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剣と魔法の世界で俺だけロボット  作者: 神無月 紅
逃避行

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267/421

0267話

アニメ化してほしいライトノベル・小説は?【#2020年上半期】


https://s.animeanime.jp/article/2020/06/03/54061.amp.html




というのが行われていますので、私が書いているもう一つの小説、レジェンドをアニメで見たいという方は投票して貰えると嬉しいです。

 グヴィスたちが遺跡を脱出しようとしている頃……アランはちょうど遺跡から出たところだった。

 人形の製造設備のある遺跡だったが、その遺跡そのものはそこまで大きな遺跡ではない。

 いや、それどころか小さなと表現した方がいい遺跡だ。

 それだけに、アランたちがこの遺跡を行ったり来たりするのは、難しい話ではなかった。

 ……もっとも、人形は倒したので出て来る心配はないが、何らかの理由で遺跡の中に入り込んだモンスターは未だに存在しているので、全く戦闘が起きないという訳でもない。

 とはいえ、人形と違って壊れたから次を補給といったようなことが出来ないモンスターは、倒されればそれで終わりだ。

 そのため、途中で何度かモンスターが出て来ることもあったが、それこそ遺跡の中を行き来する回数が増えれば、それだけモンスターと遭遇する回数は減る。

 そんな訳で、アランは数度の戦闘だけで無事に地上に出て来ることに成功した。


「ふぅ、やっぱり遺跡から出ると、何かこう……安心したって感じになるよな」

「そうね。それは探索者なら誰もそうじゃない?」

「かもしれないな。……さて、ともあれ今日の仕事は終わったし、明日に向けてゆっくりしたいな。レオノーラはどうだ?」

「どうって、何が?」

「いや、明日とか何かやることがあるのかと思って」


 そう尋ねるアランの言葉に、レオノーラは不思議そうにしながらも……やがて頷く。


「そうね、私は黄金の薔薇を率いているんですもの。やるべきことは、それこそ幾らでもあるわね」

「……そうなのか」


 少し……本当に少しだけ、残念そうにするアラン。

 レオノーラに明日少しどこかに行かないかと、そう誘おうとしたのだが……実際には誘うよりも前に、あっさりと断られてしまった形だ。

 とはいえ、レオノーラの方は何故急にアランが残念そうな表情をしたのか分からなかったのか、不思議そうな表情を浮かべるだけだ。


「レオノーラ様、少しいいですか?」


 そんなレオノーラに、近付いてきた黄金の薔薇の探索者がそう尋ねる。

 少しだけ急いでいる様子を見れば、緊急……とまではいかないが、それでも何か急ぎの用事があるのだろうと理解し、頷く。


「ええ。構わないわ。移動した方がいい? それともここで話す?」

「移動してお願いします」

「分かったわ。じゃあ、アラン。私はこの辺で失礼するわ」


 そう告げ、レオノーラは男と共に立ち去る。


「ふられたな」

「……別にそんなつもりじゃなかったですよ」


 ロッコーモのからかうような言葉に、アランはそう告げる。

 とはいえ、そう言葉を返すアランの表情には面白くなさそうだったが。

 そんなアランの頭を、ロッコーモは乱暴に撫でる。


「まぁ、女ってのは色々と難しいからな」

「ロッコーモさんに言われても、あまり説得力ないですよね」


 ロッコーモは稼いだ金の全て……とまではいかないが、その多くを娼館で使っている。

 娼婦にしてみれば、ロッコーモはいい客だろう。

 ……代わりに、ロッコーモの相手をした女は翌日はとてもではないが動けなくなるのだが。


「そうか? 俺ほど女心に通じてる奴は、そう多くはないと思うがな。……まぁ、その辺はいい。取りあえず、今の俺が言えるのは……そこまで気にしない方がいいってことだ」

「分かってますよ。それより、亀の甲羅の方を持っていかなくていいんですか? いつまでも俺に構ってると、あとで怒られますよ」

「おっと、それもそうだな。……頑張れ」


 最後に励ますようにアランの肩を叩くと、ロッコーモは亀の甲羅を持っている者たちを率いて移動する。

 そんなロッコーモの態度に若干の苛つきを覚えつつも、アランはその場から離れる。

 地上に戻ってきたら戻ってきたで、現在のアランは色々とやるべきことがあるのだ。

 だからこそ、今の状況でこうして意味もなく時間を潰しているような時間はなかった。


(それに……向こうの遺跡で遭遇したグヴィス。俺たちに追撃がかかるとは思ってたけど、よりにもよってグヴィスたちが来るとは思ってもいなかった。ガリンダミア帝国の上の連中も、俺との関係を理解した上で、グヴィスたちを追撃部隊として用意したんだろうけど)


 あの場では躊躇するようなことはなかったが、やはり友人と戦うというのは面白いものではない。

 これが模擬戦であれば、それこそ何度となく戦いを繰り返したのだが。


「おーい、アラン! ちょっといいか!?」


 考えに夢中になっていたアランを我に返したのは、そんな声。

 声のした方に視線を向けると、そこには雲海と黄金の薔薇の探索者が数人集まっていた。

 そんな中で、雲海に所属している男が大きな声でアランを呼んだのだ。

 アランは何か急ぎの用事かと、そちらに向かって走る。


「構いませんよ、何ですか?」

「今日潜った遺跡、どうだったのかと思ってな。こっちは特に何も異常はなかったが」

「うーん、そうですね。取りあえず色々と発見があったのは間違いないです。特に他の遺跡に繋がってる場所だと、遺跡に転移する通路とかありましたし」

「それはまた、大掛かりな仕掛けだな。一体何がどうなってそんな風になってたんだ?」

「いやそれを俺に聞かれても、ちょっと分かりませんよ。俺に分かるのはそういうのがあったってだけで。……あ、でもその遺跡を上っていって地上に出たら、帝都で俺の護衛兼見張りをしていた騎士がいました」

「……大丈夫だったのか? いや、ここにこうしてる時点で大丈夫だったんだろうけど」

「はい。正直、俺だけだったら危なかったですけどね。ただ、他の人たちもいたので何とかなりました」

「で、その騎士は何でそこにいたんだ? ……やっぱりアランを探してか?」

「そうなりますね。まさか、そんな場所に出るとは思ってもいませんでした。その上、戦ったあとはすぐにまた遺跡に戻ってきたので、結局あの遺跡がどこにある遺跡なのかも分かりませんでしたけど」


 そこまで言ったアランは、そう言えばと気になっていたことを尋ねる。


「で、その遺跡の転移装置なんですけど、イルゼンさんがあっさりと停止させたんですよ。古代魔法文明の遺跡で、まだ動いている設備をですよ? そんなこと、普通に出来るものなんですか?」

「普通なら難しいと思うけど……イルゼンさんだしなぁ」


 そう言われれば、アランもイルゼンだからという理由で納得してしまう。


「いや、それで納得するのか?」


 黄金の薔薇の男が、驚いたようにアランたちを見る。

 男にしてみれば、何故イルゼンだからという理由で納得するのかが分からないのだろう。

 だが、実際にイルゼンという人物を知っているアランたちにしてみれば、むしろイルゼンだからという理由で納得出来ない方が疑問に思えてしまう。

 それだけ、イルゼンという人物は色々な意味で特殊なのだ。


「だってイルゼンさんですし」

「だよなぁ」


 アランの言葉に、先程まで話していた男だけではなく、他の雲海の者たちもまた同様に頷く。

 それに、黄金の薔薇の者たちは、信じられないといったような視線を向ける。


「まぁ、俺たちと一緒に行動していれば、そのうちこの気持ちも分かるようになるから、安心しろよ」

「いや、それで安心してもいいのか? ちょっと疑問なんだが」


 うんうんと、黄金の薔薇の探索者たちはそれぞれ頷く。

 アランたちにとっては普通のことであっても、それ以外の者たちにしてみればおかしなことだというのは普通に存在する。

 今回はイルゼンの件だけだったが、黄金の薔薇の方で同じようにアランたちから見ればおかしなことがあっても、おかしくはない。


「ともあれ、俺たちを追っている部隊がいるのがはっきりしたのは、悪くない成果でした。……イルゼンさんはその辺りを読んだ上で色々と細工してたみたいですけど」

「その細工がどうなったのかも分からないってのは痛いな。……アランたちが出た遺跡がどこにあるのかが分かれば、その辺も判明するんだろうけど」

「そですね。ただ、今の状況ではどうすることも出来ませんし。明日……は無理でも、もう何日かしたら転移の通路をまた起動して貰って、遺跡の周囲にグヴィスたちがいないことを確認してから、周囲で情報を集める……といった感じでしょうか」


 アランのその意見に、聞いていた者たちもそれが妥当だろうなと頷く。


「そのグヴィスっていうアランの友達が有能なら、遺跡の前に本隊はいなくても、何人か情報を得るために残しているって可能性はあるな」

「あ、なるほど。そういう手段もありますね。そうなると、その相手を捕らえることが出来れば確実に情報を入手出来そうです」


 グヴィスに勝つことは難しいアランだったが、それはあくまでもグヴィスだからだ。

 騎士として相応の力を持つグヴィスを相手にして、ある程度やり合うことが出来ているという時点で相応の実力を持っているのは明らかだ。

 少なくても、騎士以外の兵士……遺跡を見張っている可能性の高い兵士を相手にした場合は、勝つ事が出来るだろう。


「だろう? まぁ、しばらくは向こうの遺跡の様子を見ないといけないから、すぐにという訳にはいかないだろうけど」

「いえ、グヴィスの性格を考えれば、もう今頃は見張りを残してその場から立ち去ってる可能性も十分にあります。即断即決の奴ですから」


 友人であるために、アランもグヴィスがどういう性格をしているのかは理解している。

 伊達にそれなりに長い間一緒の時間をすごした訳ではないのだ。


「なるほど。だとすれば……明日はさすがに早いだろうから、明後日くらいに向こうに行ってみた方がいいかもしれないな。それに、アランにはカロがいる。そしてゼオンに乗っていれば、大抵の相手はどうにかなるしな」

「そうですね。取りあえず狭い場所じゃないのなら、どうとでもなります。……これで、ゼオンがもう少し小さいければ、遺跡でも活躍出来たんですけどね」


 ゼオンは全高は十八メートルほど。

 これが十メートル……もしくは七メートルくらいであれば、遺跡でも使える場所は多くなるのに。

 そうアランは思ったが、それはもう今更の話だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 読者も大体「イルゼンさんだから」で納得しそうだな
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