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Sixth-sense of Wonder / シックスセンス・オブ・ワンダー  作者: 沃懸濾過 / いかく・ろか
第4章 - 病を治す魔法の鳥
35/45

幕間 - 人は見目よりただ心

「まさか脱水症状で失神するとはね。しかしまあ無事で何よりだ! よくやってくれたよルナちゃん」


 ルナが目を覚ましたのは個室の病室だった。従妹の見舞いに来たはずが自分が入院することになるとは、とんだお笑いぐさである。


「なあに即日退院できるだろうさ。どうだい、体に不調はないかい?」


 そう甲斐甲斐しく接し話しかけるのは石津いしづモエ、心災防衛サイカシステム風見ヶ丘(かざみがおか)拠点の本部長だった。

 ずっと待っていたのか、ルナが起きた時にはベッド脇の椅子に座っており、手元にはタブレットを携えていた。わざわざ病院に出向く暇があるとは思えなかったが、自分を心配して来てくれたのだとしたらルナは答えないわけにはいかない。


「寝起きだからかもしれないですけどちょっとぼーっとします。あと口の中がぱさぱさです」


 シーツをめくって起き上がると、ルナは自分の腕に点滴が刺さっていることに気付いた。痛みはないが気付かずに寝返りを打ったら引っかかって痛そうである。


「それは脱水症状の後遺症だろうね。まあ直ぐに治るだろう。若くなきゃ脳梗塞とかにもなってたかもね。ほら、これ飲んで」

「あ、ありがとうございます」


 差し出されたボトルをルナは素直に受け取ると、キャップを捻り一口含んだ。そして口腔内には塩気が広がる。


「うぇっ、まずぅ……」

「よしよし。経口補水液を美味しく感じないならそれなりに体液は足りてるってことだろう。しっかし……ふむ、子供用のリンゴ味の方が良かったかな」

「普通のお茶で大丈夫です……」

「何、体に良いことは確かだろうさ。気にせず飲んでくれたまえ」


 モエは腕を組むと椅子に座り直す。座席が低いこともあってか、長い足を持て余すように腿の上で組んだ。


「まあ、悪かったね、非番なのに任務に駆り出させて。挙句倒れさせたんじゃ親御さんに顔向けならないな。いや勿論きちんと謝罪に出向くつもりだが」

「家族には自分で言いますから大丈夫ですよ。ところで脱水で倒れたって、私そんなにカムイに水を取られたんですか? あっ! そういえばカムイとイトナも! どうなったんですか!?」

「落ち着きなよ。二人とも無事だ、鳥のキズナちゃんもね。イトナちゃんにはもう心災防衛サイカの事情を軽く話したし、カムイ君に至ってはもうホノカちゃん達と拠点に帰っているよ。今頃報告書を書き上げているところじゃないかな」


 モエが窓の外を見るのに釣られてルナも目を遣ると、既に陽が落ちかけていた。モエの示す腕時計の文字盤を見て、四時間近く眠っていたらしいことを知った。


「脱水症状に関してはカムイ君じゃなくてルナちゃんの第六感センスによるものだ。いやいや自分の体液で植物を成長させたりしたらそりゃあそうなるよ。よくそんな無茶したね。いくら土に栄養がないからって自分を肥料にするのはやり過ぎじゃないかい? 三大栄養素《N P K》は勿論植物にとって重要だが人間だって必要だというのに」

「あの時はなんだかそうすればイケるって思っちゃって……」

「事実イケたんだ。その感覚に狂いはないだろう。しかしとんでもない応用方法を見つけたもんだよ。ヤドリギでもないっていうのに自分に寄生させた上に、身体機能の向上までさせるだなんてね」

「え?」


 自身に寄生をさせたというのは確かだ。『植物と一体化する』感覚が生む結果は有り体に言えば『寄生』で間違いないだろう。

 けれど全く意識していなかった言葉がモエの口から聞こえた。


「もしかして気付いてなかったかい? 起き上がった時に見たかと思ったんだが」


 そう言われてルナはシーツを全て捲った。自分の両足と、初めはガジュマルで覆っていなかった右腕をさすって確かめる。

 分解の際に受けたはずの傷痕は、どこにも見当たらなかった。


「私が来た時にはホノカちゃんがとても心配していてね。『ルナちゃんの手足に穴がー!』って。全身が植物に包まれてたから怪我の状態も見えないし、見た目が大木じゃお医者さん方も驚いたことだろうね」

「大木って……私、全身ガジュマルで覆っていたと思うんですけど、どうやって脱いだんですか? もしかしてのこぎりとかで……?」


 まさかどこか切られたりしたんじゃないか、というルナの不安を他所よそに、モエはちっちっと指を振った。


「トジャク君だよ。御築おきずきトジャク。彼が丁度暇をしていてくれて助かった。いや本当は多分めちゃくちゃ忙しかったんだろうが連絡したら一瞬(・・)で来てくれてね。ルナちゃんと救助訓練用の人形を入れ替えて取り出してくれたんだ。トジャク君がいなかったらルナちゃんの言うように鋸で発掘作業になるところだったね」


 トジャクの名前が出たことでルナはほっと息を吐けた。

 彼の第六感シックスセンス手品師の種(フェアトレード)』の効果は身をもって体感している。丸っ切り自分を怪我させることなく、きっと脱出マジックのように助け出してくれたことだろう。


「ガジュマルの抜け殻は拠点に運んである。邪魔な置物になりそうだが、まあそれはいい。それよりルナちゃん、君の第六感センスについて、だ」

「は、はい」


 モエはルナの両腕を掴むと皮膚を摩り、その状態を検分した。


「トジャク君のお陰で植物と癒着していた部分を完全に切り離して君だけを取り出せた訳だが……すごかったよ。剥き出しだった組織がみるみるうちに再生してね。この強烈な回復力は同時に筋組織にも及ぶだろうし、使いようによっては機動力や持久力へも転換できそうだ」

「あの……私その回復力がどうとかっていうのの原理が全然分からないんですけど」

「おや? ホノカちゃんから今日のルナちゃんは冴えていると聞いたが」

「もうそういう感覚はないです……失神したからですか?」

「だね。意識が途切れれば第六感センスの効果も中断されるのが常だ。んん、それじゃあもう融合もできなさそうかい?」


 そう問われてルナは目を閉じてあの時の感覚を反芻した。植物と肉体が一つになる感覚は確かに思い出せる。


「大丈夫そうです。あの感覚は忘れてません」

「よしよし。で、回復力──というか身体機能の活性化か。単純に植物と一体化したことで植物への作用が肉体にも及んだと見ていい。おまけに光合成でエネルギーを賄えるんだとしたら疲れ知らずのランナー、文字通り止まらない全力疾走(・・・・)だ」


 モエは楽しそうに笑ってそう言った。

 ルナはモエの話を聞きながら、自分にできることが増えたことが喜ばしく、自然と顔が緩んだ。


「私、もっともっと活躍できそうですね」

「改善すべき点も沢山あるけどね。問題があるとすればやっぱり今日も起きた脱水症状かな。使う前には十分水を飲む必要があるだろうし、もっと効率的な植物を探さないとね。ガジュマルじゃ重過ぎるだろう?」

「トウモロコシとかどうですか。光合成効率が高いって聞きますけど」

「いやあ、いくら効率が良くても体からトウモロコシが生えてる図はちょっと嫌じゃないかい?」

「えぇ……それじゃあ──」


 そうやってルナとモエが植物談義に花を咲かせ始めた時だった。

 病室の扉が勢いよくスライドし、大きな音を立てて開いた。


「ルナお姉ちゃぁぁん!」


 そうして飛び出てきたのは従妹の古世守こぜかみイトナだった。


「イトナ!」

「ルナお姉ちゃん目が覚めたんだね! ごめんね!」

「イトナも無事だったんだね、良かった。苦しくなかった?」

「うん、うん! ごめんねルナお姉ちゃん、ごめんね」


 イトナはベッドで上体を起こすルナに抱きつくと、泣きじゃくりながらごめんねごめんねと繰り返した。

 ルナはイトナの背中に手を回して、とんとんとゆっくり背中を叩く。イトナが今泣くような必要はないのだ。


「落ち着いて、ね? イトナ、私は大丈夫だよ。イトナも大丈夫、大丈夫」

「でも、うん、でもっ、ごめんね! わたし、キズナを守るのに精一杯で、見えるようになったと思ったのに周りもよく見えなくなって」

「ああ、そりゃあカムイは近眼だからね。眼鏡を落としたら見えなくて当然さ」


 せながら途切れ途切れに話すイトナに対してモエは至って冷静に言った。


「イトナちゃん、ルナお姉ちゃんはこの通り元気だ。それに目が良く見えないのに怖い人に囲まれたらパニックになるのは当たり前さ。手当たり次第にやれることをやるのは何にもおかしくない」


 モエがイトナにそう話しかけるのを聞いて、ルナもカムイがずっと顔を顰めていた理由にやっと思い至った。機嫌が悪いのではなく、単に遠くのものがぼやけてよく見えず、目を凝らしていたのだ。

 イトナに悪意が宿ったわけではない。腕の中にいるのはルナにとって可愛い大事な従妹で間違いなかった。


「イトナ、もうしばらくぎゅっとしてようね。ほら、元気になる魔法ー」


 ルナはイトナを抱き締めたまま、片手でぽんぽんと頭を撫でた。イトナは涙をルナの胸に染み込ませながら、少しずつ嗚咽を小さくしていった。


 そうして噎せ返るしゃっくりが止まって落ち着くと、イトナはモエの隣に座らされた。


「じゃあイトナちゃんも来たし、今日の出来事について話そうか」

「あの、それでモエ先生、この現象……イトナの第六感センスって一体何だったんですか? 初期暴走じゃないってホノちゃんは言ってましたけど……あまりに色んなことが起きてるっていうか」

「ああ、まあ初期暴走ではないね。それはもうイトナちゃんが倒れて病院に運ばれた時点で終わってる。直近の出来事から考えてきっかけはキズナちゃんの脳震盪だろう。それをどうにかあげたいって思ったんだよね?」

「うん、わたしがキズナの代わりになって、治してあげたいって思ったらこうなったんだ」


 モエの問いかけに対してイトナははっきりと答えた。

 それをモエは推論を加えつつ噛み砕く。


「脳震盪による意識混濁を治療するために、キズナちゃんと意識を入れ替えたわけだ。麻痺ってもつこじれた頭の中を丁寧に整頓することでバグを直す、そんな感じかな」


 モエの説明は非常に漠然としていて感覚的なものだった。感覚的なのは第六感シックスセンスであるため当然として、イトナがそこまで深く考えた上で発現した能力ではないため、仕方のないことなのだろう。


「きっかけはキズナちゃんでも発現に至った精神的負荷は視覚障害のストレスによるものだろうね。その暴走のお陰で一緒くたに自分の目も直したんだろう。心因性のものだったらしいし、雁字搦めだった精神を紐解いて、結果的に使いやすい脳構造、目が見える精神に作り変わったってところかな」


 モエの話は多分に想像を含んでいたが、その時に居合わせた職員もおらず、イトナもよく覚えていないことには確かめようがない。専門家であるモエの話を信じる他なく、むしろその話をすることでイトナの能力が安定することを図っているようにも思える。


「あの、それが病気が治る理由っていうのは分かったんですけど……治療に乗り移りに、あとは私の頭を冴えさせて第六感センスの強化? とか、あまりに色々でき過ぎなんじゃないかなって」

第六感シックスセンスは一つでも、できることは一つじゃないからね。カムイ君の水操作と脱水分解、ルナちゃんの植物操作に融合活性、と応用が利くのと同じさ。根本こんぽんには『分子の操作』と『成長の操作』があるだろう?」

「じゃあ、イトナの第六感センスの根本は何なんですか」

「『入り込んだ精神構造の最適化』ってとこかな。思考回路と呼んでも良いが、心災防衛サイカでは五感や第六感シックスセンス、人格を形作っている脳機能に関わるものを便宜上『精神構造』と呼んでいる」

「精神構造……?」


 聞きなれない言葉が出たためか、イトナが首を傾げながら呟いた。

 まだ話を聞いたばかりだろう第六感シックスセンスという用語すら理解しているか怪しいだろうに、分からない単語ばかり飛び出ては理解は追いつかない。ただでさえモエの話は一度聞いただけで物にするのは難しいというのに。


「心の在り方みたいな感じだね。医学的には脳神経の繋がりだとかになるんだろう。脳科学的にも第六感シックスセンス的にも人間の脳っていうのは未だにブラックボックスだ。この未知の箱の中で組んず解れつ縺れて絡まってぐちゃぐちゃになった回路の糸を整理整頓するのがイトナの能力さ。シナプスやニューロン、神経を操ってるなら物質操作とも言えるがこの分類はいい加減だからねえ、まあ精神操作系の第六感センスと言って良いだろう」

「なんだか、とんでもなくすごい能力に聞こえるんですけど……」


 イトナが頭の上にクエスチョンマークを浮かべるのを見ながら、ルナもよく分からないなりに言葉を返す。自身が物質操作系の第六感シックスセンスを持つだけに、他の能力のイメージは付きにくい。


「事実すごい能力さ。スーパーレアだよ。精神構造に作用する第六感センスは貴重で実例も少ない。研究開発部に早速教えたら大喜びだったね。そういうのが好きな奴が『心縒り糺す目(アイコンダクト)』と早速名付けてくれてる」

「アイ……コンダクト……?」


 イトナは首を傾げたままだった。

 能力に名前を付ける文化がないのは当然だ。


「あらゆる第六感シックスセンスを解明に導けるよう願って名付けたらしい。イトナとキズナにちなんで『快刀乱麻を断つ』から取る案もあったんだが『解答』で『意図』を切るのは縁起が悪い。断ち切るよりも縺れた心を解きほぐす方がずっと良いってね」


 随分と凝った名前を付けられたものだとルナは思った。『全緑疾草オールグリーン』も心災防衛サイカシステムの職員に勝手に付けられた名前だが、物好きな人もいるのだなと感心した。


「『目』っていうのは重要でね、精神操作系能力の条件には『目を合わせる』っていうのが少なくない。イトナの『心縒り糺す目(アイコンダクト)』も目を合わせて接触するという極めてシンプルな条件だ」


 それを聞いてイトナはぱちぱちと数度瞬きをした。


「難しくてすぐにはよくわかんないけど、すごいこと、なんだよね」

「そうだよイトナ、本当に魔法が使えるんだよ」

「うんっ。わたし、本物の魔法使いになったんだね」


 目が見えるようになっただけでなく、新たなセンスに目覚めたことをイトナは実感しているようだった。五感が一つ欠けていたはずなのに、今度は一つ増えている。

 第六感シックスセンスは自身の健全な心身を守るために発現する力だ。同時に、失くしたものをそれ以上失わないようにし、更に取り戻そうとする力でもあったのだろう。


「……なあ、イトナちゃん、さっきは私たちの組織──心災防衛サイカシステムについてのお話をしたよね」


 モエはイトナに対して静かに切り出した。


「? うん、こういう時に人を助ける人たちがいるんだよね」

「そうだ。けれど私たちは基本、無理矢理に気を失わせたり乱暴に捕まえることでしか人を助けられない……対して君の第六感センスは、混乱する人の心を解きほぐして落ち着かせられる力がある。もし君が心災防衛サイカシステムに所属してくれたら、とても助かるんだ」


 それは勧誘スカウトだった。

 心災防衛サイカシステムは本人の希望せずとも保有者を保護対象としている。その中で能力を役立てる意思のある者には防衛員として活動をしてもらっている。

 まだ義務教育を終えていないイトナは、どうあっても保護対象のⅢ類でしかない。けれどモエが言うように、イトナの能力──『精神構造の最適化』は心の決壊、どんな心災も鎮静化させられる力だ。もし防衛員となれば、誰よりも少ない負担で人を救えるだろう。


「とはいえ君はまだ子供だ。君の力に頼るときには、絶対に君を危険には晒さない。必ず君の安全を守ると、ここに約束しよう……どうかな?」


 モエのその提案を受けて、イトナは俯いてしまった。きっと喜んで引き受けるだろうとルナは思っていたのに、あまり乗り気には見えない。

 人を助けたいと、誰かの役に立てる人になりたいとイトナ言っていたはずだというのに。


「……わたしで、いいのかな」

「うん?」

「わたし、ルナお姉ちゃんやルナお姉ちゃんのお友達に迷惑かけて、けがもさせちゃったのに。それなのに一緒にいたりして、いいのかな」


 イトナは、自分を責めていた。

 人を傷付けた自分には、人を救う資格がないと、そう思っているらしい。

 そんなことはないと、ルナはイトナの気持ちを前向きにさせてあげたかった。


「ね、イトナ、何年か前にあった『快晴の大洪水』と『枯木の樹海街』って覚えてる?」

「えっ? うん、覚えてるよ。あの頃は目が見えてたから」

「あれね、やったの私と私の友達なの」


 それを聞いてイトナは固まった。ぽかんと口を開けて、見開いた目をルナに向けている。

 ルナは頭を掻きながら続きを話した。


「あの時は私も訳がわからなくてさ。街に住んでる沢山の人に迷惑をかけたけど……私はこうして心災防衛サイカシステムに入ってる。何万人にも迷惑をかけちゃった私に比べたら、今日の出来事なんてちっぽけなことじゃない?」


 ルナの言葉にモエも腕を組んでうんうんと首肯した。


「人を傷付けたら人を救う資格がないだなんて馬鹿な話さ。何をやったかなんて外面そとづらは関係ない。それより大事なのは自分の引き起こした出来事を受け止めた上で何かをする意思があるか、って内面だよ」

「そうだよイトナ! イトナは昔から人を助けたいって言ってたじゃない。私も最初は戸惑ったけど……やるべきことのためにできる手段があるなら、きっとやるべきだよ」

「そうだとも。『人を助ける意思がある』って点じゃイトナちゃんはもうスタートラインに立っている。あとは思い切りの良い決断があれば、君の選択を邪魔する人なんてどこにもいやしないさ」


 まあ親御さんの意見も聞かなきゃだが、とモエは付け加えたが、イトナの背中を押すには十分な言葉だった。

 イトナには人の役に立ちたい意思がある。けれど人を傷付けてしまったという出来事がその気持ちを妨げていた。

 そんなことは関係ないと、受け入れてもらえるのならばイトナの答えは一つだろう。


「わたしも、人を助ける魔法使いになっていいかな」

「いいんだよ!」


 ルナはイトナの言葉を肯定した。駄目である理由がない。可愛い従妹にやりたいことがあるのなら、それを手伝うのは当然だった。


「後は親御さんに話を通すだけだが、それでもすぐに働けるって訳じゃないからね。規定年数……まあ三年所属すれば中学も上がるし丁度いい。それまでに心災防衛サイカシステムについての勉強もできるしね」

「イトナはまだ目が見えるようになったばっかりだし、リハビリも必要じゃない? 引き籠ってて体力も衰えてるだろうし、一緒にトレーニングもしよっか」

「うん! 退院したらたくさんお散歩とかして、体力つけて目も使って、それに勉強もちゃんとやる!」


 決心を示すように握った拳を胸の前で振り、興奮気味に宣言をする。


「よし、やる気は十分みたいだな。これから君に救える人がきっとたくさんいる。ルナお姉ちゃんと一緒に、人を助けていこう」

「はいっ! がんばります!」


 イトナは目を輝かせて、元気良く返事をしたのだった。

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