノーラ、何か言ったか?」


 多分違うだろうと思いながらも、まずはそれを確認する。

 だが、当然のようにレオノーラは違うと否定し……そうなると、アランに思いつくことは、以前の遺跡での出来事。

 頭の中に聞こえてきたその声は、先程と同じような声ではなかったか。


(つまり、実はこのグラルスト遺跡も心核を鍛えるための場所だった、とか? ……けど、それは……)


 そうなると、もしかして今回のスタンピードも自分たちを鍛えるための試練なのではないか。

 一瞬そう思ったが、それにしては明らかに今までとは違いすぎる。

 何より、スタンピードによって起きた被害は、アランから見ても洒落にならないものだった。


『アラン、この魔法陣を壊すわ。魔法陣の形式から考えて、今回のスタンピードに関係しているのは確実よ』

「つまり、この魔法陣を破壊すればスタンピードは収まるのか?」

『まさか。そんな簡単にはいかないわよ。とはいえ、暴走するモンスターのうちのいくらかは、落ち着きを取り戻す可能性が高いでしょうね』


 アランは父親から魔法を習ってはいるが、そこまで才能がある訳ではない。

 結果として、魔法についてはそこまで詳しい訳ではなく、魔法陣についての知識もそこまである訳でもない。

 しかし、魔法を実践で普通に使うことが出来、更には王女という社会的地位にあり、黄金の薔薇というクランを率いているレオノーラがそこまで言うのであれば、恐らく……いや、ほぼ確実に間違いないと思えた。


「分かった。なら……」


 アランはゼオンの持つビームライフルを魔法陣に向け、あっさりとトリガーを引くのだった。

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