第04話 頭に響く声
いや、性別に疑問符が付いているのは、なんとなく分かる。種族が自立人形になっているから、そもそも性別がないのだろう。
しかし、名前は説明がつかない。表示されているのが前世の名前だから、暫定表示なのだろうか……?
とりあえず、これも今気にしても仕方ないことだし、保留しよう。どうも後回しにするのが癖になっているようで、よろしくないが。
……よし。気分を入れ替えて、スキルの確認をするか。名称が変わっていたり、まとめられたものがあるみたいだし。
【槍習熟】【長槍習熟】【短槍習熟】の三種類が統合されて【槍習熟(全)】に。【鎧習熟】【軽鎧習熟】【重鎧習熟】三種も同様に、といったところか。
【装備重量軽減】が【装備重量激減】に変化し、【部分装備】が【部分展開】に。これらは変化した理由も、後者に至ってはどうなったのかすら分からない。
コミュニケーションの基礎として取った【識字(人族)】と、夜間行動用に取った【暗視】が消えているのは、これも武具習熟と同じで、どこかに統合されたのだろうか。
後者はともかく、前者は予想できている。【原語理解】だろう。本来の【言語理解(人族共通語)】の『言語』が『原語』に変化していることと『人族共通語』の文字が消えている点から見て。
原語を理解。つまり人族の言葉に限らず、他種族の言葉も理解できるということか?
スキルはこんなところか。分かりやすくなっていたり、いつの間にか変化しているのは気になるが、これもやはり……
では、その原因についても調べていくとしようか。祝福、ね……
『わ、我がお主と共に歩むことは出来ぬ。……じゃから、せめて我の想いだけでも、持って行くがよい……』
『あと、これはナユタちゃんに優しくしてくれたことへの、私からのお礼よ~』
「確実にあれだよな……」
思わず、頭を抱える。あの神様達は、ちょっと個人に肩入れしすぎじゃないか……? いや、ナユタについては俺が原因か。
付与された理由が分かったところで、祝福の効果が分からない以上、どうしようもない。
ただ、他のスキル・祝福の文字は暗色を示しているのに、【女神の恩寵(小)】は点灯している。点灯がアクティブ表示で非点灯が非アクティブ表示と考えると、先程の部屋で本が読めなかった理由は説明出来る。
試しに、ステータスに表示されている【原語理解】に触れてみる。すると、アクティブ化したことを示すかのように点灯した。
「よし、これで一歩前進した―――」
『おはよう! おはよう!』『おきた? おきた?』『あそんであそんで~』『ごはん、たべよ?』『さむくない? あたためる?』
「うおっ! なんだなんだ!?」
アクティブ化した途端、さまざまな『声』が頭に響いた。耳が音を拾ったわけではなく、直接脳内に訴えかけられたようだ。
いや、正確に言うならば『声』ではなく『イメージ』だ。感情の方向性を脳が理解し、それを適切な言葉に置き換えたような……
腕組み思案していると、犬の背に乗っていた鳥が1羽、頭の上に止まった。そしてより明確に、声が聞こえた。
『だいじょうぶ? やっぱりさむい?』