27話
色々と吹っ切れました(吹っ切れてない
長らくお待たせしました。まだ読んであげてもいいよというお方がいれば、読んでいってください泣
27話
「……これは【黒侵病】によって齎された症状だ。見たらわかると思うが、彼女は手に症状が現れた」
私は思考を巡らせ、【黒侵病】についての知識を探します。
しかしながら私の知識には、【黒侵病】に該当する知識は一切合切ありませんでした。
見たことも聞いたこともない病気……ということはつまり、このゲームにしかない特有の病気ですね。
「【黒侵病】……ですか?」
「そういえばアヤさんは旅人だったな。知らないのも無理はない。––【黒侵病】は手、足、頭、その何れかが黒く染まり、その部位のありとあらゆる活動が停止する病だ」
「ふむふむ。つまり写真の女性は手が動かなくなっているということですね。
……言い方はあれですが、それだけならば別に手が使えなくて日常生活が少し不便になるだけだと思いますが」
私が首を傾げながら告げると、カリスさんは苦笑しながら口を開きました。
「君は……いや、なんでもない。––勿論、この病がその程度ならば私もこんなに焦ったりなんかしない。【黒侵病】はな、症状が広がっていくんだ」
「……なるほど。それで名前が【黒侵病】となったのですね」
カリスさんから聞いた情報から考えると、【黒侵病】とは〈手、足、頭の何れかが黒く染まり、そこから段々と全身に広がっていく。黒く染まった部位はあらゆる活動を停止させる〉という症状を持った病気だということになります。
その「黒」の侵食速度がどれほどのものかはわかりませんが、カリスさんが私に頼ってきた時点で写真の女性がまだ生きていることは確実です。
「【黒侵病】の侵食速度はどれくらいですか?どれくらいの猶予があるのかを教えてください」
ああそういえば、と私は思い出しました。
他のVRMMOでは【暗殺者】をしていたのに、なぜこのゲームでは【回復術師】を選んだのかを。
「……発症したのが2ヶ月前。この病が全身に広がるまでの時間は、おおよそ3ヶ月だ」
つまりは残り1ヶ月……ゲームの1日は現実での半日なので、あと15日ですか。
うん、猶予は充分ありますね。
このゲームでは病気も状態異常扱いですし、【回復魔法】または【状態異常回復魔法】が効かなくてもそれに対応するスキルを育成する期間は充分あります。
おそらく大丈夫でしょう。
––ふと顔を上げると、カリスさんが不安そうな顔をして、こちらを見つめていることに気がつきました。
《オリジンクエスト:月猫族の姫を救え!を受注することができます。受注しますか?YES/NO》
私は意識しながら、小さく微笑みをこぼす。
「そんな不安そうな顔をしないでください。必ず、助けますから」
《オリジンクエスト:月猫族の姫を救え!を受注しました。
このクエストはゲーム内時間で30日の期限が設定されています。もしもその期限が切れた場合2度と受注できなくなります》
"期限が切れてしまう"ということはつまり月猫族の姫(?)の死を意味します。
死んでしまえば2度と受注できなくなるのはまあ当然ですよね。
……あれ、私意外と責任重大ですか?
しかしながら、受注してしまったからにはもう他の選択肢を選ぶことはできません。
私が持ちうる最善を尽くして、それでも無理だったならばカリスさんには諦めてもらいましょう。
「……ありがとうっ……」
私の言葉に安堵したのか、はたまた別の要因か、カリスさんはポロポロと涙をこぼしました。
……いや助けられるかどうかもわからないのに、泣かないでくださいよ。
泣くのは、写真の女性が助かってからにしてください––という言葉は、心の中に留めておきます。
カリスさんを安心させるためとはいえ、必ず助けると豪語してしまいましたしね。
「……時間は有限です。カリスさん、早速向かいましょう」
イベントは別に上位のランキングを狙っているわけでもありませんし、もうやらなくていいでしょう。
たいして面白くもない鬼の駆除を延々とやり続けるくらいなら、ソフィーさんとの約束を果たすために早く聖女になったほうがいいと思いますし。
「……!ああ、今里の者に連絡をして専用の馬車を呼ぶ。少し待ってくれ」
「わかりました」
カリスさんは椅子から立ち上がると、軽食の代金を支払うためか店員さんのいるレジまで向かい、何やら白っぽいカードを店員さんに見せました。
すると店員さんはそのカードを見て、さらにはカリスさんの顔を見て、瞳をキラキラと輝かせました。
……レジで出したということは、あの白色のカードはクレジットカードのようなものなのでしょう。
ですがそれだけでなく店員さんはカリスさん自身を見て目を輝かせているので、きっとそのカードだけでなくカリスさん自身も有名なのでしょう。
……まあ、今はそんなこと気にしている場合ではありませんね。
「アヤさんの分も払っておいた。すまないが、この店の裏で待っていてもらえるか?」
私はその言葉に頷き、店員さんに軽くお辞儀をしてから店を出ました。
カリスさんに言われた通りに、お店の裏に待機することにした私は、すっかり忘れていた〈氷魔法〉を進化させることにしました。
メニュー画面を開き、ステータス一覧の項目をタップします。
〈名前:Aya 性別:女 種族:天魔:羊人LV25/40
職業:回復術師Lv16/20
HP:1480/1480
MP:6120/6120(2240)
SP:980/980
STR:5(1)
INT:78(178)(26)
VIT:1
DEX:24(27)(4)
AGI:1(4)
LUC:1
残りステータスポイント:2
《装備》
頭:【純白のベール】(【INT+3】【浄化】〈100/100〉)
胴:【純白のローブ】(【HP+500】【浄化】〈100/100〉)
手:【純白のグローブ】(【DEX+3】【浄化】〈100/100〉)
脚:【純白のローブ】
靴:【純白のシューズ】(【AGI+3】【浄化】〈100/100〉)
武器:世界樹の杖:白桜(【INT+1】【MP+500】【不壊】)
武器2:【紅桜】(【INT+3】【回帰】)
アクセサリー1:【左翼の全知のイヤリング】(【全回復】3/3)
アクセサリー2:【聖職者の指輪】(【MP+1000】)
アクセサリー3:【魔力上昇の指輪】(【MP+200】)
《スキル》
〈全種族共通語Lv-〉〈奇襲攻撃Lv-〉〈剣装備時STR+1〉〈剣装備時STR+2〉
〈慈悲者Lv5〉〈嫉妬者〉〈回復魔法Lv50〉〈詠唱破棄Lv55〉〈魔陣術Lv31〉〈鑑定Lv32〉〈魔力操作Lv52〉〈空間魔法Lv41〉〈氷魔法Lv50【進化可能】〉〈隠密術Lv31〉〈状態異常回復魔法lv1〉〈上位回復魔法lv1〉
《控え》
〈反転Lv2〉〈杖術Lv1〉〈剣術Lv33〉〈短剣術Lv6〉
残りスキルポイント:16
《加護》
【大賢者の庇護】【龍の祝福】【氷精霊の加護】
《契約》
【氷精霊:生者を羨む者:コキュートス】
《称号》
【春の精霊】【魔の探求者】【大賢者の弟子】(INT+5)【格上殺し】【鬼キラー】【血濡れの聖職者】 〉
〈【氷魔法Lv50】を進化させることができます。進化させますか?YES/NO〉
私はもちろんYESを選択します。
〈進化先を選択してください。
・熱魔法Lv1《制限あり》
・上位氷魔法Lv1 〉
そうして提示された選択肢はこの二つ。
名前から見て熱をあやつるであろう魔法と、そのまま氷の上位魔法。
熱魔法も気になりますが、ここは無難に上位氷魔法を選択しておきましょう。
普通の氷魔法でさえ氷獄などのとっても強い魔法を扱えるのですし、上位になればもっと強い魔法を覚えられるはずです。
あえてリスクを冒す必要はないですしね。
〈【氷魔法Lv50】が【上位氷魔法Lv1】に進化しました。【氷魔法Lv50】の魔法は【上位氷魔法】でも扱うことが可能です〉
〈【上位氷魔法】を獲得したことにより、パッシブスキル【氷の魔女Lv-】を獲得しました〉
【氷の魔女】……このスキルを手にしたものは、特殊属性及び無属性魔法を除き、氷魔法しか使えなくなる。
その代わりに、氷魔法の威力が増大する。
ふむふむ。つまり私はもう基本四属性に類される魔法は、氷系統のもの以外は使えなくなってしまったということですか。
うーん……。正直【氷魔法】と【空間魔法】以外に攻撃系統の魔法を獲得する気はないですし、私にとってはメリットでしかありません。
それに私のプレイスタイル的に【回復魔法】が使えるならば問題ないですしね。
「……ふふ、今度くふさんでも呼んで試し撃ちしますか」
それから数分後、なにやら杖のようなものを持ったカリスさんがようやくお店の裏に現れました。
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一応こちらで更新の告知はするつもりです。
 




