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20話

20話




地面に着地した私と、こちらに向かって走ってきている男性との距離は凡そ100メートルほど。

今から走り始めても、何かをしなければすぐに追いつかれて捕まってしまうだけでしょう。

そう。何もしなければ……、の話です。


「〈多重並列詠唱:氷の壁〉」


男性と自身の合間に厚い氷の壁を4枚ほど設置し、ついでにコキュートスにも〈氷の壁〉を4枚設置してもらい、計8枚の氷の壁を男性と私との間に設置しました。

私はコキュートスにしっかりと捕まっていてくださいねと言い、脇目も振らずにただ逃げることだけを考えて駆け出しました。


さて、魔法による妨害は鬼に対し有効なのか。それとも効かないのか。

前者ならば逃げるのは物凄く簡単になるのですが……。

まあ、そう都合よくはなりませんよね。


そんな私の思いに賛同するかのように、後方からバキバキバキという氷の壁が砕け散る音が聞こえてきました。

まさに瞬殺。8枚もあった〈氷の壁〉は、一瞬にて鬼に破壊されてしまいました。


ふむ。魔法による妨害は全く効かないとなると……、私に残されている選択肢は一つしかありませんね。


チラリと顔を後ろに向けて、鬼である男性の様子を確認します。

男性は始め会ったときと同様に顔に笑みを貼り付けていて、手と足を気持ち悪いほど動かしています。

それなのに上半身は一切ブレていなくて、オリンピックに出るようなプロの陸上選手を彷彿とさせます。


やはり走るスピードは鬼の男性の方が速いみたいで、段々と私と彼との距離は縮まってきていました。


「はははは!!待ってください、あやさあぁぁん!!」


すると突然、先ほどまで一切言葉を発さなかったはずの鬼がそう声をかけてきました。


ってなんでこの人私の名前を知ってるんですか。

うーん、全くをもって見覚えがないんですが、もしかして私の知り合いなんでしょうか……?


……とりあえず知らない人に声を掛けられたら仕事でもない限り、無視ですね無視。


「あやさん、僕ですよ僕!ウィングですよ!」


オレオレ詐欺ならぬ僕僕詐欺ですか……ってウィングさん?!


「え、ウィングさんですか?!ウィングさんといえば青髪に全身真っ青装備が代名詞のはずですよ?」

「いやそうなんだけど!なんか鬼に捕まったら黒髪になってしまってね!……とりあえず止まってくれないかな?」

「いや鬼ごっこで鬼を前に止まったら捕まるだけでしょう?!」


笑いながら言ってくるウィングさんにツッコミを入れながら、私は後ろに振り向かずにただひたすらに走ります。


さて、ウィングさんの状況から察するに、鬼となったプレイヤーは一時的にNPCと同じ扱いになるようですね。

プレイヤーの意識は残っていますが、操作は不可能な状態。

うーん、一体どんな感じなんですかね。自分では動こうとていないのに、身体が勝手に動く状態は。

よし、聞いてみましょうか。


「ウィングさん、自分では動こうとしていないのに身体が勝手に動く状態ってどんな感じです?」

「お?流石あやさんだね。言ってもいないのに僕の状況を言い当てられるなんて。––うーん、なんというか不思議な感じだね。……ああ、あれだ。〈遊戯世界〉で吸血鬼に〈魅了〉をかけられたときに似てるね」


ふむふむ。物凄く興味が湧いてくるんですが、わざと捕まるのもアレなのでやめておきましょう。


そんなこんなで走り続けておおよそ10分ほどが経ちました。

流石のプレイヤーでも体力は無限にないようで、私の口からははぁ、はぁ、と荒い息が漏れていました。


「おや、あやさんもしかしてお疲れかな?息が上がってきているよ?」


ウィングさんがそう言うと同時に、コキュートスが「……!!」と声を上げました。

これは私がコキュートスに頼んでおいた鬼が追い付きそうになった時の合図です。

と言うことはもう、奥の手を使うしかないみたいですね。


「ははは!あやさん、捕ま––」

「【反転:intとagi】」


AGIとは即ち俊敏性のことで、これを上げれば攻撃速度、行動速度が上昇します。

と言うことはつまり、この状況でこれを上げれば––おそらくAGIには降ってはいないであろうウィングさんからは逃げきれます。

魔法を発動出来なくなるというデメリットはこの状況ではデメリットに成り得ませんしね。


「ちょ、速すぎ!あやさん、待っ––」

「待ちませんよ」


爆発的に俊敏性の上がった私はウィングさんの魔の手から逃れて、コキュートスを振り落とさないように注意しながら全速力で道を走り抜けました。




「流石にここまで来れば大丈夫ですよね……」


そんなこんなで走り続けて、残り時間はあと五分ほどになりました。

ウィングさんは振り切れたようで、追ってくる気配はありません。反転様様ですね。


十分経過していますが、パーティー共通のチャットには「捕まったー」などの反応はありません。

どうやら誰も鬼に捕まっていないようです。


うーん、いくらなんでも鬼が弱すぎませんかね?

茨木童子でしたっけ。ワンパンで殺せるってことは、ステータスが一切体力やVITに振られていないということになります。

それならば「鬼ごっこ」ですしステータスの全てがAGIに振られているものだと思いましたが……、私の思い違いだったのでしょうか。


建物の影に隠れてそんなことを考えていると、聞き慣れたアナウンスの声が聞こえてきました。


《残り時間が05:00を経過しました。これにより"鬼"のステータス制限が解放されました。生存者である5/21人の皆さん、頑張ってください》


……ふむ。鬼が弱かった理由はステータスが制限されていたからだったんですね。それなら納得です。

どれほどのステータスが制限されていたかは不明ですが、鬼のAGIが反転状態の私のAGIを上回っていない限り、逃げきれるでしょう。


「……定番ならばここら辺で鬼が逃走者の居場所を把握できるようになる……ですけど、流石にそこまで鬼畜ではないですよね……?」


このゲームの運営ならやりかねませんね……などと思いつつ、私は建物の影からそっと顔を出しました。

〈探知〉にはなんの反応もありませんし、大丈夫だと思ったからです。


しかし私の視線の先に––––茨木童子がニタリと笑みを浮かべて、ゆったりと佇んでいました。


やばいと思って顔を引っ込めるも、時すでに遅し。

気がつけば茨木童子が私の目の前に立っていました。

背後は一直線上の道で逃げ場などなく、かといって空へと逃げようとするのも無理。

詰みですね、はい。


「つーかーまーえーたぁ」


最後に目に入ったのは茨木童子の嫌らしい笑み。そうして"鬼"に捕まった私の意識は暗転しました。




スランプ気味で小説が上手く書けないですごめんなさいorz

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