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少年は黒猫のように  作者: 土井士郎
1/2

プロローグ『色雨』

(雨は、好きだったな)



 天候、大雨。さした傘は折れてしまいそうなほどの風。雷。

 そんな悪天候の中を1人駆けていく少年は、なぜか幼い頃の自分を思い返していた。



 ーーおかーさん、そとのえ、かけた!!

 ーーあら、また外の絵を描いたのね、○○○。



(この頃はまだ、知らなかったな、あんな事になるなんて)



 透明な雫が、少年の体を絶え間なく打ちつける。それは走り続けて火照っていた少年の体を冷やし、わずかながらに癒しとなった。しかしながら同時に雫は少年の着ている衣服をも濡らし、重くなった衣服は少年の負荷となっていく。



 ーー本当に○○○は雨が好きだなぁ。たまには晴れの日の外の絵も描いてくれよなぁ。

 ーーえー、やーだー!ぼくはあめのほうがすきだもん!!



(僕じゃない、僕のせいじゃないんだ)



 少年は1度走るのをやめて、びしょ濡れの上着を脱ぎ捨てた。包帯がグルグルに巻かれた痩せ細った体が露わになり、その一部からは血が滲み出ている。痛むのか、一瞬少年は顔を歪めたが、1つ大きな深呼吸をして、雨の中を再び走り出した。



 ーーまあいいじゃない、あなた。私、この子が描く雨の水色、とっても好きよ。

 ーーいや、咎めたつもりはないんだがな……、俺も、この水色は好きだな。



(全ては偶然なんだ、君がそう言ってくれたから)



 突風が吹いた。肌を焼き溶かしてしまうような温度で風は少年を襲い、その背を焼いた。うめき声をあげて、遂に少年はその場に倒れ込んだ。それでも前に進もうと、少年は手を伸ばして地を這いずっていく。



 ーーぼくも、みずいろ、すきだよ!!だからあめ、すき!!



(水色の雨、か。そうだったら、どんなによかったことか)



 少年の倒れ込んだ場所は紅く、その周りは廃墟が建ち並ぶのみだ。雨がいくら降り注ごうとも、その色は何も変わりはしない。



(こんな見たくもない風景を、全て塗り潰してくれたかもしれないのに)



 雨に混じって、かつて無邪気だった少年は自らも雫を落とす。それから、ゆっくりと立ち上がり、ほとんど光を失った目で前を見据える。

 その眼前に広がるのは、血の池と廃墟。



(……やっぱり僕は、人を不幸にするのかな)







「もう一度、君の言葉を聞かせてくれ」






 1つの想いと共に、また走り出す少年。雨は透明から、黒へと変わった。

初投稿です。投稿期間は結構空いてしまうかもしれないです…。(11/19 一部修正)

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