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予告プロポーーーーーーズ!!

作者: 北星

プロポーズネタ流行れ。

 「別れてほしいの」


 唐突なセリフに思わず「冗談だろ」と喉から声が出そうになった。遠距離恋愛で中々会えない中、なんとか時間を作っての逢瀬で別れ話。あると言えばあるのだが、タイミングの悪い事に彼のポケットには彼女に渡そうと思っていた指輪が入っていた。

 指輪そのものは極端な話、金さえあれば買える。ただ、その指輪に込めた想いは決して安い物とは言えない。

 あとはいつ切り出すか――それだけだったのに。


 彼女は続けて――おそらくだが理由だとか、彼女なりの想いを口にしている。だが、それ以上にこの展開の衝撃具合に負けて全くと言ってもいい程言葉が頭の中に入ってこない。その感情任せにならず、淡々とした彼女の態度がやけに事務的だな、と印象に残ったぐらいだ。


 そうして男は何も言わずに頷いて――エンディングの曲が流れ始めてきた。


 ふーぅぅぅ、と深く息を吐いて画面を見入っていた俺はゆっくりとソファに身体を預ける。

 ……頭の中をいったん整理しよう。これはドラマだ。作り話だ、と。

 だけど、他人事じゃねぇよなぁ……というのも、率直な感想だ。


 なにせ、現在俺も遠距離恋愛中だからだ。彼女とは付き合って6年目。俺の本社への転勤を機に、遠距離を始めてかれこれ2年になろうかという所だ。当然のことながら結婚も視野に入っている――というか、まさにそのタイミングを伺っている所だ。まさに、今のドラマとは似た状況にある。


 結婚を申し込むタイミングだったらこれまでにあった。


 それはもちろん、遠距離恋愛を始めるきっかけとなった本社への栄転を掴んだ時だ。遠距離恋愛をするか、もういっそくっついてしまうかという想いもあった。だが、当時の俺はとんとん拍子に栄転を掴んだとはいえ、社会人3年生を終えたばかりの頃。家庭を持ち――彼女の一生を支えるというには、弱すぎると思ってしまったのだ。

 今時、そんなマッチョな考え方を……と思うかもしれないが、それは多分、育った環境と子供の頃から見てきた背中によるものだろう。俺の親父は自分の稼ぎ一つだけで家族を支え、俺を含めた子供三人を奨学金無しで大学まで出した今時珍しいマッチョな男だ。そんな背中を見て育ったからか、俺たち子どもたちは揃って独立指向が高い傾向にある。


 もちろん微妙に時代が違うし、親父みたいな真似はまずできないとは思っている。だが、惚れた女を護ってやる力が欲しいと思ってしまったのだ。

 結局は俺のエゴでしかない。その結果、遠距離恋愛という代償を彼女にも背負わせてしまった事は負い目だ。

 救いは、車で2時間半。電車だともう少し早いか、といった距離で済んだ事だろうか。その事には十分助けられたと思う。だからこそ、俺も彼女も遠距離を選んでしまったという側面があるが――。


 「決断の時だな……」


 この2年、かなり生活を切り詰めて結婚に向けての資金を増やす事も出来た。派手な結婚式、とは言わないが好きなウェディングドレスを着せてやる事ぐらいは出来る。

 その後の生活だって、着々と現在の出世コースを昇っていければ……なんとか。後は独りよがりになりすぎないよう、彼女と話を詰めるしかない。


 けど、その前に、結婚しようと切り出さなければ話にならない。


 

 ……その矢先にこれだよぉっ!!


 「なんなん!?なんであの流れで別れ話になんねん!?縁起悪いわ、アホぁ!『うわー、ばっちり状況カブっとるやんけ』思て視ていた俺がホンマもんのアホやんけ!」


 結論。作り話は役に立たねぇ。腹の底に溜まっていた感想を謎の関西弁でまくし立て、それでも収まらず冷蔵庫からいつから一本だけ鎮座しているか覚えていない缶ビールを取り出してキューッと流し込む。いや、ホント、酒を恒常的に飲む習慣が無いのにいつ買ったんだろう……これ。

 まあいい。いい景気づけになった。


 電話……は、22時か。彼女的に微妙な時間だけど、どうだろう?やっぱ会って話すべき事だが、その為のアポイントをだな……いつも電話で喋っているはずなのに、伝えたいことがあるとちょっと緊張するな。様子見でライ○が妥当か……。


 ――今大丈夫?

 

 ……既読が付かない。寝てる――時間じゃないな。フロかな?風呂だよな?万に一つも無いと信じているが、それでもこびりついた不安を抱えながら、残ったビールをチビりとやっていると、ピロンッとスマホが返信を知らせてくれた。


 ――ゴメン、シャワー浴びてた。

 

 風呂じゃなくてシャワーだったかぁ……許す。誤差の範囲内でござんす。俺も『風呂』『メシ』と言っていないで彼女と一緒になったら文明開化せな……いや、それより要件をだ。


 ――こっちこそ急にゴメン。


 あ、送信しちゃった。


 ――それで用件なんだけど、今週末一緒にどこか出かけない?

 ――ホント?いいよ、私は土日どっちでも大丈夫。

   でも、そっちは大丈夫なの?ここの所忙しそうだったけど。

 ――無問題。土曜の朝は死んでると思うけど。

 ――全然大丈夫じゃない!?


 大丈夫じゃありません!でも大丈夫です!金曜の夜までは怪しいし、そうなると土曜の朝も絶対沈没しているけど、土曜の昼からなら完全にフリーの予定だ。そう、愛用している○カハシの手帳がおっしゃっております。


 ――それはともかく、行きたい所とかある?

 ――んー、なら買い物とかもしたいし、そっち行きたいかなぁ。

 ――カモナマイハウス

 ――あ、宿泊前提になった。じゃあ土曜に行くよ。


 そういえば知ってるか。あのスタンダードジャズナンバーを歌っているのは某有名ハリウッド俳優の叔母らしいぜ。この前付き合いでジャズバー行って教えてもらった。まあ、それはともかく、こっち来るかー……うん、別に思い立っただけで何の計画も立てていなかったから助かるっちゃ助かるんだが。

 

 ――わかった。じゃあ、土曜待ってる。それでどこ行くかは、まあ追々で。

 ――うん。駅付いたら連絡する。昼ぐらいにね。

   それで駅で合流して一緒にランチがてら行先を決めればいいかな。

 ――そうだな。


 流れてくるメッセージにふぅ、と一息ついた。これで第1段階は成功だ。まあ、これで躓いていたら話にならないんだけど。

 しかし、いざプロポーズっていうとなると……むむむ。全然思いつかんな。指輪って先買った方がいいのかな……?わからん。昼め――ランチの店を探しがてら、グーグ○先生に聞いてみるか……。


 「あっ……」


 ――プロポーズする


 あっ!じゃねぇーよ!彼女とのライ○に何送ってんだよ!バカか俺は!


 ――えっと……誰が?


 返信来ちゃった……どうしよう、っつーか、答えるしかないよな、これ。


 ――俺が

 ――誰に?

 ――君に

 ――……期待してる。


 期待されちゃった……。

 うわー、どうしよう。ネタバレしちゃったから、すごくハードル跳ね上がったんだけど。そもそも受けてもらえるだろうか……ヤバい。緊張しすぎてヤバい。


 誰か助けて!

続きはWEBで。


というより、作者が独身貧乏貴族の不毛の荒野の住人なので、女性心理、女性視点が絶望的です。なので、女性視点でその後の女性側のドタバタを誰か書いてください!(五体投地)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 続きや裏側を幻視させる流れ。 [気になる点] 続きはよ! [一言] 思いついても書けないこと、多々ありますよね。 北星様は、それを描ける作者さんだと信じてます。(ニッコリ
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