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剣と魔法の世界で俺だけロボット  作者: 神無月 紅
ザッカラン防衛戦

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165/421

0165話

「おっと」


 そう呟きながら、ゼオンは飛んできた攻撃を回避する。

 攻撃をしたのは、地上にいる敵。

 ……正確には、地上から生えている木だ。

 それは、大樹の遺跡の最下層から入手した心核を使い、トレントに変身したケラーノの攻撃。

 木になっている実を投擲して攻撃してきたのだ。

 木の実である以上、命中してもゼオンに被害があるとは思えない。

 だが、トレントになっている実となると、それに当たりたいかと言えば……アランは即座に首を横に振るだろう。

 続けて放たれる木の実。

 いくつも連続して放たれるが、アランはその全てを回避していく。


(これだと回避の訓練にはあまりならないな。……そうなると、もう少し近付くか?)


 現在ゼオンがいるのは、トレントから十メートルほど離れた場所だ。

 心核を得たばかりのケラーノは、まだトレントの能力を完全には使いこなせていない。

 ただし、元々植物に強い興味を持っていたためか、能力を使いこなす熟練度は急速に上がっていた。

 ……とはいえ、最初からゼオンを使いこなしていたアランにそんなことを言われても、皮肉と思われる可能性があったのだが。

 次々に飛んでくる木の実を回避しつつ、アランはゼオンをトレントに向けて近付ける。

 向こうにしても、アランのその行動は予想の範囲内だったらしく……その距離が近付いてきたところで、不意に鞭が振るわれる。

 正確には、それは鞭ではなく木の蔦を使った一撃。

 普通ならそこまで強力な一撃ではないのだろうが、トレントが振るう一撃となれば、話は変わってくる。

 空気を斬り裂きながら振るわれた鞭の一撃を、アランはゼオンを斜めにすることで回避し……不意にウィングバインダーを使って急制動をかける。

 すると、まるでその動きに合わせるかのように、ゼオンの進行方向にあたる地面から土の槍が何本も生み出される。

 正確には、地面に異変に気が付いたアランが、ゼオンを止めたのだが。


「これは、また……っと!」


 動きを止めたゼオンに対し、追い打ちを掛けるように再度地面から土の槍が姿を現す。

 意表を突かれたアランだったが、それでも一度見てしまえばその攻撃を理解することが出来る。

 次々と地面から突き出る土の槍を、ゼオンは空中で自由に動き回りながら回避する。

 トレントにとって不運だったのは、やはり土の槍というのは地面を歩いている相手にこそ最大限に効果を発揮するということだろう。

 もしゼオンが地上を歩いて移動するような移動方法であれば、土の槍の攻撃を回避するのも難しかった。

 だが、ゼオンは基本的に空を飛んでおり、土の槍を放たれてもそれを回避するのは難しい話ではない。

 少なくても、地上を歩いて移動しているときに比べれば、回避出来る可能性は高くなる。


「ほら、いきますよ」


 そう言い、アランはトレントとの間合いを詰めていく。

 相変わらず地面からは土の槍が伸びて、トレントからは何本もの蔦が鞭として振るわれる。

 トレントの身体にゼオンの手が触れれば、それでこの戦いはゼオンの勝ちとなるので、当然のようにそれを知っての出来事だろう。

 ゼオンを操縦しながら、アランは少しだけ不思議な気持ちになる。

 ケラーノとは、当然のように長い付き合いだ。

 そんな中で、今まで何度も模擬戦をしたことがあるが、いつも模擬戦で負けるのはアランだった。

 そんなケラーノに対し、今はこの様子なのだ。

 それだけアランの能力が心核使いとして特化しているということの証明なのだろう。

 もちろん、ケラーノが心核使いになったばかりで、まだ完全にその扱いに慣れていないというのもあるが。

 もしこれで変身したのが、普通に身動きの出来るモンスターであれば、ケラーノももっと簡単に使いこなすことが出来ただろう。

 だが、ケラーノが変身したのはトレントだ。

 自分で好きに移動出来ないだけに、どうしても特殊な使い方が必要となり、植物に強い知識や興味を持つケラーノであっても、すぐに使いこなすという訳にはいかない。

 だからこそ、現在はこうしてアランに付き合ってもらい、訓練をしているのだ。

 地中から飛び出る槍を回避するゼオン。

 次々と連続して放たれる土の槍と、投擲される木の実、振るわれる蔓の鞭。

 だが、アランはそんな攻撃を次々に回避していく。

 ウィングバインダーや機体の各種に装備されたスラスターを次々に回避していく。

 その動きは、アランが生身で行動しているときと比べれば圧倒的にこちらの方が上だ。

 それが、一体どれだけアランの能力が心核使いに傾いているのかということを示している。


「残念でした、と」


 土の槍……ではなく、木の根を地中から飛び出し、最後の抵抗を行うトレント。

 だが、アランはその一撃もウィングバインダーを使ってゼオンの姿勢を斜めにすることで回避し、次の瞬間ゼオンの手はトレントの幹に触れる。

 そうしてトレントは攻撃を止め、模擬戦は終了する。

 アランもまた、ゼオンの動きを止めて地面に着地させた。

 トレントとゼオンは、双方共に心核を解除し……


「はぁ、はぁ、はぁ……いやー、厳しいな」


 トレントの変身を解除したケラーノは、荒い息を吐く。

 それでも十秒程で息を整えることが出来ている辺り、腕利きの探索者だということの証明だった。


「トレントの場合は、自分で動くことが出来ない以上、余計に厳しそうですよね。……正直なところ、やっぱり自分で動けないってのは色々と大変そうですが」

「あー、そうだな。ただ、個人的にはトレントってのは、そこまで悪い訳じゃないんだけどな」

「そうなんですか?」


 ケラーノの言葉に、アランは不思議そうな表情を浮かべる。

 自分の意思で動けない……いや、枝の類を動かすことは出来るが、大元の移動が出来ないというのは、アランにしてみればかなり不便なように思えた。

 とはいえ、それはあくまでもアランがそう思うだけであって、実際にトレントに変身しているケラーノにしてみれば、そこまで気にする必要はないことなのだろう。

 この辺は、やはりケラーノが植物に対して強い興味を抱いているから、ということなのだろう。


「ああ。トレントになっているときは、かなり充実感がある。……それ以外に消耗もあるけど」

「トレントなら、それこそ木の根で地面から魔力なり、水分なり、栄養なりを吸収してそうですけどね」


 あくまでもアランの印象ではあるが、植物だけに地中から水分を吸収するのは普通に出来るような気がしたのだ。

 そんなアランの問いに、ケラーノは首を横に振る。


「今は出来ないな。……もちろん、将来的にはそのように出来るかもしれないが」

「できるだけ早くそうなるといいですね」

「ああ。その件については、別に俺だけでどうにかなるから、一人で練習を重ねるよ。今回みたいにアランに協力してもらわないと出来ないとか、そんなこともないだろうし」


 ケラーノのその言葉に、アランはなるほどと納得する。

 実際にケラーノが言ってるように、自分だけで出来る訓練があるのなら、自分だけでやった方がいい。


「じゃあ、どうします? 一度ザッカランに戻りますか?」

「あー……そうだな。トレントに慣れるのなら、別にザッカランの中でも出来るし。……迂闊に外にいれば、モンスターに襲撃される可能性もあるから、訓練は中でやるよ」


 トレントに変身出来るなら、一人で訓練をするのは街中でも可能だ。

 そういう意味で、トレントというのは非常に特殊だと言ってもいいだろう。

 もちろん、そそれはあくまでも訓練が出来るというだけであって、実際に訓練を行うかどうかというのは、また別の話だ。


「そうですね。じゃあ、そろそろザッカランに戻りましょうか。……と言いたいところなんですが……」

「ああ、連中な」


 アランの言葉に、ケラーノは頷く。

 その視線の先にいるのは、数人の男女だ。

 探索者、冒険者、傭兵のどれなのかは、アランにも分からない。

 だが、その視線の中には友好的な色はなく、憎悪に近い色がある。


(ガリンダミア帝国軍の奴か? いや、けどもしそうだとしても、そこまであからさまにするか?)


 自分たちを敵と思っているのは、納得出来ない訳でもない。

 ザッカランを占領する際に戦ったとき、当然のようにザッカラン側にも死者は出た。

 ……いや、ザッカランが負けた以上、ザッカラン側の方にかなり死者は多い。

 そうなれば、当然の話だがアランたちを憎む者もいる。

 そして、そんな憎いアランたちが大樹の遺跡を攻略したということで、ザッカランでは英雄視されている。

 憎んでいる者にしてみれば、とてもではないが許容出来ないことだろう。

 アランとケラーノの視線の先にいる者たちは、そのような相手ではないかと、そうアランは考えたのだ。

 ケラーノに視線を向けてみるが、そちらでも同じような視線を数人の男女に向けていた。


「取りあえず、行きませんか? 向こうがどういう対応をするのかは分かりませんけど、こっちもいざとなったら相応の対応をとればいいんですし。……もっとも、そうなればケラーノさん任せになりそうですけど」


 ゼオンに乗ってもいいのならともかく、生身での戦いとなればアランは決して強くはない。

 そうである以上、もし向こうが一流……もしくは一流半程度の実力があるのなら、それこそアランとしては自分だけで手に負えるとは思えない。

 だからこそ、そうなれば探索者としては一流の技量を持つケラーノに任せるしかなかった。


「そうだな。……向こうが何を考えてるのかは分からねえが、こっちに手を出してくるのなら、相応の対応をするしかないか」


 ケラーノもアランが生身での戦いでは実力を発揮出来ないというのは知っている。

 また、雲海の探索者としても末っ子のような思いを懐いている。

 そんなアランに危害を加えようとするのなら、当然のように守るという思いがケラーノの中にはあった。

 そうして二人は、ザッカランに向かって歩き出す。

 すると、当然のようにアランたちを見ている男女たちに近づき……だが、結局何もないまますれ違う。

 面倒臭いことにならなくてよかった。

 そうアランが思った瞬間……


「待てよ」


 すれ違った中にいた一人の男から、そんな声をかけられるのだった。

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