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0147話

 ゼオンから放たれたビームライフルは、アランの予想を超える速度で鷲が移動したために、鷲の羽根を軽く掠めるだけで終わった。


「やっぱりビームライフルの威力を知っている? 何でだ?」


 ゼオンのコックピットの中で、アランは疑問を口にする。

 砂漠のある地下八階にやって来てから……ビームライフルは使っていないはずだったし、もし使っていたとしてもあの鷲のモンスターの姿はどこにもなかったと断言出来る。

 あれだけの巨体を持つ鷲のモンスターがいれば、ゼオンのレーダーで絶対に補足出来ていたはずだったし、それ以外にも雲海や黄金の薔薇の探索者たちが揃っている中で見つからないという選択肢は存在しないはずだった。


(だとすると、野生の勘とかそういうのか?)


 疑問を抱くアランだったが、すぐにレオノーラが変身した黄金のドラゴンから放たれたレーザーブレスを見て、我に返る。

 元々、ビームライフルを撃ったあとでレーザーブレスを放つと、そう言っていたのだ。

 だが、アランはビームライフルを回避されたことで疑問を持ち、そちらのことをすっかりと忘れていた。

 ……この辺りが、アランの詰めの甘さなのだろう。


『嘘でしょう?』


 レオノーラの驚きを含んだ念話が、アランの頭の中に聞こえてくる。


「ビームライフルの件もそうだけど、多分あの鷲はこっちの攻撃方法とか、そういうのを知ってると思った方がいい」

『……厄介ね』

「ああ。取りあえず俺は上から攻撃するから、レオノーラは下から攻撃を頼む。挟み撃ちにすれば、敵も攻撃を回避しにくいだろ」

『いいけど……当てないでよ?』


 そう言われる理由は、アランも理解している。

 何だかんだと、自分の探索者としての技量が高くないというのは理解しているからだ。

 とはいえ、アランもゼオンの操縦についてはそれなりに自信がある。


「分かってる。そっちこそ、こっちにレーザーブレスを当てるなよ」


 それだけを告げ、アランの乗っているゼオンはスラスターを全開にして高度を上げていく。

 一見砂漠のように見えても、ここはあくまでも遺跡の中だ。

 もしかしたら見えないだけで天井の類があるのでは? と若干驚きながら高度を上げたアランだったが、幸いなことにゼオンの頭部が天井にぶつかるといったことはなかった。


(これ、どうなってるんだろうな? 空間を弄るにしても、限度ってものがあると思うんだが。……まぁ、今回は助かったら別にいいけど)


 そんな風に思いつつ、アランは下の方を見る。

 そこでは鷲が飛んでおり、鷲よりも高度の低い場所には黄金のドラゴンの姿があった。


「……え?」


 だが、巨大な鷲よりも高い場所に移動したゼオンのコックピットでアランが見たのは、それだけではない。

 巨大な鷲の背中に、何かが……いや、別の誰かが存在していたのだ。

 それを見たアランは、もしかしたら巨大な鷲に捕まってるのか? と一瞬だけ考えるも、すぐに自分でそれを否定する。

 そもそも、捕まるも何も現在この遺跡の中でも未到達地域と言われる地下八階において、自分たち以外に誰がいるのかと。

 もちろん、ギルドに報告していないだけで、この遺跡の未到達地域であるこの地下八階よりも下に到達している者がいないとも限らない。

 だが、それでも巨大な鷲のモンスターに乗って、自分たちに向かって襲いかかってくるような真似をするとは、到底思えなかった。


(いや、もしかして襲いかかってくるつもりじゃなくて、ただこっちに接触する気だったとか? ……まさかな。だとすれば、わざわざ巨大な鷲に乗って近付いてくるような真似はしないか。そうなると、一体どういう訳なんだ?)


 ともあれ、まずは攻撃するよりも前に普通に接してみるべきか。

 そんな風に考えたアランだったが、次の瞬間には巨大な鷲が下を……自分の真下に回り込もうとしている黄金のドラゴンに向かい、クチバシを開いたかと思うと、風のブレスを放つ。

 轟っ! と。

 そんな音と共に放たれた風のブレスは真っ直ぐ黄金のドラゴンに向かうが……黄金のドラゴンもそれにみすみす当たるような真似はせず、翼を羽ばたかせて回避する。

 回避した瞬間、黄金のドラゴンの視線は巨大な鷲の上にいるゼオンを見たのが、アランにも分かった。


(どうする?)


 そう悩んだのも一瞬、最初に攻撃したのは自分たちだったが、それでも相手が怪しいということもあり、アランは攻撃することにする。

 ただし、鷲の背中に乗っている相手には当てないように、そして鷲に対しても致命傷にならないよう、翼の部分を狙って。


「ギャガガガガ!」


 鷲から出るとは思えないような鳴き声を上げつつ、身体を斜めにしてビームライフルの一撃を回避しようとするも、巨体だけに完全に攻撃を回避するような真似は出来ず、次の瞬間には巨大な鷲の翼の先端をビームが貫き、同時に胴体を黄金のドラゴンが放ったレーザーブレスが貫く。


「嘘だろ?」


 鷲の巨大さを思えば、もしかしたら自分たちの一撃で倒せないかもしれないとは思っていた。

 だが……それでもビームライフルはともかく、レーザーブレスは胴体を貫いただけに、大きなダメージを与えたのは間違いないとい、そう思っていたのだが……


「回復……いや、再生してる?」


 見て分かるほどに、巨大な鷲の傷は癒えていく。

 小さな泡が多数存在し、それが傷を癒やしていくのだ。


「つまり、ただのモンスターって訳じゃないのか。……厄介だな」


 風のブレスを放つことが出来て、その上でこの巨大さで、再生能力まである。

 明らかに高ランクのモンスターなのは間違いない。


「それに……あいつもいるしな」


 砂漠の暑さ汗を蒸発させたり、直射日光を直接浴びないためなのだろう。

 布を顔に巻いているその人物を映像モニタで確認しながら、アランは呟く。

 こちらから攻撃した以上、明確に敵かどうかというのは分からない。

 だが、向こうも攻撃をしてきたことを思えば、とにかくここで倒したおいた方がいいというのは間違いなかった。


「遭遇したのが俺たちだからよかったものの、階段の付近だったり、オアシスの付近だったりに向かっていれば……全滅ということはなくても、被害を受けたのは間違いないだろうし」


 アランにしてみれば、仲間たちならこの巨大な鷲を相手にしても、倒すことは出来ずとも逃げることは出来るという予想があった。

 とはいえ、逃げるにしても被害を受けることになるのは間違いなく、そういう意味ではやはりここで巨大な鷲を倒しておいた方がいいのは間違いなかった。


「もしかして、この砂漠で進化した人間……もしくは亜人の類だったりはしないよな?」


 ふと気が付き、アランはそう呟く。

 この大樹の遺跡は、かなり昔から多くの探索者が挑んで来たが、地下八階までは攻略されていない。

 つまり、この場所で何が起きているのかというのは、誰にも分からないのだ。

 ……ましてや、モンスターや植物、動物を始めとして多くの生き物がこの砂漠にいることを考えれば、人間のような存在がいてもそうおかしくはない。


「言葉は分かるか? 俺たちはお前と敵対するつもりはない。話をしたい」


 一応、といった様子で外部スピーカーのスイッチを入れてそう巨大な鷲に……正確にはその背中に乗っている相手に声をかけるが、残念ながら向こうが反応する様子はない。

 それどころか、自分に声をかけてきたのが許せないといったように、顔を覆っている布の下から鋭い……それこそ殺気を感じてもおかしくはないような視線を向けてくる。


(駄目か。……最初に攻撃をしたから、とかじゃないよな?)


 自分たちから攻撃しておいてなんだが、まさかモンスターに人が乗っているとはアランも思わなかったのだから、これは不可抗力だとは思う。

 ともあれ、向こうに話し合う意思がないのなら、それこそ敵と認識するしかない。


「とはいえ……厄介なのは間違いないんだよな)


 レオのオーラが変身した黄金のドラゴンが放つレーザーブレスの威力は、非常に強力だ。

 だというのに、それを受けても問題なく行動出来るというのだから、一体どれだけの再生能力を持っているのかと、そんな疑問をアランが抱いても当然だろう。

 ましてや、砂漠に仲間たちを降ろしている現在、迂闊に戦いに時間をかける訳にもいかない。


「しょうがない、か」


 ビームライフルで攻撃しても再生するのなら、それこそ頭部をビームサーベルで切断する。

 そんな方法しか、アランには思いつかなかった。

 もう少し時間があれば、もっといい選択も思い浮かんだかもしれないが、残念ながら今のアランにとって、そのような時間はないし、とにかく出来るだけ早く敵を倒すということが、何よりも優先されることだった。


「うおっ!」


 下にいる黄金のドラゴンに向かって風のブレスを放っていた鷲だったが、何らかの前兆でも感じたのか、不意に上空にいるゼオンに向けて風のブレスを放つ。

 その一撃を、何とか回避するアラン。

 もしかしたら、ゼオンの装甲なら風のブレスが命中してもどうにもならない……という可能性もない訳ではなかった。

 だが、それはあくまでも可能性でしかない。

 何より、黄金のドラゴンが放つレーザーブレスが命中してもすぐに回復するだけの能力を持っている相手なのだ。

 迂闊に攻撃を受けるような真似はしたくなかった。

 ……とはいえ、その辺は考えて行動した訳ではなく、半ば反射的な行動だ。

 空を飛んでいたゼオンは、スラスターを全開にしてその場から急に離脱する。

 一瞬前まで、ゼオンのいた場所を貫く風のブレス。

 アランはゼオンを回避させながら、こちらもまた反射的に先程決めていたように頭部に向かって機体を進める。

 手にはビームサーベルを持ち、狙うのはこちらもまた当初の予想通り……頭部。


「うおおおおっ!」


 風のブレスを吐く巨大な鷲に向かう恐怖を、雄叫びを上げることで回避しようとするアラン。

 そんなゼオンに向かって巨大な鷲は再び風のブレスを放つが……下にいる黄金のドラゴンが、ゼオンの援護をするべくレーザーブレスを放って巨大な鷲の身体を貫き、風のブレスは見当違いの方向に向かって飛んでいき……


「食らえっ!」


 次の瞬間、斬っとゼオンの振るうビームサーベルは巨大な鷲の首を切断するのだった。 

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