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剣と魔法の世界で俺だけロボット  作者: 神無月 紅
囚われの姫君?

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239/421

0239話

「で、母さん。部屋から助けて貰ったのはいいけど、これからどうするんだ?」


 部屋を出てすぐの場所に、グヴィスとクロスの二人が気絶しているのを見たアランは、そんな二人に悪いと謝り――気絶しているのだから、謝られた方は分からなかっただろうが――通路を進みながら、リアに尋ねる。


「まずは、カロをどうにかして見つける必要があるわね。一応他の人たちもカロを探すように……」


 そんな言葉を口にしたリアをニコラスが手で静かにするように示す。

 敵か? そう思って警戒するアランだったが、リアとニコラスの二人はいつでも動けるようにしているものの、特に警戒している様子はない。

 ……そもそも、アランは武器を持っていないので、現状では戦力に数えることが出来ないのだが。


「これが必要なんだろ?」


 そう言いながら姿を現したのは、アランにとっても見慣れた姿……ロッコーモだった。

 相変わらずの巨漢ぶりに、アランは嬉しそうにし……そしてロッコーモの手の中にある物を見て、大きく口を開く。


「カロ!」

「ピ!」


 アランの言葉に、ロッコーモの手の中にあったカロは嬉しそうに鳴き声を上げる。

 そんなカロを、ロッコーモはアランに向かって放り投げる。


「もう、奪われるなよ」

「分かった。ありがとう!」


 カロを受け取り、感謝の言葉を口にするアラン。

 そうしてカロと久しぶりの……本当に久しぶりの再開を喜びつつも、今はそれどころではないと、カロを撫でながらリアに視線を向ける。


「それで、母さん。これからどうするの? というか、現在がどんな状況になってるのかが、ちょっと分からないんだけど」


 アランにしてみれば、先程までは部屋に閉じ込められていたのだ。

 実際には訓練場で訓練をしていたところを、強引に連れ戻されたといった形だったが。

 その際も、特に理由らしい理由を聞かされたりはしていない。

 だからこそ、現在の帝城の状況は一体どうなっているのかが、全く理解出来ないのだ。


「そうね。今は急ぐけど、その辺りの話はしておいた方がいいかしら」


 そう告げ、現在の状況を説明するリア。

 その途中で、何人かの仲間と合流していく。

 合流してくる者の中には、雲海だけではなく黄金の薔薇の者もいて、若干驚いたが。

 もっともメライナが帝城に潜入していて、そのメライナと帝城の中で会っているのだから、今回の一件に黄金の薔薇が参加しているというのは明らかだった。


(それに……今、帝城の中庭にレオノーラが変身した黄金のドラゴンが来てるって話なんだし、それで黄金の薔薇が参加していないはずがないか)


 レオノーラが参加しているのだから、そのレオノーラを慕っている者たちが参加しているのは当然だろう。

 ……とはいえ、雲海も黄金の薔薇も、全員が参加している訳ではなく、双方共に十人ずつ程度といったところだが。

 そして、十人ずつ……合計二十人というのも、明確な理由があった。


「普通、帝城に潜入して脱出するのに、俺やレオノーラを使うとは思わないよな」


 そう、この計画の最終段階としては、レオノーラの変身した黄金のドラゴンと、アランが召喚したゼオンに乗って移動するというもので、だからこそお互いのクランから参加した小数精鋭とする必要があったのだ。


「しょうがないでしょ。こっちもイルゼンさんが色々と考えた結果の作戦なんだから。……そもそも、アランが捕まるようなことがなければ、こんなことをする必要はなかったのよ?」

「ぐっ、それは……」


 リアの言葉が正論であるだけに、そう言われるとアランも反論出来ない。

 とはいえ、アランもリアたちに感謝していない訳ではないのだが。


「ん? 母さん、あの連中はこっちに合流しないの?」


 通りすぎる際に戦っている兵士を黄金の薔薇の探索者が一撃で気絶させるが、その兵士と戦っていた人物は感謝の言葉を口にしたものの、アランたちに合流せず、別方向に向かう。

 アランにとっては見覚えのない人物だったが、助けたということは味方なのだろうと容易に予想出来る。


「あの連中はレジスタンスだから、こっちとは別行動をしてるわ。一応協力してはいるけど、それも今となっては……ねぇ」


 リアの言葉に、ニコラスは頷く。

 レジスタンスたちにとっては、今回の一件で帝城に侵入出来たというのは非常に大きい成果だ。

 ……もちろん、帝城の中に侵入した以上は、兵士や騎士といた相手と遭遇することになる。

 中庭に姿を現した黄金のドラゴンの影響で混乱しているとはいえ、帝城の中には当然のように兵士や騎士は存在する。

 唯一の救いは、心核使いがいても、その心核使いは中庭に向かっただろうということか。

 もっとも、基本的に心核使いが変身するモンスターというのは大きなモンスターが多く、そのようなモンスターが帝城の中で暴れるといったようなことになれば、無意味に被害も大きくなるだろうが。


「とにかく、今は……」


 中庭に出る方が先だ。

 そうロッコーモが言おうとしたそのとき、不意に左の通路から一人の女が姿を現す。

 敵か!?

 一瞬そう思った面々が構えるが、出て来た人物を見ると、まずは黄金の薔薇の面々が……そして続いてその人物の顔を知っている者たちが武器を下ろし、それを見て他の者たちも武器を降ろす。

 そんな中で、アランが武器を下ろしたのは黄金の薔薇の面々と同時だった。

 何故なら、アランにもその人物が敵ではないと分かっていたからだ。


「ラミアス、無事だったのか!」


 黄金の薔薇の男が、嬉しそうに姿を現したメイドに話しかける。

 だが、そのメイドは笑みを浮かべて首を横に振る。


「今の私はラミアスじゃなくて、メライナよ」


 メライナという偽名で帝城に侵入していた人物の言葉に、声をかけた男は呆れたように言う。


「この状況で、まだメイドをやるつもりなのか?」

「う……そう言えばそうだったわね。ともあれ……」


 照れを隠すようにしながら、メライナ……いや、ラミアスはアランに視線を向ける。

 アランの顔を確認すると、次に手で持っているカロに。


「どうやら、目的は無事に達成したみたいね。そうなると、あとはここにいる必要はないし、さっさと逃げましょう。こっちよ」


 帝城でメイドとして働いていただけに、ラミアスはこの場にいる誰よりも帝城の構造には詳しい。

 そういう意味でも、中庭に向かっている現状でラミアスと合流出来たのは幸いだったのだろう。


「そう言えば、鋼の蜘蛛の女と一緒に行動してるんじゃなかったのか?」


 ある程度の情報を持っている黄金の薔薇の男がそう尋ねるが、ラミアスは首を横に振る。


「ダーナとはもう別行動よ。向こうは向こうで、鋼の蜘蛛の人たちと合流するらしいわ」

「……そうか」


 黄金の薔薇の男は、複雑な表情で頷く。

 砦の一件から、鋼の蜘蛛の協力が必要なのは分かっていたが、それでも友好的な感情は抱けないのだろう。


「とにかく、今は中庭に向かいましょう。こうしてアランとカロの奪還をしたということは、もう全て予定通りに進んでいる……ということでいいんですよね?」


 ラミアスがリアに尋ねる。

 この場で一番偉いのはリアだと、そう思ったのだろう。……同じ女だから話しやすいというのもあったのだろうが。

 リアの方は、そんなラミアスの言葉に頷く。


「そうね。まだ何人か合流していない人もいるけど、それ以外は問題ないわ」

「そうですか。では、急ぎましょう。レオノーラ様がいる以上、問題はないと思いますけど、何が起きるか分かりませんし」


 ラミアスの言葉に、それを聞いていた皆が頷く。

 現在は多くの者が帝城の中で暴れており、帝城の方でもそれに対応してはいるが、やはりそんな中でも一番厄介な存在はレオノーラの変身した黄金のドラゴンだろう。

 だからこそ、帝城の方でもそちらに対処する割合が多くなるだろうし、そして黄金のドラゴンなどという存在に対処出来る相手となれば、それは自然と心核使いとなる。

 今の状況で多くの心核使いが黄金のドラゴンと戦っている以上、出来ればその負担を少しでも少なくしたいと思うのは当然だった。

 他の面々もまた、そんなラミアスの意見に異論を唱えるはずもなく、一行はラミアスに案内されて黄金のドラゴンが暴れている中庭に向かう。

 そうしている間にも、帝城に侵入していた雲海や黄金の薔薇の探索者も次々と合流してくる。

 多くの者が、一行の中にアランの姿を見つけると嬉しそうに一声かけていた。

 アランを助けるために今回の一件が行われた以上、アランも自分のためにこんな危険な真似をした面々に対して感謝の言葉を口にする。

 そうして進み続け……途中で兵士や騎士に遭遇することもあったが、これだけの戦力が揃っていれば、対処するのは難しくはない。

 雲海や黄金の薔薇の面々も、すでにほとんどが合流しており……やがて、ラミアスが口を開く。


「あそこの扉から、レオノーラ様が待っている中庭に出られるわ!」


 その言葉は、アランの救出のための作戦が最終段階に入ったことを意味していた。


「え?」


 と、そんな中で不意にアランが口を開く。

 視線の先に、見覚えのある顔を見たためだ。

 一見すると子供。だが、実際にその精神は大人……そんなアンバランスな存在、ビッシュ。

 見間違いではないかと思ったアランだったが、その人物は間違いなくビッシュだ。

 それも、偶然どこかに向かおうとしているビッシュを見たのではなく、明確にアランの方を見ており、視線が合ったのだ。

 そうである以上、ビッシュは間違いなくアランがここを通ると……そう理解していたからこそ、アランの視線の先で待っていたのだろう。

 そしてアランと視線が合うと、笑みを浮かべる。


『またね』

「っ!?」


 同時に頭の中に響いた声に、アランの目は大きく見開かれた。

 それは、初めての体験に衝撃を受けた……のでではない。

 テレパシーのようなやり取りは、アランとレオノーラの間では普通に行えることだ。

 だが……それは、あくまでもアランとレオノーラの間だけでの話であって、それ以外の相手と出来た記憶はない。


「アラン! 何をしてるの。行くわよ!」


 リアの言葉に我に返ったアランは、再びビッシュのいた方を見たが……すでに、そこにはビッシュの姿はどこにもなかった。

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[一言] ビッシュ様からは逃げられない...
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