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少しおかしな聖女さまのVRMMO日常記  作者: ガブ
二章

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26話

お待たせしましたorz

26話




私が入院することになった翌日。

その昼頃に、私は女医さんに身体的にも精神的にも問題ないと判断され、無事退院することになった。

しかしながら今日1日は安静にするように言われたため、学校に行くことはできなかった。


「……やることが、ない」


お昼ご飯も食べ終わったし、家事も今やれることは全て済ませた。

安静に過ごしていろと言われたから、ゲームをするのはダメだろうし……。


そう考えてみると〈遊戯世界〉や〈Everlasting World〉に出会う前の私は、どうやって暇を潰していたのだろうと思ってしまう。


「……【コンシリウム】。なにか、暇を潰せるもの、ある?」

『〈Everlasting World〉へログインすることをお勧めします』

「……安静にしろって、言われた」

『お言葉ですが、検査したところ現在のアヤさまの健康状態は良好でございます。充分な睡眠も取られたようですし、問題ないかと』

「……そう?」


実はコンシリウムは孤独死対策のおしゃべりロボットなだけでなく、人の健康状態も検査できる優れものなのだ。

ただしそれはあくまでも肉体面だけの話なので、精神面に関してはやはり医者にかかる必要がある。


要するにコンシリウムが問題ないと言ったのなら、別に安静にしている必要もないのだ。


「……なら、そうする」


というわけで私は、〈Everlasting World〉にログインすることにした。





背には月光を浴び、幻想的な雰囲気を醸し出している駿河城。


どうやらボスのいるエリアでログアウトすると、その入り口地点に戻されるみたいです。


「…………!!」


––ログインした私を出迎えたのは、爛々と輝く金色の瞳をキョロキョロと動かし、少し寂しげにしているコキュートスでした。


「昨日は会えなくてすみません。……寂しかったですか?」

「……?……!…………!!」

「ふふ、そうですか」


相変わらずなにを言っているかはわかりませんが、寂しそうな雰囲気を醸し出しているあたり、昨日私に会えなくて寂しかったのでしょう。……多分。


とりあえず、私はコキュートスを抱き寄せて頭を撫でます。

するとコキュートスは気持ちよさそうに目を細めて、ぐりぐりと頭を私の手に押し付けてきました。


「……なんか、変な感じですね……」

「……?」


コキュートスに何でもないですよ、と言いながら、私は心の中に湧いてきた変な感覚に眉をひそめました。


なんといいますか……心の中がほっと温まるような、なんとも言えない感覚。

それがなんなのかを理解することができない私は、ただ困惑するばかりでした。


「……余計なことは、考えないようにしましょう」


一旦コキュートスの頭を撫でるのをやめて、そっと脇……脇?に手を入れて持ち上げます。


「……?」

「……ごめんなさい。いつまでも撫でているわけにはいかないんです」


物足りなさそうな顔をしたコキュートスに、一瞬なにか心にくるものがありましたが、私はそれを内心にとどめておき、いつも通り笑みを作りコキュートスを頭の上に乗せます。


「さて、いつもの場所に行きますか」


そうして私は、第二都市にあるいつもの喫茶店へと足を運びました。





「いらっしゃいませ、アヤさん!メニューはいつものでよろしいでしょうか?」


私が店内に入りますと、元気な声を上げて近づいてくる女の子が一人。

彼女の名前はイリアといって、この店のオーナーの娘さんです。


「ええ。いつものでお願いしますね」

「はーい!」


イリアさんは私をカウンター席に案内すると、急いで厨房へと走って行きました。


……その際、ガッシャーンという何かが割れる音と、イリアさんの悲鳴が聞こえたのはきっと気のせいでしょう。


「––おや、今日はいるみたいですね。探しましたよ、アヤさん」


ぼーっとしながらフレンチトーストがくるのを待っていると、背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


名前を呼ばれたため何かと思い振り向くと、そこにいたのはやはり––


「––あれ、第一都市の警護はどうしたんですか?カリスさん」

「ああ、あれはちょっとした任務で警護についていただけでね。本職ではないんだよ」


カリスさんは口元にニッと笑みを浮かべると、私の座っている席の隣に腰をかけました。

その後ぽーっと頰を赤らめて、カリスさんに見惚れているイリアさんに「コーヒーを一つ」と声をかけました。


「––私が君に渡した【紅桜】。使い勝手はどうかな?あれはなかなかの業物だったと思うのだが」

「ええ。いつもお世話になっていますよ。投げてもよし、斬れ味もいいので腕を斬るのにも役に立ちましたしね」


私の返答に対し、カリスさんはウンウンと首を縦に振り、黒色の瞳をキラキラと輝かせました。


「そうだろうそうだろう?あの短刀の刃にはな、魔滅銀と呼ばれている銀24.8%、ミスリル75%、聖鉱石0.2%の割合で合金したものが使われているんだ。

この金属はな、この割合でないと作ることができないんだ。ということはつまり、ドワーフ族の上の上、最も金属を扱うことに長けた種族【エルダードワーフ】にしか作ることができないんだ」


ふむふむ。簡単にまとめると【紅桜】は対魔物特化の短刀で、それを作るには【エルダードワーフ】––名前的に【ドワーフ族】の上位種族––の協力が不可欠だ、っていうことですね。


ということはつまり、そんな素晴らしいものを渡した私に感謝しろよ、的なことを暗に告げているのでしょうか?


そう思い私は「ありがとうございます」とカリスさんに告げると、カリスさんは慌てた様子で「……すまない。私の悪い癖が出たようだ」と苦笑しました。


うん、カリスさんはきっとあれですね。

よくテレビとかにいる、自分の詳しいことの話になると夢中になって喋ってしまうちょっと周りから浮いちゃう人ですね。


まあ別に浮いちゃうことが恥ずかしいってわけではないですし、とても興味深い話なのでそんなこときにする必要性なんてありませんが。


「いえいえ。とても興味深い話でした。私も【紅桜】を使う身ですし、それが何でてきているのか知っていて損はないですし」

「……これは驚いたな。私のこの悪癖を見ると大抵の女性は苦笑しながら何処かへ行ってしまうものだが」

「……?知識が深いのは尊敬することはあれど、差別や忌避する必要はないでしょう?」


私が首を傾げながら言うと、何かが可笑しかったのかカリスさんは大声をあげて笑い出しました。

あまりの声の大きさに、他のお客さんはビクッと体を震わせて驚き、イリアさんやその父親は厨房から顔をのぞかせています。


「ははははは!話をして"面白い"と思った女性は貴女が初めてだよ、アヤさん」

「初めてとは随分と大袈裟なことを言いますね」


さすがは大佐という位についているだけはありますね。

息を吐くようにお世辞を言うことができるなんて、とても凄いです。

警戒心の足らない人なら、はっきりとした顔立ちと人当たりの良さでぽろっと秘密とかを喋ってしまいそうですね。


––そんなこんなで世間話をしていると、ようやく私のコーヒーとフレンチトーストに、カリスさんのコーヒーが運ばれてきました。


うん、相変わらずの香ばしい匂いです。これがよくコーヒーに合うんですよね。

現実じゃないので、いくら食べても太りませんし。

本当、フルダイブ型のVRってすごいですね。よく人間がこんなもの作れたものです。


とりあえず私はフレンチトーストを一口食べてから、コーヒーを飲みます。


「––で、本題はなんですか?カリスさん。まさか世間話をするために来たわけではないでしょう?」


ことりとコーヒーをコースターの上に置き、顔を上げてカリスさんを見つめます。

するとカリスさんは目を瞑り、コーヒーを一口飲みました。

その後ふぅと一息ついてから、ゆっくりと目を開け重々しく口を開きました。


「ああ。その通りだ。アヤさんの師匠––【大賢者】から、貴女が【回復魔法】を扱えるということを聞いた」


ふむ。カリスさんの表情やしぐさから察するに、身近な人で【回復魔法】じゃないと治療できない人がいるんでしょう。


そしてソフィアさんも【回復魔法】を使えるはずなのに、私に任せたということは【回復魔法】を使ってカリスさんに恩を売れってことですかね。


【回復術師】がスペシャルジョブ【聖女】になる為には、ジョブレベルを最大にするだけでは不可能だと思っています。

「スペシャル」って入ってるんですから、そんな簡単になれるはずがないでしょうし。


で、これはあくまでもこれは私の予想なんですが、【聖女】とはおそらく広く存在を知られていなければならないとおもいます。


だって聖女……仮にも「聖なる女性」と称されるんですから、公的に認められている存在でしょうし。


「––ええ。私は使うことができます。【回復魔法】を」


つまり何が言いたいのかというと、【聖女】になるためには「回復術師のジョブレベルを最大値にする」「広く著名な存在になる」ことが必要だということです。


もしもこの予想が正しければ、カリスさんに恩を売ることは【聖女】になるための大きな足がかりとなるでしょう。

噂というものは、ほんの少しの疑惑だけで広がっていくのですから。


「……貴女の【回復魔法】を使い、治療してもらいたい人がいるんだ」


カリスさんは胸のポケットから一枚の写真を取り出すと、それを机の上に置きました。


「……これは」


その写真に写っていたのは、一人の女性でした。

太陽を想起させるような赤色の髪。月を思わせるような金色の瞳。

肌は白く、身には髪の色と同じ赤色のドレスをまとっています。


さすがはゲームというべきか、ニキビのあとやシミなどは一切なくとても美人さんです。


そしてなによりも気になるのは––


「……腕が、黒色……?」


––白く細い腕の一部が、まるで闇に侵されているかのように黒く変色していたのです。






ツイッター始めました→https://mobile.twitter.com/gabu_rinn




一応こちらで更新の告知はするつもりです。

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