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剣と魔法の世界で俺だけロボット  作者: 神無月 紅
逆襲

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0156話

「うおおおおおっ!」


 巨大な鷲の背中の上で、最初に布を被った相手に攻撃を仕掛けたのはカオグルが変身した白猿だった。

 ロッコーモの変身したオーガは、その巨体のためにどうしても動きは遅い。

 ジャスパーの変身したリビングメイルも、身体が鎧だということで、どうしても白猿と比べても動きは鈍い。

 そういう意味では、白猿が真っ先に布を被った相手に攻撃するのは当然だったのだろう。

 とはいえ、白猿も自分の攻撃する相手が強いというのは知っている。

 だが、それでもカオグルにも雲海の心核使いであるという自負があり、自分一人で勝ちたいと思うし、もし勝てなくても場合によっては他の二匹がやって来るまでの間は自分だけで押さえておけると、そう判断した。


「ふんっ、愚か者が。身のほどを知れ!」


 自分に襲いかかってくる白猿に対し、布を被っている相手は見下すようにそう告げると、長剣を構える。

 ゼオンの頭部バルカンの弾丸を斬り落としたというのに、その長剣の刀身には欠けている場所や傷の類は存在しない。

 それだけで、長剣が一流の武器であるということを示していた。

 ……もちろん、武器が一流なだけでは意味がない。

 武器が一流である以上、使い手もまた一流である必要があるのだ。

 それを知ってるだけに、白猿も警戒しながら攻撃を行う。

 その辺の布でれば、容易に斬り裂くだけの鋭さを持つ鋭い爪の一撃。

 だが、布を被った男はそんな白猿の攻撃を横に一歩動くだけで回避し、カウンターとして長剣の一撃を放つ。

 白猿の放った爪の一撃と比べても、遜色ない……いや、むしろ勝っているだろう一撃。

 白猿の毛は硬く、その辺の刃物は通さない。

 だが、白猿は布を被った相手の長剣の一撃は自分に致命傷を与えるだけの威力を持ってると判断したのか、体毛で受けるような真似はせず、猿特有の身の軽さを活かして後方に跳躍し、長剣の一撃を回避する。


「ちっ、大人しく斬られていればいいものを」


 布を被っているためか、鋭い目は見えるが声はくぐもっており、その声の主が男か女かも分からない。


「もっと鋭い一撃ならともかく、その程度の攻撃に当たってやるような真似は出来ないな」


 煽るような言葉。

 だが、その言葉がもたらした効果は大きい。

 他人に侮辱されるようなことは少ないのか、布を被った相手は苛立ちを誤魔化すように被っていた布を取ると、苛立ち混じりに叫ぶ。


「貴様! 私を侮辱するか!」

「おっと、これはまた予想外な……」


 白猿の口から出たのは、その言葉通り予想外といったような言葉。

 実際、布の下にあったのは整った顔立ちの男だったのだから、そのように思うのは当然だろう。

 男の方もそんな白猿の様子に気が付いてはいたのだが、それでも許せる事ではないと、苛立ちを露わにしながら手にした長剣を振るおうとするが……

 キンッ、という甲高い金属音が周囲に響く。

 一体誰がそのような真似をしたのか。

 それは考えるまでもなく、白猿も理解していた。

 そして実際、白猿を庇うようにリビングメイルが姿を現していたのだ。


「そう好き勝手にさせる訳にはいかん」


 リビングメイルが受け止めた長剣を同様の長剣で弾く。

 そうなれば当然のように一瞬ではあってもバランスを崩す。

 ましてや、ここは地面の上ではなく巨大な鷲の背中の上。

 それも、その体内では少なくない数のフェルスが未だに暴れ続けているのだ。

 それを思えば、地面と同じように立ち回ることなど、どうしても不可能だった。


「ぐおおおおおりゃあああああああっ!」


 バランスを崩した男に向かい、オーガが空中から拳を振り下ろす。

 オーガの拳で殴られれば、それこそ普通なら肉片と化してもおかしくはない。

 そんな一撃だったが、男はバランスを崩した動きを利用し、その一撃を回避する。

 肉を叩いたとは思えないような音を立て、オーガの拳は巨大な鷲の身体にめり込む。

 正確には羽毛を叩いたのだが、どちらにしろその音はとてもではないが常識的に考えた時に出て来る音でないのは間違いない。


「オーガ風情が私にこのような真似をするとは! 分を弁えろ!」

「はっ! 戦いの中で何を言ってやがる。てめえが何を考えてるのかは分からねえが、俺達と敵対してる時点で攻撃されるのは当然だろうが!」


 オーガの口から好戦的な言葉が吐き出されると共に、腕が振るわれる。

 人間程度なら容易く叩き潰せるだろう一撃。

 リビングメイルや白猿もまた、そんなオーガの攻撃に合わせるように男に攻撃をしていく。

 オーガと白猿は同じクランの仲間同士だ。

 それだけに、この状況でお互いに何も言わずとも協力するといったことが出来るのはおかしくはない。

 だが、そこにリビングメイルが入ってくるとなると、話が違ってくる。

 黄金の薔薇に所属するだけに、当然雲海と共に行動するようになってからの時間はそう長くはない。

 ましてや、心核使いの三人がそれぞれに協力しあって一人の敵に攻撃をするなどということは、当然のように経験がなかった。

 それでも、今はこうしてリビングメイルと共に、相手を攻撃出来ているのは……攻撃している本人たちにしても不思議だったが、取りあえず今はそんなことよりも敵を倒すことを優先せざるを得ない。


「ちぃっ、貴様等如きがいい気になるな!」


 苛立ちを露わに叫ぶ男だったが、叫んだからといって三匹のモンスターによる攻撃が収まる訳ではない。

 それどころか、むしろ叫んだのは相手がピンチだからという判断からか、余計に攻撃は鋭くなっていく。


「なら、いい気にさせないように、頑張ってみるんだな!」


 オーガの口から出た叫びは、聞いている者にしてみれば挑発にしか聞こえないだろう。

 事実、オーガも相手を挑発するつもりでそのようなことをしたのだが。

 しかし、挑発された男はそんなオーガの言葉に構うようなことはなく、叫ぶ。


「ダルヴィス、横になれ!」


 そう言った瞬間、地面が斜めになる。

 いや、正確には地面ではなく、今まで立っていた巨大な鷲が身体を斜めにしたのだ。

 巨大な鷲の名前はダルヴィスというのか。

 そんなことを理解しても、今の状況では何の役にも立たない。

 今まで自分たちが立っていた場所が、急に斜めになったのだ。

 それも、現在いるのは空の上だ。

 ここで下手に巨大な鷲の背から落ちたら、それこそ地面に叩きつけられて死んでしまう。


「ちぃっ!」


 オーガは振り落とされないよう、必死になってダルヴィスの羽毛を掴む。

 幸いなことに、ダルヴィスの身体は巨大で、掴む羽毛には困らない。

 困らないのだが……問題なのは、その羽毛がオーガやリビングメイルといった重量物の重さに耐えられるのかと言われれば、答えは否だ。


「うっ、うおおおおおお!」


 オーガの掴んでいた羽毛が、その重量に耐えかねて抜ける。

 咄嗟に周囲の様子を見たオーガは、リビングメイルも自分と同様に重量に負けて羽毛が引き抜けているを見る。

 三匹のモンスターの中で唯一無事だったのは、体重もそこまで重くはなく、身軽な白猿のみ。

 落下していくオーガが、これを命令した男はどうしたのかといったように視線の向けると……そこでは、ダルヴィスの身体がかなり斜めに近くなっているにも関わらず、全く動揺せず……それどころか、斜めになっているのに命令したときのまま立っている状態の男の姿があった。

 一体何がどうなってそうなっているのかは、オーガにも、そしてリビングメイルにも分からなかった。

 それでも、今の状況を思えば何らかの手段を使ってそのような真似をしているというのは明らかだ。

 だが、今はそれどころではない。

 最初にアランたちが遭遇した砂漠なら、この高さから落ちても運がよければ何とか助かったかもしれない。

 だが、この階層は砂漠ではない。

 地上に広がっているのは、様々な木々が生えた大地だ。

 そのような場所にこの高さから落ちればどうなるか。

 それは、考えるまでもなく明らかだろう。

 運がよければ木の枝に引っかかって助かる可能性もある。

 しかし、オーガにしろリビングメイルにしろ、そのような運試しをしたいとはとうて思えなかった。


「ぐっ……くそったれがぁっ!」


 そう叫びながら、それでもどうしようもなくオーガは地上に向かって落下していく。

 オーガを追うように、オーガよりは巨大な鷲に長くしがみついていたリビングメイルも落ちていくか……


『え?』


 そんな二匹の口から、揃って驚きの声が上がる。

 当然だろう。巨大な鷲から落とされたと思った次の瞬間には、いきなり何かにぶつかったのだから。

 地上に落ちたにしては随分と早いし、受けた衝撃もそう大したものではない。

 それこそ、ベッドから落ちたよりは少し強い程度の……そんな衝撃だ。

 そうしてオーガは周囲を見回し……黄金の鱗が周囲にあるのを見て、自分がどこにいるのか、初めて理解した。


「助かった……」

「うむ」


 オーガの声に、すぐ近くに落ちていたリビングメイルが同意するように頷く。

 そんな二匹は周囲の様子を……特に巨大な鷲の背に唯一残った白猿の姿を確認する。

 すでに巨大な鷲は身体を元の状態に戻し、上空からゼオンの放つ攻撃を何発も食らいながら、それでも全く死ぬ様子がない。

 ゼオンの持つ攻撃力がどれだけのものなのかを知っている者にしてみれば、それこそ呆れ以外のなにものでもないだろう。

 だが、そんな呆れがあっても今の状況ではどうすることも出来ない。


「レオノーラ様、もう一度我らを敵のいる場所に運んで下さい」


 白猿が一匹だけで男と戦っているのを見ながら、リビングメイルがそう叫ぶ。

 巨大な鷲の背にいる男は、心核使いで変身したモンスター三匹を相手にしても、生身で互角に渡り合うだけの実力を持っていた。

 これで相手が心核使いだとするのであればと、そう考えれば、白猿だけにあの男の相手に任せる訳にはいかず、少しでも早く応援に行く必要があると判断したのだろう。

 だが、何故かリビングメイルの言葉を聞いた黄金のドラゴンは、その頼みを聞こうとせず……巨大な鷲から離れて行く。

 そんな様子にリビングメイルは白猿を見捨てるのか!? とも思ったが、レオノーラであればそんなことをするはずがないという思いもある。

 このようなとき、黄金のドラゴンと言葉を交わせないことを嘆くのだった。

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