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Sixth-sense of Wonder / シックスセンス・オブ・ワンダー  作者: 沃懸濾過 / いかく・ろか
第3章 - 儕輩の勧誘
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序幕 - この子に当たり前の幸いを

 それは飛行機の墜落現場だった。


 両主翼は離断し、機体前方部は潰れ、残った後方部も天井が剥がれて客室があらわになっている。

 原型を留めていない機内には、たった二人だけ無事な姿があった。焼け焦げた座席の骨組みの間に、幼い少年と、それを抱いて若い男がうずくまっていた。


 彼は目を覚ましたとき、腕の中で眠り、息をしている幼い命に安堵をした。

 けれど少年の表情は、家族を失った悲しみに侵されて、閉じた瞼の隙間は涙をたたえている。少年に降りかかった悲劇は、幼い身一人で背負うには大き過ぎた。


 彼が立ち上がり、周りを見渡せば視界全てが敵。ついさっきまで、ごく当たり前の日常に生きていたというのに、その当たり前を壊され、家族を失った被害者になり、全てを壊した加害者にされた。

 周囲に敵と見做された彼らに、身を守る手段は一つしかなかった。


 そして家族を失った少年のために、彼は全てを敵に回す覚悟を決めた。

 もう誰も信用はできない。信用できるのは自分自身(・・・・)だけ。けれどこの先のためには、己と同じように、少年のために生きることができる仲間──自分自身と同じ存在が必要だった。


 どうしてこうなってしまったのだろう。当たり前のさいわいを享受する権利は誰もが等しく持っているもののはずなのに。


 彼はそう嘆いた。そして何もかもを失った少年のために、自分にできる全てをかける決意をした。


 あの日に止まってしまった時を進めるすべを彼は探し、残されたたった一人の家族の幸せを願い、今も求め続けている。

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