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16話

お待たせしました|д゜)チラッ

16話




「……で、この人どうしましょう?討伐しないとポイントは手に入りませんが」


 私は虎熊童子を指差して、いちゃついている二人とそれに対して般若の形相を浮かべているシズクさんに対してそう聞いた。


 虎熊童子は殺すなら殺せ、的な感じで地面に正座しています。


 シズクさんはさあ?と言わんばかりにいちゃついている二人を見てため息を吐いた。


「心配無用ですぞ。しっかりと討伐させていただきますので」


 アモーレさんはメリーさんの耳元でボソボソと何かを言い、彼女から手を離しました。


 するとメリーさんはボッと顔を真っ赤に染めて、


「まっかせて!」


 と言って、両手槌を虎熊童子に向かって振り上げました。

 さて……、先ほどアモーレさんは「──フォッフォッフォッ!お嬢様、抵抗せぬものをそのように殺すのは少々品がないですぞ?」って言っていたはずです。

それならばわざわざメリーさんに虎熊童子さんを殺させる理由は無いはずですが……。

はてさて、なにが起きるんでしょうね。


 私は小さな笑みを浮かべ、メリーさんの挙動を注視しました。


 そうして、メリーさんの両手槌が虎熊童子に接触するかと思った次の瞬間──ガキン!という音を立てて、両手槌がなにかによって弾かれました。


「──すまんが虎嬢を殺すのは勘弁してくれや」


 メリーさんの両手槌を受け止めたのは、小柄な男性──いや、男の子でした。ただし、額に一本の黒角を生やして、赤色の袴を身に纏っています。

 そして何よりも異常だったのは、その身から一切の魔力を感じられないことでした。

 それはつまり、自らの力を完全に制御出来ているということになります。私は内心冷や汗をかいて、突然現れた鬼さんを見つめます。


 チラリとシズクさんたちに目を向けると、シズクさんは鍛治槌を構え、鬼さんを睨みつけています。

 それとは対照的に、アモーレさんは笑みを浮かべてその場に佇んでいます。その横で、メリーさんが狂気に満ちた笑顔を浮かべています。


「──酒呑さま?!」


 虎熊童子は目を見開き、信じられないと言わんばかりの表情を浮かべました。

 酒呑童子──たしか、丹波国と大江山の国境付近の盗賊団の頭領、でしたっけ。いや、頼光四天王に討伐された鬼でしたっけ……?まあどっちでもいいですね。


「虎嬢、そないな驚いた顔してどうしはったん。まさかわいが助けに来んとでも思うたか?」

「……それもそうですが、その、何でしょうか。その口調は……」

「キャラ付けやキャラ付け。ほら、共通方言よりも地方方言つこうたほうが印象的やろ?」

「……エセ関西弁はただ恥ずかしいだけですよ。酒呑さま」

「まじでか?!」


 ……この人なにしに来たんでしょうか。虎熊童子さんを助けたと思ったら、急に雑談し始めましたし。お前らなんて簡単に殺せるぞ?っていう意思表示ですかね?


「……まあええわ。今更いうのもあれやが……、見逃してくれまへん?」


 酒呑童子さんは私たちに向かって、ニッコリと笑いかけてきました。「やっば。美少年の笑顔とか破壊力やば」と、頬を染めて口を押さえているシズクさんはもう無視です無視。


 だんまりな私たちを見て、酒呑童子は一瞬だけ悩むそぶりを見せて、


「ほんなら虎嬢を殺した時に手に入るぽいんと?をやるわ。それで見逃してくれまへん?」


 その懐から、なにやら御守りのようなものを取り出して私たちに見せてきました。その御守りには、「討伐ポイント」と書かれています。


「フォッフォッフォッ!よろしいでしょう。その条件で、あなた方を見逃そうではありませんか」


 アモーレさんがニヤリと笑い、それを見たメリーさんもニヤリと笑みを浮かべました。……なんだか今のメリーさん、幼稚園児を見ている気分になりますね。


「ははは!図太いにいちゃんやなぁ。まあええわ。ほんならわいらはお暇させていただきますわ」


 酒呑童子さんは脇に虎熊童子さんを抱えて、転移か何かを使ったのでしょう。一瞬にしてこの場から居なくなりました。


「駿河城で待っとるで」



〈ワールドアナウンスです。ただいま、イベントボス【虎熊童子】が撃退されました。イベントポイントは貢献度に応じて配布されます〉


「だぁーー!!やっと終わったァァァァ!」


 シズクさんが拳を天に向かって突き上げて、そう叫びました。……今日のシズクさん、テンションがおかしいですね。なにかあったのでしょうか。


「……ふぅ。お疲れ様でした」

「フォッフォッフォッ。お疲れ様ですぞ」

「乙ありでしたっ」

「お疲れ様でしたー」


 私たちはいつもの挨拶を交わし、ボスを撃退したという感慨に浸る間も無くイベントフィールドから退出させられました。



 ──気がつくと私は【第二都市】にある大通りに面した喫茶店の入り口の前に突っ立っていました。


 ワイワイガヤガヤという、人々の喧騒。騒がしいと心の中で思いながら、しかしそれと同時になぜか私はホッとしていました。


 私が【第二都市】に初めてきた時とは違い、大通りはプレイヤーたちで溢れかえっています。修正でボスが弱くなったからでしょうね。


 ──そこでようやく私は、周囲にいる人たちの視線が自分に向けられていることに気が付きました。


 私は顔をハッとさせ、すぐさまその場から立ち退き歩き出す。きっと皆さんはあの美味しいトーストが出るあのお店に入りたかったのでしょう。

 お店の入り口の前に人が立っていたら邪魔で入りづらいですもんね。反省しなければ。


《イベントボス【虎熊童子】撃退の貢献度の結果が出ました。ご覧になりますか?YES/NO》


 もちろんYESです。と言いたいところですが、大通りに突っ立って確認するのは傍迷惑な行為です。どこか座れる場所を見つけてそこで確認しましょう。

 そうして私はどこか座れる場所がないか、辺りを見回しながら大通りを歩いていきました。




《【貢献度一覧】

・【支援貢献度一位】

・【称号ボーナス】》


《イベントポイント【支援貢献度一位】で1000ポイント【称号ボーナス】で100ポイント【ボス撃退達成】で400ポイント、計1500ポイント獲得。現在のポイント74680ポイント、報酬まであと320ポイント》


 私は広場っぽい場所にあったベンチに座り、獲得したポイントを眺めていました。


 相変わらずボスとの戦闘はポイントの量も美味しいですし、スリルがあってとても楽しいですね。ついでにステータスも確認しておきましょうか。

 私はメニューから、ステータス画面を開きます。


《ステータス上昇に関する通知が溜まっています。確認しますか?》


 もちろん確認します。


〈名前:Aya 性別:女 種族:天魔:羊人LV23→24/40

職業:回復術師Lv16/20

HP:1460/1460

MP:6100/6100(2220)

SP:960/960

STR:5(1)

INT:78(178)(26)

VIT:1

DEX:24(27)(4)

AGI:1(4)

LUC:1

残りステータスポイント:2→0

《装備》

頭:【純白のベール】(【INT+3】【浄化】〈100/100〉)

胴:【純白のローブ】(【HP+500】【浄化】〈100/100〉)

手:【純白のグローブ】(【DEX+3】【浄化】〈100/100〉)

脚:【純白のローブ】

靴:【純白のシューズ】(【AGI+3】【浄化】〈100/100〉)

武器:世界樹の杖:白桜(【INT+1】【MP+500】【不壊】)

武器2:【紅桜】(【INT+3】【回帰】)

アクセサリー1:【左翼の全知のイヤリング】(【全回復】3/3)

アクセサリー2:【聖職者の指輪】(【MP+1000】)

アクセサリー3:【魔力上昇の指輪】(【MP+200】)

《スキル》

〈全種族共通語Lv-〉〈奇襲攻撃Lv-〉〈剣装備時STR+1〉〈剣装備時STR+2〉

慈悲者(ザドキエル)Lv5〉〈回復魔法Lv40→50〉〈詠唱破棄Lv55〉〈魔陣術Lv31〉〈鑑定Lv30→32〉〈魔力操作Lv50→52〉〈空間魔法Lv41〉〈氷魔法Lv42→50〉〈隠密術Lv14→31〉

《控え》

〈反転Lv2〉〈杖術Lv1〉〈剣術Lv33〉〈短剣術Lv6〉

残りスキルポイント:14

《加護》

【大賢者の庇護】【龍の祝福】

《称号》

【春の精霊】【魔の探求者】【大賢者の弟子】(INT+5)【格上殺し】【鬼キラー】【血濡れの聖職者】 〉


《【回復魔法】のレベルが上限に達しました。これにより、【状態異常回復魔法】【上位回復魔法】を獲得しました。

【氷魔法】のレベルが上限に達しました。精霊と契約した場合、スキルの進化が可能です》


 ……ふむ、精霊との契約ですか。氷の精霊といっても種類はあるでしょうし、どんな精霊が召喚できるか楽しみですね。







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